高齢でも借りられるシニア向け融資やローンを紹介

人生100年時代を迎えつつある今、退職後も住み替えや介護、起業などの理由で急に資金が必要になる機会があるでしょう。備えていた資金だけでは足りない場合に金融機関の融資やローンを利用したい人も少なくないかもしれません。そこで今回は、シニア世代でも利用できる融資やローンの概要、利用する際の注意点などを紹介します。

高齢でも借りられるシニア向け融資やローンを紹介

シニアも融資を受けることができる?

シニアも融資を受けることができる?

一般的に金融機関から融資を受けたりローンを組んだりする場合は、返済能力を確認するための審査があり、収入証明などを提出する必要があります。定年退職して年金しか収入がなくなった場合や現役時代に比べて収入が下がった場合は、お金を借りることはできないのでしょうか?

結論からいうと、60歳を超えたシニア世代でも、原則的にはお金を借りることは可能です。最近ではシニア向けに特化したローンやキャッシングプランを提供する金融機関が増えているだけでなく、シニアを対象にした融資制度を整備する地方公共団体も増えています。とはいえ、当然ながらローンや融資制度を利用するにはさまざまな条件があり、誰でもすぐにお金が借りられるというわけではありません。ここからは、シニア向けローンや融資制度の概要や利用条件などについてみていきましょう。

主なシニア向け融資・ローンの種類

主なシニア向け融資・ローンの種類

カードローン

手軽に利用できるローンとしてシニア世代にもよく利用されているのが、カードローンです。カードローンとは金融機関やカード会社が提供している個人向けの融資サービスのこと。最近では80歳まで利用できるカードローンや、年金受給者でも利用できるカードローンも登場しており、定年後のシニア世代にも比較的利用しやすいローンだといえるでしょう。カードローンの主なメリット・デメリットは次のとおりです。

【メリット】

1.手軽に利用できる
店舗などに直接出向かなくても、オンラインや郵送、電話で申し込めるものが多く、インターネット会員制度がある場合は月々の返済もオンライン振込みが可能。時間がない人や店頭での手続きが苦手な人でも手軽に利用しやすいと言えるでしょう。

2.目的が制限されていない
カードローンは借入金の使用目的に制限がないものがほとんどで、借りたお金は自由に使うことができます。

3.担保や保証人が要らない
カードローンは無担保・無保証人で利用できるものが多く、不動産や預貯金など担保になるものを持っていない人、保証人を立てられない人でも利用することができます。

4.年金受給者でも利用できるケースがある
カードローンは原則として定期収入がある人を対象としたローンですが、銀行が提供するカードローンの中には、他の定期収入がない年金受給者でも審査に通れば、利用できるものがあります。なお、消費者金融系のカードローンは、年金受給者で他に定期収入がない人は、原則として利用できません。

5.すぐに融資を受けられる
カードローンの種類や借入額によっても異なりますが、オンライン審査を受けられる場合や借入額が少額の場合は、最短で翌日には融資を受けられることもあり、一日も早く借り入れをしたい人には使い勝手の良いローンだということができます。

【デメリット】

1,大口融資は受けられない
カードローンの多くは数十万~数百万円を利用限度額としている事が多く、たとえば住宅の購入や事業継続など、まとまった融資を必要とする場合には原則として適していないと言うことができます。

2.金利が比較的高い
カードローンは一般的に、その他の目的別ローン(住宅ローン、教育ローンなど)に比べて金利が高く設定されている傾向があります。

3.制限年齢を過ぎると借りられない
カードローンには60歳以上のシニア世代でも利用できるものが多くありますが、利用開始後も制限年齢を超えると新たな借り入れはできなくなります。借り入れができなくなった後でも返済残額がある場合は、完済まで返済を続けなくてはならないことに注意が必要です。

不動産担保ローン

不動産担保ローンは、文字通り不動産を担保に融資を受けることができるローンのこと。不動産担保ローンを使えば、シニアでも金融機関からまとまった金額の融資を受けることができる可能性が高くなります。不動産担保ローンには年齢制限が設けられていないものも少なくないので、他の要件を満たして審査に通れば年齢を問わず、融資を受けることができます。このほか、不動産担保ローンには次のようなメリットがありますが、同時にデメリットも指摘されています。

