遺産相続の手続きの期限一覧!デメリットや死後すぐやるべきことも解説

遺産相続では期限が限られている手続きが多く、混乱してしまう方も少なくありません。今回は遺産相続手続きの流れや期限別の手続きについて解説するほか、手続きが遅れた場合に生じるデメリットについてお伝えします。期限を過ぎてしまった場合、ペナルティもあるので注意しましょう。

遺産相続の手続きの期限一覧!デメリットや死後すぐやるべきことも解説

相続手続きの期限一覧

相続手続きの期限一覧

相続手続きには期限が決まっているものが多く存在します。ここでは手続きの大まかな流れと、期限ごとに必要な手続きについてみていきましょう。

期限 手続き項目
7日・14日以内 ・死亡届の提出
・火葬許可申請書の提出
・年金の受給停止
・健康保険の資格喪失
・世帯主の変更
・公共料金の名義変更
3ヶ月・4ヶ月以内 ・相続放棄・限定承認
・準確定申告
10ヶ月・1年以内 ・相続税の申告・納付
・遺留分侵害請求
2年・3年以内 ・死亡一時金の受取請求
・死亡保険金の請求・相続登記

亡くなったらすぐにやるべきこと

亡くなったらすぐにやるべきこと

ここでは、被相続人が亡くなったらすぐにやるべきことを期限別に解説します。

遺言書の確認

相続の手続きをはじめるにあたって、まずは「遺言書」があるかどうかを確認しましょう。遺言書の有無によって手続きの進め方が大きく異なるため、相続において遺言書は非常に重要です。
生前に遺言書の保管場所を伝えられていた場合は問題ありませんが、なかには遺言書の場所を伝える前に亡くなってしまうケースも少なくありません。

また、仮に家の中から自筆証書遺言が発見された場合、勝手に開封してはいけません。自筆証書遺言を勝手に開封すると5万円以下の過料が科されるほか、内容の改ざんや偽造が行われたのではないかと疑われてしまうケースがあります。

そのため、発見した自筆証書遺言は未開封のまま家庭裁判所に提出し、後日行われる検認に立ち会うようにしましょう。検認をもって遺言書が有効であると認められた場合に、その内容に従って相続手続きを進めることになります。

【✔ ポイント:公正証書遺言があった場合】

遺言を探す中で、公正証書遺言の控えが発見されるケースもあるでしょう。公正証書遺言とは公証役場で保管・管理されている遺言のことで、自筆証書遺言と異なり検認を受ける必要がありません。そのため、公証役場で遺言書の中身を確認した後、その内容に従って相続手続きを進めることになります。

出典 

亡くなって7日以内にするべきこと

被相続人が亡くなって7日以内に以下の手続きを済ませる必要があります。

・死亡届の提出
・火葬許可申請書の提出

出典 

それぞれに解説します。

死亡届の提出

被相続人が死亡すると医師から「死亡診断書」または「死体検案書」を渡されます。死亡届は死亡診断書とセットになっているため、必要事項を記入した上で市町村役場へ提出しましょう。

火葬許可申請書の提出

遺体を火葬するためには火葬許可申請書を提出し、「火葬許可証」を受け取る必要があります。火葬許可申請書は市町村役場の窓口で受け取れるため、死亡届の提出とあわせて手続きを済ませるとよいでしょう。また、火葬許可証は火葬場の管理事務所に提出してください。

亡くなって14日以内にするべきこと

次に、14日以内に済ませなければならない手続きについて確認しましょう。

・年金の受給停止
・健康保険の資格喪失
・世帯主の変更
・公共料金の名義変更

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年金の受給停止

被相続人が年金の受給者であった場合、受給停止の手続きが必要になります。年金ごとの手続き期限は以下の通りです。

国民年金:被相続人が死亡してから14日以内
厚生年金:被相続人が死亡してから10日以内

出典 

それぞれ期限内に年金事務所へ報告するようにしましょう。なお、停止手続きにあたっては「受給権者死亡届」という書類を提出しなければなりません。万が一、被相続人が亡くなったことを伏せたまま年金を受け取っていた場合、年金の返還を求められるほか、場合によっては「不正受給」とみなされる恐れがあります。

健康保険の資格喪失

健康保険や介護保険については、資格喪失手続きが必要です。国民健康保険については市町村役場、社会保険は加入先の健康保険組合で手続きが可能です。また、被相続人が社会保険に加入していた場合、扶養されていた家族は健康保険組合から「埋葬料」を受け取れます。該当する場合は忘れずに申請しましょう。

