相続した土地の売却にかかる税金はいくら?税金の計算方法や相続税対策

相続した土地を売却する際は多額の税金がかかるので、相続税の負担を軽減したいと考えている方も多いのではないでしょうか。今回は、相続した土地を売却した際にかかる税金や費用のシミュレーション、さらに税金の特例や「長期譲渡所得金額」「短期譲渡所得金額」の違いについても解説します。

相続した土地の売却にかかる税金はいくら?税金の計算方法や相続税対策

土地を相続した際にかかる税金

土地を相続した際にかかる税金

土地を相続した際にかかる税金は相続税、登録免許税、不動産取得税があります。それぞれ見ていきましょう。

1. 相続税

正味の遺産額(純資産価額)から基礎控除(3千万円+相続人×600万円)を差し引いた課税遺産総額がプラスとなったときに、相続税がかかります。正味の遺産額とは、小規模宅地の特例などの減額後の総遺産額から債務・葬式費用などを差し引いたものです。
相続税の総額は、課税遺産総額を法定相続分で遺産分割したものとして算出します。税率は10~55%で、法定相続分による取得金額により異なります。

2. 登録免許税

土地を相続した際には、名義を相続人に変更しなければなりません。名義変更の登記申請をする際には、登録免許税がかかります。登録免許税は、土地の価額(固定資産税評価額)に0.4%を乗じます。

3. 不動産取得税

不動産取得税は、土地や家屋の購入、贈与、家屋の建築などで不動産を取得したときに、取得した方に対して課税される税金です。

■不動産取得税の計算方法
土地・建物の税額 = 固定資産税評価額×4%(標準税率)

出典 

ただし、特例により課税標準額は、土地及び住宅の場合、 3%(2024年3月31日まで)です。
もし土地を相続し、相続税の納付が難しい場合、それらを売却して現金化し、税金を納めるという手段があります。

売却(譲渡)した場合の税金

売却(譲渡)した場合の税金

次に、土地を売却(譲渡)したときにかかる税金やその計算方法、支払い方法などについて解説します。

譲渡所得にかかる税金

土地を売却して、取得した金額よりも高く売れて利益(譲渡益=譲渡所得)が生じたときには、譲渡所得税がかかります。譲渡所得は次の計算式により、算出されます。

■譲渡取得額の計算方法
課税譲渡所得金額=譲渡価額(売却した金額)−(土地の取得費+土地の譲渡費用)

出典 

土地の取得費とは、土地を購入した際に支払った購入代金、仲介手数料、登録免許税などです。取得費が譲渡価額の5%以下のときや不明のときには、譲渡価額の5%相当額を取得費とします。相続した土地を売却する際の取得費は、被相続人(故人)が取得した際の取得費を引き継ぎます。土地の譲渡費用とは、土地を売却する際に支払った仲介手数料などです。

譲渡所得金額に適用される税率は、土地を所有していた期間により、長期譲渡所得と短期譲渡所得に分けられます。相続した土地を売却する際の所有期間は、被相続人がその土地を取得した日から数えます。
譲渡所得税は、譲渡所得金額に税率を掛けて算出しますが、長期か短期かによって、税率が異なります。
2013年(平成25年)から2037年(令和19年)までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1%を所得税と併せて申告・納付する必要があります。

長期譲渡所得金額

長期譲渡所得とは、売却した年の1月1日現在で所有期間が5年を超える不動産のことです。税率は所得税15%・住民税5%となります。

課税長期譲渡所得金額が6,000万円の例

譲渡所得にかかる税金
の種類
譲渡所得にかかる税額
所得税 6,000万円×15%=900万円
住民税 6,000万円×5%=300万円
復興特別所得税 900万円×2.1%=18万9,000円

短期譲渡所得金額

短期譲渡所得金額とは、売却した年の1月1日現在で所有期間が5年以下の不動産のことです。税率は、所得税30%・住民税9%となります。

課税短期譲渡所得金額が6,000万円の例

譲渡所得にかかる税金
の種類
譲渡所得にかかる税額
所得税 6,000万円×30%=1,800万円
住民税 6,000万円×9%=540万円
復興特別所得税 1,800万円×2.1%=37万8,000円

税金のかかる期間や支払い方法

税金のかかる期間や支払い方法

土地を売却して、譲渡所得が出て譲渡所得税を支払う必要があるときには、確定申告が必要です。確定申告の申告期限は、譲渡所得が発生した年の翌年の2月16日から3月15日までです。譲渡所得税が課税される期間は、土地を売却した年だけです。また、譲渡代金を2年以上に分けて受け取る契約でも、全額が譲渡した年の収入となります。

