まとまったお金だからこそ知っておきたい退職金のダメな使い方

定年退職を迎え、まとまった額の退職金が入ると、その使い道が問題となります。この記事では退職金の使い方として避けたほうがよい4つのことを示し、その上で有効な活用方法を説明しています。退職金をどうすればいいか悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。

まとまったお金だからこそ知っておきたい退職金のダメな使い方

NG例1. リスクの高い金融商品に投資する

NG例1. リスクの高い金融商品に投資する

退職金というまとまったお金が入ることで、投資を始めて少しでも増やそうと考える人もいるでしょう。
投資にはいろいろな対象がありますが、これからの生活費を考えると退職金も有効活用していかねばなりません。しかしギャンブル性の強い投資をすると、当てにしていたお金がなくなってしまう可能性もあります。
特に手持ち資金の何倍や何十倍といった取引が行える先物取引やFX取引では、大きな利益を狙うことが可能な反面、大きな損失を被る危険性も存在します。リスクの高い金融商品への投資は避けるのが無難でしょう。

仮想通貨などの暗号資産も高リスク

最近では、ビットコインをはじめとした仮想通貨など暗号資産を投資対象とする人も増えています。暗号資産は通貨として利用するという目的もありますが、実際に使える店が少なく実用的とはいえません。値上がりを狙った投資対象として流通しているのが現状でしょう。
暗号資産の中でもビットコインは特に人気があり、値動きも大きくなっています。大切な退職金の投資先としては高リスクですので、やはり避けるのが安全です。

NG例2. 1つの投資先に高額の投資をする

まとまった額の退職金が入り、例えば不動産投資など多額の資金が必要となる投資を始めようと検討する人もいるかもしれません。中には収益性の高い物件もあるでしょうが、ランニングコストや修繕費などを考えると、投資するメリットの少ない物件も少なからずあります。
もちろん不動産に限らず、リスク分散をすることなく1つの投資先に資金をつぎ込むのは危険性の高い選択です。退職後に初めて投資を行う人は、多額なお金を一度に投資することは避け、慎重な運用を試みるといいでしょう。

NG例3. 将来を考えない浪費

NG例3. 将来を考えない浪費

定年後には自由になる時間が増えます。これまでできなかった時間のかかる趣味や旅行などを計画したくなるかもしれません。
しかし、これからの生活費のことも考えず、趣味に多くのお金を使ったり頻繁に旅行をしたりといった浪費をしてしまうと、将来の生活が成り立たなくなる可能性も出てきます。
「人生100年時代」といわれるようになり、長寿化が進んでいます。年金だけでは生活を続けられないことも考慮しながら、計画的に退職金を使っていく必要があるでしょう。

NG例4. 現役時代と同じ生活水準

NG例4. 現役時代と同じ生活水準

定年後に年金生活になると現役時代と同じような収入を得られなくなります。そこで、生活水準の見直しも考えなくてはなりません。

総務省統計局の2020年の家計調査年報によると、「2人以上の世帯のうち勤労者世帯」のデータで世帯主の年齢が50~59歳の世帯の消費支出は33万8,611円となっています。他方で世帯主が65歳以上の世帯では、税金や保険料を引いた可処分所得は22万5,501円です。
現役時代と同じような生活水準を維持してしまうと、毎月約11万円が不足することになり、退職金を取り崩していくことになってしまいます。

生命保険文化センターの生活保障に関する調査では、ゆとりある老後生活費は平均で36万1,000円というデータも示されました。時間に余裕ができた分、趣味や旅行などにお金を使おうと思っても、日々の生活費を考えると厳しいかもしれません。

【参考】総務省統計局「2020年家計調査年報」詳しくはこちら

【参考】生命保険文化センター「令和元年 生活保障に関する調査 ゆとりある老後生活費」詳しくはこちら

退職金の有効な活用方法

退職金の有効な活用方法

まとまった額の退職金は、有効に活用したいものです。リスクの高い金融商品の購入や偏った投資は思わぬ事態を引き起こすおそれもあるでしょう。しかし、長期的な資金計画を立てることや資産寿命を延ばす工夫を行うことは非常に大切です。

まずは老後もしっかりとしたライフプラン(資産計画)を立てる

老後の生活でも特に大切なのは、セカンドライフのプランを立てることです。無計画に生活を送り、思わぬ出費などで生活が困窮することは避けなければなりません。手元に入った退職金のうち、どの程度が自由に使える金額として確保できるのかを確認できれば、心にもゆとりができるでしょう。逆に老後資金が不足するようであれば、雇用延長や再就職などをして収入を増やす必要も出てきます。
現在の支出がどれくらいなのか確認し、生活する上での不足分を計算してみましょう。平均余命の年齢で資産がどれくらいになっているのか確認できると、対策も考えやすくなります。

運用するなら「長期投資」「分散投資」を心がける

リスクの高い金融商品や偏った投資は避けるべきですが、せっかくなら退職金を活用した投資も検討したいところです。
投資は「分散」「長期」「積立」が基本といわれています。定年後、長期で運用できるのかと疑問に思われる人もいるでしょうが、投資で長期と捉えるのは10年以上です。長寿化を踏まえれば、十分現実的といえます。
また、投資の偏りを避けるため、分散投資を行いながらリスクを低く抑える工夫も必要です。「分散投資」には資金だけでなく時間の分散という側面もあります。一度に投資を行うのではなく、積立投資を行うなどの工夫を行いながら運用しましょう。

一般NISA・つみたてNISAなども活用する

資産運用にあたってぜひ活用したい制度に、NISAがあります。
一般NISAは2024年から制度が変わり、新NISAとなります。これは2028年まで一定額までの投資に対して運用益などが非課税となる制度です。退職金を使う予定があれば、その資金は運用に回さず預け入れておき、他方で10年ほどは使わないと思われる資金は運用に回すのもよいでしょう。

つみたてNISAは20年間、非課税で運用することができます。定年後に20年も運用できるか不安に思われるかもしれませんが、令和2年の簡易生命表では60歳男性の平均余命は24.21歳、65歳男性でも20.05歳と、20年以上となっています。また、つみたてNISAは途中で売却しても運用益などは非課税ですので、必要であれば中途売却することも考えられます。
ただ、年間の投資額上限が40万円ですので、一般NISAで運用するのかつみたてNISAでコツコツ運用するのか、ライフプランに合わせた選択が必要です。

【参考】厚生労働省「令和2年簡易生命表の概況 P.2」詳しくはこちら

まとめ

長年同じ会社に勤めた人なら、退職金は相応の額になります。まとまったお金が入ると不必要なものに支出してしまいかねません。しかし人生100年時代といわれるように、退職後も人生は続きます。セカンドライフにおいて、年金だけでは生活が賄えません。退職金を生活費に使っていくことも検討しながら、計画的な活用や運用を行いましょう。

ご留意事項
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