代襲相続人とは?なれる人の範囲や遺留分・2割加算の取り扱いなどを解説
代襲相続人とは、本来であれば相続人となるべき被相続人の子供や兄弟姉妹などが相続の開始時点で亡くなっていた時、代わりに遺産を相続できる人のことです。今回は、代襲相続が起こるケースや代襲相続人となれる人の範囲などを解説します。相続分や遺留分、相続税の2割加算など代襲相続におけるポイントも参考にしてみてください。
![代襲相続人とは?なれる人の範囲や遺留分・2割加算の取り扱いなどを解説](https://d1qhpq68wlei2m.cloudfront.net/images/5022.jpg)
目次
代襲相続人とは?
![代襲相続人とは?](https://d1qhpq68wlei2m.cloudfront.net/images/5023.jpg)
代襲相続人(だいしゅうそうぞくにん)とは、本来相続人となるべき人が相続の開始時点で亡くなっていたり、相続人として認められなかったりする場合に、本人の代わりに相続権を得る人のことです。
本来相続人となるべき人に変わって、その子供や孫など(直系卑属)が代わりに遺産を相続することを「代襲相続(だいしゅうそうぞく)」といいます。
被相続人(亡くなった人)の財産を相続する権利をもつ人のことを「法定相続人」といいます。法定相続人の範囲と優先順位は民法で定められています。
まず、被相続人の配偶者は常に法定相続人です。配偶者以外の親族は、以下の順位にしたがって法定相続人となります。
・第1順位:直系卑属(子供、孫など)
・第2順位:直系尊属(父母、祖父母など)
・第3順位:兄弟姉妹
第1順位に該当する相続人がいない時は第2順位に、それに該当する人もいない場合は第3順位へと相続権が移っていきます。
代襲相続が発生するのは、法定相続人の優先順位の中でも第1順位の「子供」と、第3順位の「兄弟姉妹」だけです。
代襲相続人になれるのは、本来相続人となるべき人(法定相続人)の直系卑属(子供、孫など)なので、配偶者や第2順位の「親」「祖父母」の代襲相続はありません。
■法定相続人と代襲相続人の関係図
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代襲相続が発生するケース
![代襲相続が発生するケース](https://d1qhpq68wlei2m.cloudfront.net/images/5025.jpg)
代襲相続が発生するケースには、法定相続人がなくなっている場合や相続排除、相続欠格があげられます。それぞれの細かい条件や例を解説します。
相続人が死亡している場合
代襲相続が発生するケースで最も多いのが、相続人となるべき人が相続の発生時点ですでに死亡しているケースです。
例えば、相続開始時に法定相続人である子供がすでに亡くなっている場合は、他界した子供の子供(被相続人の孫)が代襲相続人となります。
また法定相続人が兄弟姉妹の場合、兄弟姉妹が亡くなっていれば、他界した兄弟姉妹の子供(被相続人の甥や姪)が代襲相続人となります。
相続人が相続廃除された場合
相続廃除とは、被相続人に虐待や重大な侮辱行為などをした相続人の相続権を失わせる手続きのことです。
相続廃除されるのは、以下のような行為をした相続人です。
・被相続人を虐待をした者
・被相続人に重大な侮辱を加えた者
・被相続人の財産を浪費した者
・被相続人に多額の借金を負わせた者 など
被相続人は、生前に所定の手続きをして上記のような行為があった人の相続権を奪うことができます。また、遺言書で相続人を排除することも可能です。
相続廃除をした時も、代襲相続が発生することがあります。
例えば、被相続人が自身の子供を相続人から排除した場合、その子供(被相続人の孫)が代襲相続人となります。
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相続人が相続欠格となった場合
相続人が欠格事由に該当した場合も、代襲相続が発生する可能性があります。欠格事由に該当する主なケースは以下の通りです。
・被相続人やほかの相続人を殺害もしくは殺害しようとして刑に処せられた者
・遺言書の破棄や隠ぺい・偽造を行った者
・詐欺や脅迫で被相続人に遺言書を作成させた・撤回させた者 など
法定相続人が存命であっても相続廃除や相続欠格の対象になった場合、代襲相続が発生して、その子供や孫など(直系卑属)が代わりに遺産を相続します。
