毎年もらう住民税決定通知書って何?必要性やみるべきポイントを解説

住民税の決定通知書を会社から受け取った、あるいは郵送で届いたという方のなかには、住民税決定通知書がどういうものなのか分からず、放置してしまっている、ということも多いのではないでしょうか。この記事では、住民税決定通知書とはどのようなものなのか、目を通しておきたいポイントの説明や、よくある疑問にお答えします。

毎年もらう住民税決定通知書って何?必要性やみるべきポイントを解説

住民税決定通知書とは?

住民税決定通知書とは?

住民税決定通知書(住民税額決定通知書)とは、自治体が前年の所得に基づいて住民税を計算し、その年度の住民税がいくらに決まったのかを通知する書類です。

給与所得者の場合には、5月中旬頃から6月頃までの給与支給時期に、勤務先から住民税決定通知書が手渡されます。フリーランスや自営業などの場合には、6月の上旬頃には住民税決定通知書と納付書が各市区町村から送られてくるでしょう。

住民税と所得税の仕組み

所得税と住民税は、いずれも前年の1月1日から12月31日までの1年間の所得に基づいて課税される税金です。所得税は国税、住民税は地方税で、税金の納付先が異なります。

所得がある人は、確定申告や年末調整を行い所得税を納付します。この確定申告や年末調整の情報を元に算出されるのが住民税です。

住民税は所得割と均等割の2つによって決定されています。以下の2つをあわせたものが、その年の住民税額です。


・所得割
所得割は、前年の所得に応じて変動します。一般的な標準税率は、市町村民税および特別区民税が6%、道府県民税および都民税が4%の計10%です。そのため、所得の多い人が多くの住民税を納める仕組みとなっています。


・均等割
均等割とは、所得の大小に関係なく一律で負担する住民税です。市町村民税および特別区民税が3,500円/年、道府県民税および都民税が1,500円/年です。ただし、住んでいる都道府県や市区町村によっては、上記と異なる場合があるので注意しましょう。

住民税の普通徴収と特別徴収について

住民税の納付方法には普通徴収と特別徴収の2種類があります。


・普通徴収
普通徴収とは、住民税決定通知書とともに届く納付書の指示に従って行う納付方法です。年4回(6月、8月、10月、1月)の分割払い、一括払いのいずれかを選択し、金融機関やコンビニエンスストアなどの指定場所にて納付します。会社員(給与所得者)以外は、原則普通徴収です。


・特別徴収
特別徴収とは、給与から天引きされる納付方法です。普通徴収は年4回ですが、特別徴収は毎月給与から天引きされます。住民税は前年の所得が一定金額以上ある場合に課税されるため、前年の所得がない新入社員であれば、2年目の6月から天引きが始まります。

住民税決定通知書が必要になる場面

住民税は前年の所得に基づいて算出されるため、住民税決定通知書をみることで、前年度の年収を概算で確認することが可能です。そのため、以下のような場面で、公的機関が証明する年収の書類として利用できます。

住宅ローンを組む時

住宅ローンを組む時の必要書類として住民税決定通知書を求められることがあります。
夫婦の収入を合算したりペアローンを組む場合は、夫婦二人の住民税決定通知書が必要になります。

ふるさと納税の控除額を確認する時

ふるさと納税の寄附金控除が正しく受けられているかどうかは、住民税決定通知書で確認できます。

ワンストップ特例制度を利用した場合は、寄附金控除は全額住民税から控除されます。住民税決定通知書の「摘要」欄が以下の金額になっていれば正しく控除されていることになります。

住民税の寄附金控除額=ふるさと納税額ー2,000円

一方、確定申告をした場合は、寄附金控除は所得税と住民税のそれぞれから控除されます。所得税の控除は「(ふるさと納税額ー2,000円)×所得税の税率」で計算され、確定申告書の控え「還付される税金」欄に還付額が記載されます。住民税の控除は「ふるさと納税ー2,000円」となります。住民税決定通知書の寄附金控除額が以下の金額になっていれば正しく控除されていることになります。

住民税の寄附金控除額=ふるさと納税額ー2,000円ー所得控除額

【参考】総務省 ふるさと納税ポータルサイト「ふるさと納税のしくみ|税金の控除について」詳しくはこちら

住民税決定通知書は再発行できない

住民税決定通知書は、一度紛失すると再発行できません。課税内容を確認したい場合には、本人または同居親族が市役所の市民税課で確認するか、課税額や所得額の証明に利用できる課税証明書や所得証明書を発行するしかありません。

