老後の生活費はいくら必要?一人暮らしや夫婦の内訳と老後資金の準備方法を紹介!

老後の生活費は、将来にむけた資金計画を立てるうえで重要です。この記事では、老後生活に必要な資金の内訳や費用の相場を紹介します。老後必要な資金が生活水準や資産形成方法など、人によってさまざまです。ゆとりある暮らしをする場合や長生きした場合を想定して、余裕をもった資金計画を立てていきましょう。

老後の生活費はいくら必要?一人暮らしや夫婦の内訳と老後資金の準備方法を紹介!

老後に平均的な生活をするための生活費

老後に平均的な生活をするための生活費

定年前の今と老後とでは、どのように生活費が変化するのでしょうか。生活費の変化は、貯金などの備えを考える時に確認しておきたいポイントです。
総務省統計局のデータでは、令和4年度における老後に必要な1ヶ月あたりの生活費は、単身世帯で14.9万円、二人以上世帯で24.9万円となっています。

これらの費用は貯蓄を切り崩したり、公的年金や退職金から捻出したりする必要があります。預貯金の少ない方や将来の備えに不安な方は、NISAやiDeCoなどの制度を活用して資産運用を始めることもおすすめです。

【参考】総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)2022年(令和4年)」詳しくはこちら

老後のゆとりある生活をするための生活費

一方、趣味や旅行を楽しみ、老後にゆとりをもって生活したい人もいるでしょう。毎月の日常生活費も重要ですが、今後の理想のライフスタイルを叶えようとすると資金が不足することもあります。

何にお金を使うかによって必要な金額は大きく異なりますが、生命保険文化センターによる「生活保障に関する調査」では、老後にゆとりのある生活を送るために必要な1ヶ月あたりの生活費は、約38.0万円となっています。

【参考】生命保険文化センター「2022(令和4)年度生活保障に関する調査 P.109・P.111」詳しくはこちら

老後の生活費の内訳の定年前との比較

老後の生活費の内訳の定年前との比較

老後の生活費は、月14万円〜25万円程度が目安です。続いて、具体的に「老後の主な支出項目と金額」をチェックしていきましょう。ほとんどの項目が共通して減少している一方で、医療費は1~2割近く増加しています。
それぞれの支出項目で、定年前後で変化するポイントを紹介します。

生活費の変化(単身世帯)

支出項目 35〜59歳 65歳以上
食費 4万2,899円 3万8,729円
住居費 3万966円 1万3,530円
水道光熱費 1万2,352円 1万5,014円
家具・家事用品費 5,359円 6,284円
被服履物費 5,722円 3,697円
医療費 7,150円 8,358円
交通・通信費 2万4,621円 1万5,511円
教育費 0円 0円
教養娯楽費 1万9,790円 1万5,501円
その他支出 3万7,644円 3万2,648円
合計 18万6,503円 14万9,208円

※小数点以下を四捨五入

生活費の変化(二人以上世帯)

支出項目 50〜59歳 65歳以上
食費 8万3,962円 7万2,805円
住居費 1万9,481円 1万6,687円
水道光熱費 2万6,109円 2万4,531円
家具・家事用品費 1万3,490円 1万1,070円
被服履物費 1万2,207円 5,798円
医療費 1万4,315円 1万6,280円
交通・通信費 5万6,663円 3万31円
教育費 2万9,113円 388円
教養娯楽費 3万160円 2万2,184円
その他支出 7万4,464円 4万9,728円
合計 35万9,963円 24万9,501円

※統計データの関係で、定年前単身世帯は35~59歳、二人以上世帯は50~59歳の数字になっています。
※小数点以下を四捨五入

【参考】総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)2022年(令和4年)」詳しくはこちら

老後の主な生活費①食費

食費は、生活費に占める割合が高い項目です。
二人以上の世帯の食費を年齢で比較すると、50~59歳の世代の食費が8万3,962円なのに対し、65歳以上では7万2,805円と約1万円下がっています。この点に影響しているのが外食費です。
老後は仕事の付き合いなどの会食の機会が減り、健康への意識が高くなることで、外食は自然と減っていくようです。男性や女性、人付き合いの多さなど個人によって違いはあるかもしれませんが、交際費も老後をきっかけに変動することが多い項目です。

老後の主な生活費②住居費

現在、ローンの支払いなどを行っている方には想像がつきにくいかもしれませんが、老後の住居費はそこまで高くありません。これは、住宅ローンの返済さえ終われば住居費がほとんどかからないためです。
もし、持ち家から住み替える場合、高齢者施設では月に約15万円、田舎のワンルームでは約3~4万円と増加するので、住み替えについてはライフプランに合わせてよく検討しましょう。

老後の主な生活費③水道光熱費

老後の平均的な水道光熱費は、単身者の場合で約1万5,014円、二人以上世帯の場合で約2万4,531円です。二人以上世帯は、全年齢平均と老後世帯とで総額があまり変わっていません。
例えば、夫婦のどちらかが専業主婦(夫)の場合、定年退職して仕事がなくなった夫(妻)が自宅にいる時間が増えたとしても、水道光熱費にはそれほど影響しないようです。

