介護費用はいくらかかる?介護費用を上手に節約するコツも紹介
誰もが漠然とした不安をいだいている介護問題。家族や自分が要介護になった場合、どのぐらいの経済的負担が発生するのでしょうか? 在宅介護の場合と老人ホームに入居した場合の費用の目安、そして介護費用を抑えるコツも併せて紹介します。

在宅介護にかかる費用は平均月5万円
まずは、在宅で介護を行った場合にかかる費用についてみてみましょう。在宅介護にかかる費用は、大きく分けて介護サービス利用にかかる費用(訪問ヘルパーやデイサービスの利用など介護保険による介護サービスの利用にかかる費用)と、介護サービス以外の費用(紙おむつ代や医療費など)に分けられます。2016年に公益財団法人家計経済研究所が行った調査によると、在宅介護にかかる費用の平均は、介護サービスの費用の平均は1万6,000円、介護サービス以外の費用は平均3万4,000円、合計5万円でした。要介護度が上がるにつれて費用も高額になる傾向にあり、最も要介護度が高い「要介護5」の人にかかる在宅介護の費用の平均額は月に7万4,000円に上っています。
要介護度別・在宅介護費用の平均額
要介護度 | 在宅介護費用の平均/月 |
---|---|
要介護1 | 3万3,000円(介護サービス費用:7,000円、介護サービス以外の費用:2万6,000円) |
要介護2 | 4万4,000円(介護サービス費用:1万4,000円、介護サービス以外の費用:3万円) |
要介護3 | 6万円 (介護サービス費用:2万5,000円、介護サービス以外の費用:3万5,000円) |
要介護4 | 5万9,000円(介護サービス費用:1万7,000円、介護サービス以外の費用:4万2,000円) |
要介護5 | 7万4,000円(介護サービス費用:2万1,000円、介護サービス以外の費用:5万3,000円) |
【参考】公益財団法人家計経済研究所「在宅介護のお金と負担2016」 詳しくはこちら
さらに、在宅介護の場合は、毎月かかる介護費用のほかに、介護のための一時的な費用も考慮しておく必要があります。2018年に公益財団法人生命保険文化センターが行った調査では、介護用ベッドや住宅リフォームなど介護のための一時的な費用が平均で69万円に上っています。
【参考】「生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」/平成30年度」 詳しくはこちら
有料老人ホームに入ると、月に平均約22万円が必要

続いて、老人ホームなど高齢者向けの施設に入居して介護を受けた場合の費用について見ていきましょう。高齢者向けの施設には、その運営主体やサービス内容などによって、さまざまな種類があります。ここでは、代表的な例として「有料老人ホーム」、「サービス付き高齢者向け住宅」、「特別養護老人ホーム」の概要と費用の相場を紹介します。
① 有料老人ホーム(民間施設)
利用料の相場:約22万円/月、入居時費用の相場:約510万円
要介護度に応じて定額で介護サービスが受けられる民間の施設で、基本的には要介護度に関わらず入居することができる。月ごとの利用料のほかに、入居一時金が必要。
② サービス付き高齢者向け住宅(民間施設)
利用料の相場:約16万円/月、入居時費用の相場:約21万円。
高齢者向けの賃貸住宅で基本的には要介護度に関わらず入居が可能。個別にケアプランを作成して、必要な介護を受けることができる。安否確認や食事の提供も受けられる。賃貸住宅なので入居時にかかる費用は基本的には敷金と礼金のみであり、入居一時金が不要なため、安価に抑えられることが多い。
③ 特別養護老人ホーム(公的施設)
利用料の目安(要介護度5・ユニット型個室の場合):14万円/月、入居時費用なし。
主に地方自治体や社会福祉法人が運営する公的施設。24時間体制で介護が受けられるが。要介護3以上の人しか入居できない。入居時に費用がかからず、所得に応じた利用料減免制度もあるため人気が高く、スムーズに入居できないケースも多い。
ここで紹介した費用の相場や目安はあくまでもひとつの目安であり、実際には要介護度や提供している介護サービスの内容によって、費用の額や内訳は異なりますが、施設に入居して介護を受ける場合、在宅介護よりも費用が多くかかる傾向にあることがわかります。
【参考】LIFULL介護「老人ホームの費用相場」 詳しくはこちら
【参考】厚生労働省「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の1ヶ月の自己負担の目安」 詳しくはこちら
介護費用を節約するにはどうすればいい?