住民税決定通知書のみるべきポイント

住民税決定通知書のみるべきポイント

住民税決定通知書は、所得、所得控除、課税標準、税額の大きく4つで構成されています。
それぞれのみるべきポイントについて詳しく見ていきましょう。

1.所得欄:給与収入や給与所得を確認

住民税決定通知書のみるべきポイント

※総務省「表第三号様式別表」より執筆者作成

所得の項目では、前年1月1日から12月31日までの所得に関する情報を把握できます。

給与収入の欄に記載されているのは会社から支払われた給料(年収)です。給与所得の欄には、年収から給与所得控除を引いた金額が記載されます。給与所得控除の金額は年収に応じて決定されています。

給与収入以外の収入がある人はその他の所得の欄に金額が記載されます。給与所得とその他の所得を全て合算した額が「総所得金額①」です。

2.所得控除欄:前年の所得からの控除を確認

所得控除の項目では、所得に対しどのような所得控除が認められているかを把握できます。

誰でも受けられる基礎控除以外にも、社会保険料を支払っていれば社会保険料控除、条件を満たしている配偶者や扶養家族がいれば配偶者控除や扶養控除など全部で14種類の控除が所得控除として認められています。

年末調整や確定申告で控除を申告している場合は、該当する各所得控除の欄に控除金額が記載されているので誤りがないか確認しておきましょう。

全ての所得控除の合計金額は「所得控除合計②」で確認できます。

3.課税標準欄:住民税の課税対象を確認

課税標準の項目では、住民税を算出する基準となる課税所得を把握できます。

1と2で説明した「総所得金額①」から「所得控除合計②」を引いて算出したのが「総所得③」です。「総所得③」に山林所得や分離短期(長期)譲渡といったほかの所得を加えた合計金額が住民税の課税対象となります。

摘要欄:納税額からの控除を確認

摘要の項目では、主に住民税や所得税の納税額から控除される金額について把握できます。住宅ローン控除やふるさと納税を利用した時に記載されます。

4.税額欄:住民税額を確認

住民税決定通知書のみるべきポイント

※総務省「表第三号様式別表」より執筆者作成

税額の項目では、6月以降(本年度)に納める住民税の内訳を把握できます。
3で説明した課税所得に対して、住民税の税率をかけて求めたのが「税額控除前所得割額④」です。

ふるさと納税をした、住宅ローンを支払っているなどの場合「税額控除前所得割額④」から控除(「税額控除額⑤」)が受けられます。控除分を引いて最終的に算出された住民税の所得割分が「所得割額⑥」です。

「均等割額⑦」は原則一律(前述したとおり市町村民税および特別区民税が3,500円/年、都道府県民税および都民税が1,500円/年※自治体により変動あり)です。

控除対象であるにも関わらず、反映されていないということがないよう「税額控除額⑤」を確認しておきましょう。

※給与所得者以外の場合の住民税決定通知書例はこちら

住民税の所得控除の種類

住民税の所得控除の種類

所得控除とは、納税者の生活上の支出状況や扶養状況などの個人的事情を考慮して、所得金額から一定の金額を控除することで、税負担の調整を図るためのものです。
住民税の所得控除の種類には以下のものがあります。

・基礎控除
合計所得金額が2,500万円以下の納税義務者が対象で、最高43万円の控除を受けることができます。

・配偶者控除
生計を一にする総所得金額が48万円以下の配偶者がいる場合に受けることができる控除です。配偶者の年齢が70歳未満の場合は最高33万円、70歳以上の場合は最高38万円の控除が受けられます。

・配偶者特別控除
生計を一にする総所得金額が48万円超133万円未満の配偶者がいる場合が対象で、最高33万円の控除が受けられます。

・扶養控除
生計を一にする総所得金額が48万円以下の親族等(扶養親族)がいる場合が対象です。控除額は、扶養親族の年齢や同居の有無などにより次のように定められています。

区分 控除額
一般の扶養親族(16歳以上19歳未満、23歳以上70歳未満) 33万円
特定扶養親族(19歳以上23歳未満) 45万円
老人扶養親族(70歳以上)同居老親等以外 38万円
老人扶養親族(70歳以上)同居老親等 45万円

・障害者控除
障害者や障害者である同一生計配偶者または扶養親族がいる場合に控除の対象になります。控除額は、障害者が26万円、特別障害者が30万円、同居特別障害者が53万円です。

・寡婦控除
ひとり親控除に該当しない人で、次の1・2いずれかに当てはまる人(女性のみ)が対象で26万円が控除されます。

1.夫と離婚後婚姻しておらず扶養親族がいる人
2.夫と死別後婚姻していない、または夫の生死が明らかでない人

・ひとり親控除
婚姻していない人で、かつ生計を一にする総所得金額が48万円以下の子がいる場合に、30万円の控除を受けることができます。

・勤労学生控除
納税者が勤労学生である場合が対象で、控除額は26万円です。

・雑損控除
納税者またはその者と生計を一にする配偶者その他親族(総所得金額が48万円以下の者)が所有する資産について、災害・盗難・横領によって損害を受けた場合に対象となります。控除額は、以下の1・2のいずれか多い金額になります。

