定年後の「再雇用制度」とは?現役時代にこそ知っておくべき理由

いわゆる「老後資金2,000万円問題」の報道を受け、老後の生活資金確保のために、定年後も働き続けることを検討し始めた方も多いのではないでしょうか。今回は定年後の働き方として定着しつつある「再雇用」について、制度の概要や利用する際の注意点などを解説します。

定年後の「再雇用制度」とは?現役時代にこそ知っておくべき理由

定年後の再雇用制度が注目を集める理由とは?

定年後の再雇用制度が注目を集める理由とは?

そもそも、定年後の再雇用制度が広く知られるようになったきっかけは、2013年に厚生年金の受給開始年齢が60歳から65歳に引き上げられたことです。これにより、60歳で定年退職してしまうと、給与収入もなく、年金も支給されない期間が5年間も生じる可能性が出てきてしまったのです。

この問題を解決すべく、政府では「改正高年齢者雇用安定法」を施行、定年年齢を65歳未満としている企業に対して、希望者全員を65歳まで継続雇用すること(65歳定年)を義務付けました。ただし、この義務には経過措置が認められていて、実質的には65歳までの全員雇用が完全義務化されるのは2025年4月以降です。そのため、現状では65歳定年を採用する企業は全体の約17.2%にとどまっており、定年退職した後に再雇用する「継続雇用制度」を採用しているケースがほとんどです。

【参考】厚生労働省{令和元年「高年齢者の雇用状況」集計結果}詳しくはこちら

知らないとこんなに差がつく!?定年後再雇用制度

知らないとこんなに差がつく!?定年後再雇用制度

継続雇用制度には、大きく分けて次の2つがあります。自身の勤務している企業がどちらの制度を採用しているのか、就業規則等で確認しておきましょう。

1.定年後再雇用制度

定年を迎えた社員をいったん退職させ、その後に再度雇用する制度。定年後に新たな就職先を探すことなく、慣れ親しんだ職場環境で働くことができるというメリットがあります。「定年前ほどハードに働きたくはないが、無理のない範囲で働きたい」という人に向いています。なお、一度退職する形をとるので、その時点で退職金が支払われます。

2.勤務延長制度

定年年齢に達した社員をそのまま継続して雇用する制度です。社員にとって勤務延長制度のメリットは、労働時間や給与など、それまでと同じ条件で働き続けられること。ただし、退職金は延長期間が終了して退職するまでは支払われません。

現在日本で採用されている継続雇用制度としては、定年後再雇用制度を採用している企業が最も一般的で、厚生労働省が2017年に行った調査の結果によると、継続雇用制度を採用している企業の約72.2%が定年後再雇用制度を導入しています。ここからは、定年後再雇用制度にテーマを絞って、定年前後での就労条件の相違点や注意点を詳しく見ていきましょう。

【参考】厚生労働省「平成29年 就労条件総合調査」 詳しくはこちら

定年前と定年後の再雇用時の就労条件の違い

定年前と定年後の再雇用時の就労条件の違い

まず、定年後再雇用制度を活用した場合、定年前後で就労条件にはどのような変化が想定されるのでしょうか?
契約/雇用形態、業務内容、給与について一般的に想定される変化は次のとおりです。

契約/雇用形態

定年後再雇用の多くは契約期間1年の「有期雇用契約」で、1年ごとに労働継続の意思や健康状態などを確認した上で、条件を満たせば契約が更新されます。雇用形態としては、短時間勤務正社員、契約社員、パートタイマー、嘱託社員などが一般的で、中には通勤の負担を減らして働けるフレックスタイム制度や在宅勤務制度が利用できる場合もあります。

業務内容

定年後再雇用の場合、一般的には定年前とまったく異なる業務を担当するケースは少ないと言われています。ただし、企業側に「引続き定年前と全く同じ業務をさせなくてはならない」という義務があるわけではないので、場合によっては、業務範囲や業務上の権限の範囲が変更されることも考えられます

給与

残念ながら、定年後の再雇用の場合、定年前の給与水準を保てるケースは多くありません。2015年に労働政策研究・研修機構が全国の約6,200社を対象に行った調査の結果、社員1,000人規模の大企業では、60歳直前(定年前)の賃金を100とした場合の61歳時点の賃金が「6割未満」になる企業が全体の25.8%に上ることが明らかに。さらに、日本経済新聞が2018年12月に行った「社長100人」アンケートでも、継続雇用した社員の給与は、定年前の賃金と比べて「7割」「5割」がともに18.6%と、最も多い結果となっています。

【参考】労務政策研究・研修機構「高年齢者の雇用に関する調査(企業調査)」詳しくはこちら

給与が定年前に比べて大幅に下がってしまった場合は、生活費が給与だけでは賄えなくなり、老後資金として溜めていた貯金を取り崩さなくては生活できない、あるいは大幅に生活水準を下げなくてはならなくなる恐れも出てきます。そうならないために、ぜひ活用したいのが高年齢雇用継続給付制度です。

下がった給与をカバーできるかも!?高年齢雇用継続給付制度とは?

