中高齢寡婦加算とは?亡くなった夫や残された妻の条件・受給額を解説

遺族厚生年金の加算制度のひとつである「中高齢寡婦加算(ちゅうこうれいかふかさん)」は残された遺族にとって重要な年金のひとつ。この記事では、中高齢寡婦加算の概要や受給できる条件などをわかりやすく紹介します。中高齢寡婦加算が自分にどのように適応されるのか、理解を深めましょう。

中高齢寡婦加算とは?亡くなった夫や残された妻の条件・受給額を解説

中高齢寡婦加算とは?

中高齢寡婦加算とは?

「中高齢寡婦加算(ちゅうこうれいかふかさん)」とは、遺族厚生年金の加算制度の1つです。18歳までの子供がいない妻は、夫が亡くなっても遺族基礎年金を受給できず、生活を維持するのが困難になってしまうかもしれません。そのようなケースを防ぐために、夫を亡くした40〜64歳の妻を対象に、遺族厚生年金を上乗せする制度が中高齢寡婦加算です。

中高齢寡婦加算金は、夫を亡くした全ての妻が受給できるわけではなく、対象となるにはいくつかの要件があります。遺族厚生年金を補完する制度であるため、そもそも遺族厚生年金の受給要件を満たしていない方は対象とならないので注意しましょう。

遺族厚生年金とは?

国民年金や厚生年金に加入している方が亡くなった場合、その方によって生計を維持されていた遺族の生活を保障するために、「遺族年金」が支給されます。遺族年金には、「遺族厚生年金」と「遺族基礎年金」の2種類があり、子どもの有無や年齢、加入している保険の種類などでそれぞれ受給条件が異なります。そのため、どちらも受給できない方や、片方のみを受給できる方、またどちらも受給できる方など、人によって内容は異なります。

遺族厚生年金とは、厚生年金に加入している会社員や公務員などが亡くなったとき、遺族に支給される年金のことです。
以下の要件のいずれかを満たしていれば遺族に遺族年金が支給されます。

・厚生年金保険の被保険者である間に死亡したとき
・厚生年金の被保険者期間に病気やけがで初診を受け、初診日から5年以内に死亡したとき
・1級・2級の障害厚生(共済)年金を受けとっている方が死亡したとき
・老齢厚生年金の受給権者であった方が死亡したとき
・老齢厚生年金の受給資格を満たした方が死亡したとき

出典 

遺族厚生年金の受給対象者は、以下のとおりです。

・妻:子どものいない30歳未満の妻の場合は、5年間のみ受給できる
・子ども:18歳になる年度末を経過していない方、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある方
・夫:死亡時の年齢が55歳以上である方のみ
・父母:死亡時の年齢が55歳以上である方のみ
・孫:18歳になる年度末を経過していない方、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある方
・祖父母:死亡時の年齢が55歳以上である方のみ

出典 

夫や父母、祖父母が受給する場合は、60歳からの受給となり、夫に関しては、遺族基礎年金が受給できる場合は、55歳から受給できます。

一方、「遺族基礎年金」とは、国民年金に加入している方が亡くなったとき、遺族に支給される年金のことです。遺族厚生年金とは違い、子どものいない配偶者は受給対象となりません。

【参照】日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」詳しくはこちら

中高齢寡婦加算を受給できる条件

中高齢寡婦加算を受給できる条件

中高齢寡婦加算を受給するには、次のいずれかの要件を満たす必要があります。

【亡くなった夫】
・厚生年金保険の被保険者である間に死亡したとき
・厚生年金の被保険者期間に病気やけがで初診を受け、初診日から5年以内に死亡したとき
・1級・2級の障害厚生(共済)年金を受けとっている方が死亡したとき
・老齢厚生年金の受給権者であった方が死亡したとき(受給資格期間が25年以上の方のみ)
・老齢厚生年金の受給資格を満たした方が死亡したとき(厚生年金の被保険者期間が20年以上ある方のみ)

【残された妻】
・夫が亡くなったとき40歳以上65歳未満で、生計を同じくしている子がいない妻
・夫が亡くなったときは40歳未満で子どもがいたが、40歳に達した後、子どもが18歳到達年度の末日(3月31日)に達した(障害の状態にある場合は20歳に達した)ため、遺族基礎年金を受給できなくなったとき

出典 

なお、ここでいう子どもの定義とは、18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子(障害等級1級または2級の障害を持つ場合は20歳未満の子)を指します。遺族厚生年金の請求手続きを行い、受給条件を満たしている場合は自動的に金額が加算されるため、自ら手続きを行う必要はありません。

