相続税が払えない時の解決策!延納や物納でペナルティを回避しよう
相続税は基本的に現金一括で納めますが、一括納付できない時は、延納や物納といった方法で納めます。この記事では、相続税が払えない場合の解決策や注意点を解説します。相続税を期限までに払えなかった場合、課税のペナルティを受けるので注意しましょう。
相続税が払えない場合の対応方法
相続税は遺産を相続した人が払う税金です。相続した財産の価値によって税金がかからない場合もありますが、相続税がかかる場合は原則的として現金一括で納めなければなりません。
不動産など現金化しにくい資産を多く相続すると、相続税を支払うのに十分な現金を確保できない恐れがあります。相続税は納付期限までに納められないとペナルティとして延滞税や無申告加算税が加算されていまします。
この章ではペナルティを避けるために、相続税が払えない時の対応方法について紹介します。
「延納」で相続税を分割して払う
相続税を一括で納めることが難しい時は、分割払いにするという方法があります。この方法を「延納」といい、次の4つの条件を満たしている場合に申請することが出来ます。
1.相続税額が10万円を超えている
2.現金一括で納めることが難しい
3.延納する相続税額と利子税総額相当の担保を提供する
4.相続税の申告期限までに延納申請書と共に必要な添付書類を提出する
延納申請書や添付書類は、管轄の税務署長宛に提出します。税務署では申請書や添付書類をもとに調査を行い、延納の許可・却下の判断を行います。
延納可能な期間は、相続財産に含まれる不動産の割合によって、5年間から20年間までの幅があります。また、延納期間は納税が遅れた利息として利子税がかかります。
「物納」で相続税を現金以外の資産で払う
現金で相続税を納めることが難しい場合、株式や不動産といった現金以外の資産で納める方法があります。現金以外の納税は相続税だけに認められている方法で「物納」といいます。
なお、物納を希望する場合は、次の条件を満たしたうえで税務署長宛てに申請を行います。
1.延納しても現金で相続税を納められない
2.相続した資産の中で物納対象に認められているもので納める
3.換金に手間がかからないもので納める
4.相続税の申告期限までに物納申請書と共に必要な添付書類を提出する
物納の申請があると、税務署では提出された書類をもとに調査を行い、物納の許可・却下の判断を行います。調査結果待ちなどで相続税の申告期限までに納税出来なかった場合は、遅れた期間に利子税がかかります。
なお、物納する財産は相続税を計算する時の時価で評価されます。そのため、特例などを使って相続税を抑えている場合は、市場価値と比べてかなり低い価格で評価されます。
物納出来る財産には次の表のような優先順位があり、順位が高いものを優先的に納めます。
物納制度の優先順位
順位 | 内容 |
---|---|
第一位 | 国債、地方債、不動産、船舶、上場株式 |
第二位 | 非上場株式 |
第三位 | 動産 |
相続財産を売却して現金化する
相続財産が土地や建物、株式などであれば、これらを売却して相続税を払う方法もあります。売却できる財産は、相続人の名義になっているものに限られます。
売却代金で相続税を納める場合、名義変更や、財産の売却手続きを申告期限までに行わなければなりません。なお、相続財産の売却で利益が出ると、所得税の対象になる場合があります。
相続した不動産の売却では、所得税が税額軽減される場合もあるので、所得税の申告が不安な方は、相続専門の税理士法人や弁護士などの専門家に問合せてみましょう。
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金融機関から納税資金を借り入れる
不動産などの現金化が難しい場合には、銀行からお金を借り入れる手段もあります。自宅などの不動産を担保にして借り入れる商品が多いですが、金融機関によっては無担保で借りられる商品もあります。なお、借入には金融機関の審査があり、金額も金融機関によって異なります。
借入に利息がかかりますが、一般的にペナルティとなる延滞税より低い利率が設定されています。また、延納制度の利子税よりも低い利率の商品もあるので、返済期間や利率をもとに負担の少ない方法を検討するのも一案です。
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相続放棄する
もし、相続税を払うのであれば遺産は受け取りたくないという場合は、相続を放棄するという方法もあります。相続税は相続で財産を得た場合に課税されるものですので、相続放棄をすれば相続税を支払う必要がなくなります。
