一人暮らしの女性に必要な老後資金はいくら?貯蓄額や年金を把握しておこう

今の時代、老後にどれだけの資金があれば生活していけるのか、不安に思う一人暮らしの独身女性も多いのではないでしょうか。必要な老後資金は、約1,300万円~2,600万円と考えられています。そのため、40代、50代のうちから計画的に資金の確保を行うことが大切です。

一人暮らしの女性に必要な老後資金はいくら?貯蓄額や年金を把握しておこう

独身女性が老後に必要な資金はいくら?

独身女性が老後に必要な資金はいくら?

厚生労働省のデータによると、女性の平均寿命は令和3年度で87.57歳です。65歳で定年になることを考えると、老後の平均期間は約22年ということになります。
【参考】厚生労働省「令和3年簡易生命表の概況(PDF)」詳しくはこちら

このまま定年まで働き続けて資産を増やせば、安定した老後生活を過ごせるのだろうか……。そんな独身女性の老後に対する漠然とした不安を解消するためには、第一に「老後の生活に必要な資金」を知ることが重要です。

65歳女性の1ヶ月間の支出額

総務省統計局のデータによると、65歳以上の女性単身世帯の1ヶ月間の支出額は約15万円となっています。内訳は以下の通りです。

65歳以上の女性の一ヶ月間の支出額

項目 金額
食費 3万7,542円
住居 1万3,141円
光熱・水道 1万5,143円
家具・家事用品 7,119円
被服及び履物 4,388円
保健医療 8,447円
交通・通信 1万3,423円
教育娯楽 1万5,041円
その他の消費支出 3万4,727円
合計 14万8,971円

【参考】総務省統計局「家計調査 家計収支編 第2表 男女、年齢階級別1世帯当たり1ヶ月間の収入と支出(単身世帯) 2022年」詳しくはこちら

これは必ずしも「月に15万円あれば大丈夫」ということを示したデータではありません。例えば、「保健医療」が8,447円となっていますが、これだけでは大きなケガや事故に備えることは現実的に難しいです。また、住居費の1万3,141円は持ち家と賃貸の平均値を表しています。賃貸の人の場合、さらに費用がかかるため注意が必要です。冠婚葬祭や旅行等の大きなイベントへの備えも、上記には含まれていないと考えたほうがよいでしょう。

余裕のある老後を過ごすためには、上記の金額にプラス5万~10万円ほどを想定しておくことが理想的です。目安としては、最低限の生活を送る場合は月に15万円、安定した生活を送る場合は20万円、趣味・娯楽の多い充実した生活を送る場合は25万円ほどを想定しておきましょう。

老後にかかる医療費

医療費の負担が最も多いのは、老後とされています。厚生労働省の「生涯医療費(女性)」令和2年度推計によると、70歳以上の医療費が生涯医療費の半分を占めており、約1,500万円の医療費がかかると推計されています。

【参考】厚生労働省「生涯医療費令和2年度(PDF)」詳しくはこちら

病院で治療を受けた後の精算で保険証を提示すれば、医療費の自己負担額が減額します。
現在の自己負担額の割合は、原則70歳までが3割、70歳~75歳までが2割、75歳以上で1割の負担になっています。さらに、高額療養費制度を利用すれば、上限を超えた毎月の医療費について還付を受けることができます。

公的医療保険制度のおかげで、老後の医療は割安で済むと思われがちですが、自己負担となる医療費もあります。有効性や安全性の高い先進医療で治療を受けた場合、1度の治療で100万円以上もの出費が発生することもあります。

介護費用

高齢になると身体の自由が効かなくなったり、寝たきりの状態になったりして、介護が必要になることも考えられます。独身女性で介護してくれる身寄りがいない方は、外部のデイサービスやデイケアの利用、介護施設への入寮を検討することもあるでしょう。

社会保険制度の1つである介護保険制度を利用することで、介護費用の自己負担金を所得に応じて1~3割にできます。しかし、介護施設、介護用品の購入やバリアフリー工事等は保険適用外です。独身女性の場合は、一般的に想定される介護費用よりも高く見積もる必要があります。

葬式や墓地の費用

葬式や墓地にかかる費用は死後の整理資金となります。
地域や葬式の規模によって金額が変動しますが、200万円程度が相場となります。独身の場合は親族が葬式を行いますが、この費用を自身で負担することが一般的です。

もし、親族への依頼に抵抗を感じる方は、生前に法律専門家と死後事務委任契約を結ぶことで、葬式や遺品等の整理をスムーズに手配してもらうことも可能です。その際の費用は50〜100万円が相場となります。

以上のように、1ヶ月にかかる生活費に加え、医療費、介護費用、葬式や墓地の費用といった追加で発生する費用も考慮し、老後の資金を準備する必要があります。

独身女性の老後の資金はどこから出す?