世帯主の変更

世帯主である被相続人が亡くなり、残された世帯人数が二人以上いる時は「世帯主変更届」を市町村役場に提出する必要があります。(※世帯人数が一人になった時、次の世帯主が明らかである時は提出不要)

公共料金の名義変更

被相続人が各種公共料金の契約者だった場合、名義変更手続きが必要です。利用先の電力会社やガス会社に連絡し、忘れずに手続きを済ませましょう。

【3ヶ月以内】相続放棄・限定承認

【3ヶ月以内】相続放棄・限定承認

相続人の確定と被相続人の財産調査が終わったあと、相続人は3ヶ月以内に裁判所に対して相続方法の申し立てをしなければなりません。なお、相続方法には以下3つの種類があります。

限定承認:プラスの範囲で被相続人の財産を引き継ぐ
相続放棄:被相続人の財産の一切を放棄する
単純承認:被相続人の財産をすべて相続する

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上記のうち「相続放棄」または「限定承認」を選ぶ場合、相続人全員が次の書類を家庭裁判所に提出する必要があります。

・「限定承認申請書」
・「財産目録」

出典 

これらの書類は相続が発生した日から3ヶ月以内に提出しなければならないので注意してください。

また、相続放棄を行った場合、その相続人は相続開始当初から法定相続人ではなかったものとみなされます。そのため、ほかの相続人の相続割合が増えるほか、相続権がなかった人が相続権を取得するケースも見受けられます。また、相続放棄をした人に子がいたとしても、当該子が被相続人の財産を代わりに相続(代襲相続)することはできません。
なお、単純承認の場合は手続き不要です。3ヶ月以内に限定承認や相続放棄の意思を示さなかった場合も、単純承認をしたものとして扱われます。

【4ヶ月以内】準確定申告

【4ヶ月以内】準確定申告

通常、確定申告はその年の収入を翌年の2月から3月に申告します。しかし、確定申告の対象となる納税義務者が亡くなった場合、被相続人の死亡を知った日から4ヶ月以内に申告を行わなければなりません。これを「準確定申告」といいます。準確定申告は全員に必要というわけではなく、被相続人に申告する所得がない場合には不要となります。

【準確定申告が必要なケースの一例】
・被相続人が事業を営み、確定申告を行っていた場合
・被相続人に副収入があり、かつ確定申告の義務が生じていた場合
・被相続人の給与額が2,000万以上である場合
・被相続人が確定申告によって還付金を受けられる場合
・被相続人が不動産収入(家賃収入)を得ていた場合 等

出典 

準確定申告のための申告書は、通常の確定申告と同様の様式を用います。また、個人事業主や不動産所得がある場合「収支内訳書(青色申告の場合は青色申告決算書)」の提出も忘れずに行いましょう。

上記に加え、準確定申告の場合は「死亡した者の所得税及び復興所得税の確定申告書付表」が必要です。なお、確定申告によって得られた還付金は原則として個々の相続割合に応じて分配されます。しかし「委任状(準確定申告用)」を提出することで還付金の受取を特定の一人とすることが可能です。

必要書類が整ったら、以下3つのいずれかの方法で提出しましょう。

・税務署に持参する
・税務署に郵送する
・電子申告をする

出典 

このうち、電子申告では書面での手続きと異なり、それぞれの相続人が手続きを行うことができません。相続人の中で代表者を決めた上で、その人に手続きをお願いしましょう。

また、e-Taxで準確定申告を行う場合は追加で「準確定申告の確認書」が必要です。準確定申告の確認書とは、手続きを代表者に委託する旨を証明する書類を指し、相続人それぞれの押印が必要となります。押印が終わったら確認書をPDF化し、電子申告の際に添付しましょう。

【10ヶ月以内】相続税の申告・納付

相続税の申告および納付期限は、相続の開始を知った時から10ヶ月以内です。それまでに相続税の申告の準備を終えておくとともに、納税資金の確保ができているかも確認しましょう。万が一、納税資金の確保が難しい場合は延納や物納制度の利用を検討することをおすすめします。

なお、相続税は正味の遺産総額が「相続税の基礎控除」を超えなければそもそも課税されません。相続税の場合、最低でも3,600万円の基礎控除額があることも覚えておきましょう。

【1年以内】遺留分侵害請求

【1年以内】遺留分侵害請求

遺留分の侵害請求期限は、死亡日または相続を知った日から1年以内と決まっています。なお、遺留分の侵害請求とは不平等な遺言や贈与等によって本来相続できる遺産(遺留分)を侵害された法定相続人が、侵害した人へ遺留分の取り戻しを請求する手続きのことです。