1.(災害損失の金額+災害関連支出の金額)−総所得金額×10%
2.災害関連支出の金額−5万円

・医療費控除
納税者やその者と生計を一にする配偶者その他親族のために支払った医療費のうち、総所得金額の5%(上限10万円)を控除した金額(上限200万円)が控除の対象になります。

・社会保険料控除
社会保険料を支払った金額は全額控除対象です。

・小規模企業共済等掛金控除
小規模企業共済掛金、確定拠出年金にかかる企業型年金加入者掛金、個人型年金加入者掛金などを支払った場合は、支払った掛金は全額控除対象です。

生命保険や個人年金保険、介護保険などの保険料を支払った場合に控除を受けることができます。契約した日によって新契約と旧契約に分かれており、控除の計算方法はそれぞれ以下のとおりです。

【新契約の場合の計算方法】
新契約は、2012年1月1日以後に締結した生命保険契約等が対象です。

控除の区分
・一般生命保険料
・介護医療保険料
・個人年金保険料

年間払込保険料額 控除額
12,000円以下 払込保険料全額
12,000円超
32,000円以下
(払込保険料×1/2)
+6,000円
32,000円超
56,000円以下
(払込保険料×1/4)
+14,000円
56,000円超 一律28,000円

【旧契約の場合の計算方法】
旧契約は、2011年12月31日以前に締結した生命保険契約等が対象です。

控除の区分
・一般生命保険料
・個人年金保険料

年間払込保険料額 控除額
15,000円以下 払込保険料全額
15,000円超
40,000円以下
(払込保険料×1/2)
+7,500円
40,000円超
70,000円以下
(払込保険料×1/4)
+17,500円
70,000万円超 一律35,000円

・地震保険料控除
地震保険料を支払った場合に、支払った保険料の金額の2分の1の金額(最高2万5,000円)が控除されます。

【参考】総務省「これまでの個人住民税の主な改正について(令和3年度第1回)」詳しくはこちら

住民税の税額控除の種類

税額控除とは、住宅ローンの支払いや、特定の団体に寄附をした場合などに税率を乗じた後の算出額から一定金額を差し引くものになります。
住民税の税額控除の種類は以下のとおりです。

・配当控除
内国法人から支払いを受ける配当金などで、確定申告において総合課税を選択した配当所得がある場合に控除を受けることができます。

・外国税額控除
外国において生じた所得で、その国の所得税や住民税に相当する税金を課税された場合に控除を受けることができます。

・寄附金税額控除
地方自治体や一定の団体などへ2,000円を超える寄附金を支払った場合に控除を受けることができます。

・調整控除
2007年度以降の個人住民税を対象に、人的控除額が所得税と住民税で異なる場合に住民税の税負担の増加を軽減するため所得割額から減額されるものです。

・住宅借入金等特別税額控除(住宅ローン控除)
所得税で住宅ローン控除の適用を受け、その年分の所得税額から控除しきれない場合には、翌年分の住民税から所得税の課税総所得金額等の5%(最高9万7,500円)を控除することができます。

まとめ

まとめ

住民税決定通知書はその年度に納める住民税がいくらなのかを通知する書類です。

確定申告の内容に基づいて住民税が決まりますが、控除が正確に反映されていない場合は無駄な税金を納めることになるため、住民税決定通知書の内容をきちんと確認しましょう。

また、紛失した場合は再発行できません。住宅ローンを検討している人は、申し込みの際に提出を求められることがあります。紛失しないよう注意しましょう。

ご留意事項
  • 本稿に掲載の情報は、ライフプランや資産形成等に関する情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の取得・勧誘を目的としたものではありません。
  • 本稿に掲載の情報は、執筆者の個人的見解であり、三菱UFJ信託銀行の見解を示すものではありません。
  • 本稿に掲載の情報は執筆時点のものです。また、本稿は執筆者が各種の信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性について執筆者及び三菱UFJ信託銀行が保証するものではありません。
  • 本稿に掲載の情報を利用したことにより発生するいかなる費用または損害等について、三菱UFJ信託銀行は一切責任を負いません。
  • 本稿に掲載の情報に関するご質問には執筆者及び三菱UFJ信託銀行はお答えできませんので、あらかじめご了承ください。

編集部おすすめ記事

この記事もおすすめ