【参照】日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」詳しくはこちら

中高齢寡婦加算がもらえないケース

中高齢寡婦加算がもらえないケース

中高齢寡婦加算は年齢や被保険者期間等の細かな受給条件を定めているため、自分が対象となるのかをすぐに判断するのは難しいかもしれません。中高齢寡婦加算をもらえないケースとして多く見受けられるのは、以下の3つのケースです。

・遺族基礎年金を受給している
・受給者が結婚したり養子になったりして、亡くなった夫と関係性が変わった
・夫の厚生年金加入期間が20年未満

中高齢寡婦加算は、遺族基礎年金と同時に受給することができません。遺族基礎年金とは、国民年金に加入している方が亡くなった時に遺族に支給される年金のことです。基本的に子供のいる遺族に支給されるもので、子供が18歳になった年度末以降は支給が停止されます。したがって、遺族基礎年金を受給している妻が中高齢寡婦加算を受け取るには、子供が18歳になった年度末以降であることが条件です。まずは自分がどの遺族年金を受け取っているのかを確認しておくことが大切です。

また、中高齢寡婦加算は、夫を亡くした妻に対して生活を保障するために支給するものです。結婚したり、養子になったりすると遺族厚生年金の受給資格もなくなってしまうため、中高齢寡婦加算の対象になりません。亡くなった夫との関係性が変わると受給の権利を失うことになるので注意しましょう。

加えて、亡くなった夫の厚生年金加入期間が20年以内である場合も、中高齢寡婦加算を受給できません。夫が国民年金と厚生年金保険に分散して加入していた場合等は、遺族厚生年金の受給はできるものの、中高齢寡婦加算の受給対象にならないケースも多く見受けられます。

中高齢寡婦加算の受給金額

中高齢寡婦加算の受給金額

中高齢寡婦加算の支給額は毎年見直されており、令和4年(2022年)度は年間583,400円です。金額は毎年異なるものの、遺族基礎年金の満額の4分の3程度です。
前述のとおり遺族基礎年金と中高齢寡婦加算は同時に受給できませんが、遺族厚生年金の対象者には、遺族厚生年金に中高齢寡婦加算を足した金額が支給されます。

中高齢寡婦加算の受給期間

中高齢寡婦加算を受給できる期間は、夫を亡くした妻が40歳から65歳になるまでの期間です。65歳になり、老齢基礎年金がもらえるようになると「経過的寡婦加算」という新たな制度が適用されます。

経過的寡婦加算とは?

「経過的寡婦加算」とは、中高齢寡婦加算を受け取っていた方が65歳になったとき、代わりに適用される制度のことです。65歳になると老齢基礎年金が支給されますが、老齢基礎年金が始まったのは昭和61年4月1日です。そのため、昭和61年4月1日時点で30歳以上の方は、老齢基礎年金が満額でも40年加入している方に比べ4分の3未満となってしまい、老齢基礎年金額が中高齢寡婦加算額よりも少なくなってしまいます。
このような年金額の低下を防止するために、中高齢寡婦加算に代わって一定額を支給する制度を経過的寡婦加算といいます。経過的寡婦加算を受給するには、下記のいずれかの要件を満たす必要があります。

【亡くなった夫】
・厚生年金への加入期間が20年以上あること
・40歳以降に厚生年金への加入期間が15年以上あること

出典 

また、残された妻については、下記の要件を全て満たす必要があります。

【残された妻】
・1956年(昭和31年)4月1日以前に出生したこと
・65歳以上であること
・遺族厚生年金の受給権者であること
経過的寡婦加算の支給額は、老齢基礎年金の額と合わせるとちょうど中高齢寡婦加算の額と同額になるように計算され、年齢によって加算額が決まっています。

出典 

また、経過的寡婦加算は妻が65歳になった歳から生涯受け取れるものです。夫が亡くなった年齢に関わらず受給でき、対象者は65歳に達すると自動的に適用されるため、自ら手続きを行う必要はありません。

【参照】日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」詳しくはこちら

まとめ

まとめ

「中高齢寡婦加算(ちゅうこうれいかふかさん)」とは、夫を亡くした妻に対して、遺族厚生年金に加算するかたちで支給される年金のことです。夫が亡くなると、その方の収入によって生計を維持していた場合、経済的に困難な状況に陥ってしまうケースも少なくありません。そのような状況を防ぐために、国民年金や厚生年金に加入している方が亡くなった場合は遺族年金が遺族に支給されます。

遺族年金は「遺族厚生年金」と「遺族基礎年金」の2種類に分けられ、どの年金をもらえるかは年齢や子供の有無等の要件によって異なります。中高齢寡婦加算は、遺族年金の受け取り状況や保険に加入している期間、子供の年齢等、細かな受給要件が定められているため、自分に当てはまるものをよく確認しましょう。

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