新NISAは投資上限額が拡大!旧NISAからの変更点を詳しく解説

新NISAは、1年間で新規投資できる金額の上限や、非課税で保有できる商品の限度額が拡充されました。そのため、旧NISAと比較してより多くの資金を非課税で運用することが可能になっています。本記事では、新NISAの年間投資枠や非課税保有限度額を、旧NISAと比較しながら詳しく解説します。

新NISAは投資上限額が拡大!旧NISAからの変更点を詳しく解説

新NISAの上限額・限度額はどう変わる?旧NISAとの主な違い

新NISAの上限額・限度額はどう変わる?旧NISAとの主な違い

2024年1月からスタートした新NISAは、つみたて投資枠と成長投資枠という2つの非課税枠が設けられています。

つみたて投資枠は旧制度のつみたてNISA、成長投資枠は一般NISAの役割を引き継ぐ非課税枠です。新NISAと旧NISAの制度内容については、以下をご覧ください。

新NISAの上限額・限度額はどう変わる?旧NISAとの主な違い

※①整理・管理銘柄、②信託期間20年未満、毎月分配型の投資信託およびデリバティブ取引を用いた一定の投資信託等は対象外
【参考】金融庁「NISAを知る」詳しくはこちら

新NISAは、旧NISAと比較して1年間で商品に投資できる金額や、非課税で保有できる金額の限度が増額されました。
また、旧NISAはつみたてNISAと一般NISAのどちらか一方を選択しなければなりませんでしたが、新NISAでは2つの非課税枠を併用できます。

商品を非課税で運用できる期間(非課税保有期間)は、つみたてNISAが最長20年、一般NISAが5年※でしたが、新NISAではどちらの非課税枠も無期限に延長されました。
※5年間の非課税保有期間が終了した後ロールオーバーをすることで最長10年まで運用が可能

新NISAで年間投資枠(年関投資上限額)はどう変わるのか

新NISAで年間投資枠(年関投資上限額)はどう変わるのか

年間投資枠とは、1月1日から12月31日までのあいだに、NISA口座で金融商品に新規投資ができる金額の上限のことです。年間投資上限額といわれることもあります。
年間投資枠の範囲内で投資した金融商品から得られる利益には、税金がかかりません。

新NISAでは、旧NISAと比較して1年間で新規投資できる金額の上限(年間投資枠)が拡充され、さらに多くの資金を投資できるようになりました。

年間投資枠は最大360万円と大幅に拡大!

新NISAの年間投資枠は、つみたて投資枠が120万円、成長投資枠は240万円です。
毎月の積立金額の上限は、つみたて投資枠が10万円、成長投資枠が20万円となります。また、成長投資枠であれば、一括で最大240万円分の商品に投資をすることも可能です。

旧制度の年間投資枠は、つみたてNISAが40万円、一般NISAが120万円でした。そのため、つみたて投資枠はつみたてNISAの3倍、成長投資枠は一般NISAの2倍に増額されています。

また、新NISAではつみたて投資枠と成長投資枠を併用できるため、合計で年間360万円(毎月30万円)まで商品に投資することができます。

【要注意】年間投資枠の残りは翌年以降に持ち越せない

新NISAでは旧制度と同様に、年間投資枠を使い切れなかったとしても、残りを翌年以降に繰り越すことはできません。

例えば、つみたて投資枠の年間投資枠120万円のうち60万円を利用したとしましょう。
この場合、残りの60万円は繰り越されることなく消滅します。
そのため、翌年のつみたて投資枠の年間投資枠は、180万円に増えるのではなく再び120万円にリセットされます。

とはいえ、新NISAは制度が恒久化されており、将来的に変更されない限りいつでも商品に投資ができるため、無理に年間投資枠を使い切る必要はありません。

年間投資枠を使い切れなかった時は、積立期間を長くすることで、後述する1,800万円の非課税保有限度額に達するまで金融商品に投資できます。

新NISAでは非課税保有限度額(NISA口座で保有できる商品の限度額)が新設

新NISAでは非課税保有限度額(NISA口座で保有できる商品の限度額)が新設

非課税保有限度額とは、生涯を通じてNISA口座で保有できる商品の限度額のことです。

旧NISAには、非課税保有限度額の設定はありませんでしたが、非課税で運用できる期間に限りがあったため「年間投資枠×非課税保有期間」が実質的な限度額となっていました。

一方、新NISAは非課税保有期間が無期限に延長されたため「非課税保有限度額(純粋)」が新設されました。

非課税保有限度額は最大1,800万円!

新NISAの非課税保有限度額は、一人につき1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円)です。商品を買い付けた時の金額(簿価)で管理されるため、保有している商品の値動きには影響されません。

旧NISAの限度額は、つみたてNISAが「40万円×20年間=800万円」、一般NISAが「120万円×5年間=600万円」でした。また、つみたてNISAと一般NISAは併用できないため、最大で1,400万円分の商品を保有できるわけではありません。

そのため新NISAは、旧制度と比較してNISA口座で保有できる商品の金額の上限が、大幅に拡充されたといえます。

また、新NISAの非課税保有限度額は、旧NISAとは別枠で管理されます。つみたてNISAまたは一般NISAの口座で商品を保有していたとしても、新NISAの非課税保有限度額が減ることはありません。

【要注意】成長投資枠の非課税保有限度額は1,200万円まで

新NISAの非課税保有限度額は1,800万円ですが、そのうち成長投資枠で利用できるのは1,200万円までとなります。一方、つみたて投資枠であれば単独で1,800万円の非課税保有限度額を使い切ることができます。

