住宅ローンの完済年齢の平均は?上限年齢や返済計画を立てるコツ

住宅ローンは毎月支払っていくものです。いつまでにいくらずつ支払っていくのかという点については、購入前にきちんと資金計画を立てておく必要があります。今回は住宅ローンの平均完済年齢や返済計画のコツについて最新資料に基づいて解説します。

住宅ローンの完済年齢の平均は?上限年齢や返済計画を立てるコツ

完済年齢・期間の平均

完済年齢・期間の平均

現在では定年の年齢も撤廃されるなど労働寿命がどんどん長くなっていますが、元気で働けるうちに住宅ローンを完済したいと思っている人は多いでしょう。しかし、いくら健康でも高齢になってまで住宅ローンを返済し続けることは現実的ではありません。
では、住宅ローンの完済年齢・返済期間の平均はどれぐらいなのでしょうか。国土交通省が毎年発表する「住宅市場動向調査」を参考に解説しましょう。この調査は、注文住宅、分譲戸建、新築マンション、中古マンション、中古戸建などに分けて前年度の購入者・購入世帯の特徴や購入動機、価格動向などをまとめたものです。
「住宅ローンの完済年齢」という調査項目はありませんが、住宅を取得する平均年齢と平均返済期間のデータから、おおよその完済年齢が見えてきます。

住宅ローンの平均返済期間

住宅の種類 住宅取得
平均年齢
住宅ローンの
平均返済期間
注文住宅 40.9歳 32.9年
分譲戸建 38.6歳 32.7年
分譲マンション 43.3歳 31.5年
中古戸建 46.2歳 28.1年
中古マンション 48.2歳 28.9年

※「平均返済期間」は注文住宅の住宅ローン平均返済期間は土地と建物の平均年数より算出
【参考】国土交通省「令和元年度住宅市場動向調査報告書(令和2年3月発表)」 詳しくは
こちら

表を見ると、住宅を購入する人の年齢には、新築と中古で差が見られます。また、住宅ローンの平均返済期間についても同じく新築と中古では差があります。
年齢を経るにつれて年収は高くなるのが一般的ですが、住宅を購入するときには住宅ローンの返済期間を短く見積もる結果、月々の支払額は増加します。そのため、40代以降に初めて住宅を購入しようとしている人は、購入資金を抑えようと中古の一戸建て・マンションを中心に探す傾向があるといえます。

興味深いのは、初めて住宅を購入する年齢にローンの返済期間を足した年齢が、新築・中古、マンション、一戸建てに限らず70歳前後になっていることです。このことから、住宅ローンを組む時には、70歳前後までに完済目標するのが一般的といえます。

借り入れの年齢上限

住宅ローンを利用するときには、申込時の年齢と完済時の年齢に上限があります。申込時上限年齢を過ぎるとそもそも住宅ローンを利用できないということになりますし、一方で完済時の年齢は住宅ローンの返済年数を決める年齢となります。

フラット35を例にとると、申込時の年齢の上限は70歳(70歳未満)、完済時の年齢の上限は80歳となっています。民間の金融機関でも70歳もしくは80歳の誕生日を含むか否かで違いはあるものの、おおむね同様の規定になっています。

【参考】住宅金融支援機構「借入れをご検討の方」 詳しくはこちら

住宅の平均価格や借り入れ金額はどのくらい?

住宅の平均価格や借り入れ金額はどのくらい?

それでは、住宅の平均価格や借入額はどのぐらいの金額なのでしょうか。これも「住宅市場動向調査」のデータが参考になります。

住宅の平均購入価格と平均借入額

平均購入価格 平均借入額
注文住宅(土地購入資金含む) 4,606万円 3,408万円
分譲戸建 3,826万円 2,854万円
分譲マンション 4,639万円 3,048万円
中古戸建 2,894万円 1,754万円
中古マンション 2,263万円 1,285万円

【参考】国土交通省「令和元年度 住宅市場動向 調査報告書」 詳しくはこちら

表を見ると、新築一戸建ての場合には物件価格の72%ほど、新築分譲マンションや中古戸建・マンションは60%を借り入れでまかなっているということがわかります。
これは、住宅を購入する年代が大きく関わっていると考えられます。先程みたように新築住宅を購入する世代は若い世代が多いために、住宅ローンの割合を若干多めにしても、返済期間を長くすることで月々の返済抑えることができます。一方で、中古住宅の購入者は40代以上の割合が多くなってくるため、自己資金に余裕があること、また返済年数を減らす傾向があるようです。

借り入れ金額から毎月の支払い額を計算!

