遺言書の種類一覧と作成方法!種類別のメリットとデメリットも解説

遺産の相続に当たって作成する遺言書。どのような種類があるのでしょう。公正証書遺言・秘密証書遺言・自筆証書遺言、特徴やメリット、デメリットを解説しました。自分の死後、家族には大変な思いをさせたくないという方は確実な遺言書を残しましょう。

遺言書の種類一覧と作成方法!種類別のメリットとデメリットも解説

遺言書とは?

遺言書とは?

遺言書とは自分の遺産相続を想定し、保有財産を棚卸しした上で、それらを誰に、どれくらい分配するのかを記しておく文書のことです。法的な拘束力を持つため、民法によって書き方が定められています。

似た言葉で「遺言」や「エンディングノート」があります。遺言の内容は遺言書に書かれるものと同じですが、書面にしていないため法的拘束力はありません。エンディングノートは書面ではありますが、遺言書のような法的拘束力はありません。

エンディングノートとは?

エンディングノートは法的拘束力はないものの、死後に本人の意思を伝えることができ、最近注目が集まっています。具体的には、自分の判断能力が低下した時の介護や財産管理、あるいは亡くなった後の葬儀や墓をどうしてほしいか、といった要望や意思をあらかじめつづっておきます。金融機関が顧客に配布したり、書店で市販品が販売されたりしており、様式や内容に規定はないので、好きなように書くことができるでしょう。

また、エンディングノートは大切な人への思いや自分自身の人生の振り返りを記録することもできます。終活を始める際、まずはエンディングノートに思いを残すのがよいでしょう。

遺言書の種類一覧(普通方式遺言)

遺言書の種類一覧(普通方式遺言)

遺言書は「普通方式遺言」と「特別方式遺言」の2種類があります。一般的に用いられている「普通方式遺言」には、「公正証書遺言」「秘密証書遺言」「自筆証書遺言」の3つの種類があります。それぞれの特徴やメリット・デメリットは以下の表をご参照ください。

公正証書遺言

公証役場に赴き、2人以上の証人の立ち会いの下で遺言者が口述した遺言内容を、公証人が筆記して作成します。原本は公証役場に保管されます。公証役場の手数料は相続財産の規模等に応じて決められています。

公正証書遺言のメリット

公正証書遺言のメリットは、法的に有効な遺言書を作成でき、公証役場で保管もしてくれるので紛失や隠ぺいの心配がない点でしょう。公証人に自宅や病院に訪問してもらって作成することもできるので、自分での作成が困難な方はありがたいです。

公正証書遺言のデメリット・注意点

公正証書遺言のデメリットは、費用がかかる点です。また、事前に公証役場に申請をしたり、公証人を2人以上用意する必要があったり、手間もかかるでしょう。

公正証書遺言を作成する場合の手数料

公正証書遺言は相続する財産の金額によって作成にかかる料金が異なり、公証人に支払う手数料は法律によって決められています。以下の表を参考にしてください。また、以下の表の金額に加えて、財産が1億円未満の場合は、遺言手数料として1万1,000円が加えられます。

その他、用紙代や自宅や病院に訪問してもらった場合の出張費なども必要でしょう。

公正証書遺言を作成する場合の手数料

目的の財産の価格手数料  
100万円以下5,000円
100万円を超え200万円以下7,000円
200万円を超え500万円以下1万1,000円
500万円を超え1,000万円以下1万7,000円
1,000万円を超え3,000万円以下2万3,000円
3,000万円を超え5,000万円以下2万9,000円
5,000万円を超え1億円以下4万3,000円

公正証書の証人の人数と条件

公正証書の作成には2名以上の承認が必要です。以下に当てはまる方は証人になることができません。

・未成年
・推定相続人
・受遺者
・推定相続人の配偶者や直系家系
・受遺者の配偶者や直系家系

公証役場では、証人を紹介してもらうことも可能です。相続に関する相談をしている税理士や弁護士がいれば、証人をお願いすることもできるでしょう。

秘密証書遺言

秘密証書遺言は、遺言者が作成して署名・押印した上で封印し、公証役場に持ち込んで、公証人や証人立ち会いの下、本人が書いた遺言であることを証明してもらうものです。

秘密証書遺言のメリット

秘密証書遺言のメリットは、パソコンで作成したり、第三者に代筆させたりしても大丈夫という点でしょう。また、遺言の内容を事前に知られることもありません。

秘密証書遺言のデメリット・注意点

デメリットとしては、公証役場に保管してもらえないので紛失や隠ぺいのリスクがある点です。また、遺言の内容を公証役場で確認してもらっていないので、不備があった場合は遺言内容が無効になる点を注意しましょう。