独身女性の老後の資金はどこから出す?

老後に必要な資金から老後の総収入の金額を差し引いた金額をこれから準備していく必要があります。一般的に老後の主な収入源になる年金制度と独身女性の平均金融資産残高から、将来どのくらいの資金を得られそうかみていきましょう。

独身女性の老後の平均貯金額

一般的に最も利用される老後資金の準備方法は、預貯金による貯蓄です。総務省統計局が公表している「2019年全国家計構造調査」によると、60代独身女性の貯蓄額は812万1,000円となっています。生涯の貯蓄額の全体をみると、70代の869万9,000円がピークとなっており、60歳を過ぎても何らかの収入源をもち(主に金銭受給の年金)、貯蓄額を増やしていることが考えられます。

年齢階級別預貯金(女性)

年代 金額
30歳未満 162万2,000円
30代 328万6,000円
40代 531万6,000円
50代 633万6,000円
60代 812万1,000円
70代 869万9,000円
80歳以上 819万3,000円

【参考】総務省統計局「2019年全国家計構造調査 家計資産・負債に関する結果」詳しくはこちら

また、50代~60代の貯蓄額、次いで30代~40代の貯蓄額の開きが大きく、30代~40代の働き盛りに第一ピークがあり、老後生活を意識した資金の準備を本格化する50代~60代に第二ピークが訪れていることが予想されます。なお、ここでいう預貯金とは、通貨性預貯金と定期性預貯金の合計を指します。

ですので、預貯金だけをみると、定年となる60代までに少なくとも800万円の貯蓄額が確保できれば平均的な水準に達しているといえるでしょう。

独身女性が老後にもらえる年金

老後の主たる収入は年金となり、老後生活の重要な資金の出所です。
年金は一般的に公的年金と私的年金を指し、公的年金は国民年金と厚生年金の2つに分けられます。私的年金は、公的年金とは別に個人あるいは事業主が掛金を拠出し運用を行って老後資金を準備するものですが、ここでは公的年金による年金受給額を確認します。


独身の女性と一口にいっても、自営業の方は国民年金のみの対象となり、会社員・公務員の方は国民年金と厚生年金が対象になります。以下では、自営業の場合と、会社員・公務員の場合とで分けて受給金額をみていきます。

国民年金および厚生年金の平均年金月額

年度 国民年金(老齢年金・25年以上) 厚生年金(老齢年金)※
2017年度 5万5,615円 14万7,051円
2018年度 5万5,809円 14万5,865円
2019年度 5万6,049円 14万6,162円
2020年度 5万6,358円 14万7,145円
2021年度 5万6,479円 14万5,665円

※1:厚生年金保険(第1号)
【参考】厚生労働省年金局「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況(PDF)」詳しくはこちら

日本国内に住む20歳以上の全員が加入する国民年金は、年度によって受給額に多少の増減がありますが、概ね月額で約5万6,000円前後です。厚生年金に加入している人が受け取れる年金額は2013年度以降、約14万5,000円以上となっています。

ただ、この金額は現役時代の給与額によって変わるため、あくまで平均値です。自営業の独身女性であれば国民年金のみの受給となるため総額で約5万6,000円、会社員や公務員等の独身女性であればそれに約14万5,000円が加算されるため、約20万円の受給となります。

独身女性の退職金

長年勤めた企業先から受け取る退職金も老後資金の1つです。
現在は、企業が毎月掛金を拠出し、企業あるいは従業員が資産運用を行うことで得られた資金を退職金として支給する企業も増えてきています。

大企業/中小企業、大学卒/高卒、自己都合/会社都合、勤続年数等によって受け取れる退職金は異なります。一般的に、大企業で新卒から定年まで勤続し定年退職した場合には、2,000万程度の退職金を受け取れるケースが多いです。中小企業の場合は、それより低い金額になると考えられます。

