定年後は再就職と再雇用どっち?メリットと注意点を解説!再就職する場合におすすめの仕事や資格も
定年後も働き続ける選択肢として「再就職」と「再雇用」という2つの方法があります。この記事では「再就職」と「再雇用」それぞれのメリットと注意点を解説し、再就職する場合のおすすめの仕事や資格・スキルをご紹介します。
目次
定年後は「再就職」と「再雇用」どちらがおすすめ?
定年後も働き続ける選択肢として「再就職」と「再雇用」という2つの方法があります。
再就職は、ハローワークや転職サービス、シルバー人材センターなどの就職サービスを利用して、自分で就職先を探す方法です。
一方、再雇用では「再雇用制度」を活用して、企業が定める期間までこれまで勤めていた企業もしくは子会社・グループ会社で働き続けます。
それでは、定年後におすすめなのは、どちらの方法なのでしょうか。まずは、再就職と再雇用それぞれのメリットをみていきましょう。
定年後新しい職場に「再就職」する場合
定年後にそれまでの会社とは別の会社に就職する場合、在職中の就職活動とは異なる方法で仕事を探すことになります。また、再就職後の働き方も異なってきます。再就職する場合の方法やメリット・デメリットについてみてみましょう。
定年後に再就職する方法とは
定年後に再就職するためには、以下のような方法があります。それぞれの特徴を紹介しすので参考にしてみてください。
ハローワーク(公共職業安定所)
ハローワークは厚生労働省が管轄する職業紹介所です。誰でも無料で利用でき、正社員やパートタイムなど自分に合う条件を設定して求人を閲覧することができます。また、65歳以上の方を重点的に支援する「生涯現役支援窓口」を設けているところもあり、再就職の相談や雇用保険手続きのサポートを受けることができます。
シルバー人材センター
シルバー人材センターは定年退職者などの高齢者に職業紹介を行う団体で、市町村単位に置かれています。センターでの働き方は、一般に短期の軽作業的な仕事が多く「生きがいを得るための就業」を目的としており、請負・委任契約が一般的です。
【参考】公益社団法人全国シルバー人材センター事業協会「シルバー人材センターとは」詳しくはこちら
求人サイト
求人サイトでは、さまざまな業種や業界が求人を出しています。シニア向けの求人サイトも豊富にあり、仕事の内容や働き方もさまざま。興味がある会社が見つかれば応募書類を提出し、面接に進みます。企業とのやり取りを自分のペースで進めたい方に適しています。
再就職後の働き方について
定年後の再就職はどのような働き方になるのでしょうか。厚生労働省の「令和4年雇用動向調査結果の概況」によると、60歳〜64歳の男性は一般職へ転職する人が8.9%、パートが25.6%と正規雇用は非正規雇用の3分の1ほどです。一方、女性は一般職が8.1%、パートが10.3%とあまり差はありませんが、全体的に正社員で働く人が少ないことが分かりました。
賃金についても、前職と比較して「賃金が減少した」と回答した人は63.7%となっており、定年後の再就職では、正社員の求人が少ないことや給与水準が下がることを把握しておく必要があるでしょう。
【参考】厚生労働省「令和4年雇用動向調査結果の概況 年齢階級別転職入職率(令和4年(2022)・男)」詳しくはこちら
【参考】厚生労働省「令和4年雇用動向調査結果の概況 転職入職者 1)賃金変動状況別割合」詳しくはこちら
再就職する場合のメリット
再就職するメリットには、次のようなものがあります。
新しい環境で活躍できる可能性がある
1つ目は、これまでと違う職種や、興味のある分野に新たにチャレンジできる点です。いつかやってみたいと思っていた仕事がある方は、定年を機に挑戦できるチャンスとも考えられます。また、再就職することで人間関係が変わるため「今の職場に不満がある」「新しく人間関係の輪を広げていきたい」という方は、働く環境を変えるよいきっかけとなるかもしれません。
スキルや経験を活かして働ける可能性がある
前職のスキルや経験を活かして新しい仕事をはじめることもできます。定年前までの仕事の経験は、再就職にも大いに役立つことでしょう。自分の強みを活かしたい人は、得意な分野や前職と関連のある業界や職種へ転職するとよいでしょう。
