退職金のおすすめの使い道!運用方法やNG例を知って老後資産に活用しよう

まとまった額の退職金を運用して老後の資金を増やそうと考えている人も多いのではないでしょうか。この記事ではおすすめの退職金の運用方法や、退職金の運用方法のNG例等を解説します。間違った運用や浪費をしてしまうと老後の生活資金が不足してしまうので注意してください。

退職金のおすすめの使い道!運用方法やNG例を知って老後資産に活用しよう

おすすめの退職金の運用方法

おすすめの退職金の運用方法

退職金を運用することは、老後の生活資金を増やすために有効な方法です。しかし、退職金ほどまとまった額の収入を定年退職後に得られる可能性は低いため、その運用は慎重におこなう必要があります。投資で大損して老後の生活が困窮してしまうことは避けなければなりません。そこで以下では、退職金に適した堅実な資産運用方法を紹介します。

退職金向けの定期預金

第一におすすめする退職金の運用方法は、定期預金です。定期預金は大きなリターンを見込めないものの、元本を失う心配がない点では、守りの運用方法として優れています。特に退職金向けの定期預金は高額な元本が必要ですが、通常よりも高い金利が付くのでおすすめです。ただし定期預金は基本的に、契約期間中は引き出せないので、柔軟にお金を運用したい方は注意してください。

個人向け国債

次におすすめする退職金の運用方法は、個人向け国債です。国債とは簡単にいうと、国にお金を貸し出して定期的に利子を受け取り、満期になると元本を回収できる仕組みです。定期預金と同様に元本保証もされます。

個人向け国債の最低保証利率は年0.05%なので、一般的な定期預金よりは高いリターンを得られるのがメリットです。変動10年制の国債を購入した場合は、適用金利が上がる可能性もあります。資産運用の方法としては、ローリスクローリターンの堅実な手法です。

個人年金保険

個人年金保険も退職金の運用におすすめです。個人年金保険とは一定の保険金を継続的に積み立てておき、既定の時期になったら年金と同じ形式で受け取れる仕組みです。

定期保険と同じく、一定期間引き出せないというデメリットがあります。しかし、逆にいえば資産の一部を浪費等から安全に保護しておけることでもあります。個人年金保険の中には、定期的な積立ではなく、一括でまとまった保険料を納入する「一時払い個人年金保険」という種類もあります。

投資信託

ここまで挙げた3つの方法よりも利益効率を上げたい場合は、投資信託をおすすめします。投資信託とは、投資の専門家にお金を預けて自分の代わりに投資をおこなってもらう手法です。

定期預金等と違って元本保証はありませんが、より高い利益が見込めます。自分自身で株式投資をおこなうには多くの知識と労力が必要ですが、投資信託ならばそうした手間がかからないのも魅力です。
分散投資といってリスクを分散させながら投資をおこなう投資信託は、基本的に安全志向で運用されます。とはいえ、損失が出ないとはいえないので、もしもの場合も考えてどれだけ資金を投入するかは慎重に考えましょう。

一般NISA・つみたてNISA

投資信託を行う上で積極的に活用したい制度として、NISAが挙げられます。NISAとは特定の金融商品への少額投資によって発生した運用益を非課税にする制度です。NISAには一般NISAとつみたてNISAがあります。

初心者にも始めやすい投資商品としては、「つみたてNISA」がおすすめです。つみたてNISAは、長期の積立・分散投資を通じた資産形成を後押しするために、2018年1月に創設された税制優遇制度で、満20歳以上(2023年3月現在)の人なら、原則として誰でも毎年40万円まで非課税で投資することが可能です。

つみたてNISAの対象となるのは、投資信託の積立(ETFを含む)で、投資した年から20年間は運用益等が非課税になります。対象となる投資信託は、投資のリスク軽減につながる「長期」「積立」「分散」投資に適した商品となるよう、法令上の制限があり、これから資産運用を開始する投資初心者の方にとって好ましい制度といえるでしょう。

また、NISAには、非課税投資枠が年間最大120万円、且つ、投資をした年から5年間は配当金・分配金や譲渡益が非課税となる「一般NISA(対象商品は国内・外国株式、投資信託など)」もありますが、投資初心者には長期の積立・分散投資が可能な「つみたてNISA」をおすすめします。
ちなみに、現在の制度(2023年末まで)において、つみたてNISAとNISAは併用できません。

2つのNISAの概要(2023年末まで)

