遺言書の基礎知識~エンディングノートとの違いや種類を解説!~

相続の際、遺言書があれば相続人は遺産分割協議をせずに手続きを進めることができます。故人の遺志が明確に示されることで、遺産の分配をめぐって揉めるリスクも抑えられます。いざという時、「家族には大変な思いをさせたくない」と考える人にとって、有効な相続対策になるのが遺言書です。

遺言書の基礎知識~エンディングノートとの違いや種類を解説!~

遺言書とはそもそもどういうもの?

遺言書とはそもそもどういうもの?

遺言書とは自分の遺産相続を想定し、保有財産を棚卸しした上で、それらを誰に、どれくらい分配するのかを記しておく文書のことです。「まだ遺言書を書くような年齢じゃないのに」と抵抗を覚える方もいるかもしれませんが、いつ何が起こるかわからないのが人生です。年齢を問わず、早めに準備しておくに越したことはありません。

エンディングノートとどう違うの?

最近は「エンディングノート」が普及し、金融機関が顧客に配布したり、書店で市販品が販売されたりしています。そもそもエンディングノートとは、自分の判断能力が低下した時の介護や財産管理、あるいは亡くなった後の葬儀や墓をどうしてほしいか、といった要望や意思をあらかじめつづっておくものです。様式や内容に規定はないので、好きなように書くことができます。

ただし、エンディングノートの内容に法的な拘束力はありません。これに対し、遺言書の内容は法的効力を持ちます。それゆえ、遺言書の方式は厳格に定められていて、少しでも不備があると遺言はすべて無効になってしまうので注意が必要です。

一般的な遺言書には3つの種類がある

一般的な遺言書には3つの種類がある

一般的に用いられている遺言のことを「普通方式遺言」と言い、次の3つの種類があります。それぞれの特徴やメリット・デメリットは以下の表をご参照ください。

●公正証書遺言
公証役場に赴き、2人以上の証人の立ち会いの下で遺言者が口述した遺言内容を、公証人が筆記して作成します。原本は公証役場に保管されます。公証役場の手数料は相続財産の規模等に応じて決められています。

●秘密証書遺言
遺言者が作成して署名・押印した上で封印し、公証役場に持ち込んで、公証人や証人立ち会いの下、本人が書いた遺言であることを証明する手続きを行います。公証役場の手数料は1万1000円。遺言書はパソコンで作成したり、第三者に代筆させたりしたものでも構いません。

●自筆証書遺言
遺言者が遺言の全文を手書きし、日付を記して署名・押印した遺言です。かつては「全文手書き」が条件でしたが、2018年民法改正により、財産目録部分についてはパソコンなどで作成した文書や通帳の写しなどで代用しても良いことになりました。ただし、財産目録全ページに署名と押印が必要です。

3つの普通方式遺言の相違点

        公正証書遺言  秘密証書遺言  自筆証書遺言  
遺言の作成者公証人(※)遺言者(代筆も可)遺言者
証人の要否2人以上必要2人以上必要不要
保管場所原本は公証役場、正本は本人本人本人(法務局の保管制度が利用できる)
内容の秘密性保てない保てる保てる
裁判所の検認不要必要必要(法務局の保管制度を利用すれば不要)
作成費用公証役場手数料が必要公証役場手数料が必要不要(法務局の保管制度を利用する場合は手数料が必要)
メリット不備による無効のリスクが少なく紛失しても再発行できる、検認も不要遺言の存在を立証しつつ、内容は秘密にできる誰にも知られず作成でき作り直すのも簡単、費用も安い
デメリット証人が必要で、3つの中で最も費用がかかる証人や検認が必要、不備で無効になるリスクもある紛失や改ざんに加え発見されないリスクがあり、不備で無効になることも
(法務局の保管制度を利用する場合は形式不備や紛失や改ざん等のリスクはありません)

(※)遺言者が遺言内容を口授し、公証人が公正証書として作成。

特殊な事情があれば特別方式遺言を使える

普通方式で遺言書を作成できない特殊な状況下では、条件を緩和した「特別方式遺言」の作成が認められています。特別方式遺言には、病気や事故などで生命の危機が迫っている際の「危急時遺言」と、伝染病で隔離された人や、被災した人、服役中の人などのための「隔絶地遺言」があります。遺言者が特殊な状況を脱し、普通方式での作成が可能な状態になってから6ヶ月が経過すると、特別方式での遺言は無効とされます。

一番確実なのは公正証書遺言

普通方式の3つの遺言書にはそれぞれ長所と短所がありますが、“いざという時の有効性”という遺言書の最重要目的を考えた時、一番安心・確実なのは公正証書遺言です。作成時に法律のプロである公証人のチェックを受けるため、遺言そのものが無効になる可能性は極めて低く、なおかつ、紛失や改ざんの恐れもないからです。

秘密証書遺言や自筆証書遺言だと原則、家庭裁判所に検認の申し立てが必要になり、裁判所によっては検認期日まで1~2ヶ月待たされることもあります。時間や手間がかかる検認手続きが不要なのも、公正証書遺言ならではのメリットと言えます。

2020年7月から自筆証書遺言の保管制度がスタート

2020年7月から自筆証書遺言の保管制度がスタート

2020年7月10日からは、法務大臣の指定する法務局で自筆証書遺言を保管する制度が始まりました。

保管の手続きは遺言者本人が行う必要があり、1件につき保管申請手数料が3,900円かかります。預けられた遺言書はデータ化され、遺言者が亡くなった後には相続人が遺言書の有無を問い合わせたり、保管所で原本を確認したり、証明書の交付を請求したりすることができます。

相続人間の平等に配慮し、1人の相続人が遺言書情報の閲覧や交付の請求を行った場合は、他の相続人にも遺言書保管の事実が通知される決まりになっています。また、保管制度を利用した場合は前述の検認手続きが不要になります。

まとめ

まとめ

遺言書作成には専門知識も必要で、概要は理解できても、「自分1人で手続きするのは不安」という人が少なくないようです。そうした場合は、信託銀行などが取り扱う「遺言信託」を利用する手もあります。担当者から専門的なアドバイスを受けた上で公証役場に出向いて公正証書遺言を作成するサポートをしてもらい、相続発生後は遺言の執行を任せることができます。公証役場の手数料に加えて信託銀行などに支払う手数料がかかりますが、多忙で手続きをする余裕がない人や、相続をスムーズに行いたい人には一考の価値がありそうです。

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