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代襲相続人になれる人と範囲
![代襲相続人になれる人と範囲](https://d1qhpq68wlei2m.cloudfront.net/images/5026.jpg)
代襲相続人になれるのは、本来相続人となるべき人(法定相続人)の直系卑属(子供や孫のように下に続く親子関係)です。
代襲相続が第1順位の法定相続人である子供に発生している場合は、孫が代襲相続人となり、孫が亡くなっていたらひ孫に、さらにひ孫も亡くなっているなら玄孫に……というように、何代にも渡って代襲相続が発生します。
これに対し、第3順位の法定相続人である兄弟姉妹の代襲相続は次世代(故人から見れば甥や姪)までです。相続の開始時点で、兄弟姉妹だけでなく甥や姪も死亡していたとしても、代襲相続は発生しません。
相続人が養子だった場合も注意が必要です。相続の開始時点で相続人である養子が亡くなっていた場合、養子縁組をしたあとに生まれた養子の子供については代襲相続人になれます。
しかし、被相続人と養子縁組をする前に生まれていた養子の子は、代襲相続人にはなれません。
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代襲相続人の相続分
代襲相続人が受け取る相続分は、本来の相続人と同じです。
例えば、相続財産が1億円ある被相続人に配偶者と子供1人がいたとします。それぞれ法定相続分は2分の1ですが、子供がすでに死亡していた場合は代襲相続が発生して孫へ相続権が渡ります。孫の相続分は、本来子供が相続する分と同じ遺産総額の2分の1の5,000万円です。
仮に孫が2人いれば2,500万円ずつ、4人なら1,250万円ずつ分け合います。
代襲相続によって相続税の基礎控除額が変わることがある
![代襲相続によって相続税の基礎控除額が変わることがある](https://d1qhpq68wlei2m.cloudfront.net/images/5027.jpg)
相続税には「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」の式で計算される基礎控除があります。遺産の総額が基礎控除額を下回っていれば、相続税はかかりません。
代襲相続人も「法定相続人の数」に含まれます。代襲相続人が複数いる場合、相続税の基礎控除が増えて、相続税がかかりにくくなることがあります。
例えば、被相続人が母親、法定相続人が長男、長女であるとしましょう。母親が亡くなった時点で長男はすでに亡くなっており、長男の2人の子供(被相続人から見た孫)が代襲相続をすることになりました。
代襲相続が発生しない場合、法定相続人は長男と長女の2人であるため基礎控除額は「3,000万円+(600万円×2人)=4,200万円」です。
一方で、代襲相続が発生し相続人が長女と2人の孫の計3人になると、基礎控除額は「3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円」となります。
代襲相続人である孫の1人が、被相続人の母親と生前に養子縁組をしていたために、2人分の相続資格を持っていたとしても、法定相続人は計3人のままです。
この場合、養子縁組をした孫は、被相続人が亡くなった時点ですでに法定相続人です。相続の開始時点で長男が亡くなっており代襲相続人にもなったとしても、その孫の相続資格は1人分とカウントされるため、基礎控除額は基礎控除額は「3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円」です。
このように、代襲相続人が二重相続資格者である場合、代襲相続が発生しても基礎控除額が増えないことがあります。
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代襲相続人に認められる遺留分
![代襲相続人に認められる遺留分](https://d1qhpq68wlei2m.cloudfront.net/images/11547.jpg)
遺留分とは、法定相続人が最低限受け取れる遺産の割合のことです。
亡くなった人が遺言で遺産の配分を指定したり、法定相続人以外に遺産を渡したり(遺贈)したことで遺留分を下回る法定相続人が発生する可能性があります。