下がった給与をカバーできるかも!?高年齢雇用継続給付制度とは?

高年齢雇用継続給付制度とは、定年退職後に再雇用された場合の給与が定年時(60歳時点)より大幅に減ってしまった場合に、申請すれば最高で毎月の給与の最大15%が給付される制度です。給付対象期間は、対象となった月(60歳以降)~65歳の誕生月まで。通常は本人に代わって事業主側が申請し、2か月に1度、本人の口座に振り込まれることになります。ただし、受給には主に次の要件を満たすことが必要です。

<高年齢雇用継続給付の受給要件>
・雇用保険の被保険者として雇用されていた期間が5年以上あること
・60歳以上65歳未満の被保険者であること
・60歳以降の給与が、60歳時点の給与の75%未満であること

給与減だけじゃない!定年後再雇用でトラブルを避けるには?

もちろん定年後の再雇用では、給与の低下だけでなく、定年前には予想もできなかった問題が起きることがあります。
たとえば業務内容が定年前と全く変更されてしまい、自分の経験や知識を活用できなくなることや、勤務地が自宅から遠く通勤が困難な場所になってしまうこと、業務内容や量はまったく変わらないのに給与だけが下げられてしまったりすることも考えられます。もしくは、再雇用後はのんびりマイペースで働きたいと思っていたのに、これまで以上に重要な役職を任されてしまったり、社員対象の行事や研修に参加を強いられてしまったりするケースもあるでしょう。

こういったトラブルを事前に防ぐためには、定年年齢に達する前に再雇用に当たって会社側の担当者としっかり話し合いの場をもつことが何よりも重要です。そして自分の希望や意志、ゆずれない条件等を口頭だけでなく文書でも伝え、最終的に合意に至った契約内容を必ず文書で残しておくようにしてください。

また、再雇用と年金支給額の関係にも注意が必要です。再雇用後に特別支給の老齢厚生年金(在職老齢年金)を受けながら、フルタイムで働き続けた場合、毎月の給与収入と年金支給額が28万円(65歳未満の場合)を超えると、年金の支給が減額されたり支給停止になったりするおそれがあります。

さらに特別支給の老齢厚生年金の支給を受けながら同時に高年齢雇用継続給付の支給を受けている期間についても、年金の一部が支給停止となる場合があります。定年後に特別支給の老齢厚生年金の支給を受けながら働き続ける予定の人は、年金事務所などに確認しておくと安心でしょう。

1日も早く始めよう「定年後の人生設計」

さらに、定年後の再雇用では、家族との関係も念頭に置いておかねばなりません。自分はまだまだ現役で働きたい気持ちが強くても、家族がそれを望まないケースや、親の介護などで働けないケースもあるでしょう。
いざ定年となってから、自分と家族の方針の違いに悩まずに済むよう、定年後の暮らし方について家族で話し合い、将来の生活を充実させるために1日も早く準備を始めることが大切です。
ただし、近年は年金や雇用を取り巻く法律や規制の改正が目まぐるしく、最新情報をキャッチアップしていくのは容易なことではありません。疑問や不安は独力で解決しようとせず、ファイナンシャルプランナーや社会保険労務士など身近な専門家のサポートを上手に活用し、将来に備えることをおすすめします。

【参考】厚生労働省「高年齢者の雇用」詳しくはこちら
【参考】厚生労働省「高年齢者の雇用・就業の現状と課題」詳しくはこちら
【参考】厚生労働省「Q&A~高年齢雇用継続給付」詳しくはこちら
【参考】日本年金機構「特別支給の老齢厚生年金について」詳しくはこちら
【参考】日本経済新聞(2019年5月10日)詳しくはこちら

まとめ

人生100年時代といわれる高齢化社会。従来のように「60歳で定年退職し、余生は隠居生活」というライフプランはすでに過去のものとなりつつあります。経済的な理由からだけでなく「健康な限り生きがいをもって働きたい」「社会と関わりを持ち続けていたい」という理由から、定年後再雇用の道を選ぶ人も多いようです。しかし、定年後の再雇用は決して簡単なことではなく、就労条件で合意に至らずに再雇用が実現しなかったり、再雇用されても賃金の低下などが不満で退職してしまったりする例も少なくありません。後になって後悔しないためにも、再雇用を考えているなら、勤務先の就業規則を確認したり、実際に定年後の再雇用で働いている先輩の話を聞くなどして、早め早めの準備を心がけたいものです。

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