介護費用はいくらかかる?介護施設による費用の違いや負担軽減方法を解説

介護費用は、利用する介護施設や介護期間などによって大きく違いがあります。在宅介護の場合と老人ホームに入居した場合の費用の目安、そして介護費用を抑えるコツも併せて紹介します。介護にかかる費用を想定しておくことで、資金の準備ができたり、負担を軽減することにつながるでしょう。

介護費用はいくらかかる?介護施設による費用の違いや負担軽減方法を解説

介護にかかる費用の平均

介護にかかる費用の平均

介護にかかる費用には、介護施設利用料や在宅介護サービス利用料、介護のために自宅をリフォームする費用、介護用ベッドの購入、おむつ代や介護食代など、さまざまなものがあります。

生命保険文化センターによると、自宅での介護の環境を整えるための一時的な費用(自宅のリフォーム費用、介護用ベッドの購入など)の平均は74万円です。要介護度などで変わってきますが、月々に必要な介護費用は平均8万3,000円となっています。
個人差はありますが、介護を始めてからの期間は平均5年1ヶ月ですので、総額で平均580万円以上かかる計算となります。

【参考】(公財)生命保険文化センター「2021(令和3)年度生命保険に関する全国実態調査(速報版)」詳しくはこちら

介護費用が増えるポイント

介護費用が増えるポイント

上記で説明したとおり介護費用にはさまざまなものがありますが、どのような部分で介護費用が増えていくのでしょうか。

介護期間による介護費用の違い

前述のとおり介護期間の平均は5年1ヶ月ですが、そのなかでも4年以上介護をする割合が約50%を占めており、介護期間が10年以上続くケースは17%ほどあります。
介護期間が長くなれば、もちろん費用の総額も増えていきます。介護費用の月々の平均額である8万3,000円を基準に、10年間の介護費用を計算した場合は総額で約1,000万円にかかることになります。
介護の期間は人によって違いますが、介護資金について考える時は長期の介護も想定しておきましょう。

在宅介護か施設介護かによる介護費用の違い

介護が必要になった場合の介護方法は、自宅を中心に介護を行う「在宅介護」と有料老人ホーム等の施設に入居する「施設介護」の2つに大きく分けることができます。
「在宅介護」と「施設介護」のどちらを選ぶかによって、月々の介護費用は大きく変わります。

生命保険文化センターによると、在宅介護にかかる費用の平均は月々約5万円となっています。それに対して、施設介護にかかる費用の平均は月々約12万円となっています。施設に入居して介護を受ける場合は、さまざまな支援を受けられるメリットもありますが、在宅介護よりも費用が多くかかります。

また、その時々の介護の度合いや利用する介護サービス、入居する施設によってもかかる費用は変わってくるので、自分たちの状況を考慮しながら検討する必要があります。

【参考】(公財)生命保険文化センター「2021(令和3)年度生命保険に関する全国実態調査(速報版)」詳しくはこちら

施設サービスの種類による介護費用の違い

介護費用が増えるポイント

老人ホームなど高齢者向けの施設に入居して、介護を受けた場合の費用の違いについてみていきましょう。高齢者向けの施設には、その運営主体やサービス内容などによって、さまざまな種類があります。ここでは、代表的な例として「有料老人ホーム」「サービス付き高齢者向け住宅」「特別養護老人ホーム」の概要と費用の相場を紹介します。

① 有料老人ホーム(民間施設) 
利用料の相場:約24万円/月、入居時費用の相場:約640万円
有料老人ホームは、要介護度に応じて定額で介護サービスが受けられる民間の施設です。基本的には、要介護度に関わらず入居することができます。
月ごとの利用料のほかに、入居一時金が必要です。

② サービス付き高齢者向け住宅(民間施設) 
利用料の相場:約17万円/月、入居時費用の相場:約21万円。
サービス付き高齢者向け住宅は、高齢者向けの賃貸住宅で、サ高住と呼ばれることもあります。基本的には、要介護度に関わらず入居が可能です。個別にケアプランを作成して、必要な介護を受けることができます。安否確認や食事の提供も受けられます。
賃貸住宅なので入居時にかかる費用は基本的には、敷金と礼金のみであり、入居一時金が不要なため、安価に抑えられることが多いです。

③ 特別養護老人ホーム(公的施設) 
利用料の目安(要介護度5・ユニット型個室の場合):14万円/月、入居時費用なし。
特別養護老人ホームは、主に地方自治体や社会福祉法人が運営する公的施設です。24時間体制で介護が受けられますが、要介護3以上の人しか入居できません。
入居時に費用がかからず、所得に応じた利用料減免制度もあるため人気が高く、スムーズに入居できないケースも多いです。

今回紹介した費用の相場はあくまでも1つの目安であり、実際には要介護度や提供している介護サービスの内容によって、費用の額や内訳は異なります。

【参考】LIFULL介護「老人ホームの費用相場」詳しくはこちら
【参考】厚生労働省「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の1ヶ月の自己負担の目安」詳しくはこちら

