【最新】厚生年金はいくらもらえる?受給額の計算方法や早見表ですぐチェック
自分が将来もらえる年金額がいくらかは、どうやったらわかるのでしょうか? 通知書などで調べることもできますが、計算方法や受給する条件を知っておくことで、もらえる額を増やす準備ができますし、もらい損ねるということも防げます。制度の内容は少し複雑ですが、老後資金の準備のためにも理解しておきましょう。

厚生年金の受給額はどうやって決まる?

厚生年金は会社員や公務員の方が加入する公的年金制度で、国民全員が加入する国民年金に上乗せされるものです。まず、国民年金の受給額から説明しましょう。
国民年金は40年間納付していれば満額の78万円
国民年金から受給できる年金(老齢基礎年金)の年額は、
780,900円(令和3年度)×保険料納付済月数÷480
で計算します(※免除期間があると計算方法が異なります)。
つまり保険料の納付月数に応じて受給額が決まる仕組みです。40年間 (480ヵ月) 、ずっと保険料を納付していた人は、満額の78万900円(2021年4月現在)を受け取ることができ、納付月数が短ければそれに応じて少なくなるという計算です。
厚生年金は平均標準報酬月額によって異なる
一方、厚生年金から受給できる年金(老齢厚生年金)の額は少し複雑で、次の計算式で算出します。
■平成15年4月以降についての計算式(年額)
平均標準報酬額×5,769÷1,000×被保険者期間の月数×スライド調整率
平均標準報酬月額とは、加入期間中の標準報酬月額と標準賞与額の総額を加入期間の月数で割ったものです。そのため、受給開始になるまで確定した数字はわかりません。大まかな概算を知りたいときには、今までの年収の平均を12で割ったもので考えてみてください。
平均標準報酬月額と加入期間から計算した厚生年金の金額は次の表の通りです。上記の通り、概算しか算出できませんので、あくまでも目安としてください。
厚生年金の金額の目安(年額)
加入年数 | 10万円 | 20万円 | 30万円 | 40万円 | 50万円 | 60万円 |
---|---|---|---|---|---|---|
1年 | 0.7万円 | 1.4万円 | 2.1万円 | 2.8万円 | 3.5万円 | 4.2万円 |
5年 | 3.5万円 | 6.9万円 | 10.4万円 | 13.8万円 | 17.3万円 | 20.8万円 |
10年 | 6.9万円 | 13.8万円 | 20.8万円 | 27.7万円 | 34.6万円 | 41.5万円 |
15年 | 10.4万円 | 20.8万円 | 31.2万円 | 41.5万円 | 51.9万円 | 62.3万円 |
20年 | 13.8万円 | 27.7万円 | 41.5万円 | 55.4万円 | 69.2万円 | 83.1万円 |
25年 | 17.3万円 | 34.6万円 | 51.9万円 | 69.2万円 | 86.5万円 | 103.8万円 |
30年 | 20.8万円 | 41.5万円 | 62.3万円 | 83.1万円 | 103.8万円 | 124.6万円 |
35年 | 24.2万円 | 48.5万円 | 72.7万円 | 96.9万円 | 121.1万円 | 145.4万円 |
40年 | 27.7万円 | 55.4万円 | 83.1万円 | 110.8万円 | 138.5万円 | 166.1万円 |
※表の「10万円〜60万円」は、平均報酬月額です。
※スライド調整率は考慮していません。
※平成15年4月以降のみで計算しています。
※乗率は昭和21年4月2日以降生まれの人の乗率を使用しています。
※標準報酬月額と標準賞与額について詳しくはこちら詳しくはこちら
実際にいくらもらえるの?
老齢基礎年金と老齢厚生年金の合計額がもらえる金額の目安になります。厚生年金に加入している期間は自動的に国民年金にも加入していることになります。
次の人がもらえる老齢年金の概算を計算してみましょう。
・厚生年金加入期間 20年間(240ヵ月)、平均標準報酬月額30万円
・厚生年金加入期間以外の国民年金加入期間 18年間(216ヵ月)
この場合、国民年金の加入期間は240ヵ月と216ヵ月の合計の456ヵ月となります。
老齢基礎年金 780,900円×(240+216)÷480 =741,855 円……①
老齢厚生年金 上記表より 約41.5万円……②
①+②=約115.7万円(年額)
115.6万円÷12ヶ月=約9.6万円(月額)
なお、実際に現在年金を受給している人の平均の月額は、会社員・公務員などの厚生年金の受給者で146,162円、自営業者など国民年金のみの受給者で50,875円となっています。
【参考】厚生労働省「令和元年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」詳しくはこちら
会社員だった期間が10年未満だと、厚生年金はもらえない?

