企業型確定拠出年金(401k)とは?その仕組みとメリットを解説

老後への備えとして、ますます注目が集まっている確定拠出年金制度(DC)。確定拠出年金には企業型と個人型とがありますが、今回は企業型確定拠出年金の仕組みとメリットについて、また個人型確定拠出年金との違いについて詳しく解説します。

企業型確定拠出年金(401k)とは?その仕組みとメリットを解説

企業型確定拠出年金は、企業が掛金を積み立ててくれる年金制度

企業型確定拠出年金は、企業が掛金を積み立ててくれる年金制度

確定拠出年金とは、国が管理・運営する公的年金(国民年金や厚生年金など)に上乗せして、企業や個人が任意で加入できる「私的年金」であり、日本では2001年に施行された「確定拠出年金法」に基づき、企業型確定拠出年金と個人型確定拠出年金が運用されています。なお、日本の確定拠出年金制度は、アメリカの確定拠出年金制度・通称401kを参考に策定されたことから、「日本版401k」と呼ばれることもあります。また、確定拠出年金制度の英語表記「Defined Contribution Plan」を略して、確定拠出年金制度のことをDC(ディーシー)と呼ぶこともあります。

年々加入者が増加している企業型確定拠出年金

前述のとおり、確定拠出年金には企業型と個人型とがあり、企業型確定拠出年金(企業型DC)は、企業が毎月、従業員の年金口座に掛金を積み立て(拠出し)、従業員が自ら運用する制度です。運用した年金資産は、定年退職を迎える60歳以降に一時金(退職金)もしくは年金の形式で公的年金とは別に受け取ることができます。厚生労働省の調査(※)によると、企業型確定拠出年金の加入者数は年々増加しており、2019年3月末時点で過去最高の687万8,000人(前年比+39万7,000人)に上っています。

【参考】厚生労働省「確定拠出年金の各種データ 企業型年金加入者数」 詳しくはこちら

企業型確定拠出年金を始めるには?

企業型確定拠出年金に加入するためには、この制度を導入している企業に勤務していることが大前提です。企業型確定拠出年金への加入を希望しているのなら、就職や転職にあたって、候補の企業が企業型確定拠出年金制度を導入しているかどうかを必ず確認してください。

加入〜受け取りまでの基本的な流れ

企業型確定拠出年金制度の加入~年金受け取りまでの流れは以下のとおりです。

① 企業型確定拠出年金に加入する
企業型確定拠出年金制度を導入している企業には、就職すると自動的に加入する仕組みになっている企業と、従業員が加入するかどうかを選べる仕組みになっている企業とがあります。後者の場合、従業員側に選択肢が提示されない限り、従業員が確定拠出年金制度について知らないままになっている可能性も考えられます。企業に正社員として務めているのに企業型確定拠出年金に加入していない人は、この機会に制度の有無を担当部署(一般的には人事部や総務部など)に確認してみてください。

② 毎月の掛金の額を決める
毎月の掛金の額は、各企業が加入者(従業員)の役職や勤続年数などに応じて決めるのが一般的です。
ただし、掛金には法定の上限があり、これを超えて積み立てることはできません。

掛金の限度額

企業年金のある・なし 掛金の限度額
他の企業年金(厚生年金基金など)もある場合 月額2万7,500円(年額33万円)
他の企業年金がない場合 月額5万5,000円(年額66万円)

なお、企業が積み立てる掛金に加入者自身が掛金を上乗せできる「マッチング拠出制度」を採用している企業もあります。この制度を活用すれば、より多くの資金を運用できるため、運用成績によっては老後に受け取れる年金の額が多くなる可能性があります。ただし、マッチング拠出制度で拠出できる金額にも上限があり、

 ・従業員の掛金の額が、企業の掛金の額を上回らないこと
 ・企業が拠出する掛金と従業員が上乗せする掛金の合計が、上記の掛金の限度額を超えないこと
 という条件が定められています。

【参考】労働金庫連合会 「拠出金(掛金)について」 詳しくはこちら

③ 毎月、専用の年金口座に掛金が積み立てられる
加入者の年金口座には企業から所定の掛金が年金資産として積み立てられます。

④ 従業員が年金資産を運用する
企業が積み立てた年金資産を元手に、従業員自ら運用する金融商品を選定し、年金資産を運用します。
運用できるのは制度を運営する金融機関提携先の金融機関が提示する金融商品(投資信託など)です。

⑤ 年金資金を受け取る
積み立てた年金資産は、定年退職を迎える満60歳以降に一時金として、もしくは年金として受け取ることができます。

なお、勤務先の企業が確定拠出年金を導入していない場合は、個人型確定拠出年金(以下iDeCo)への加入を検討しましょう。iDeCoは、企業型確定拠出年金制度を導入していない企業の社員のほか、自営業者や主婦でも、一定の条件を満たせば加入が可能。加入資格の有無は、下記のiDeCo公式サイトで確認できます。

【参考】iDeCo公式サイト 詳しくはこちら

企業型確定拠出年金のメリットは?

企業型確定拠出年金のメリットは?