再就職する場合のデメリット
一方、定年後に再就職する場合、デメリットもあります。
求人が限られる場合がある
再就職する場合は、再雇用と違って自分で仕事を探す必要があります。シニアの求人は数が少なく、前職よりも雇用条件が悪くなるケースも少なくありません。自分の希望する条件の仕事が見つからずなかなか仕事を決められない場合は、再就職活動が長引いてしまう可能性があります。
給与が下がる可能性がある
前述したとおり、半数以上の人が前職と比較して「賃金が減少した」と回答しています。給与の面では現役時代と同等以上の条件で再就職することは難しいかもしれませんが、ワークライフバランスを考えて雇用形態など自分の生活に合わせた仕事を選ぶチャンスでもあります。
定年後同じ職場に「再雇用」される場合
定年後も同じ職場に再雇用される場合は、再就職とどのような違いがあるのでしょうか。ここでは、再雇用制度やそのメリット・デメリットについてみてみましょう。
定年後の再雇用制度とは
再雇用制度とは、一般的に雇用している高年齢の従業員が希望した場合、定年後も引き続き雇用する制度のことです。
高年齢の雇用については「65歳までの定年引き上げ」「65歳までの継続雇用制度の導入」「定年廃止」のいずれかの措置を講じることが義務付けられています。さらに2020年の法改正では「70歳までの就業確保措置」が努力義務となりました。
再雇用制度は、企業にとってもスキルや経験を持ったシニアを有効活用できる制度といえます。
【参考】厚生労働省「高年齢者の雇用」詳しくはこちら
【参考】厚生労働省「70歳までの就業機会確保(改正高年齢者雇用安定法)」詳しくはこちら
再雇用後の働き方について
定年後に再雇用された場合、定年前と比べて雇用形態や賃金水準はどのように変化するのでしょうか。労働政策研究・研修機構の「高年齢者の雇用に関する調査」によると、60代前半の継続雇用者の雇用形態は、嘱託・契約社員が57.9%、正社員が41.6%、パート・アルバイトが25.1%なっており、再就職の場合よりも正社員の割合が多いことが分かります。
また、賃金については、60歳直前の賃金と再雇用された時点の賃金を比較すると、平均的な給与水準の方で、約4分の3ほど減少している結果となりました。
【参考】労働政策研究・研修機構「調査シリーズNo.198 高年齢者の雇用に関する調査 60代前半層の継続雇用者の勤務実態」詳しくはこちら
再雇用される場合のメリット
再雇用のメリットには、次のようなものがあります。
慣れた環境で働くことができる
1つ目は、これまでと同じ環境で仕事ができる点です。再雇用では、子会社やグループ会社へ転籍する可能性もありますが、定年まで勤めていた会社でそのまま働くことも多くあります。そのため馴染みのある仕事と環境が手に入りやすいのが強みといえます。
また、もし再雇用後に仕事内容が変わった場合でも、人間関係の構築された環境であれば心理的な負担は少ないでしょう。
雇用が安定している
2つ目は、再就職のように、定年後の失業期間がなく、安定した給与をもらえる点は大きなメリットです。
条件を満たせば社会保険や雇用保険も継続でき、厚生年金の加入期間を長くすることで、老後の貴重な収入源である年金の受給額を増やすことがでます。
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再雇用される場合のデメリット
一方、再雇用される場合のデメリットには以下のものが考えられます。
役職や責任が限定される場合がある
再雇用で仕事を継続する場合、仕事内容は同じでも役職や責任が限定される場合があります。例えば、今まで部下だった年下の社員が自分の上司になることもあるでしょう。また、今まで任されていた責任のある仕事から外されて全く違う仕事を割り当てられる可能性もあります。
新しい挑戦ができない
再雇用の場合は、今までの経験やスキルを活かして同様の仕事内容になることが多く、新たなことに挑戦するのは難しいかもしれません。定年を機に異なる仕事を新しくスタートしたい方ややりたい夢がある方は、再就職や起業によって新しい挑戦をするという選択肢もあります。
定年後の「再就職」「再雇用」で自分に合った働き方を叶えるには?