例えば、毎月10万円ずつ積み立てるとしましょう。つみたて投資枠であれば、15年間(1,800万円÷10万円÷12ヶ月)にわたり、商品の積立が可能です。しかし、成長投資枠の場合、10年(1,200万円÷10万円÷12ヶ月=10年)で上限に到達します。

成長投資枠は、つみたて投資枠よりも投資信託のラインナップが豊富であり、国内外の株式やREIT(不動産投資信託)などにも投資できるものの、単独で利用できる非課税保有限度額は最大1,200万円と少なく設定されている点には注意が必要です。

商品を売却すると非課税投資枠は再利用できる

新NISAでは、口座で保有する商品を売却すると、その商品を買い付けた時の金額(簿価)の分だけ、翌年に非課税投資枠が再利用できるようになります。

旧NISAには、商品を売却しても非課税投資枠の再利用はできませんでした。新NISAで非課税投資枠の再利用ができるようになったことで、状況に応じて商品を売却するという選択がしやすくなり、より柔軟な運用が可能になったといえます。

ただし、商品の売却によって再利用できるようになるのは非課税保有限度額のみであり、年間投資枠は対象外です。また、つみたてNISAや一般NISAの口座で保有する商品を売却しても、新NISAの非課税保有限度額は再利用できません。

再利用できる非課税投資枠の計算方法

非課税保有限度額の再利用分は、売却した商品を買い付けた時の金額(簿価)をもとに計算されます。

例えば、新NISAの口座で1,200万円分の投資信託を保有していたとしましょう。新規投資できる金額は、残り600万円です。※1年間で新規投資できる金額は最大360万円

この状態で、簿価が合計300万円の商品を売却すると、翌年には新たに300万円分の枠が復活し、生涯を通じて900万円まで新規投資ができるようになります。
売却時に商品の価格が、400万円に値上がりしていたり、200万円に値下がりしていたりしても、翌年に再利用できる非課税投資枠は300万円となります。

新NISAの上限額・限度額の疑問

新NISAの上限額・限度額の疑問

最後に、新NISAの上限額や限度額についてのよくある疑問と、それに対する回答をご紹介します。

新NISAの年間投資枠の上限に到達することはある?

年間投資枠の上限に到達するためには、1年間で360万円も投資をしなければなりません。また、1月〜12月のあいだに、つみたて投資枠で毎月10万円ずつ積み立てる必要もあります。

国税庁が発表する民間給与実態統計調査によると、令和4年に企業が労働者に支払った平均給与(年収)は、約457.6万円でした。
【参考】国税庁「民間給与実態統計調査(令和4年分)」詳しくはこちら

ただし、実際に受け取れるのは、税金や社会保険料などが差し引かれたあとの部分です。また、新NISAでの投資に回せるのは、基本的には手取り収入から生活費や子供の教育費など、必要な支出を支払ったあとの部分に限られます。

そのため、収入の一部を新NISAの投資資金とする方の多くは、年間投資枠の上限に達しないのではないでしょうか。

一方で、以下のような人は年間投資枠の上限に到達する可能性があると考えられます。

・「年収が高い」「保有資産が多い」など投資に回せる余剰資金が多い人
・定年退職や相続、不動産の売却などでまとまった金額のお金を受け取った人

新NISAの上限を超えて投資をする方法は?

新NISAの非課税保有限度額1,800万円を超えて投資をしたい時は、課税口座(特定口座・一般口座)を利用する方法があります。ただし、課税口座で投資した商品から生じた運用益には20.315%の税金がかかります。

そこで、新NISAの口座で保有する商品を売却し、非課税投資枠を再利用するのも1つの方法です。
非課税投資枠を再利用することで、新規投資した金額が累計1,800万円を超えても、NISA口座で金融商品に投資ができます。

つみたて投資枠を増額するのに適したタイミングはある?

つみたて投資枠の積立金額を増やすタイミングとして代表的なのは、家計の収支に変化があった時です。

例えば、昇給や昇進、転職などで年収が増え、より多くの資金を積立投資に充てられるようになった時は、積立金額を増やすのも1つの方法です。
また、子供の独立や住宅ローンの完済などで毎月の支出が減った時も、積立金額を増やすタイミングの1つといえます。

積み立てている商品の値下がりが続いている時に、積立金額の増額を検討するのもよいでしょう。価格が下がっているうちに、積立金額を増やして多くの口数を買い付けると、将来的に商品の価格が上昇した時に、より大きな利益を得られる可能性があります。

ただし、生活に必要なお金や近いうちに使う予定があるお金を投資に回すのはおすすめできません。商品の価格が下がって投資元本を割ってしまうと、日常生活や将来のライフイベントに支障が生じてしまいかねないためです。

積立金額を増やすとしても、余剰資金の範囲内に留めることが大切です。

積立金額を増やす際の手続きは?

多くの金融機関は、会員専用のWebサイトで積立金額を増やすことができます。店舗のある金融機関であれば、店頭でも積立金額の増額が可能です。

積立金額を増やす際の手順や変更が反映されるタイミングなどの詳細は、各金融機関によって異なるため、事前に公式サイトで確認しておくとよいでしょう。

まとめ

新NISAの年間投資枠は、つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円です。2つの非課税枠を併用すると、最大で年間360万円もの新規投資ができます。

非課税保有限度額は、1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円)です。また、NISA口座で保有する商品を売却すると、その翌年に非課税投資枠を再利用できるようになりました。

金融商品を用いて資産を形成する際は、旧NISAと比べてより多くの資金を柔軟に運用できるようになった新NISAを活用してはいかがでしょうか。

ご留意事項
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長らくご愛読いただきました、「お金の、育て方MAGAZINE」について、

2024年9月30日(月)をもちまして閉鎖することとなりました。

これまで誠にありがとうございました。

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