退職金はいくらもらえる?平均金額や退職金・税控除額の算出方法を解説

自身の退職金はいくらもらえるのか、ご存知でしょうか。今回は、退職金の平均金額や仕組み、算出方法、税控除額について解説します。企業によってもらえる金額や受け取り方が異なります。老後の生活資金となる退職金を把握して、ライフプランを考えましょう。

退職金はいくらもらえる?平均金額や退職金・税控除額の算出方法を解説

一般的な退職金の平均は1,983万円

一般的な退職金の平均は1,368万円

退職金の相場を知るために、一般的な例として大卒または大学院卒の管理職、事務職、技術職で勤続20年以上の人に支払われる退職金の金額をみてみましょう。参考になるのは、厚生労働省が発表した「平成30年就労条件総合調査」です。

この調査結果では、平均支給額が1,983万円ということが分かりました。

【参考】厚生労働省「平成30年就労条件総合調査 結果の概況 退職給付(一時金・年金)の支給実態」 詳しくはこちら

企業規模・勤続年数別でみる退職金

企業規模・勤続年数別でみる退職金

退職金は労働者に一律同じ金額が支払われるわけではなく、勤め先の企業の規模や勤続年数などの条件によって金額や支給方法が異なります。
そこで、企業の規模を大企業と中小企業に大きく分けて、退職事由が「会社都合」となっているデータを元に、それぞれの場合に勤続年数に応じた退職金がどれほどなのかを見てみましょう。

大企業×勤続年数

同じく「平成30年就労条件総合調査」をみると、平成29年の1年間に勤続20年以上で45歳以上の会社都合による退職者に支払われた退職給付額が分かります。

大企業の退職給付額

勤続年数 給付額  
20~24年1,296万円
25~29年2,166万円
30~34年2,729万円
35年以上2,673万円

従業員が1,000人以上の大企業の場合、大卒または大学院卒、勤続年数が20~24年の人の平均額は1,296万円、25~29年で2,166万円、30~34年で2,729万円、35年以上だと2,673万円となります。大企業は中小企業と比較して、退職金の制度が整っていて、支給額も多いでしょう。全体の平均額は2,564万円です。

中小企業×勤続年数

次に、従業員数が30~999人までの中小企業の退職金もチェックしてみましょう。従業員が300~999人、100~299人、30~99人の3つに分けて紹介します。

中小企業の退職給付額

勤続年数 従業員数300~999人の企業の支給額従業員数100~299人の企業の支給額
20~24年766万円データなし
25~29年1,313万円1,019万円
30~34年1,880万円1,830万円
35年以上2,196万円1,381万円

従業員が300~999人の企業の退職金は、大卒または大学院卒、勤続20~24年で766万円、25~29年で1,313万円、30~34年で1,880万円、35年以上で2,196万円です。
従業員が100~299人の企業の退職金は、勤続年数が20~24年のデータはありません。25~29年で1,019万円、30~34年で1,830万円、35年以上で1,381万円です。
30~99人の企業の退職金は、勤続年数ごとの数値はありませんが、全体の平均は1,096万円です。

【参考】政府統計の総合窓口(e-Stat)「就労条件総合調査 / 平成30年_就労条件総合調査 退職給付(一時金・年金)の支給実態」詳しくはこちら

職種別でみる退職金

職種別でみる退職金

職種別では、大きく「管理職・事務職・技術職」と、それ以外のふたつに分けた調査結果が公表されています。
「平成30年就労条件総合調査」では、管理職・事務職・技術職以外の職種における大学または大学院卒の場合のデータがないため、最終学歴が高卒のデータで比較します。

職種別の退職給付額

勤続年数 管理・事務・技術職それ以外 
20~24年415万円545万円
25~29年1,809万円758万円
30~34年1,967万円1,109万円
35年以上2,467万円1,704万円

管理職・事務職・技術職の退職金の平均額は、35年以上勤務した場合、2,467万円です。一方、同じ条件で管理職・事務職・技術職以外の職種では、平均額は1,704万円です。管理職・事務職・技術職の方が、それ以外の職種よりもざっと計算して760万円ほど多いことが分かります。

学歴別でみる退職金

学歴別でみる退職金

同じく「平成30年就労条件総合調査」から、大学または大学院卒と高校卒の違いもチェックしてみましょう。

学歴別の退職給付額

         管理・事務・技術職それ以外 
大学または大学院卒2,156万円データなし
高校卒1,969万円1,118万円

大学または大学院卒の管理職・事務職・技術職の人が退職した場合、退職金の平均額は2,156万円です。一方、高校卒の管理職・事務職・技術職が退職した場合の平均は1,969万円と、やや少なくなります。
これには、学歴が高いほど役職に就いている人が多く、普段の月給が高いことが関係していると考えられます。退職金は基本的に月給から計算されるため、その差額が反映されています。

自分の退職金を調べるには?