一時的な介護費用の違い

施設介護の場合は必要ありませんが、在宅介護の場合は毎月かかる介護費用のほかに、一時的な介護費用がかかります。自宅のリフォーム費用、介護用ベッドの購入など介護の環境を整えるための一時的な費用も考慮しておく必要があります。
前述のとおり、自宅での介護の環境を整えるための一時的な費用は平均74万円となっています。

介護費用の負担を減らす制度

介護費用の負担を減らす制度

在宅の場合と施設入居の場合、それぞれの介護にかかる平均費用についてみてきました。「在宅でもそんなにかかるのか」と驚いた人もいるかもしれませんが、さまざまな制度を活用することで介護の質を落とさずに費用を節約することも可能です。

ここでは、介護費用の負担を減らすための制度について紹介します。

公的介護保険

公的介護保険は、市町村が運営主体となって介護を社会全体で支える仕組みです。
介護サービスを受けるには要介護認定を受ける必要があり、介護の度合いに応じて「要支援1~要支援2」「要介護1~要介護5」の7段階に分けられています。
要支援・要介護の認定を受けると、介護サービスの利用料などに公的介護保険が適用されます。自己負担割合は本人の合計所得金額、同一世帯の65歳以上の人数と合計所得に応じて1~3割となっています。
在宅および施設サービスの利用料などは、公的介護保険の適用対象です。しかし、食費や通所介護における交通費、日常生活費(日用品やおむつ代など)などは全額自己負担となります。
また、在宅サービス・地域密着型サービスについては、要介護度に応じて支給限度額が設けられています。限度額を超えてサービスを利用した場合、超えた分は全額自己負担になります。居宅サービスの年間利用上限額は要介護によって異なり、次のとおりになります。

要介護度 1ヵ月あたりの支給限度額
要支援1 50,320円
要支援2 105,310円
要介護1 167,650円
要介護2 197,050円
要介護3 270,480円
要介護4 309,380円
要介護5 362,170円

※厚生労働省「サービスにかかる利用料」を基にFPサテライトにて作成 詳しくはこちら

高額介護合算療養費制度

高額介護合算療養費制度とは、医療保険と介護保険のどちらも利用する世帯が、高額な自己負担になる場合の負担を軽減するしくみです。1年間(8月1日~翌年7月31日)にかかった医療保険と介護保険の自己負担を合算し限度額を超えた場合に、その超えた金額を払い戻すことで負担を軽減することができます。
限度額は、以下のとおり要介護者の年齢と収入によって細かく設定されています。

高額介護合算療養費制度における自己負担額

区分 負担額上限
(70歳未満)
負担額上限
(70歳以上)
課税所得690万円以上
(年収およそ1,160万円以上)
212万円 212万円
課税所得380万円~690万円未満
(年収およそ770万円~1,160万円未満)
141万円 141万円
課税所得145万円~380万円未満
(年収およそ370~770万円未満)
67万円 67万円
課税所得145万円未満
(年収およそ156~370万円未満)
60万円 56万円
市町村民税非課税世帯 34万円 31万円
市町村民税非課税世帯
かつ年金収入80万円以下など
34万円 19万円(※1)

※1 同一世帯に介護サービスの利用者が複数いる場合は31万円
※厚生労働省「サービスにかかる利用料」を基にFPサテライトにて作成 詳しくはこちら

高額介護サービス費制度

高額介護サービス費制度は、介護保険を利用して介護サービスを受けた方で、さらに自己負担額が一定の上限を超えた場合、申請をすると超過分が「高額介護サービス費」として払い戻される制度です。負担の上限額は所得によって次の5段階に分かれています。対象者には定期的に自治体から通知が来ることになっているので、忘れないように申請しましょう。

高額介護サービス費の対象となるのは、保険給付分のみで、福祉用具購入費や住宅改修の自己負担額、施設入所中の食費や居住費等の利用料は含まれません。同じ世帯にサービス利用者が複数いる場合は、全員の利用者負担額を合計します。「高額介護サービス費」の給付を受けるには、市区町村への申請が必要です。

高額介護サービス費制度 利用者負担の上限

対象世帯 区分 負担上限額(月)
市町村民税課税世帯 課税所得690万円(年収約1,160万円) 140,100円
(世帯)
市町村民税課税世帯 課税所得380万円(年収約770万円)~課税所得690万円(年収約1,160万円)未満 93,000円
(世帯)
市町村民税課税世帯 市町村民税課税~課税所得380万円(年収約770万円)未満 44,400円
(世帯)
市町村民税非課税世帯 合計所得金額と課税年金収入額の合計が80万円を超える方 24,600円
(世帯)
市町村民税非課税世帯 ・合計所得金額と課税年金収入額の合計が80万円以下の方
・老齢福祉年金を受給している方
24,600円
(世帯)
15,000円
(個人)
生活保護受給者 15,000円
(世帯)

