相続で重要な「財産目録」とは?主な目的や書き方などを解説

「どのような遺産があるのかわからず不安」、「相続の際に手続きなどをスムーズに行いたい」など、相続時に備え財産目録の作成を考えている方も多くいらっしゃると思います。遺産相続では、まず被相続人の遺産全てを把握する必要があります。作成しておくと遺産の把握に役立つ財産目録とは何か、その特徴や作る際のポイントについて説明します。

相続で重要な「財産目録」とは?主な目的や書き方などを解説

財産目録とは

財産目録とは

財産目録とは、相続する財産をまとめた一覧表のことです。被相続人の所有する預貯金や不動産、有価証券などのプラス資産と、借金などのマイナス資産を記載します。財産目録は遺言書作成時又は相続時に、相続する財産を整理するために作成されます。

財産目録は必ず作らなければならないものではありませんが、相続財産が多いときほど預貯金や不動産などの財産全てを把握することが難しくなるため、財産目録の必要性が高まります。財産目録があると遺産の内容を把握しやすくなり、遺産分割協議をスムーズに行えるメリットがあります。

財産目録はパソコンなどで制作も可能

自筆証書遺言に財産目録を添付することができますが、従来は財産目録を手書きで作成する必要がありました。それが平成31年7月1日の民法改正により、自筆証書遺言へ添付する財産目録をパソコンなどでも作成できるようになり、これまでよりも簡単に作れるようになりました。
ただし、財産目録は手書き以外での作成が可能になりましたが、遺言書そのものはこれまでどおり手書きでなければなりません。

財産目録を作る際のポイント

財産目録を作る際のポイント

財産目録には規定の様式などがなく、作成方法が厳格に決まっているわけではありません。基本的に自由な様式で作成できますが、財産目録には相続財産を明確にするため気をつけなければならない部分があります。記載するべき財産など、財産目録作成時に注意が必要なポイントについて説明します。

①項目は詳細に書く

財産目録は相続手続きの際に使いますので、手続きで記入が求められる内容をすぐに確認できるように、財産目録には財産の詳細をまとめておく必要があります。そのため、それぞれの財産について、証拠書類を見ながら正確な資産の種類、内容、評価額などを書き込みましょう。不動産の場合には、法務局で発行される「全部事項証明書」を元に「所在・種類・面積・評価額等」を記入して作成します。

【主な記入項目と詳細】

1. 不動産
所在、家屋番号、種類、床面積・地積、地目・現況、持ち分、構造、評価額等

2. 預貯金
銀行名、支店名、口座種別、口座番号、名義、最終確認日、預金残高、管理者

3. 有価証券(証券会社に預けている株式など)
証券会社名、取引支店名、有価証券種類、銘柄(会社名)、保有数、評価額

4. 生命保険
保険会社名、保険種類、証券番号、保険金額(受取額)、契約者、受取人

5. 自動車、美術品、貴金属などの動産
資産種類、資産を特定できる特徴、保管場所、評価額

6. 借金、未払い家賃など
借入先名、負債の内容(住宅ローン・自動車ローンなど)、借入日、残額、返済月額、備考(保証人名など)

7. 保証債務
借入先名、負債の内容、借入日、残額、備考(連帯保証人の立場など)

出典 

※1・3・5 評価額は、遺産分割協議を前提として作成する場合には記載しますが、遺言書に添付する場合は記載しないことが多いです。
※2 最終確認日、預金残高、管理者は、遺産分割協議を前提として作成する場合には記載しますが、遺言書に添付する場合は記載しないことが多いです。
※4 生命保険の保険金は遺産分割の対象とならないため、特段の事情がない限り遺産分割協議を前提とした場合及び遺言書に添付する場合には、記載しないことが多いです。ただし、相続税を算定する際に必要になります。
※6・7 マイナスの資産は遺産分割の対象とならないため、遺産分割協議を前提として作成する場合には記載しますが、遺言書に添付する場合は記載しないことが多いです。