自分の退職金を調べるには?

これまで、企業の規模や勤続年数、職種などで退職金の金額について解説してきましたが、気になるのは「自分はいくらもらえるのだろう」ということでしょう。実は、退職金はおおよその金額を自分で算出することができます。退職後のライフプランをしっかり立てるためにも、算出方法を知っておくことは大切でしょう。

退職金の算出方法はさまざま

退職金制度を取り入れている企業のほとんどは、その算出方法を就業規則に明示しています。退職金の支給金額を決める方法には、定額制・基本給連動制・別テーブル制・ポイント制などがあります。

定額制は、会社への貢献度や実績などに関わりなく、労働年数に応じて一律同額を支給するものです。基本給連動制は、勤続年数に加えて基本給や退職理由などの要素も含んで決定されます。別テーブル制は、勤続年数に加えて、役職や等級、退職理由などが考慮されます。最後に、ポイント制は勤続年数や退職理由、役職などの項目をそれぞれポイントで評価し、合計ポイントに応じて支給額が決まるという仕組みです。

まずは自社の最新の就業規則をチェックし、算出方法や計算式を確認しておきましょう。そもそも就業規則がない場合や、記載がない場合は担当部署に尋ねてみるとよいでしょう。

退職金の支給方法は「退職一時金制度」「企業年金制度」の2パターン

退職金の支給方法には「退職一時金制度」と「企業年金制度」の2パターンがあります。一般的に退職金というと「退職一時金制度」として、退職時に一括して支給されるものを想像するかもしれません。

しかし、企業によっては「企業年金制度」として、退職後に定期的に支給されるものもあります。企業年金制度の中にも、「確定給付企業年金」「確定拠出年金」「厚生年金基金」「中小企業退職金共済制度・特定退職金共済制度」など大きく4つの分類があります。

そもそも、退職金は全ての企業にある制度ではありません。企業によって支給方法も異なるので、退職後の生活資金を考える上で就業規則・賃金規定などを確認しておくとよいでしょう。

退職金はいつ受け取れる?

退職金の受け取り時期も企業によって異なります。なぜならば、外部の金融機関で運用しながら退職金を準備している場合があり、支給にあたっての手続きが発生するからです。

退職金の支払い日になっても支給されない場合は、企業に請求を行いましょう。労働基準法の第23条によって、退職者からの請求後7日以内に支払うことが義務付けられています。

また、前述したように企業年金制度として退職金を受け取る場合は退職時に一括支給ではなく、定期的な支給になるので、支給のタイミングなどを確認しましょう。

【参考】厚生労働省「労働基準法 第23条(pdf)」詳しくはこちら

税金はどれくらいかかる?

退職金は「退職所得」という所得の一種なので、所得税と住民税がかかります。ただし、退職所得は他の所得と区別して税負担が少なくなるような控除があります。退職一時金として受け取る場合と企業年金として受け取る場合と控除の仕組みは異なるため、実際にどのくらい税金がかかるか算出してみるとよいでしょう。

税金などを差し引いた実際にもらえる金額は?

ここでは、退職所得控除額の算出方法を解説します。計算式は、勤続年数が20年以下の場合と20年を超える場合で異なります。

・勤続20年以下の控除額の計算式
40万円×勤続年数

・勤続20年超の控除額の計算式
(800万円+70万円)×(勤続年数−20年)

これらの数式に当てはめて算出し、出てきた数字が80万円に満たない場合、控除額は80万円です。上記の計算で出た金額を退職所得から控除し、2分の1にした額に対して、所得税がかかります。

所得税以外にかかる税金は住民税です。住民税の計算方法は、住んでいる市町村により異なります。ただし、住民税の計算でも上記の退職所得控除が適用され、税負担が軽くなるように配慮されています。数式に当てはめて計算した結果、所得税も住民税もかからない人もいます。

まとめ

退職金の制度は企業によってさまざまですが、大企業で勤続年数が長く、役職についていたり、専門的な技術職で会社に貢献していたりすれば、退職金の金額も大きい傾向にあるでしょう。
退職金は、長年働いた報償として支払われるものであり、退職後の大切な生活資金です。退職金の算出方法については就業規則を確認し、税控除額なども踏まえて、実際にもらえる金額を計算してみましょう。
どれほどもらえるかを把握していれば、今後のライフプランを立てるのに役立つことでしょう。

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