【FP解説】住宅ローンのボーナス払いは本当に得?メリット・デメリットを徹底解説
住宅ローンの返済方法には「毎月払い」と「ボーナス併用払い」があります。住宅ローンを組む際には、返済方法をどちらにすれば良いのか迷ってしまうという人も多いでしょう。そこで、この記事では住宅ローンを検討している人に向けて、ボーナス払いのメリットやデメリット、注意点などを紹介します。

目次
住宅ローンをボーナス返済するメリット・デメリット

まず、住宅ローンのボーナス併用払いとはどのようなものなのか、その仕組みを知っておきましょう。そのうえで、ボーナス併用払いのメリットとデメリットを説明します。
住宅ローンのボーナス返済とは
住宅ローンにおけるボーナス返済とは、毎月払いに加えて賞与支給月にまとまった金額を返済する、というものです。一般的には夏と冬の年に2回、賞与月に返済額が増えます。その分、毎月払いと比較して毎月の負担が少なくなるのが特徴です。
ボーナス返済では、毎月の支払いと賞与月の返済を分けて考えます。借り入れ総金額を毎月の支払いと賞与月の返済に分け、それぞれを支払うという考え方が基本になります。
ボーナス返済のメリット
ボーナス併用払いのメリットは、毎月の返済額が少なくなることです。毎月の支出を抑えたい人や、自動車などほかにローンの返済がある人は、月々の返済額が少なくなることで負担を軽減できます。定期的にまとまった金額を返済することで、住宅ローンの借り入れに伴う心理的な負担が軽減されると感じる人もいます。
ボーナス返済のデメリット
デメリットは、「賞与が予定通りに支給されなかった場合に、返済の負担が大きくなってしまうこと」です。会社の業績悪化などにより賞与が減額または不支給になった場合でも、原則返済額は変更できません。公務員など安定した賞与の支給を期待できる場合は別ですが、経済状況の悪化を受けて賞与カットも起こりそうなのであれば、慎重に決定したほうが良いでしょう。万一賞与が不支給になった場合に、返済するお金をどのように調達するかを事前に話し合っておくのがおすすめです。
別のデメリットは、「利息の負担が大きくなること」です。ボーナス払いでは、毎月の支払いと賞与支給月の支払いを分けて考えます。賞与支給月の支払いは年に2回だけのため、全額毎月払いを選択した場合と比べて一部返済が先延ばしになることになり、その分利子が高くなってしまいます。
また、賞与が出ても住宅ローンの支払いに充てることになるので、まとまったお金を自由に使えなくなる可能性があります。大きな買い物や旅行、クレジットカードのボーナス払いなどはしづらくなるかもしれません。
毎月の返済額シミュレーション

毎月払いとボーナス払いでは支払総額にどれほど違いが出るのか知るために、返済額のシミュレーションをしてみましょう。
■住宅ローンの返済額シミュレーション条件
・借入額:3,000万円
・固定金利:1.00%
・返済期間:35年
・元利均等返済
住宅ローンの返済シミュレーション
毎月の返済額 (A) | ボーナス支給月の 加算額(B) | ボーナス支給月の 返済額(A+B) | 総返済額 |
---|---|---|---|
8万5,000円 | なし | 8万5,000円 | 3,557万円 |
7万7,000円 | 5万円 | 12万7,000円 | 3,557万円 |
6万9,000円 | 10万円 | 16万9,000円 | 3,558万円 |
6万円 | 15万円 | 21万円 | 3,559万円 |
5万2,000円 | 20万円 | 25万2,000円 | 3,560万円 |
4万4,000円 | 25万円 | 29万4,000円 | 3,560万円 |
毎月払いのみを選択した場合、毎月の返済額は8万5,000円で、総返済額は3,557万円です。一方、ボーナス返済で加算額を5万円にした場合、毎月の返済額は7万7,000円と少なくなりますが、ボーナス月は12万7,000円です。ボーナス加算額を増やすほど毎月返済額は少なくなり、ボーナス月の返済額は大きくなります。
このシミュレーションで特に注目したいのは、総返済額です。毎月払いの総返済額は3,557万円ですが、ボーナス加算額が10万円の場合、総返済額は3,558万円でわずかに高くなります。ボーナス加算額を増やすにつれて総返済額も大きくなり、加算額25万円の場合は3万円高くなります。
※今回紹介したシミュレーションはあくまでも試算であり、実際の金額とは異なる場合があります。
住宅ローンのボーナス返済を利用するときの注意点

住宅ローンのボーナス返済にはデメリットもあるため、利用する際には注意が必要です。では、具体的にどのような点に気をつければ良いのでしょうか。
ボーナス不支給を想定して返済計画を立てる
賞与の支給額は、景気や会社の業績の動向、勤務規定の改定などの影響を受けやすいものです。そこで、ボーナス返済を選択する際には、万一賞与が支給されなくなった場合のことも考えて計画を立てておく必要があります。
例えば、家計を見直して毎月決まった額を貯蓄しておけば、賞与が支給されなくなった時にも貯蓄の中から返済できます。また、毎月払いを選択して賞与支給月に繰り上げ返済をするなど別の返済方法とも比較して、どれが自分に合うかよく考えておくことも大切です。
適切なボーナス返済額を設定する
ボーナス返済を選ぶのであれば、家計の収支を見直して無理のないボーナス返済額を設定しましょう。金融機関によってはボーナス返済の上限額や金額の単位が定められているので、希望の額を設定できるかどうか事前に確認しておくことも必要です。
住宅ローンのボーナス返済が難しくなった場合、どうすればいい?

ボーナス返済を選択したのに、突然賞与が不支給になるなど返済が困難になるケースもあるかもしれません。そのような場合は、どのような対策を講じれば良いでしょうか。
返済方法を「毎月返済のみ」に変更
ボーナス返済が難しくなったら、できるだけ早くローンを契約している金融機関に連絡し、状況を説明して相談してみましょう。場合によっては、毎月払いに変えるなど支払い方法を変更できるかもしれません。支払い方法を変更するには所定の書類を提出し、審査を受ける必要があります。
借換えを行う
ボーナス返済が大きな負担になっているなら、借換えを行うことも選択肢に入ります。借換えとは、ローンの契約中に別のローンを契約し、先の契約の支払いを済ませてしまうことです。住宅ローンの借換えを行えば支払い方法を変更でき、金利の低いローンに切り替えることもできるかもしれません。
ただし、借換えにはさまざまな手数料が発生するうえ、新規でローンを組む際と同様に審査を受けなければなりません。デメリットも多いため、返済総額や諸費用をしっかり計算して慎重に決定しましょう。
まとめ

住宅ローンのボーナス返済では、加算額によっては返済のうちかなりの部分を賞与に頼ることになります。毎月の負担は軽減されるものの、賞与カットや不支給となった際のリスクも大きいため、デメリットも把握したうえで慎重に検討することが大切です。子供の成長など今後のライフスタイルの変化も見越して、後悔することのないように無理のない返済計画を立てましょう。
ご留意事項
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