【メリット】

1.金利が低い
不動産担保ローンは一般的な無担保ローンに比べて金利が低く設定される傾向にあります。金利は金融機関によって異なりますが、10%以下に設定されているケースが多いようです。

2.返済期間を長く設定できる
一般的に不動産は年月を経ても担保価値がなくなってしまうことが少ないため、不動産担保ローンは、他の無担保ローンに比べて返済期間を長く設定することができるようになっています。

【デメリット】

1.審査に時間がかかる
不動産担保ローンの審査には少なくとも2週間、長い場合は1ヶ月以上かかることもあると言われています。結果として審査に通らなかったり、期待どおりの額を借りられないリスクがあることも頭に入れておきましょう。

2.返済できないと不動産が差し押さえられる
不動産担保ローンの返済が滞ると、担保の不動産は金融機関に差し押さえられてしまいます。自宅を担保にしている場合は差し押さえられると住み続けることが難しくなるので、特に注意が必要です。

こういったリスクを避けるためには、リバースモーゲージの活用も選択肢のひとつになります。リバースモーゲージは、自宅に住み続けながら自宅を担保に融資を受け、契約者の死後に担保となっていた自宅を処分することで借入金を返済する仕組みで、契約者の配偶者が契約を引き継げば、契約者の死後にも配偶者が自宅に住み続けることができます。自宅を担保に不動産担保ローンを検討している人は、金融機関の担当者にリバースモーゲージとの比較検討を希望してみると良いでしょう。

年金担保貸付制度

年金担保貸付制度

年金担保融資制度は、独立行政法人医療福祉機構が運営している年金受給者向けの融資制度で、国民年金、厚生年金保険を担保に融資を行うことが法律で認められた唯一の制度です。融資の使いみちは保健・医療、介護・福祉などに限られていますが、申請をして審査に通れば、最大200万円の融資を受けることができます。
この制度はいわば年金の「前借り」とも言える制度で、融資を受けた利用者の年金は、返済が終わるまでの間、いったん医療福祉機構が受領、返済分を差し引いた残額が利用者の指定する口座に振り込まれることになります。つまり、返済額が増えれば増えるほど、受け取れる年金が少なくなるということです。年金担保融資制度の概要は次のとおりです。

【申し込み期限】
2022年3月31日(予定)

【利用できる人】
国民年金・厚生年金保険を受給中の人

【使途】
保健・医療、介護・福祉、住宅改修等、教育、冠婚葬祭、事業維持、債務等の一括整理、 生活必需物品の購入
※審査に使途が確認できる書類の提出が必要

【融資額】
①~③の要件を満たす範囲の額。
①10万円~200万円(目的が生活必需物品の購入の場合は、最大80万円)。
②受給している年金の0.8倍以内(年額。所得税額相当分は除く)
③1回あたりの定期返済額の15倍以内

※医療福祉機構のホームページで必要事項を入力すれば融資限度額を試算できます。

【メリット】

1.金融機関等のローンに比べて低金利で融資が受けられる
年金担保貸付制度を利用すると、一般的なローンよりも低い金利(2020年8月現在 年2.8%)で融資を受けることができます。

2.着実に返済できる
返済額が年金から自動的に差し引かれるので、返済が滞ることがなく、定められた期間内に返済することができます。

【デメリット】

1.審査に時間がかかる
申込みから実際に融資を受けるまでに4~5週間程度かかるので、融資を急いでいる人には適していません。

2.年金から返済額が差し引かれる
上述のとおり、年金から返済額が差し引かれるので、返済期間中は自由に使える年金の額が減ってしまいます。
年金で生活している人で本制度から融資を受ける場合は、返済分が差し引かれた年金受給額の範囲で生活できるよう、支出を見直しておく必要があります。