自営業の場合は基本的に退職金を受給することはありません。また、公務員の場合では退職金の金額も変わってきます。自身の就業形態に応じた退職金の受取有無と金額について早めに確認しておきましょう。

資産運用による資金

貯蓄だけで老後の資金が賄えない場合は、一部の貯蓄額を投資に回して資産運用を行うことで老後の資金を増やすことができる可能性があります。
総務省統計局の「2019年全国家計構造調査」によると、60代独身女性の金融資産残高は1,423万3,000円となっており、生涯の金融資産残高の推移をみると、60代の1,423万3,000円がピークとなっています。60歳を過ぎて年金支給が開始された各種資金源による資産運用が停止され、退職で主な収入源を失った結果、金融資産残高は60歳以降、減少の一途を辿ることになります。

上述した独身女性の平均預貯金残高の推移と比較すると、金融資産残高に占める預貯金の割合が40代で約7割、50代と60代で約5割となっており、30代あたりから資産運用に力を入れた結果として中長期的で金融資産残高が指数関数的に増加していることがわかります。早いうちからの資産運用が重要であることが窺えます。

なお、金融資産残高(貯蓄現在高)とは、銀行(ゆうちょ銀行を含む)・その他の金融機関への預貯金、生命保険・積立型損害保険の掛金、株式・債券・投資信託・金銭信託等の有価証券と社内預金等のその他の貯蓄の合計を指します。

年齢階級別金融資産残高(女性)

年代 金額 預貯金の割合
30歳未満 186万7,000円 86.8%
30代 407万9,000円 80.5%
40代 799万7,000円 66.4%
50代 1110万7,000円 57.0%
60代 1423万3,000円 57.0%
70代 1216万8,000円 71.4%
80歳以上 1083万5,000円 75.6%

【参考】総務省統計局「2019年全国家計構造調査 所得に関する結果及び家計資産・負債に関する結果 結果の概要」および上記「年齢階級別預貯金(女性)※PDF」詳しくはこちら

独身女性は老後資金をいつから準備すべき?

独身女性は老後資金をいつから準備すべき?

老後に必要な資金は高額なため、今すぐにでも少しずつ貯めていく必要があります。また、預貯金に加えて投資による資産運用を行うことで、老後の資金に運用利益を上乗せすることができます。
投資は、中長期的に行っていくことで利益がさらに利益を生むという「複利」が期待でき、運用期間が長くなるほど、この複利効果も大きくなります。

例えば、65歳に引き出すことを想定して毎月3万円で年率3%の積立投資を行う場合、35歳、45歳のそれぞれで始めた時の違いはどの程度出るでしょうか。
35歳で始めた場合、65歳には1,080万円(元本)+670万円(運用収益)=1,750万円となります。
40歳で始めた場合、65歳では720万円(元本)+270万円(運用収益)=990万円となります。
元本の差額は360万円ですが、運用収益の差は400万円となります。

【参考】金融庁「資産運用シミュレーション」 詳しくはこちら

35歳以前の早期に開始した場合には、さらに運用収益に差がつくことは容易に想像できるでしょう。ただし、上記はあくまでシミュレーションであり、実際の運用収益を確約するものではありません。

独身女性におすすめ!老後資金を貯める方法

独身女性におすすめ!老後資金を貯める方法

老後資金の準備は、「収入を増やすこと」と「支出を減らすこと」の両方から考えることが大切です。支出管理、資産運用、私的年金制度の利用、副業の4つの観点から具体的な貯め方の一例をご紹介します。

支出の見直し

誰でも始められる取り組みは、支出の見直しを行うことです。支出には、主に2つの類型があります。
1つ目が固定費で、住居費やサブスクリプション費用といった毎月支払が発生する項目です。2つ目は変動費で、食費や交通費といった自分で毎月出費を管理することができる項目です。
支出を見直す際には、月々の貯金額と照らし合わせ、変動費から固定費の順で改善ポイントをみつけるとよいと考えられます。

変動費のなかで改善できる項目として、生活のインフラである光熱費、食費や消耗品費といったほとんど毎日支払が発生する項目が挙げられます。光熱費は通信費と同様、利用するプランや組織によって料金が変動するので、自身の利用量に見合ったプランか都度確認し変更することが重要です。毎日支払が発生する出費は「本当に必要か?」という質問で購入せずに済むものが多くあるため、自問自答する癖を身に付けましょう。

