「リースバック」とは?仕組みやメリット、注意点をわかりやすく解説!
住まいのリースバックとは、自宅を売却して資金を手に入れながら、売却後もそのまま同じ家に住み続けることができるサービスです。老後の生活資金やローンの返済、住み替えや相続対策など様々な用途で近年、利用者が増えています。この記事ではリースバックの仕組みやメリット・デメリットを解説します。
目次
「リースバック(セール・アンド・リースバック)」とは?
リースバックは、正式には「セール・アンド・リースバック」といい、自身が所有している住居をリースバック事業者に売却(セール)し、同時にその事業者と賃貸借契約(リース)を締結する不動産取引のことをいいます。
住居を売却したあとも、その住居に家賃を支払いながらそのまま住み続けることが可能で、子供の教育費や老後資金など、資金確保に活用されている手法です。
リースバックの仕組みを解説!
リースバックは、「住居の売買契約」と、「賃貸借契約」を同時に締結することで成立します。
一般的に、
①住居の所有者(売主)がリースバック事業者(買主)に住居を売却する
②買主は買取代金を売主に一括で支払い、売主は住居の所有権を買主に移転する
③買主を貸主、売主を借主とした賃貸借契約を締結する
という流れになり、以降、売主は賃貸借契約に基づき、買主に対して住居の賃料を支払いながら居住することになります。
【出典】国土交通省 「第50回住宅宅地分科会 資料8-4(居住者を巡る状況4,5)」 詳しくはこちら
ただし、リースバックを活用できない場合もあります。例えば、住宅ローンの残高があり、売却金額がその残高を下回り完済できないような場合には、抵当権を抹消することができません。基本的に、抵当権が残ったままの住居はリースバックの対象とされておらず、リースバックができないこともありますので注意が必要です。
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リースバックのメリット
リースバックをおこなうことによる主なメリットとして、次のようなことが挙げられます。
まとまった資金の確保
住居の売却により、まとまった資金を手にすることができます。その資金使途は自由なので、子供の教育費・老後資金の確保や借金返済など、一時金が必要な状況に対応することができます。
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引っ越しが不要
通常、売却してしまった場合には住み替えが必要になりますが、リースバックなら売却後もその住居に継続して居住することができます。そのため、引っ越しする必要がなく、慣れ親しんだ自宅に住み続けることができます。
近隣に知られない
基本的にリースバック事業者が買主となるため、仲介のように広く販売活動がおこなわれません。そのため、売却したことを近隣に知られずに済みます。
維持費が不要
自己所有ではなくなるので、固定資産税などの維持費が不要になります。マンションの場合、管理費や修繕積立金の支払いも不要となります。
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リースバックのデメリット
リースバックをおこなうことによるデメリットも考えてみましょう。主なデメリットとして、次のようなことが挙げられます。
住居を配偶者や子供などに残すことができない
住居の所有権がリースバック事業者に移転し自身の資産ではなくなるため、資産として配偶者や子供に引き継ぐことができなくなります。
家賃が発生する
住居を売却し賃貸に切り替えるため、家賃を支払うことになります。売却代金から家賃を支払うことも可能ですが、売却代金を別の用途に使用した場合は、家賃を支払うための安定した収入が求められることになります。
売却価格が周辺の相場より低くなる可能性がある
リースバック事業者は、賃貸による収益を求めているため、利回りを重視しています。事業者からすると、買取価格を低くすることで高い利回りを得ることができるため、売却価格は一般的な仲介市場における取引価格より安くなるケースがあります。
賃料が周辺の相場よりも高くなる可能性がある
リースバックにおける賃料は、リースバック事業者の求める利回りによっては、賃料が周辺の相場より高くなるケースもあります。
リースバックとリバースモーゲージは何が違う?
不動産を活用した資金の調達方法には、リバースモーゲージと呼ばれる方法もあります。
リースバックは住居の売却により資金を確保する手法ですが、リバースモーゲージは売却せずに、所有している住居を担保にして住み続けながら銀行から融資を受ける手法です。
融資を受けた元本の返済は、所有者の死亡後(または、契約期間終了後)に担保不動産の売却代金で返済します(※1)。また、資金を借り入れることになるため、利息の支払いも必要となります(※2)。
つまり、リースバックは住居の売却と賃貸借という不動産の取引をおこないますが、リバースモーゲージは不動産を担保にした金融取引であるという点が大きく異なります。
※1 担保となっている不動産を売却せず、相続人が返済する方法などもあります。
※2 金融機関によっては利息の返済を死亡後の売却でできるところもあります。
リースバックとリバースモーゲージの違い
リースバック | リバースモーゲージ | |
---|---|---|
仕組み | 不動産の取引(売却と賃貸) | 金融取引(不動産を担保にした融資) |
登記 | 売買時に所有権移転登記 | 抵当権設定登記(所有者の死亡後、所有権移転登記) |
借入 | 発生しない | 発生する |
資金の使途 | 制限はない | 事業目的や投資目的には使えないなど制限がある(金融機関によって異なる) |
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リースバックとリバースモーゲージはどう使い分ける?
ライフスタイルの視点から、リースバックとリバースモーゲージの使い分けを考えてみましょう。
年齢
リースバックの利用には年齢制限はありませんが、リバースモーゲージの場合、基本的に「60歳以上」や「70歳以上」といったように一定の年齢以上でなければ利用することができません。金融機関が設けた制限年齢以下の、比較的若い年齢で利用するのであれば、リースバックを利用することになります。
月々の固定費
リースバックを選択した場合、賃料が固定費として発生しますが、リバースモーゲージの場合は、融資期間中は元本の支払いが不要であるため固定費は利息の支払いのみとなります。一般的に、利息の支払いのほうが月々の支払いが少なくなるため、固定費を少なくしたいのであればリバースモーゲージのほうがよいでしょう。
所有か賃貸か
リースバックは住居を売却しますが、リバースモーゲージによる住居の売却は死亡後です。生存中、住居を所有することにこだわるのであれば、リバースモーゲージの方が適しています。
借金の有無
リバースモーゲージは住居を担保にした融資です。融資を受けた資金は、自身の死亡後に精算されるとはいえ、生存中は借金をすることになります。借金に対して抵抗がある人は、リースバックのほうがよいでしょう。
まとめ
リースバックは、近年持ち家比率の高い世代の高齢化においてニーズが拡大しており、取扱件数が増加しています。
リースバックはライフプランに応じた幅広い活用ができる手法です。とはいえ、住居の売却を伴うため、事前に専門家などに相談して長期的な計画を立てて利用することをおすすめします。
国土交通省も、既存の戸建て住宅の流通市場を活性化するため、リースバックに関する不動産業界共通の「ガイドライン」を2022年度以降に策定する方針であり、今後ますますリースバックの活用が見込まれます。条件に当てはまらない場合は、リバースモーゲージを検討してみるのもよいでしょう。
【参考】国土交通省「消費者向けリースバックガイドブック策定に係る検討会」詳細はこちら
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