在宅の場合と施設入居の場合、それぞれの介護にかかる平均費用についてみてきましたが、皆さんの感想はいかがでしょうか? 「在宅でもそんなにかかるのか」と驚いた人もいるかもしれませんが、工夫次第では介護の質を落とさずに費用を節約することも可能です。具体的な方法としては、次の5つが挙げられます。
① 地域包括支援センターに相談する
地域包括支援センターは、高齢者の暮らしを地域でサポートするための拠点施設です。各センターでは社会福祉士、保健師、主任ケアマネージャーが介護に関わるあらゆる相談に対応、地域に住む高齢者やその介護に携わっている人たちをつなぐ役割を果たしています。もちろん、介護費用についての相談にも応じてくれるので、少しでも費用を抑えたい人や費用負担に不安がある人は、一度足を運んで見てください。
② 早めに要介護認定を受ける
介護の必要性を感じたら、早めに要介護認定を受けましょう。要介護認定を受けると、介護保険で住宅の改築費などが補えるので、介護のための一時的な支出を抑えることができます。改築をしてしまった後で、要介護認定を受けた場合は介護保険で改築費をまかなうことができなくなります。
③ 紙おむつ代を節約する
在宅介護費用のうち、意外と大きな割合を占めるのが紙おむつ代です。自治体によっては紙おむつを現物支給したり、紙おむつ代として月額数千円~1万円程度の費用を助成したりする制度を設けているところもあります。介護に紙おむつが必要になったら、地域包括支援センターで制度の有無を確認してみてください。
④ 高額介護サービス費制度を利用する
高額介護サービス費制度は、介護保険を利用して介護サービスを受けた場合の自己負担額が一定の上限を超えた場合、申請をすると超過分が「高額介護サービス費」として払い戻される制度です。負担の上限額は所得によって次の5段階に分かれています。対象者には定期的に自治体から通知が来ることになっているので、忘れないように申請しましょう。
高額介護サービス費制度 利用者負担の上限
対象世帯 | 条件 | 負担上限額(月) |
---|---|---|
1名でも住民税課税者がいる世帯 | 現役並み所得者がいる世帯(※1) | 4万4,000円(世帯) |
1名でも住民税課税者がいる世帯 | 一般所得者がいる世帯 | 4万4,000円(世帯) |
全員が住民税非課税者の世帯 | 下記以外 | 2万4,600円(世帯) |
全員が住民税非課税者の世帯 | 年金収入が年間80万円以下の者 | 2万4,600円(世帯) |
全員が住民税非課税者の世帯 | 年金収入が年間80万円以下の者 | 1万5,000円(個人※2) |
全員が住民税非課税者の世帯 | 生活保護受給者 | 1万5,000円(個人※2) |
※1 同じ世帯に65歳以上で課税所得145 万円以上の方がおり、同じ世帯の65歳以上の方の収入の合計が520万円以上(単身の場合は383万円以上)である場合。
※2 個人=介護サービスを利用した本人のこと
【参考】厚生労働省 リーフレット「月々の負担上限(高額介護サービス費の基準)が変わります」 詳しくはこちら
⑤ 世帯分離をする
世帯分離とは、住民票に登録されている世帯をふたつ以上に分けることです。例えば、親とその子供夫婦が同じ世帯に住んでいる場合は、親を1世帯、子供夫婦1世帯の計2世帯に分離することができます。分離することによって、親世帯の所得が下がると、それに応じて「高額介護サービス費制度」で定められた自己負担の上限額が下がるので、より多くの払い戻しを受けることができるようになり、結果として介護費用を抑えることができます。
以上、介護費用を節約する方法を紹介しましたが、節約の第一歩は①の「地域包括支援センターに相談すること」です。介護費用の節約を考えている人はどのような方法が適切なのか、地域包括支援センターに相談することから始めましょう。
「費用」以外の負担にも注意!介護破綻を防ぐには

介護問題というと経済的な負担がクローズアップされがちですが、経済的な負担を軽減するだけでは、問題は解決しません。特に在宅介護の場合は経済的な負担だけでなく、介護をする側の体力的・精神的な負担についても十分注意する必要があります。
例えば、現役世代の介護者が介護による疲れやストレスのために仕事を続けられなくなってしまうと、収入が減って、経済的にますます厳しい状態に陥ってしまう可能性もあります。また、介護者が過労で倒れたり、体調を崩してしまったりすると、介護の担い手がいなくなってしまうおそれも。
介護保険サービスを利用して負担を軽減する方法も
こうした介護破綻を防ぐためには、「レスパイトケア」と呼ばれるサービスを利用することをおすすめします。レスパイト(respite)とは「小休止」や「一時中断」を意味する英語で、レスパイトケアとは、デイサービスやショートステイなどの介護保険サービスを利用して、介護者に一時的な休み時間を与えることです。これらのサービスをうまく利用して仕事との両立を実現したり、たまには泊りがけの旅行でリフレッシュしたりすることも、介護者の心身の健康や社会生活の維持のために欠かせないことです。
目先の支出ばかりにとらわれず、「どうすれば介護される側・する側双方の負担を減らしつつ、質の良い介護を続けられるのか」という視点で、それぞれの家庭の事情に適した介護のあり方を考えるようにしてください。
言うまでもなく、介護問題は誰の身にも起こりうることです。費用の心配なく介護をしたり受けたりできるように、若いころから老後資金の一部として介護費用を貯蓄しておきましょう。
まとめ
在宅介護では月に平均5万円、有料老人ホームに入居した場合は平均約22万円の費用がかかります。少しでも経済的な負担を減らしたい場合は、「高額介護サービス費制度」など、介護費用を抑えるために有効な制度や方法について地域包括支援センターに相談してみましょう。また、介護者の心身の健康を守るために、デイケアやショートステイなどのレスパイトケアを上手に活用し、介護を受ける側・する側双方の負担を可能な限り減らす努力も欠かせません。
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