秘密証書遺言を作成する場合の手数料

公証役場の手数料は、一律で1万1000円。相続財産の金額が大きい場合は安く感じるかもしれませんが、不確実性も高い遺言書なのでリスクも大きいでしょう。

自筆証書遺言

遺言者が遺言の全文を手書きし、日付を記して署名・押印した遺言です。かつては「全文手書き」が条件でしたが、2018年民法改正により、財産目録部分についてはパソコンなどで作成した文書や通帳の写しなどで代用しても良いことになりました。ただし、財産目録全ページ署名と押印が必要です。

自筆証書遺言のメリット

自筆証書遺言のメリットは、第三者へ依頼しなくても作成や申請ができるので手軽に遺言書が作成できる点です。自宅で保管しても問題ないですが、法務局の保管制度が利用でき、その場合は家庭裁判所による検認手続きは不要となるでしょう。

自筆証書遺言のデメリット・注意点

デメリットとしては、法務局の保管制度を利用しない場合に、紛失や隠ぺいのリスクがあること。また、その遺言書を発見した相続人は家庭裁判所に遺言書を提出して検認手続きをする必要があります。
内容に不備があった場合に遺言が無効になる点も注意しましょう。

自筆証書遺言を作成する場合の手数料

基本的に費用は不要です。法務局の保管制度を利用する場合は、手数料がかかります。

3つの普通方式遺言の相違点

        公正証書遺言  秘密証書遺言  自筆証書遺言  
遺言の作成者公証人(※)遺言者(代筆も可)遺言者
証人の要否2人以上必要2人以上必要不要
保管場所原本は公証役場、正本は本人本人本人(法務局の保管制度が利用できる)
内容の秘密性保てない保てる保てる
裁判所の検認不要必要必要(法務局の保管制度を利用すれば不要)
作成費用公証役場手数料が必要公証役場手数料が必要不要(法務局の保管制度を利用する場合は手数料が必要)
メリット不備による無効のリスクが少なく紛失しても再発行できる、検認も不要遺言の存在を立証しつつ、内容は秘密にできる誰にも知られず作成でき作り直すのも簡単、費用も安い
デメリット証人が必要で、3つの中で最も費用がかかる証人や検認が必要、不備で無効になるリスクもある紛失や改ざんに加え発見されないリスクがあり、不備で無効になることも
(法務局の保管制度を利用する場合は形式不備や紛失や改ざん等のリスクはありません)

(※)遺言者が遺言内容を口授し、公証人が公正証書として作成。

特殊な事情があれば特別方式遺言を使える

普通方式で遺言書を作成できない特殊な状況下では、条件を緩和した「特別方式遺言」の作成が認められています。特別方式遺言には、病気や事故などで生命の危機が迫っている際の「危急時遺言」と、伝染病で隔離された人や、被災した人、服役中の人などのための「隔絶地遺言」があります。遺言者が特殊な状況を脱し、普通方式での作成が可能な状態になってから6ヶ月が経過すると、特別方式での遺言は無効とされます。

一番確実なのは公正証書遺言

普通方式の3つの遺言書にはそれぞれ長所と短所がありますが、“いざという時の有効性”という遺言書の最重要目的を考えた時、一番安心・確実なのは公正証書遺言です。作成時に法律のプロである公証人のチェックを受けるため、遺言そのものが無効になる可能性は極めて低く、なおかつ、紛失や改ざんの恐れもないからです。

秘密証書遺言や自筆証書遺言だと原則、家庭裁判所に検認の申し立てが必要になり、裁判所によっては検認期日まで1~2ヶ月待たされることもあります。時間や手間がかかる検認手続きが不要なのも、公正証書遺言ならではのメリットと言えます。

2020年7月から自筆証書遺言の保管制度がスタート

2020年7月から自筆証書遺言の保管制度がスタート

2020年7月10日からは、法務大臣の指定する法務局で自筆証書遺言を保管する制度が始まりました。

保管の手続きは遺言者本人が行う必要があり、1件につき保管申請手数料が3,900円かかります。預けられた遺言書はデータ化され、遺言者が亡くなった後には相続人が遺言書の有無を問い合わせたり、保管所で原本を確認したり、証明書の交付を請求したりすることができます。

相続人間の平等に配慮し、1人の相続人が遺言書情報の閲覧や交付の請求を行った場合は、他の相続人にも遺言書保管の事実が通知される決まりになっています。また、保管制度を利用した場合は前述の検認手続きが不要になります。

まとめ

まとめ

遺言書作成には様々な種類があり専門知識も必要でしょう。概要は理解できても、「自分1人で手続きするのは不安」という人が少なくないようです。そうした場合は、信託銀行などが取り扱う「遺言信託」を利用する手もあります。担当者から専門的なアドバイスを受けた上で公証役場に出向いて公正証書遺言を作成するサポートをしてもらい、相続発生後は遺言の執行を任せることができます。公証役場の手数料に加えて信託銀行などに支払う手数料がかかりますが、多忙で手続きをする余裕がない人や、相続をスムーズに行いたい人には一考の価値がありそうです。

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