では、企業型確定拠出年金にはどんなメリットがあるのでしょうか? もちろん、加入者にとって最大のメリットは企業が掛金を拠出してくれること。自身で掛金を拠出しなくて済むため、経済的な負担なしに私的年金を確保し、将来に備えることができます。また、以下のとおり、3つの税制優遇措置が取られていることも、企業型確定拠出年金制度を利用する大きなメリットです。

■企業型確定拠出年金の税制優遇措置

1. 運用益が非課税になる
一般的な金融商品で運用するとその運用益に対しては20.315%の税金がかかりますが、企業型確定拠出年金の運用益は全額が非課税となります。

2. 受け取り時に退職所得控除または公的年金等控除が受けられる
年金資産を60歳以降に受け取る際、一時金として受け取る場合は退職金控除が、年金として受け取る場合は公的年金等控除が受けられます。

3. マッチング拠出の掛金は全額所得控除の対象となる
マッチング拠出制度を利用して従業員自らが拠出した掛金については、全額が所得控除の対象となり、所得税や住民税が軽減されます。

運用成績によって受取額が左右されるデメリットも

一方、企業型確定拠出年金には、以下のようなデメリットも指摘されています。メリットがクローズアップされることの多い企業型確定拠出年金ですが、加入を選択できる場合は、デメリットも理解した上で運用に臨むようにしたいものです。

■企業型確定拠出年金のデメリット

・原則として60歳まで年金資金を引き出せない
・運用成績により受け取り額が左右される

企業型確定拠出年金の掛金を積み立てるのは企業ですが、その資金の運用は加入者である従業員自身が自己責任で行わねばなりません。運用対象には元本保証でない金融商品も含まれており、運用成績によっては、将来受け取れる年金の額が少なくなるおそれもあります。

転職・退職したら、積み立てた年金はどうなる?

転職・退職したら、積み立てた年金はどうなる?

前述のとおり、企業型確定拠出年金を始めるには、この制度を導入している企業に就職することが大前提です。では、その企業を辞めて転職をした場合や自営業者となった場合、それまで積み立てた年金はどうなるのでしょうか?ケース別に見ていきましょう。

① 企業型確定拠出年金制度のない企業に転職した場合
以前の企業を退職後6ヶ月以内(退職した月の翌月から起算して6ヶ月以内、以下同)にiDeCoの口座を開設し、年金を移換します。制度を運営する金融機関は転職前の企業で指定されていた金融機関でなくても構いません。

② 企業型確定拠出年金制度のある企業に転職した場合
前の企業で積み立てていた年金を転職先の企業で開設した口座に移換できます。転職先の規定に従って、掛金の額や制度を運営する金融機関が変更される可能性があります。

③ 自営業者・主婦(夫)・公務員などになった場合
退職後6ヶ月以内にiDeCoの口座を開設し、年金を移換します。運用する金融機関は転職前の企業で指定されていた金融機関でなくても構いません。

原則として、積み立てた企業型確定拠出年金は60歳以降にしか引き出すことができません。したがって、60歳になる前に企業型確定拠出年金制度を導入していない企業に転職した場合や、自営業者・主婦(夫)・公務員などになった場合は、6ヶ月以内にiDeCoの口座を開設して年金を移換し、自身で掛金の拠出と運用を行いましょう。

移換手続きをしなかったらどうなる?

仮に6ヶ月以内に年金をiDeCoへの移換手続きをしなかった場合、積み立てた企業型確定拠出年金は現金化され、国民年金基金連合会に自動的に移換されてしまいます。自動移換された年金は現金の状態で管理され、加入者による運用ができなくなる上、管理費が差し引かれてしまうので、必ず6ヶ月以内にiDeCoへの移換の手続きを済ませるよう注意してください。老後に私的年金を確保するためには、企業型・個人型に関わらず、できるだけ途切れることなく確定拠出年金の運用を続けることが大切です。

企業型・個人型ともに主役は「自分自身」

企業型・個人型ともに主役は「自分自身」

企業型確定拠出年金は掛金を企業が拠出しますが、iDeCoは個人型確定拠出年金の名のとおり、個人つまり加入者本人が掛金を拠出する点が大きく異なっています。しかし、どちらの場合も、掛金を運用するのは加入者本人であり、その運用成績に応じて将来受け取れる年金の額が決まるという点は同じです。口座を開設している金融機関から提示される金融商品のうち何を選ぶのか、限られた投資資金をどう分散するのかも含めて自分自身が決めなくてはならず、その選択が運用成績を左右します。したがって、企業型・個人型に関わらず、確定拠出年金制度を活用して私的年金づくりに取り組むにあたっては、「主役は自分自身だ」という自覚をもち、自主的に取り組む姿勢が欠かせません。

運用商品選びに迷ったら

とはいえ、運用対象の商品を選ぶのは決して簡単なことではありません。商品選びに迷ったら、まずはその商品が元本保証型か否かを確認しましょう。元本保証型の商品(預金や保険など)は元本割れがないので、満期まで保有すれば、比較的安全かつ確実に運用をすることができますが、一般的にあまり大きなリターンは望めません。
一方、元本保証ではない商品(主に投資信託)は、元本割れのリスクがあるものの、うまく運用できれば元本保証型の商品よりも効率よくリターンを得ることができます。多少のリスクを取ってより大きなリターンを求めるのか、それとも安全・確実を重視するのか、あるいは両方にバランスよく投資するのかは、本人の判断に委ねられます。

もちろん、商品選びについて金融機関の担当者やファイナンシャル・プランナーなどに相談することもできますが、最終的な決断を下すのは加入者本人です。人任せにして後で後悔するようなことにならないよう、資産運用に関する基本的な知識を身につけて、運用に臨むようにしてください。金融機関などが主催する勉強会や説明会に参加してみるのもおすすめです。

まとめ

企業型確定拠出年金は企業が掛金を拠出し、加入者である従業員本人が運用を行い、60歳以降に一時金または年金として受け取ることができる制度で、運用益が非課税になる・受け取り時に税控除が受けられるなどのメリットがあるので、勤務先の企業で導入されている場合は、加入を検討するとよいでしょう。ただし、年金資金の運用は加入者自身の責任で行わねばならないため、資産運用に関する基本的な知識を身につけ、自主的に取り組む姿勢が不可欠です。

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