相続放棄は、相続開始から3ヶ月以内に手続きを始めなければなりません。相続放棄をすると、借金などの負債もプラスの財産も引き継ぐことは出来なくなります。また、遺産の分割においてほかの法定相続人にも影響があるので、関係者に周知することも大切です。
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そもそも相続税が払えないケースとは
相続税が払えないケースで多いのが、遺産分割が進まない場合と手元に現金がない場合です。具体的にどのような状況で、どのような問題があるのか確認していきましょう。
遺産分割が進まないケース
遺言書がない場合や、相続トラブルで遺産分割が進まない場合では、相続税の納税額が決まらず、相続税の申告期限に間に合わない場合があります。
相続税は、相続人ごとに受け取った遺産から納税額を求めます。納税の期限は、故人が亡くなった翌日から10ヶ月以内です。
遺産分割が進まない場合の対処法として、法定相続分で相続税を一旦納め、後日修正するという選択もあります。しかし、この方法は相続税の納付手続きを2回することになり、手間が増えてしまいます。また、相続税の負担を軽減する特例の一部が利用できなくなってしまいます。
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支払うための現金がないケース
相続した財産が高額であればあるほど、相続税も高くなります。遺産の多くが不動産などの現金以外の資産の場合、相続した財産の価値は高額でも、現金がないという状態になるケースがあります。
不動産の換金には時間がかかるため、相続税を払うことが難しくなる可能性があります。
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注意!相続税申告のペナルティ
相続税の納付が申告期限までにできなかった場合や、納税額が不足していた場合、ペナルティとしてさまざまな税金がかかってしまいます。この章では、相続税のペナルティとして課税される4種類の税金を解説します。
無申告加算税
相続税の申告を期限内に行わなかった場合に課税されるのが「無申告加算税」です。無申告加算税は、本来払うべき相続税に次の税率をかけて求めます。
・相続税50万円以下の部分に15%
・相続税50万円を超え300万円以下の部分に20%
・相続税300万円を超えた部分に30%
ただし、期限を過ぎても自主的に申告した場合は、税率が5%に軽減されます。また、災害や、交通・通信が途絶えてしまった場合などは、例外的に免除される場合もあります。
過少申告加算税
「過少申告加算税」とは、申告した相続税の金額が不足していた場合に課税される税です。税率は、不足分の税金の10%です。ただし、不足分が50万円を超えている場合や、不足分が期限内に納めた相続税を超えている場合は、超えた部分に対して15%の税金がかかります。
なお、税額を誤って過少に申告した場合、税務署からの事前通知が届く前に自主的に修正申告を行えば、過少申告加算税は課されません。
重加算税
意図的に財産を隠していたり、事実とは異なる金額で申告したりすると「重加算税」が課せられる場合があります。
最も税率の高いペナルティが重加算税で、意図的に納税額を少なく申告をした場合は不足分に35%、申告自体を行っていない場合は、相続税額に40%が加算されます。
延滞税
相続税の納付が期限に間に合わなかった場合、遅れた期間の利息分として「延滞税」を支払います。延滞税の税率は、申告期限の翌日から2ヶ月までの期間は低めに、2ヶ月を超えた期間は高めに設定されています。
なお、具体的な税率は毎年見直されるため、正確な税率を知りたい方は国税庁のホームページをご覧ください。
延滞税は単独で加算されるだけではなく、前述の3つの加算税に付加される場合もあります。
まとめ
相続税が高額になり、もともと持っている現金や、相続した現預金で相続税の支払いが難しい場合でも、さまざまな方法で対応することが可能です。
納税の期限は、故人が死亡した翌日から10ヶ月以内です。
相続税の納付が難しいからと無申告のまま放置したり、意図的に虚偽の申告を行ったりすれば多額のペナルティが発生することも考えられます。
自分だけでは対応できない場合には、専門家へ相談してみるのもおすすめです。納付期限に間に合わせるため、早めに相続対策を検討しましょう。
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