       つみたてNISA   一般NISA      
年間限度額 40万円/年 120万円/年
非課税運用
可能期間
20年 5年
(ロールオーバー可)
優遇措置 運用益等が非課税 運用益等が非課税
投資可能期間 2037年まで 2023年まで

このNISA制度、2024年以降は大きく変わります。制度は恒久化され、つみたてNISAとNISAが併用できるようになり、また、非課税保有期間は無期限となります。年間投資枠もつみたてNISAで120万円、成長投資枠で240万円、非課税保有限度額が1,800万円(成長投資枠で1,200万円)と、劇的な変化です(この新制度は既存のNISAとは別枠となります)。この制度変更により、これから資産運用を開始する人には、環境面でも整ったといえるでしょう。

■新NISA(2024年以降)

新NISA(2024年以降)

※1:非課税保有期間の無期限化に伴い、現行のつみたてNISAと同様、定期的に利用者の住所等を確認し、制度の適正な運用を担保
※2:利用者それぞれの非課税保有限度額については、金融機関から一定のクラウドを利用して提供された情報を国税庁において管理
※3:金融機関による「成長投資枠」を使った回転売買への勧誘行為に対し、金融庁が監督指針を改正し、方れに基づき監督及びモニタリングを実施
※4:2023年末までにジュニアNISAにおいて投資した商品は、5年間の非課税期間が終了しても、所定の手続きを経ることで、18歳になるまでは非課税措置が受けられることとなっているが、今回、その手続を省略することとし、利用者の利便性向上を手当て
【出典】金融庁サイト「NISAとは?」詳しくはこちら

退職金を運用するポイント

退職金を運用するポイント

退職金を運用する上では、以下で挙げる3つのポイントを意識することが大切です。基本的な戦略として頭に留めておけば、退職金を無駄にすることなく老後資産に上手く活用することができるでしょう。

老後のライフプランを考える

退職金を運用する際に大切なのは、老後のライフプランを立てることです。無計画に老後生活を送り、思わぬ出費等で生活が困窮することは避けなければなりません。
現在の支出がどれくらいなのか確認し、生活する上での不足分を計算してみましょう。平均余命の年齢で資産がどれくらいになっているのか確認できると、対策も考えやすくなります。

手元に入った退職金のうち、どの程度が自由に使える金額として確保できるのかを確認できれば、心にもゆとりが生まれるでしょう。
逆に老後資金が不足するようであれば、雇用延長や再就職等をして収入を増やす必要も出てきます。

老後に必要な資金を把握する

老後のライフプランを考えたら、それに基づいて老後に必要な資金を把握しましょう。例えば、定年後は慎ましく節制して生きるのか、趣味や娯楽にもお金を使ってゆとりある生活を送りたいのかで、必要な老後資金はかなり変わってきます。

公益財団法人生命保険文化センターによる2022年の調査を参照すると、老後に夫婦二人が最低現必要とする生活費は月額23.2万円です。一方、ゆとりある生活を送る場合には月額37.9万円が必要とされています。

どの程度の生活レベルで老後生活を送りたいかは個人差がありますが、ひとまずは定年退職から平均余命までの年月を算出し、その期間、上記の生活費を自分の年金や預金、退職金で賄えるのか計算してみることをおすすめします。

【参考】生命保険文化センター「令和4年度 生活保障に関する調査 ゆとりある老後生活費」詳しくはこちら

「長期投資」「分散投資」を心がける

リスクの高い金融商品や偏った投資は避けるべきですが、せっかくなら退職金を活用した投資で堅実に利益も生みたいところです。

投資は「分散」「長期」「積立」が基本とされています。定年後、長期で運用できるのかと疑問に思われる人もいるかもしれませんが、投資で長期と捉えるのは10年以上です。長寿化を踏まえれば、十分現実的な期間でしょう。

また、投資の偏りを避けるため、分散投資をおこないながらリスクを低く抑える工夫も必要です。「分散投資」には資金だけでなく時間の分散や地域の分散という側面もあります。一度に投資をおこなうのではなく、積立投資をおこなう等の工夫をおこないながら運用しましょう。

退職金の使い方NG例

退職金の使い方NG例

退職金はまとまったお金ですが、使い方を間違えるとあっという間になくなってしまいます。大金だからこそ、その運用には慎重さが必要です。以下に紹介するNG例のような使い方で老後資金が不足してしまうことは避けましょう。