たとえ遺留分の侵害があったとしても、該当日から1年を経過してしまうと請求ができなくなるので注意しましょう。

【2年以内】死亡一時金の受け取り請求

死亡一時金とは国民年金法に定められた給付の1つであり、一定の条件を満たした際に遺族に対して支払われる年金のことです。

死亡日の前日において被相続人が第1号被保険者として保険料を納めた月数が36ヶ月以上あり、かつ老齢基礎年金・障害基礎年金を受け取らずになくなった場合において、生計を同じくしていた親族に支払われます。死亡一時金の額は保険料を納めた月数に応じて12万円〜32万円です。

【✔ ポイント:寡婦年金について】

場合によっては「死亡一時金」に代わって「寡婦年金」が選択できる場合もあります。寡婦年金の対象となるのは被相続人が第1号被保険者として保険料を納めた期間が10年以上あり、かつ死亡時点で婚姻関係が10年以上を継続していた妻(生計を共にしている必要がある)です。

寡婦年金が支給されるのは60~65歳までの間であり、受け取れる金額は第1号被保険者だった期間に応じて計算された老齢基礎年金額の4分の3となっています。寡婦年金か死亡一時金のどちらにするのか選択できますので、その場の状況に応じて決めるとよいでしょう。

出典 

【3年以内】死亡保険金の請求・相続登記

【3年以内】死亡保険金の請求・相続登記

被相続人が亡くなってから3年以内に済ませるべき手続きとして、死亡保険金の請求および相続登記が挙げられます。それぞれについてみていきましょう。

死亡保険金の請求の手続き

被相続人が生命保険に加入していた場合、亡くなった日の翌日から3年以内に加入している保険会社に連絡して死亡保険金の請求手続きを済ませましょう。保険会社によって必要書類は異なりますが、一般的には保険証券や死亡診断書、被保険者がなくなったことが分かる住民票、請求者の本人確認書類等が挙げられます。手続き手順等とあわせ、前もって保険会社に問い合わせることをおすすめします。

相続登記の手続き

これまで相続登記の手続きに期限は設けられていませんでしたが、2024年4月1日から相続登記が義務化されます。それに伴い、相続で不動産の取得を知った日から3年以内に正当な理由なく登記もしくは名義変更手続きを済まさなければ、10万円以下の過料が課される恐れがあります。

また、法改正後に発生した相続だけでなく、法改正以前から登記をしていない不動産も適用対象となることに注意が必要です。

民法等の一部を改正する法律 附則

第5条6 
第二号新不動産登記法第七十六条の二の規定は、第二号施行期日前に所有権の登記名義人について相続の開始があった場合についても、適用する。この場合において、同条第一項中「所有権の登記名義人」とあるのは「民法等の一部を改正する法律(令和三年法律第  号)附則第一条第二号に掲げる規定の施行の日(以下この条において「第二号施行日」という。)前に所有権の登記名義人」と、知った日」とあるのは「知った日又は第二号施行日のいずれか遅い日」と、同条第二項中「分割の日」とあるのは「分割の日又は第二号施行日のいずれか遅い日」とする。

出典 法務省HP

相続登記の手続きにあたっては原則として、以下8つの書類を法務局に提出する必要があります。なかには取得するまでに時間がかかる書類もあるため、なるべく早めに手続きの準備を進めるようにしましょう。

1.登記申請書
2.不動産の登記事項証明書
3.遺言または遺産分割協議書
4.被相続人の死亡時から出生時までの戸籍謄本
5.被相続人の住民票の除票
6.相続人全員の戸籍謄本、住民票
7.法定相続人の印鑑証明書
8.固定資産評価証明書

出典 

なお、相続した不動産を取得する際は登録免許税がかかるほか、手続きが非常に複雑であり手間もかかります。自身で相続登記を済ませることもできますが、基本的には司法書士をはじめとした専門家に任せることをおすすめします。
司法書士に手続きを依頼する場合はその費用も必要です。

【5年10ヶ月以内】相続税の還付請求

相続税を納付した後、納税額の計算に誤りが発覚し本来の額より多く納税した場合、申告をやり直して納め過ぎた税金を取り戻せます。これを相続税の還付請求といい、請求ができる期限は申告期限から5年以内、つまり相続が発生したとき(被相続人が死亡したことを知った日、通常は被相続人の死亡の日)から数えて5年10ヶ月以内です。