借り入れ金額から毎月の支払い額を計算!

それでは、表に挙げた平均価格や借入金額から毎月の支払金額のシミュレーションを考えてみましょう。
今回は金利2.3%、元利均等返済で返済年数が25年の場合と35年の場合で考えてみます。

住宅ローン返済シミュレーション

借入額 月返済額(25年払) 月返済額(35年払)
3408万円 14万9,478円 11万8,211円
2854万円 12万5,179円 9万8,995円
3048万円 13万3,688円 10万5,724円
1754万円 7万6,932円 6万840円
1285万円 5万6,361円 4万4,572円

※金利は2.3%、元利均等返済とする。

25年と35年では毎月の返済額に大きな差が出てきます。固定金利であれば返済額は一定ですが、変動金利の場合には将来の金利変動リスクもあり、返済期間が長いほどリスクが高くなります。資金計画を立てるときには、こういったリスクを念頭において慎重に検討しましょう。

返済計画のコツ

返済計画のコツ

住宅ローンの返済計画は、借入時点においては最長の返済期間を設定し、資金に余裕が生じたときに繰上返済していくのが一般的です。
しかし、長い人生のなかではさまざまなライフイベントが生じますし、予期せぬ出来事も起こります。余裕を持った返済計画を考えるためにも、以下の点に注意しましょう。

金利の構造を理解する

住宅ローンを組む時には元利均等返済と元金均等返済の2つから返済方法を選択します。
元利均等返済は、月々の返済が一定になるように元本と金利の割合を調整して支払う方式、元金均等は元金支払額を一定にして返済する方式です。
元金均等返済は毎月一定額で元本を返済していくことから、元本の残債は一定の金額で減っていきます。一方、元利均等返済の場合は、月々の支払額を一定にするために、支払当初は元金の支払い割合を抑えめにし、年数が経過していくにしたがって支払い割合が増えていきます。
そのため、繰上返済をしようと思って残債額を照会したときに「元本が全然減ってない」という感覚に陥ることが多いのです。
繰上返済で返済期間を短縮しようと考えている人は、繰上返済をしようとするときにどの程度元本が減っているのかという点にも目をむけて、金融機関の融資担当者に相談してみるとよいと思います。

ライフスタイルの変化を考えた返済計画にする

住宅ローンは30年前後の長期間にわたって支払っていくものです。賃貸の場合には教育資金が足りない、あるいは年収が下がったといった予期せぬ出来事が生じたときには、家賃の安いところに引っ越すということも可能ですが、住宅ローンを組んだ場合にはそう簡単ではありません。
また、年収は常に上がり続けるのではなく、ピークを過ぎると下がってきます。一方で、子供が大きくなるにつれて、教育資金などの支出は大きくなっていきます。
保険などを組み合わせた長期間のライフプランを立ててみることで、いくらぐらいの住宅であれば資金に余裕が生まれるのかが見えてきます。

※住宅ローンのボーナス払いについて、詳しくは【FP解説】住宅ローンのボーナス払いは本当に得?メリット・デメリットを徹底解説の記事もチェック

借入額を決める2つの基準を念頭に置く

借入額を考えるときに基準となるのは、「返済負担率」と「返済期間」です。
返済負担率とは年収に対する元利払いの年間返済額割合のことです。住宅ローンの貸出基準は30%から35%ぐらいまで許容していることが多いですが、ぎりぎりまで借り入れをするのは危険です。住宅の維持管理費や修繕費、ほかの生活費等を考えると、25%程度に抑えておいた方がよいでしょう。
また、返済期間については、長くすればするほど月々の返済額は減ります。返済期間を後で長くするのは難しいので、借入時には返済期間を長めにとっておき、後で繰上返済していく返済計画の方が生活にゆとりが生まれます。

※住宅ローンの繰上げ返済について、詳しくは【FP解説】私はするべき?住宅ローンの繰り上げ返済のメリットと注意点の記事もチェック

まとめ

まとめ

資金計画に無理が生じると、住宅ローンの返済は生活の重荷になります。資金が苦しいからといって住宅を売却しても住宅ローンを完済できるとは限りません。
今回紹介した完済年齢、購入価格や借入額などのデータを参考にして、融資担当者やファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談しながら、余裕を持った資金計画を立てましょう。

ご留意事項
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