※個人=介護サービスを利用した本人のこと
※厚生労働省「サービスにかかる利用料」を基にFPサテライトにて作成 詳しくはこちら

民間の介護保険

民間の介護保険に加入することで、介護費用に備えることができます。
ただ、すべての介護サービスが公的介護保険の対象となるわけではありません。要介護度等に応じた限度額を超過した分や対象外の食費や通所介護における交通費、日常生活費(日用品やおむつ代など)などは全額自己負担となるので、注意が必要です。

公的介護保険と違い、民間の介護保険は現金として受け取ることができるため、自己負担部分はもちろん、介護費用以外にあてることも可能です。
しかし、保障内容に応じた保険料の負担が増えることや、給付を受けるための給付条件を満たす必要があります。給付条件は各保険会社によって変わりますが、要介護状態になっても条件を満たさないと給付金は受け取ることができません。

民間介護保険の加入は必ず必要なことではありませんが、介護が必要になった時に経済的に安心することができます。まずは、ご自身の預貯金や受けたい介護サービスが公的介護保険や公的医療保険で補える範囲なのかを確認し、補えない場合は必要な期間や内容を考えたうえで民間の保険を検討しましょう。

特定入所者介護サービス費の給付

特定入所者介護サービス費の給付制度は、所得や資産等が一定の基準以下だった場合に介護施設などにおける食費・居住費の負担を軽くする制度です。
介護施設に入所して介護を受ける場合、介護サービス費を1~3割負担する必要があります。それに加えて、施設サービスを利用した時の食費・居住費(滞在費)は原則として全額自己負担となっています。
お住まいの市区町村への申請することで、所得に応じた自己負担限度額を超えた分が特定入所者介護サービス費として介護保険から給付されます。

世帯分離をする

世帯分離とは、住民票に登録されている世帯を2つ以上に分けることです。例えば、親とその子供夫婦が同じ世帯に住んでいる場合は、親を1世帯、子供夫婦1世帯の計2世帯に分離することができます。分離することによって、親世帯の所得が下がると、それに応じて「高額介護サービス費制度」で定められた自己負担の上限額が下がるので、より多くの払い戻しを受けることができるようになり、結果として介護費用を抑えることができます。

介護負担が大きくなる前に

介護負担が大きくなる前に

介護問題というと経済的な負担がクローズアップされがちですが、経済的な負担を軽減するだけでは、問題は解決しません。特に在宅介護の場合は経済的な負担だけでなく、介護をする側の体力的・精神的な負担についても十分注意する必要があります。
例えば、現役世代の介護者が介護による疲れやストレスのために仕事を続けられなくなってしまうと、収入が減り経済的にますます厳しい状態に陥ってしまう可能性もあります。
また、介護者が過労で倒れたり、体調を崩してしまったりすると、介護の担い手がいなくなってしまうおそれもあります。
以下では、介護負担が大きくなる前にできることを紹介していきます。

地域包括支援センターに相談する

地域包括支援センターは、高齢者の暮らしを地域でサポートするための拠点施設です。各センターでは社会福祉士、保健師、主任ケアマネージャーが介護に関わるあらゆる相談に対応、地域に住む高齢者やその介護に携わっている人たちをつなぐ役割を果たしています。もちろん、介護費用についての相談にも応じてくれるので、少しでも費用を抑えたい人や費用負担に不安がある人は、一度足を運んでみてください。

早めに要介護認定を受ける

介護の必要性を感じたら、早めに要介護認定を受けましょう。要介護認定を受けると、介護保険で住宅の改築費などが補えるので、介護のための一時的な支出を抑えることができます。改築をしてしまった後で、要介護認定を受けた場合は介護保険で改築費を補うことができなくなります。

介護保険サービスを利用する

介護負担が大きくなる前に

介護破綻を防ぐための手段の1つとして「レスパイトケア」と呼ばれるサービスがあります。レスパイト(respite)とは「小休止」や「一時中断」を意味する英語で、レスパイトケアとは、デイサービスやショートステイなどの介護保険サービスを利用して、介護者に一時的な休み時間を与えることです。これらのサービスをうまく利用して仕事との両立を実現したり、たまには泊りがけの旅行でリフレッシュしたりすることも、介護者の心身の健康や社会生活の維持のために欠かせないことです。

目先の支出ばかりにとらわれず「どうすれば介護される側・する側双方の負担を減らしつつ、質のよい介護を続けられるのか」という視点で、それぞれの家庭の事情に適した介護のあり方を考えるようにしましょう。

まとめ

まとめ

在宅介護では月に平均5万円、有料老人ホームに入居した場合は平均約24万円の費用がかかります。少しでも経済的な負担を減らしたい場合は「高額介護サービス費制度」など、介護費用を抑えるために有効な制度や方法について地域包括支援センターに相談してみましょう。
また、介護者の心身の健康を守るために、デイケアやショートステイなどのレスパイトケアを上手に活用し、介護を受ける側・する側双方の負担を可能な限り減らす努力も欠かせません。

言うまでもなく、介護問題は誰の身にも起こりうることです。費用の心配なく介護をしたり受けたりできるように、若いうちから老後資金の一部として介護費用を貯蓄しておきましょう。

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