固定費では、不要なサブスクリプションを解約することで支出が大幅に減ることがあります。動画配信サービス、習い事等、ここでも自分に必要なものであるか精査し継続の有無を判断します。住居費を抑えたい場合には、将来のプランや住まいの環境を考慮し、自身の仕事や健康に影響のない範囲での転居を検討するとよいでしょう。
とはいえ、自身のライフスタイルもあるため、老後の生活水準も見据えて現時点で支出管理を行い、不要な支出について改善しておくようにしましょう。

投資による資産運用

投資による資産運用

資産を増やすためには、積極的な投資も選択肢の1つです。株式や投資信託、債券、為替取引等々、さまざまな種類の金融商品があります。現在では10万円以下で始められる商品も多く、初心者でも取り組みやすくなっています。
ここでは、10年以上の中長期の運用を想定していることから、リスクの低い投資をご紹介します。

NISA(少額投資非課税制度)は、2014年1月から始まった、少額で投資を行う初心者向けの非課税制度です。NISA口座で購入した金融商品の配当金や譲渡益が非課税となるため、その分だけ多くの収益が得られる点が魅力です。現行のNISAは、積立投資ができる「つみたてNISA」と商品に投資信託だけでなく株式が含まれ、非課税投資枠も大きい一般NISAがあります。2024年からは新NISAの運用が開始され、非課税保有期間の無期限化、投資可能期間の恒久化等抜本的拡充がされます。

また、毎月1,000円から投資できる少額投資や、実際の金銭を投資しないポイント投資もリスクの低い投資と考えられます。資産運用を行うことで利益を得られるとは限らないため、不安な方は余剰資金の投資による投資収益を確認してから、徐々に資産運用残高を増やしていくとよいでしょう。さらに、貯蓄型保険、不動産投資等、資金が潤沢になり投資に慣れてきたら、投資対象を分散させることも考えましょう。

私的年金制度の活用

最低限おさえておくべき私的年金制度は、企業型確定拠出年金制度(以下、「企業型DC」)とiDeCo(個人型確定拠出年金)です。
企業型DCは、事業主が毎月決められた掛金を拠出し、その資金を個人が運用します。指定のファンドを介して運用益を増やすことで、60歳以降に受け取る年金額を増やしていきます。企業型DCは転職時にも個人の口座に紐づいて年金資産を移すことができます。さらに、事業主掛金が所定の上限を超えておらず、対象の制度があれば加入者掛金拠出制度(マッチング制度)で自身の給与から天引きで掛金を拠出することも可能になります。企業型DC制度を採用している企業で就業することも1つの選択肢です。

一方のiDeCoは、個人型の私的年金制度です。申し込み、掛金の拠出、運用方法の選択を自身で行い、掛金と運用益を老後に受け取ることができます。原則60歳まで引き出せないことに注意する必要がありますが、利益を受け取る時には税制上の優遇措置があり、それが魅力の1つとなっています。また、掛金は全額が所得控除になるというメリットもあり、国民年金や厚生年金と組み合わせることで、老後の生活をより豊かにすることができます。

老後も続けられる副業をする

続いて「収入額を増やすこと」についても考えてみましょう。近年では、副業が解禁されている企業も多くなってきました。本業で得た知識やスキルを利用して業務委託の仕事を始めたり、資格を取って新しい職種の仕事に挑戦したり等、副業の活かし方次第では本業でのスキルアップも可能です。ただし、副業はあくまで収入源を多様化させることが目的の1つであるため、主な収入源である本業が疎かになることのないようにしましょう。

30代といった早いうちに副業を始めて老後まで続けることができれば、それは老後の生きがいにもなります。特に、現役時代にバリバリ働いていた方が突然仕事を辞めると、空虚感に襲われることもあります。新たな収入源として、そして1つの生きがいとして、細く長く生涯にわたって続けたい副業をみつけられるとよいかもしれません。

まとめ

老後に必要な生活資金やその他の費用を念頭に、独身女性が将来の備えとして資金を貯める際には、預貯金だけでなく、低リスクの投資を活用した運用収益を行うことも選択肢の1つです。
人生100年時代といわれ何歳まで長生きするか分かりませんし、いつ病気になって資金が不足するか不安が尽きないものです。

老後の人生設計に向けた準備として、退職後ではなく、40代・50代のうちから資産形成を始めておくことが大切です。

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