老後の年金生活でも「貯められる」FPおすすめの節約術5選
老後の年金生活では、現役時代より収入が減る人がほとんどでしょう。「節約しなくては」という気持ちはあるものの、旅行や孫へのプレゼントなど支出も多くなりがちです。どのような支出を抑えると効果的な節約ができるでしょうか?

貯蓄に頼っている高齢者はどのくらい?

老後の生活費はいくらくらいかかるのでしょうか? もらえる公的年金だけで足りるのでしょうか? まずは統計から、セカンドライフを送っている人の家計の実態を見てみましょう。
■高齢夫婦世帯の収入と費目別の支出、収支残高の平均額

※単位:万円 期間:月
※総務省「家計調査 家計収支編(2019年)」
二人以上世帯、夫65歳以上、妻60歳以上で構成する夫婦一組の世帯 詳しくはこちら
総務省の「家計調査」によれば、上のグラフのとおり、支出の方が毎月3.3万円収入を上回り、年金だけでは足りないことがわかります。平均で家計の収支がマイナスということは、多くのご家庭では貯蓄を取り崩して生活していると考えられます。
では、貯蓄額はどのくらいでしょうか?
総務省の「家計調査 貯蓄・負債編(2019年)」によれば、世帯主が65歳以上の無職世帯(二人以上の世帯)の平均貯蓄額は2,218万円。毎月の収支も貯蓄額も平均的であれば、まずお金に困ることはなさそうです。
しかし、病気・介護や、住宅のリフォームなどでまとまったお金が必要になれば、貯蓄が底をついてしまうかもしれません。突然の出費に備え、少しでも貯蓄を長く持たせるためにも、毎月の赤字額を減らす対策を講じておきましょう。
まず節約するべき支出は「固定費」

節約をするといっても、食費を切り詰めたり、レジャーを我慢したりなどは、息苦しく、長続きはしないでしょう。我慢を伴わず、一度見直しをすれば効果がずっと続くような方法が、結果的に大きな効果につながります。
一度見直しをすれば効果が続くものは、主に「固定費」です。毎月(毎年)必ず支払っているものを書き出して見直してみましょう。代表的な固定費の見直しポイントは次のとおりです。
・生命保険の保険料
定期保険などの掛け捨てタイプの場合には、今後もその保障額が必要かどうかを検討してみましょう。不要なものを解約することで、保険料が少なくなります。ただし、医療保険など今後必要な保障で、不足しているものがあれば追加で加入することを検討しましょう。この場合には、逆に保険料が上がる可能性もあります。
・住宅ローン
もしまだ支払いが続いているのであれば、繰上返済を検討しましょう。早く返せば返すほど、返済総額が少なくなります。もちろん、数年以内に必要なお金に支障がないようにしなければなりませんが、住宅ローンの支払いがなくなれば、毎月の負担感も一気に改善されるでしょう。
・携帯電話の料金
料金プランが適しているかどうか、見直してみましょう。また、以前はメールのやりとりのためなどに、大手のキャリアがよいと考える方もいました。最近ではLINEなどで連絡をすることも多くなってきているので、格安スマホや格安SIMへの切り替えを検討するとよいでしょう。大幅に料金を削減できる場合もあります。
・マイカーの維持
車を所有していると、自動車保険の保険料、自動車税、車検代など意外と維持費がかかります。毎日乗るわけでもないという方は、思い切ってマイカーを手放した生活を想像してみてください。大きな支障はありそうでしょうか?
少し遠出したり、長時間利用するならカーシェアリングやレンタカーを使ったり、近距離であればタクシーを利用したりしても、車の維持費ほどにはかからないものです。
・会費や定期購入の見直し
その他、スポーツジムの会費や定期購入しているものなど、毎月定額を支払っているものは意外と多くあります。活用していないものはないか、支払額を減らせるものはないか、確認してみましょう。
利用した方が支出を減らせる制度もある
レジャーや食事、スーパーでの買い物など、シニアなら割引になる、というものも多くあります。
例えば、JR各社の「ジパング倶楽部」に入会すると、JR線のきっぷが年間20回まで最大30%オフ、ANAやJAL、スカイマークなどの航空会社でもシニア向け運賃の割引制度があります。旅行に出かける時には大いに利用しましょう。博物館や映画館、劇場でも多くのところで割引制度を設けているので、出かける際にはチェックしてみましょう。
レジャーだけでなく、イオングループ、イトーヨーカドー、ライフなどでは、特定の日ならシニアの方のお買い物が5%オフになるなどの優待を実施しています。
シニア割引について詳しくは50代から使えるものも!お得なシニア割引16選をご覧ください。
まだまだある、老後の資産寿命を延ばす方法

貯蓄をなるべく長持ちさせる方法は、節約だけではありません。自分が持っている資産の活用も資産寿命を延ばす手段の一つです。
・金融資産の運用
手持ちの金融資産を運用しながら取り崩していくことで、資産寿命を延ばすことができます。例えば、手持ちの資産が1,000万円で、毎月5万円を取り崩したとすると、運用によって資産寿命は次のように変わります。
運用した場合の資産寿命の違い
年利 | 0% | 1% | 3% |
---|---|---|---|
資産寿命 | 16年8ヶ月 | 18年3ヶ月 | 23年2ヶ月 |
※複利運用。運用益にかかる税金は考慮していません。
大切な老後の生活資金ですから、リスクが大きいものには投資できないとしても、年利1%でも運用できれば、資産寿命が延びることがわかります。
・持ち家の活用
持ち家を担保にして借り入れをするリバースモーゲージというローンがあります。銀行等から借り入れをするのですが、原則、返済はせずに死亡時に担保にした自宅を売却することで返済するという仕組みです。自宅に住み続けながら、使えるお金が増えるので資産寿命もその分長くなります。
・収入を得る
老後も収入を得ることで、資産寿命を延ばすことができます。たとえ年収が減っても、数年間でも長く働くことは大きな意味があります。また、趣味の延長線上で毎月2万円稼ぐだけでも、その分貯蓄から取り崩す分が減るため、資産寿命を延ばすことができます。自分という資産を活かしてみてはいかがでしょう?
まとめ

資産寿命を延ばすために、節約する場合のポイントや持っている資産の活用について見てきましたが、資産寿命を延ばすもうひとつの方法があります。
それは、老後を迎える時点での資産そのものを多くしておくこと。当たり前のようですが、これが一番確実ですし、その上で節約をしたり資産運用したりすれば、さらに安心感が高まります。早いうちからの資産形成も計画的に行いましょう。
ご留意事項
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