1. リスクの高い金融商品に投資する

退職金というまとまったお金が入ることで、投資を始めて少しでも増やそうと考える人もいるでしょう。投資方法はさまざまですが、これからの生活費を考えるとリスクとリターンを考えて退職金も有効活用していかねばなりません。

しかしギャンブル性の強い投資をすると、あてにしていたお金がなくなってしまう可能性もあります。特に手持ち資金の何倍や何十倍といった取引がおこなえる先物取引やFX取引では、大きな利益を狙うことが可能な反面、大きな損失を被る危険性も存在します。リスクの高い金融商品への投資は避けるのが無難でしょう。

■仮想通貨等の暗号資産も高リスク
最近では、ビットコインをはじめとした仮想通貨等暗号資産を投資対象とする人も増えています。暗号資産は通貨として利用することもできますが、実際に使える店が少なく実用的とはいえません。そのため値上がりを狙った投資対象として流通しているのが現状でしょう。

暗号資産の中でもビットコインは特に人気があり、値動きも大きくなっています。大切な退職金の投資先としては高リスクですので、やはり避けるのが安全です。

2. 1つの投資先に高額の投資をする

まとまった額の退職金が入り、不動産投資等多額の資金が必要となる投資を始めようと検討する人もいるかもしれません。なかには収益性の高い物件もあるでしょうが、ランニングコストや修繕費等を考えると、投資するメリットが少ない物件もあります。

もちろん不動産に限らず、リスク分散をすることなく1つの投資先に資金をつぎ込むのは危険性の高い選択です。退職後に初めて投資をおこなう人は、多額なお金を一度に投資することは避け、慎重な運用を試みるといいでしょう。

3. 将来を考えない浪費

3. 将来を考えない浪費

当然のことですが、将来を考えない浪費もNGです。定年退職後はこれまでよりも自由に時間が使えるため、趣味や娯楽を楽しみたいという人は多いでしょう。特に退職金という、まとまったお金を手にした直後は、退職金をこれまで頑張ってきた「ご褒美」のように感じて、気前よく浪費したくなりがちです。海外旅行、新車の購入、古くなってきた家の増改築、あるいは子供や孫への援助等、お金の使い道を挙げればきりがありません。

もちろん、車や家が老朽化してきたなら、安全のためにも買い替えやリフォームは必要でしょう。親族への援助はもちろん、豪華な旅行もそれ自体は悪いことではありません。しかし、退職金という大金を手にした直後は、知らず知らずのあいだに財布のひもが緩くなってしまうものです。それは本当に必要な出費なのか、必要だとしてもより安く済ませられるプランはないのか等、これまでなら考えただろうことも頭から抜け落ちているかもしれません。

「人生100年時代」といわれる昨今、退職後も長いあいだ生活していく可能性は増えており、年金だけでは困窮してしまう事態も想定されます。趣味や娯楽にお金を使うのもいいですが、老後の必要資金をよく考えた上で、適切な範囲内での出費に留めるように心がけましょう。

4. 現役時代と同じ生活水準

定年後に年金生活になると、現役時代と同じような収入を得られなくなります。そこで、生活水準の見直しも考えなくてはなりません。

総務省統計局の2021年の家計調査年報によると、「二人以上の世帯のうち勤労者世帯」のデータで世帯主の年齢が50~59歳の世帯の消費支出は34万7,987円となっています。他方で世帯主が65歳以上の夫婦のみ無職世帯では、税金や保険料を引いた可処分所得は20万5,911円です。

現役時代と同じような生活水準を維持してしまうと、毎月約14万円が不足することになり、退職金を取り崩していくことになってしまいます。

生命保険文化センターの生活保障に関する調査では、ゆとりある老後生活費は平均で37万9,000円というデータも示されました。時間に余裕ができた分、趣味や旅行等にお金を使おうと思っても、日々の生活費を考えると厳しいかもしれません。

【参考】総務省統計局「2021年家計調査年報」詳しくはこちら
【参考】生命保険文化センター「令和4年度 生活保障に関する調査 ゆとりある老後生活費」詳しくはこちら

まとめ

退職金は老後の生活を安定させるための貴重な資金です。資産運用に回す際はハイリスクな投資は避け、分散投資等の手法を使って堅実な運用を心がけましょう。また、資産運用をおこなう場合でも、贅沢をする場合でも、老後のライフプランや必要資金を常に意識することが大切です。計画的に資産の管理運用をおこない、安心して老後の生活を送れるようにしましょう。

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