また「遺族厚生年金」の申請期限も5年であるため、あわせて確認しておくことをおすすめします。遺族厚生年金とは厚生年金保険に加入していた被保険者がなくなった場合に、要件を満たした遺族が受け取ることができる年金のことです。要件については日本年金機構のサイトで確認できますので、あわせてチェックしておきましょう。

相続手続きの期限を過ぎてしまった時のデメリット

相続手続きの期限を過ぎてしまったときのデメリット

ここでは相続手続きの期限を過ぎてしまった時のデメリットを3つ、お伝えします。

・税金の軽減制度が利用できない
・相続税の延滞税等ペナルティがある
・相続内容が変更になることがある

出典 

それぞれ解説します。

税金の軽減制度が利用できない

相続手続きにおいては相続税の負担を軽くするために、さまざまな軽減制度が用意されています。例えば、相続税の配偶者控除(税額の軽減)を利用すれば、配偶者は相続税を負担しなくて済むケースがほとんどです。しかし、相続税の申告期限を過ぎてしまうと、こうした控除・軽減の制度が利用できなくなる恐れがあります。

相続税の延滞税等ペナルティがある

相続税の申告および納税をせずに10ヶ月が経過すると、「延滞税」や「無申告加算税」といったペナルティの対象となります。

・延滞税:期限の翌日から納付日までの日数に応じて課税される
・無申告加算税:納付すべき税額が50万円までは15%、50万円を超える場合は20%が課される

出典 

また、相続税は現金一括支払いが原則となっている一方、なかには一括で支払うことが困難な方もいるでしょう。相続税では「延納」や「物納」といった代替手段が認められていますが、いずれも相続税の申告・納付期限までに申請が必要です。
相続税の申告・納税は必ず期限を守るようにしましょう。

相続内容が変更になることがある

相続手続きを放置することで、相続内容に変更が生じるリスクが高まります。例として、相続手続きを放置している間に相続人の一人が亡くなってしまい、代襲相続が発生したケースで考えてみましょう。

この場合、法定相続人の数が増加することに加え、繫がりが希薄化することにより全員で話し合い(遺産分割協議)を進めることが困難になる可能性があります。また、ほかにも手続きを怠っている間にほかの相続人の意思能力が認知症等によって低下してしまう恐れも否定できません。(※成年後見人が選任されない限り、遺産分割協議を行えない)

このように、相続手続きの放置は手続きにさまざまな支障をきたします。被相続人が亡くなったら速やかに相続手続きを進めましょう。

期限のない相続手続き

期限のない相続手続き

遺産相続には期限のない相続手続きもあります。

・遺言書の検認
・遺産分割協議・調停・審判
・預貯金等の解約・名義変更

出典 

遺言書の検認

自筆証書遺言が発見された場合、公証役場で検認を受ける必要がありますが、検認自体に特に期限は設けられていません。とはいえ、検認には1ヶ月ほどの時間がかかるほか、検認が終わらなければ相続手続きそのものに支障が出てしまいます。そのため、自筆証書遺言をみつけたら速やかに検認手続きを行うようにしましょう。

遺産分割協議・調停・審判

遺産分割協議や調停、審判には期限がありません。ただし、検認と同じくそれらが終わらなければ相続手続きを始められないでしょう。特に遺産分割協議については法定相続人の間で揉める恐れもあることから、早めに話し合いの場を設けることをおすすめします。

預貯金等の解約・名義変更

被相続人が利用していた預貯金口座の解約や名義変更にも法定期限はありません。とはいえ、それらの手続きを行わずに5年以上放置すると「時効」にかかる恐れがあるほか、10年経過すると「休眠預金」として扱われるリスクが高まります。休眠預金とみなされてしまうと公益活動に預貯金が充てられる恐れがあるため、気づいた時点で手続きを済ませておきましょう。

まとめ

今回の記事では、遺産相続で必要となる手続きやその期限、また手続き期限が過ぎた際のデメリット等についてお伝えしました。遺産相続手続きを面倒だからと放置してしまうと、相続税の申告期限に間に合わないほか、延滞税や無申告加算税が課されてしまう恐れがあります。

相続手続きをスムーズに進めるために、手続きごとの期限を把握しておくことはもちろん、必要書類等についても早めに揃えておきましょう。また、自分で手続きを進めることが困難な場合、専門家を頼るのも1つの手です。一人で抱え込まず、時には周りの力を借りながら滞りなく相続手続きを終わらせましょう。

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