共働きの夫婦の選択肢「ペアローン」のメリットや注意しなければならない5つのポイント

ペアローンとは、1つの物件について夫婦それぞれが債務者となって住宅ローンを組み、互いに一方の債務の連帯保証人となる借入れ方法です。返済プランや税制面でメリットがある一方、ケースによってはリスクが高くなる可能性があります。本記事ではペアローンのメリットや注意点、向いている方について解説します。

共働きの夫婦の選択肢「ペアローン」のメリットや注意しなければならない5つのポイント

ペアローンとは?

ペアローンとは?

共働きの夫婦や同性パートナー、親子など、同居する者が住宅を購入する際、住宅ローンを組む方法に「ペアローン」があります。ペアローンでは、配偶者等の2人の収入を別々に審査の対象とすることで、それぞれが債務者となってローンを組むことができるのが特徴です。このとき、夫婦の場合夫は妻の、妻は夫の連帯保証人となります。住宅ローンを契約する時には、万が一のときに保険金で債務を完済できるようにするため「団体信用生命保険(団信)」に加入しますが、ペアローンを組む場合は債務者がそれぞれ団信に加入する必要があります。

収入合算とは

ペアローンと混同しやすいものに「収入合算」と呼ばれる借入れ方法があります。これは住宅ローンの契約自体は1つとなりますが、申込者と配偶者、パートナーの収入を合算した上で借入れの審査を受けます。これにより一人の収入だけをもとにローンを組むよりも借入可能額を増額できます。収入合算はさらに「連帯保証型」と「連帯債務型」の2種類に分かれます。

連帯保証型は、夫婦いずれかが住宅ローンの名義人となり、もう一方が連帯保証人として契約します。この場合、基本的には名義人となった方が返済責任を負いますが、名義人が返済できなくなった際は連帯保証人が返済します。
連帯債務型は夫婦のどちらかを主たる債務者、もう一方を連帯債務者とする方法で、借入額の返済責任は夫婦両方が負うのが特徴です。

ペアローンのメリット

ペアローンのメリット

ペアローンを選択するメリットはどのような点にあるのでしょうか。

ペアローンのメリット①:住宅ローンの借入額を希望額で組むことができる可能性が高くなる

まず、1人で住宅ローンを組む場合、年収額の基準を満たさず借入額が減じられることがあります。一方ペアローンでは、配偶者等が債務者となってさらにローンを組むことができるため、希望する金額まで借入れできる可能性が高まります。2つの住宅ローンを合計することでより高い金額の住宅を購入することが可能となるのです。

ペアローンのメリット②:住宅ローン控除で大きな節税効果が期待できる

また、住宅ローン控除が債務者それぞれに適用されるのも利点です。住宅ローン控除(住宅ローン減税)とは国の制度で、住宅ローンを組んだ際、年末のローン残高の1%を所得税から控除する仕組みです。

住宅ローンの契約が1つだとその主たる債務者のみが控除の対象となりますが、夫婦が各自で住宅ローンの契約を結ぶかたちであるため、それぞれの借入額をもとに控除が受けられます。年間の控除上限(40万円)を超える住宅ローンを組む場合などは、単独で住宅ローンの契約をした時よりも大きな節税効果が期待できます。

ペアローンのメリット③:夫婦で異なる返済プランを決めることができる

さらに、住宅ローンはそれぞれの契約になることで、返済方法・返済期間・金利タイプなどを状況に合わせて選択できるようになります。例えば、夫は「返済期間30年・ボーナス払いあり」プラン、妻は「返済期間35年・ボーナス払いなし」プランのように、働き方や収入に合わせて返済プランを決められます。

ペアローンの注意点

ペアローンの注意点

多くのメリットをもたらすペアローンですが、注意しなければならないポイントもあります。考えられる5つの主な注意点を詳しくご紹介します。

ペアローンの注意点①:配偶者等が死亡しても自分の債務が残る

住宅ローンの契約が単独の場合においては、債務者が死亡するとローン残高は団信の保険金で全額完済されます。一方、ペアローンでは、配偶者等のいずれかに不幸があっても亡くなった方の住宅ローンが完済されるのみで、もう一方の住宅ローンはそのまま残るのです。

配偶者等が亡くなると、残された方が仕事で収入を得ながら家事・育児を負担する状況に置かれるなどライフスタイルが変わることが多いでしょう。それに伴い収入が減ってしまうと、住宅ローンの返済にも影響を及ぼす可能性があります。

ペアローンの注意点②:離婚したときの法律関係が複雑になる

夫婦でペアローンを組むと、万が一離婚したときにさまざまな影響があります。
多くのケースでは、離婚すると住宅を売却するか、どちらかが残って住むかの2択です。

ローンの残債よりも高く売れるのであれば売却できますが、そうでなければ互いの貯金でローンを完済するか、夫婦のどちらかが住んで住宅ローンを返済し続けなければいけません。もし夫が家を出ていき、離婚後の自宅を妻の単独所有にするなら、夫の自宅の所有権持分を譲渡してもらう代わりに夫の住宅ローンの残債を引き受ける必要があります。自宅の所有権をどちらか一方にするのは、大きな負担になり得ることを理解しておきましょう。

ペアローンの注意点③:契約時のコストがかさむ

ペアローンでは、住宅ローンを2本組むことになるため、契約時のコストが単純に2倍かかることも気をつけておかなければなりません。コストの内訳としては事務手数料・登記手数料・司法書士報酬・印紙代などがあります。

ペアローンの注意点:④将来的な見通しを検討する必要がある

子供が生まれたなどライフイベントによって家庭の状況が変わった場合にもリスクが生じます。共働き夫婦でも、子育てによる育児休暇や時短勤務といった働き方を選択し一方の収入が減ることで、住宅ローンの返済が難しくなるケースも考えられるでしょう。将来的な見通しとして今と同等の収入が維持できるのか、また退職や転職、起業などを計画している場合はその間の支払いができる目処が立っているのかなどをよく検討しておく必要があります。

ペアローンの注意点:⑤借入額が大きくなりがち

ペアローンにすると、その分借入額が大きくなりやすい点も要注意です。夫婦それぞれの収入額が基準となって借入れできるため、計画していた以上に高額の物件を購入してしまうこともあります。返済期間や収入など家庭の経済状況に見合った価格の物件を検討し借入れができるように、場合によっては金融のプロに相談しながら決めることが重要です。

ペアローンに向いているのはどんな人?

ペアローンに向いているのはどんな人?

ペアローンが向いているのは、夫婦ともに長期的かつ安定した収入があるケースです。子どもを産んで育休を取る予定がある夫婦や、将来的に親の介護が必要になるかもしれない場合は、いずれかの収入が減り返済に困るリスクがあります。そのような問題がクリアできそうならば、ペアローンを活用することでワンランク上の物件にも手がとどくかもしれません。
また個別に住宅ローン控除を受け節税対策を行いたいケースなどではペアローンを活用するメリットを享受できるでしょう。

まとめ

夫婦など同居する2人がそれぞれ住宅ローンの債務者となるペアローンは、借入金額が上乗せできたり、住宅ローン控除が双方に適用されたりするなどさまざまなメリットがあります。しかし離婚・死別した場合にはローンが残るうえ、生活のスタイルが変わり返済が厳しくなる可能性も考えられます。ペアローンは、中長期的な視点をもって検討してください。

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