定年後に再就職するか、再雇用にするか迷っている人も多いのではないでしょうか。ここでは、再就職か再雇用を選ぶ際のポイントを紹介します。
生活に必要な収入を正しく把握しておく
仕事を選ぶ際に気をつけたいのは収入です。年金の予定受給額をあらかじめ計算しておくことで、老後の生活にいくら貯金が必要なのか目処を立てることができます。十分な老後の資産がある場合は、収入が下がってもやりたいことを優先させることもできます。定年後給与が下がった場合の生活における収支を把握しておきましょう。
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自分の強みやスキル、好きなことを活かせる仕事を選ぶ
今までのキャリアの棚卸しをすることで、自分の強みやスキル、何がやりたいかが見えてきます。どのような働き方をしてどのような生活をしたいか、優先させることと妥協することを具体的に考えることが大切です。目的が明確になれば、再就職か再雇用か、自分に合った選択ができるでしょう。
資格やスキルを取得しておく
再就職を目指すなら、退職前から資格やスキルを習得しておくことが大切です。しかし、資格であれば何でもよいわけではありません。
重要なのは、信頼性の高い国家資格や、自分の就きたい職種に必要な資格を取ることです。
国家資格であればファイナンシャル・プランニング技能士や管理業務主任者、社会保険労務士、行政書士、中小企業診断士などがおすすめです。民間資格であっても就きたい職種に必要なものであれば、積極的に取得するようにしましょう。
また、現在需要が伸びているIT系のスキルも、身に付けることができれば幅広い活躍の場があるでしょう。例えばWebサイトの記事を作成するWebライティングや、Webサイト上でレイアウトなどのデザインをするWebデザインのスキルが挙げられます。
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定年後に再就職する場合のおすすめの仕事とは?
再就職を選択する場合、どのような仕事を選ぶとよいでしょうか?
以下でいくつか例を挙げて紹介します。
オフィスワーク
基本的に座り仕事であるため、体力の心配がなく長く勤められるでしょう。しかし求人倍率が高い傾向にあり、仕事に就くハードルが高い職種でもあります。
軽作業、清掃、マンション管理人
シニア向けの求人も多いため、就業時の年齢がネック(支障)となりにくいでしょう。
警備
人材需要が高いため、就業機会が多いことがメリットです。しかし、立っている時間が長いことが予想され、長く続けるには体力も必要になります。
販売・接客
対人スキルなど、今までの社会経験を活かしやすいところが魅力です。コンビニやファストフードチェーンは店舗数も多く、家から通いやすい場所に仕事を見つけやすいでしょう。
再就職先を選ぶに当たって、業務内容はもちろん、勤務地や働くメンバーも重要な要素になります。通勤時間や従業員の年齢構成も考えて再就職先を決定しましょう。
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まとめ
再就職と再雇用には、それぞれにメリットとデメリットがあります。定年後のキャリアプランについて、自分の中の優先順位を考え、どちらがよいか選択したいところです。そのためにも、定年後の収支や老後の資産の準備が十分かきちんと把握しておくとよいでしょう。
60歳を超えても働き続けることが一般的となった今、働く環境が老後のやりがいや豊かさを形成する大切な要因になります。
自分のライフプランに合った働き方ができるよう、退職前から計画を立てて行動することが重要です。
ご留意事項
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2024年9月30日(月)をもちまして閉鎖することとなりました。
これまで誠にありがとうございました。
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