シニア起業家支援融資

シニア起業家支援融資

国や各地方公共団体では、地域経済の活性化につなげようとシニアの起業を促進する取り組みを行っています。その一環として、シニア起業家を対象に一般的なローンなどよりも低金利で融資が受けられる制度や補助金制度が相次いで整備されています。日本政策金融公庫が展開している「女性、若者/シニア起業家支援基金」もそのひとつで、女性や35歳未満または55歳以上の起業家で一定の条件を満たす人に、一般的なローンよりも低い金利で、最大7,200万円の融資を行う制度です。定年退職後に起業を考えている人、起業して運転資金の確保に悩んでいる人は検討してみるとよいでしょう。

【利用できる人】
女性、35歳未満または55歳以上の人で新たに事業を始める人、もしくは事業開始後概ね7年以内の人

【使途】
新たに事業を始めるための資金、または事業開始後に必要とする資金

【融資額】
最大7,200万円(うち運転資金4,800万円)

【メリット】

1.利率が低い
女性、若者/シニア起業支援制度で融資を受けた場合の金利は、大きく以下の3つに分かれています(数字はいずれも無担保・無保証人の場合、2020年8月現在)。また、融資後に利益率や雇用に関する一定の目標を達成した場合に利率を0.2%引下げる「創業後目標達成型金利」が適用されることもあります。

①特利A  設備資金、運転資金:2.46~2.85%
②特利B  技術やノウハウ等に新規性が見られる人の設備資金、運転資金:2.06~2.45%
③基準特利 土地取得資金:2.46~2.85%

【参考】日本政策金融公庫「国民生活事業」(主要利率一覧表) 詳しくはこちら

2.担保や保証人が要らない場合もある
女性、若者/シニア起業支援制度では、無担保・無保証人で融資を受けることができます。

3.返済の据置期間がある
女性、若者/シニア起業支援制度の融資の返済期間は、設備資金が20年以内、運転資金が7年以内とされていますが、いずれも、うち2年間は据置期間とされ、返済の必要がありません。

【デメリット】

1.少額しか借りられない場合もある
女性、若者/シニア起業支援制度では最大7,200万円の融資が受けられることになっていますが、もちろん全員が7,200万円の融資が受けられるわけではなく、事業内容や規模などを審査して適切と判断された額が融資されます。


2.審査に時間がかかる
融資は案件ごとに要件が異なるので一概にはいえませんが、女性、若者/シニア起業支援制度では、審査に3週間から1か月はかかるといわれています。金額にもよりますが、早急に資金を確保したい場合は審査期間が比較的短いカードローンなどを検討してみてもよいでしょう。

シニア向け融資・ローン利用時の注意点

このようにシニア世代にもさまざまな融資やローンが利用できますが、いずれの場合も留意点があります。シニア向けの融資やローンを利用するにあたっても、他の世代の場合と同じく、収入に見合わない借り入れは絶対に避けるべきです。

必要なお金を借りること自体は悪いことではありませんが、収入に見合わない金額を借りてしまうと返済が滞り、大きなトラブルのもとになってしまいます。特にシニア世代は現役時代に比べて昇給や転職による収入増が望めないケースが多い上に健康リスクも高いので、「頑張れば返済できるだろう」という感覚で無計画に借り入れを増やしたり、自宅や預貯金を担保にお金を借りてしまうと、すべてを失ってしまうリスクすらあります。融資やローンを利用する際には、どのくらいの借り入れが適正か、返済で生活が圧迫されてしまわないかを十分確認するようにした上で利用するようにするとよいでしょう。

また、シニアを狙った特殊詐欺の融資の報告も後を絶ちません。融資を受けたりローンを利用したりする際には、金利が安すぎないか・高すぎないか、信用できる企業や団体の商品かどうかを慎重に見極め、不安な点があればファイナンシャルプランナーや金融庁の「金融サービス利用者相談室」などに相談するようにしてください。

【参考】金融庁の「金融サービス利用者相談室」詳しくはこちら

まとめ

定年後のシニア世代でも、定期的な収入のある人や年金受給者であれば、金融機関などから融資を受けたりローンでお金を借りたりすることができます。金融機関やローンの種類によって利用要件や借りられる金額の上限などが異なります。それぞれのメリットやデメリットをしっかり確認した上で、収入に見合った額を借り入れるようにし、借りすぎないようにすることが大切です。

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