一方、単身世帯の場合、老後の水道光熱費の総額が2割程度膨らんでおり、内訳では電気代が最も増えています。今まで自宅に誰もいなかった時間を老後は自宅で過ごすため、電気の消費量が増えたと考えられます。

65~85歳までの20年間で考えると、二人以上世帯にかかる水道光熱費は約49万円にものぼります。そのため、契約プランの変更や使い方の工夫、省エネ家電への買い替えなどの策で水道光熱費を節約することも重要でしょう。

老後の主な生活費④衣服や家具・家事用品費

老後の被服履物費や、家具・家事用品関連の消耗品に使う平均額は、単身者の場合で約1万円、二人以上世帯の場合で約1万7,000円です。

老後を迎えると、服や家具・家事用品にかける金額が減少する傾向があります。細かくみると、家具・家事用品は単身世帯・二人以上世帯ともに横ばいとなっています。
一方、月数千円を占めている衣類は、1~6割程度減るというデータがあります。新しい服にかける年間の費用をあらかじめ決定するなどの工夫をすることで、余計な出費を避けることができるでしょう。

老後の主な生活費⑤医療費

老後の生活費の内訳の定年前との比較

老後の平均的な医療費は、単身者で約8,000円、二人以上世帯で約1万6,000円です。医療費の内訳で多いのは、服用薬などの医薬品と治療・診療などの保健医療サービスです。

年齢を重ねると身体に不調が生じたり、病気にかかったりするケースも多くなるので、どうしても費用が膨らんでしまいます。しかし、75歳以上は自己負担が1割または2割で済むため、単身世帯で1,000円程度、二人以上世帯で2,000円程度の増加と、そこまで大幅な増加にはなっていません。(75歳以上でも現役並み所得者は3割負担)

医療費は極力抑えたいものですが、それには健康であることと早期発見・早期治療が大切です。健康診断やがん検診などを受けておけば、たとえ病気があっても早期に治療を始めることができ、医療費を抑えることにつながります。

生活費以外に老後の必要なお金

上記の生活費以外にも介護費用や住宅の修善・リフォーム、子供や孫の結婚・住宅購入の資金援助など、さまざまな費用がかかることを考慮しておく必要があります。
ここでは、生活費以外に必要なお金についてみていきましょう。

介護費用

生命保険文化センターの調査によると、介護に要した費用のうち一時費用(住宅改造や介護用ベットの購入など)は平均74万円、月々の費用が1ヶ月あたり平均8.3万円、そして介護期間は平均61.1ヶ月(5年1ヶ月)となっています。

この結果を前提に計算をすると、介護費用の合計は平均580万円にのぼります。

【参考】生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」詳しくはこちら

住宅の修繕費用・リフォーム費用

住宅を購入した場合は、定期的なメンテナンス費用や、場合によってはバリアフリーなどのリフォーム費用がかかってきます。
リフォーム費用は工事の内容によって大きく変わりますが「住宅リフォームに関する 消費者(検討者・実施者)実態調査(2022年度)」によると、戸建てで平均472万、マンションで279万となっています。また、築後年数別でみると、10年以上〜15年未満で584万円と最も高くなっています。

【参考】一般社団法人住宅リフォーム推進協議会「2022年度住宅リフォームに関する消費者(検討者・実施者)実態調査」詳しくはこちら

お墓の費用

お墓にかかる費用は、総額で平均約100万円〜350万円ほどです。一般的にお墓の購入にかかる費用として「墓石代」「土地利用料」「その他諸経費」などがあります。
お墓は、使用する墓石の量や所有権を保持する区画面積によって価格が変わります。

葬儀の費用

葬儀にかかる費用は、大きく「基本料金」「飲食費」「返礼品」の3つに分けられ、総額で平均約100万円〜200万円ほどとなっています。葬儀の形式や規模、地方の慣習などで大きく変わります。

子供や孫への資金

子供の結婚や住宅資金、孫への教育資金などの援助をする場合もあるでしょう。子供や孫のライフイベントに合わせて、急な出費が発生する可能性も考えておく必要があります。
年間110万円を超える資金援助は、贈与税がかかるため注意が必要です。住宅資金や教育資金の一括贈与などは非課税になる制度をうまく利用しましょう。

まとめ

まとめ

老後の生活費は、単身者でも15万円弱が必要であり、生活水準や老後の寿命によって年金だけでは賄いきれない可能性があります。年金では生活費を賄いきれない場合は、今の生活を見直すことや老後に備えて貯金をしていく、定年後もできるだけ長く働いて収入を確保するなどの対策が必要になります。
まずは自分自身の財産と老後の収入・支出などを把握し、老後に必要となる金額の見積もりから始めましょう。

ご留意事項
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