住宅ローンは定年後も続く…今からできる返済額の減らし方や注意点
住宅ローンの返済が定年後も続く方にとって、返済計画の見直しは非常に重要です。今回は、注意すべき住宅ローンの返済プランや返済に困らないようにするための対策を紹介します。安心して老後を過ごせるように、住宅ローンを見直すきっかけにしてみてください。

定年後も住宅ローンの負担は大きい

「令和3年度住宅市場動向調査報告書」(国土交通省)によると、住宅の一次取得者(初めて住宅を取得した世帯)の年齢層は30代が一番多く、次いで40代と続いています。同調査で、住宅ローンの平均返済期間は30年を超えているか、30年近くとなっている結果もあります。つまり、住宅の一次取得者の年齢層と住宅ローンの平均返済期間を併せて考えると、定年後も住宅ローンの負担が残る世帯が多いことが見えてきます。
【参考】国土交通省 住宅局「令和3年度 住宅市場動向調査報告書(PDF)」詳細はこちら

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退職金で返済しても大丈夫?
定年時に退職金がもらえる人は、退職金で住宅ローンを一括返済しようと考える人もいるでしょう。しかし、退職後の生活資金の見通しを立てず一括返済を行うと、老後生活に支障が生じる場合もあります。退職金での住宅ローンを一括返済する場合は慎重に検討を進めましょう。

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老後破綻の可能性もある
住宅ローン返済が退職後も継続する場合、退職後の生活資金の見通しを立てておくことは大切です。その際、医療費や介護費、住宅のメンテナンス費用についても余裕をもって考慮しておきましょう。収入は年金のみとなり、さまざまな支出が増える中で住宅ローンの負担も重なると、退職後の生活が成り立たなくなってしまう「老後破綻」の可能性も考えられられるでしょう。

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注意すべき住宅ローンの特徴

退職後も住宅ローン返済が続く場合、注意しておきたいケースには以下のようなものが挙げられます。
退職時に住宅ローンが2,000万円以上残っている
平成30年就労条件総合調査(厚生労働省)によると、大学・大学院卒で定年退職をした人の一人当たり退職給付金は1,983万円です。この金額を当てはめると退職時に住宅ローンが2,000万円以上残っている場合、退職金での一括返済が難しくなります。
また、さまざまな見解がある「老後2000万円問題」ですが、老後に必要な資金を考える上で2000万円という金額は一つの指標になるでしょう。
【参考】厚生労働省「平成30年就労条件総合調査 結果の概況」詳細はこちら

2000万円問題を冷静に考える
退職後の住宅ローンの返済額が収入の5割以上
一般的に収入に対する住宅ローンの返済割合は3割以内が望ましいとされています。退職前は収入に対する住宅ローンの割合が望ましい状態であったとしても、退職後は収入減少の可能性もあり、住宅ローン返済が家計に大きな負担となります。収入の5割以上を住宅ローンの返済にあてなくてはいけないケースは要注意です。
ボーナス併用で返済する
ボーナス併用で返済をしているケースも要注意です。当然ながら退職後はボーナスの支給を受けることはできません。退職後に収入が減少する局面で、毎月の住宅ローンの返済負担に加えて、指定月にさらなる負担増となれば、生活に支障が生じるでしょう。

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返済期限(最終返済日)時点の年齢が75歳以上
40代半ばで住宅を取得した場合、住宅ローンの完済年齢が75歳以上となっているケースもあるでしょう。定年退職年齢が60~65歳であるとすれば、退職後も10~15年住宅ローン返済が継続します。収入や資産の状況によっては返済負担が重くなる可能性があります。
そもそも、住宅ローンが組める基準として完済時の年齢を75歳〜80歳に設定している商品が多いので、一般的な指標として参考にする必要があるでしょう。
今からできる!定年退職後の住宅ローンの返済に困らないために

定年退職後の住宅ローンの返済に困らないために、以下のような対策を講じておきましょう。
定年退職後の収支をシミュレーションする
公的老齢年金の受給予定金額を年金事務所で確認したり、定年退職後の再雇用や再就職で、どれくらいの収入を得られる可能性があるかを考えたりしておきましょう。また、支出については現状の支出から定年退職後に減少・増加する項目等を考慮して支出の想定を行いましょう。その上で、定年退職後の収入と支出を想定してシミュレーションを行い、見通しを立ててみます。
定年退職後の収入と支出のシミュレーションをもとに、老後も住宅ローンの返済ができるか、できない場合はどのようにして返済していくか、早めに対策を考えましょう。