遺留分を下回った相続人は、遺留分侵害額請求をすることで、一定の財産は取得することができます。
遺留分割合は、相続人の状況によって異なります。
例えば、法定相続人が配偶者と長女の2人である場合、配偶者と長女の遺留分はそれぞれ4分の1ずつです。
代襲相続人にも、本来の相続人と同じ遺留分が認められています。
先ほどの例でいうと、相続の開始時点で長女が亡くなっていたために、代襲相続をした子供にも4分の1の遺留分があります。
しかし、そもそも遺留分があるのは兄弟姉妹以外の相続人です。そのため、被相続人の兄弟姉妹が法定相続人の場合に、その兄弟姉妹が亡くなっていても、代襲相続人である甥や姪には遺留分がありません。
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代襲相続における注意点
![代襲相続における注意点](https://d1qhpq68wlei2m.cloudfront.net/images/11548.jpg)
相続には、さまざまなルールやイレギュラーなパターンがあります。代襲相続の場合に適用されるもの、されないものなどがあるため、注意点を解説します。
相続放棄で代襲相続は発生しない
相続放棄とは、相続人が相続権の一切を放棄する手続きのことです。
相続放棄の手続きをした相続人は、預貯金や不動産といったプラスの財産だけでなく、被相続人が残した借入金や未払金などのマイナスの財産もすべて相続しません。
相続放棄をした相続人は、最初からいなかったものとして扱われます。そのため、相続放棄をした相続人に子供や孫などがいたとしても、代襲相続は発生しません。
しかし、これは言い換えると相続放棄をすれば、本来の相続人の子供や孫などが負債を相続しなくてよくなるということです。被相続人が多くの負債を残している場合は、相続放棄も有効な選択肢の1つとなりうるでしょう。
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甥・姪が代襲相続人となる場合は相続税額が2割加算される
相続や遺贈などで財産を取得した人が「被相続人の一親等の血族」または「配偶者」以外である場合、その人の相続税額は2割増しとなります。これを「相続税の2割加算」といいます。
被相続人の一親等の血族とは、実子や父母のことです。そのため、兄弟姉妹が遺産を相続する場合、2割加算が適用されます。相続の開始時点で兄弟姉妹が亡くなっており、甥や姪が代襲相続人となる場合にも2割加算が適用されます。
一方、被相続人の孫は一親等の血族ではないため、遺言で遺産を相続すると2割加算の対象となります。しかし、代襲相続で孫が遺産を相続する場合、2割加算の対象になりません。相続する方法が遺言によるものか、代襲相続によるものかによって、孫が納める相続税が変わってくるのです。
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遺言書の内容は代襲相続人に適用されない
被相続人が残した遺言書の内容は、代襲相続人には適用されません。
例えば、亡くなった母親が「不動産は娘に相続する」という内容の遺言書を残していたとしましょう。この場合、被相続人の母親よりも先に法定相続人の娘が亡くなっていれば、その娘の子供(被相続人の孫)が代襲相続人となります。
しかし、遺言を作成した人が亡くなる前に、遺言によって財産を受け取る人(受遺者)が亡くなると、その受遺者に関する部分の効力は生じなくなります。そのため、代襲相続人となった娘の子供は遺言に基づいての不動産は相続できません。
まとめ
代襲相続人は、亡くなった相続人の代わりに遺産を相続することができます。また、相続人が相続排除された場合や欠格事由に該当した場合も、代襲相続が発生することがあります。
代襲相続人になれるのは、本来相続人となるべき人(法定相続人)の直系卑属(子供や孫のように下に続く親子関係)です。
相続人が相続放棄をすると代襲相続は発生しないことや、代襲相続には代襲相続人が2割加算の対象になることなど、さまざまな注意点があります。
代襲相続が発生する可能性がある場合は、相続の専門家に相談のうえ、生前に対策を検討するとよいでしょう。
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