老齢基礎年金は国民年金の加入期間が10年以上ある場合に、繰り上げ受給をしなかった場合、基本的に65歳から支給されるものです。では、会社員で厚生年金に加入していた期間が10年に満たなかった場合、老齢厚生年金はもらえないのでしょうか? 会社員だった期間に支払っていた厚生年金保険料は払い損になってしまうのでしょうか?
答えはNOです。厚生年金に加入していた期間(=会社員だった期間)が10年未満でも、その前後に国民年金に加入していて、加入期間が通算10年以上であれば老齢厚生年金も支払われます。
なお、国民年金の加入期間には、保険料が免除された期間も含めることができるので、何らかの理由で保険料を納められない場合には、必ず年金の窓口で相談するようにしてください。短い期間であっても納めた厚生年金の保険料を無駄にしないためには、加入期間が通算で10年間以上になるようにすることが最重要です。
自分の加入期間の調べ方
今までどのくらい年金に加入していたか定かではないという場合には、確認方法がいくつかあります。
・ねんきん定期便
毎年、誕生月に年金記録を記載した「ねんきん定期便」が、35歳・45歳・59歳の節目の年は封書で、それ以外の年はハガキで送られてきます。その中の「これまでの年金加入期間」で加入月数を確認することができます。
・ねんきんネット
日本年金機構による「ねんきんネット」では、パソコンやスマホから自分の年金の記録をいつでも確認することができます。利用に当たっては、利用登録が必要です。
【参考】ねんきんネット 詳しくはこちら
・年金事務所
各地に年金相談ができる年金事務所があります。年金加入記録の入手には基礎年金番号がわかるものと、本人確認書類が必要になります。予約が必要な場合もあるので、あらかじめ問い合わせをしてください。
【参考】日本年金機構「事業所検索」 詳しくはこちら
受給額を増やすには? 未納分の納付や繰下げの方法も

加入期間が10年以上あれば、老齢年金を受け取ることはできますが、将来受け取る年金額を少しでも多くしたいのであれば、保険料の納付月数を増やすことが大切です。
もし、国民年金の保険料に未納分があれば、支払い期限から2年以内であれば支払うことができます。また、本来は国民年金の加入期間は60歳までですが、65歳まで延長できる「任意加入制度」も活用できます。
毎月の受給額を増やすなら「繰下げ受給」という方法があります。老齢基礎年金や老齢厚生年金は、繰り上げ受給などをおこなっていない場合は65歳から受け取ることができますが、66歳以降70歳までの間で申し出た時から繰下げて請求することもでき、1ヵ月あたり0.7%が増額されます。
老齢年金の繰下げ受給の増額率(年額)
受給開始 | 65歳 | 66歳 | 67歳 | 68歳 | 69歳 | 70歳 |
---|---|---|---|---|---|---|
増額率 | 0% | 8.4% | 16.8% | 25.2% | 33.6% | 42% |
なお、老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方がある人は、どちらか片方だけを繰下げ受給することも可能です。
繰下げ受給をすれば毎月の受給額は増えますが、 存命期間によっては受取る総額はどちらが得になるかはわからない、という点には注意しましょう。
老後の備えにおすすめの方法

国民年金、厚生年金だけでは老後の生活費が不足しそうという場合には、他の手段で備えておくことも大切です。一般的な貯蓄や投資以外にも非課税制度など、税制上のメリットを国が制度として設定しているものがあります。
・国民年金基金
自営業など国民年金にしか加入していない人が国民年金の上乗せとして加入するものです。掛金は全額所得控除の対象です。
・iDeCo
個人型の確定拠出年金です。自営業の人も会社員の人も利用することができる制度です。掛金は全額所得控除の対象、運用益も非課税というメリットがあります。
そのほか、年金とはまた違う形ではありますが、資産づくりのための非課税制度である「つみたてNISA」も活用できます。
まとめ

老後のために、年金以外に2,000万円のお金が必要、ということが話題になりました。しかし、いくら必要なのかは一人ひとり異なります。一般論に惑わされることなく、自分にとって必要な金額を準備する最初の一歩として、公的年金の制度内容を理解し、どのくらいもらえるのかを試算してみることから始めてみましょう。
ご留意事項
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