確定申告書には、「譲渡所得の内訳書」を添付します。内訳書には、譲渡した土地の所在地、譲渡先、譲渡金額、取得費・譲渡費用の明細などを記入し、譲渡所得金額を算出します。
譲渡所得は、給与所得や農業所得、年金など、譲渡所得以外の所得と一緒に確定申告します。しかし、譲渡所得は分離課税なので、他の所得とは区分して税金を算出します。

所得税の支払い方法は、申告期限までに税務署や銀行の窓口で現金で納付するほか、クレジットカード払いや、口座振替が利用できます。口座振替は、4月中旬ごろに銀行口座から引き落とされます。
譲渡所得があるのに確定申告が遅れたり、しなかったりすると、延滞税や無申告加算税が追徴されます。忘れずに、申告期限までに済ませましょう。

売却の手続きにかかる費用など

土地を売却する際にかかる費用は、次のとおりです。

・譲渡所得から控除できる譲渡費用となるもの
 仲介手数料
 売買契約書の印紙税
 建物の取り壊し費用
 貸家の賃借人に対する立退き料 

・譲渡費用とならないもの
 固定資産税や修繕費など土地の維持・管理のための費用
 弁護士報酬など譲渡代金の取り立てにかかった費用 など

特例で売却時の税金が安くなることも

特例で売却時の税金が安くなることも

相続した土地を売却する際には、次の特例を利用すれば、税金が安くなることもあります。

相続税の取得費への加算の特例

相続した土地・家屋を相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限(死亡日から10ヶ月)の翌日以後3年を経過する日までに売却したときには、売却した土地・家屋に対応する相続税を取得費に加算できます。
その土地・家屋を相続し、相続税を課税された相続人が、売却するときに適用されます。

居住用の土地・家屋を売却したときの特例

相続した土地・家屋に相続人が居住していたら、譲渡所得金額から3千万円の特別控除が適用されます。譲渡所得金額が3千万円に満たないときには、譲渡所得金額が上限となります。長期譲渡所得でも短期譲渡所得でも適用されます。また、所有期間が10年を超える居住用の土地・家屋では、適用要件を満たせば軽減税率の適用や買い換えの特例などが適用されます。

軽減税率の適用例として、マイホームを売った年の1月1日現在で、そのマイホームの所有期間が10年を超えている場合は、(1)3,000万円の特別控除の特例を適用した後の課税長期譲渡所得金額に対して、次のとおり軽減された税率で税額を計算することになります。

課税長期譲渡所得金額 所得税 住民税
6,000万円までの部分 10% 4%
6,000万円を超える部分 15% 5%

注:確定申告の際には、所得税と併せて基準所得税額(所得税額から、所得税額から差し引かれる金額を差し引いた後の金額)に2.1%を掛けて計算した復興特別所得税を申告・納付することになります。

したがって、10年を超える居住地を相続する場合は、より有利な税率が適用される場合があるので、適用条件に当てはまるかどうかよく確認するようにしましょう。

被相続人が居住していた空き家を売ったときの特例

現在、各地で社会問題となっている空き家を解消するために設けられた特例です。被相続人が相続の開始直前まで居住していた家屋や土地を売却したときに、譲渡所得金額から3千万円の特別控除が適用されます。
この特別控除を受けるためには、2016年(平成28年)4月1日から2023年(令和5年)12月31日までの売却で、次のような要件を満たすことが必要です。

・売却する家屋は1981年(昭和56年)5月31日以前に建築されている。また、耐震基準に適合している。
・売却する家屋は、区分所有建物登記がされている建物でない。
・相続の開始の直前に被相続人以外に居住をしていた人がいなかった。
・相続の開始があった日から3年目の年の12月31日までに売却する。
・売却代金は1億円以下。
・売った家屋や土地について、相続財産を売却したときの取得費の特例など他の特例の適用をしていない。
・同被相続人から相続した被相続人の他の居住用の土地・家屋に、同特例を適用していない。
・親子や夫婦、内縁の関係にある者など、特別の関係にある人に売却していない。

出典 

まとめ

まとめ

相続した土地を売却した際にかかる税金やその計算方法、税金が安くなる特例について解説しました。税金の特例には適用要件が設けられています。相続や相続した土地を売却する予定がある方は、どの相続人がどの土地を相続したら良いのか、売るタイミングはいつが良いのかなどを、早めに検討しておきましょう。

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