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住宅ローンの借り換えをする
現在の年齢にもよりますが、条件のよい住宅ローンに借り換えを検討するのも一案です。特にボーナス併用で住宅ローン返済を行っている場合、借り換えによってボーナス併用をなくすことで、指定月の返済額が増えるといった負担を減らすことも可能になります。
また、より金利の低いものに借り換えたり、金利タイプの変更をすることも有効な場合があります。住宅ローンの借り換えには諸費用もかかるので、トータルで返済額が減る場合は検討してみましょう。

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繰り上げ返済をする
退職前の収入に余裕のある時期に、繰り上げ返済を行うことで定年退職後に残る住宅ローン残高を減らせば老後の負担軽減につながります。
しかし、繰り上げ返済をして住宅ローンの返済負担が減ったものの、いざ必要な時の資金がかくなってしまっては元も子もありません。繰り上げ返済を行う際には、現在の収支把握、将来見通しを行った上で、無理のない範囲で行いましょう。

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老後の資産形成をする
退職金や公的年金などに頼り過ぎず、現役時代から資産形成をしておくことも大切です。
国の推奨する非課税制度付き投資であるNISAやiDeCoなどを始めるのも一つの手です。また、副業によって収入を増やす方も増えています。
人生100年時代、資産寿命をできる限り伸ばしていく自助努力が私たちには求められています。

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老後に住宅ローンの負担を減らす方法

ご紹介した対策を講じた上で、さらに老後に住宅ローンの負担を減らす方法として、以下のような方法があります。いずれの方法にもメリット・デメリットがあります。利用の際には、情報を集めて慎重に検討を進めましょう。
低金利の住宅ローンに借り換える
金利水準が高い時期に住宅ローンを借り入れて、そのままになっているケースも見受けられます。一般的に、住宅ローン残高が1,000万円以上、返済期間が10年以上あり、借り換え前後の金利差が1%以上ある場合には借り換えのメリットがあるといわれています。
これらの基準に当てはまる方は、より金利の低い住宅ローンへの借り換えを検討してもよいでしょう。
リースバックを利用する
リースバックとは、自宅を売却して現金化し、売却後も自宅に住み続けることができる仕組みです。リースバックで得た資金を住宅ローンの返済にあてることができます。
買主に、家賃を支払う必要がありますが、住宅ローンの月々の返済額より負担を減らせるかもしれません。売却したことは他人に知られにくく、相続する人がおらず、自宅を財産として残す必要がない方に向いている手段でしょう。

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リバースモーゲージを利用する
リバースモーゲージとは、自宅を担保として融資を受け、融資の契約者やその配偶者が死亡したときに自宅を売却して一括返済する仕組みです。リバースモーゲージの商品によっては、売却代金で返済できない場合でも残額は請求されないものもあります。

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親子リレーローン・親子ペアローンを利用する
親子で同居している場合には、親子リレーローン(子が親の連帯債務者となって親子2代で返済するローン)や親子ペアローン(親子でそれぞれが債務者となり返済するローン)を利用するのも一案です。住宅ローンの返済負担を親子で分散できるため、老後の不安を解消できます。

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定年退職後も働く

定年退職後も働いて収入を増やすという方法があります。収入減少となる可能性がある中、住宅ローンの返済が定年退職後も継続し不安が残るのであれば、再雇用や再就職により収入の確保を考えたいところです。
セカンドライフに新しく事業を始める方もいます。健康な体と時間がある限り、経済的な手段にもなる趣味を作ることも老後を充実させる方法かもしれません。

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まとめ
住宅ローンの返済が定年退職後も継続するケースは、さほど珍しいことではありません。しかし定年退職後に収入が減少する可能性を考えると、不安を覚える人は多いでしょう。そのときになってから考えるのではなく、将来を見通して早めに対策を講じておくことが大切です。老後破綻に陥らないためにも、「転ばぬ先の杖」を今から考えておきましょう。
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