上記相続財産の内容が変わった場合には、その都度遺言書や財産目録を書き直す必要があります。

②プラスの財産だけでなく、マイナスの財産も記載する

②プラスの財産だけでなく、マイナスの財産も記載する

財産目録には、預貯金や不動産、動産といったプラスの財産だけではなく、被相続人が生前に借りていた借金・ローンの残額、未払いの税金・光熱費、保証債務など、支払い義務が生じるマイナス財産も記入しなければなりません。プラスの財産について内容を詳細に記入してから、葬儀費用を含むマイナスの負債を詳しく記入して財産目録を作成します。プラスの財産からマイナスの財産を差し引いて、財産の合計額まで記入すると完成です。

③パソコンで作成の場合は全ページに署名押印が必要

③パソコンで作成の場合は全ページに署名押印が必要

自筆証書遺言につける財産目録については、手書きだけでなくパソコン等で作成してもかまいません。様式の制限がないため、1枚ずつの印刷や両面印刷など、どのような印刷方法でも作成可能です。ただし、パソコン等で作った財産目録には、全てのページに署名・捺印する必要があります。
財産目録は手書き以外でも作成できるので、作成を全て他者に任せる形で依頼することも可能です。完成した財産目録は、プラスの資産とマイナスの資産、資産総額などについて確認してから署名・捺印します。

④財産目録は自筆証書遺言とは別紙で作成

自筆証書遺言の遺言書に記入できるスペースが空いていたとしても、財産目録を同じ用紙にまとめて書き込むのではなく遺言書と別の用紙で作成した方が記載内容変更などの必要が生じた際に便利です。財産目録を別紙で作成した場合、完成したら適切に保管するため、両方を個別にステープラーなどで止めておくなどの注意が必要です。
また、自筆証書遺言と同じ用紙に財産目録を記載する場合には、財産目録も手書きで作成しなければなりません。

⑤遺言書は自筆で書く必要あり

財産目録はパソコン等でも作れますが、遺言書は被相続人自身が全文手書きで作る必要があります。本文から日付、署名まで、全てを手書きでもれなく記入します。遺言書作成に使用する用紙には制限がなく、ボールペンや万年筆など、筆記用具にも指定がないため、自由に作成可能です。鉛筆を使うこともできますが、消えやすい筆記具を使った場合、劣化が生じたり偽造・変造をされたりしやすくなるため、できるだけボールペンなどで作成することが望ましいです。
遺言書作成後に訂正する場合には、訂正する場所に二重線を引いてその二重線の脇に訂正後の内容を書き入れ、記入した文近くに署名・捺印で使用した印鑑を押します。さらに訂正した内容を文末もしくは訂正箇所の近くに「○行目、○字削除、○字加入」と記入し署名しましょう。

財産目録Q&A

財産目録Q&A

財産目録作成に関してよくある質問をまとめました。

Q. 財産目録は必ず必要?

必ず財産目録を作らなければならないということはありません。ただし、財産目録は相続する財産全ての一覧なので、作成しておくと遺産分割協議や相続税申告などがスムーズに行えます。

Q. 書き方に決まった形式はある?

財産目録の書き方に決まった形式はありません。

Q. 間違っていた場合はどうなる?

財産目録の内容が相続時の遺産内容と異なっていた場合、財産目録の内容が正しい部分についてのみ遺言の内容が有効に働きます。ただし、遺言書への財産目録の添付は遺言書の要件ではないため、財産目録の内容が全て実際の資産と異なっていた場合、遺言書自体には効力はあるものの、意味を成さないことになります。

まとめ

財産目録とは相続する財産をまとめて一覧表にしたもので、相続時の遺産分割協議や相続税の手続きなどで使われる書類のことです。相続時に必ず作らなければならないものではありませんが、財産目録の作成により相続手続きがスムーズに進められます。
財産目録には特定の様式がなく、遺言書に添付する財産目録についても手書き以外にパソコン等でも作成できるようになったため、これまでよりも楽に財産目録が作れるようになりました。財産の内容を適切に把握できるように、不動産や預貯金など資産については詳細を書き込む必要があります。内容を間違えないように注意しながら、正確かつ詳細に作成することが大切です。

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