60歳からの資産運用術!老後を見据えた安全な戦略のポイントを解説

60歳からの資産運用では、積極的にリターンを狙うのではなく、リスクを抑えながら堅実な運用が重要です。本記事では、60歳から資産運用を始める時に知っておきたいポイントや運用方法の選択肢などを解説します。NISAやiDeCoの制度や、退職金も上手く活用できるようポートフォリオを組んでみましょう。

60歳からの資産運用術!老後を見据えた安全な戦略のポイントを解説

60歳だからこそ!資産運用を考えよう!

60歳だからこそ!資産運用を考えよう!

「60歳から資産運用を始めても手遅れなのではないだろうか」と考えている方も多いのではないでしょうか。

結論をいえば、60歳から資産運用を始めても遅くはありません。むしろ、人生100年時代といわれるほど長寿化が進んでいる昨今の日本においては、資産の枯渇を防ぐためにも運用をするのが望ましいと考えられます。

長くなる老後生活で資金はいくら必要?

老後資金をいくら準備すべきかは、家族構成やライフスタイルなどで異なるため、一概にいくらとはいえません。2,000万円ほどの資金でゆとりのある暮らしを送ることができる人もいれば、3,000万円や4,000万円の資産があっても足りない人もいるでしょう。

そのため、現在の家計や希望するライフスタイルをもとに、老後資金がいくら必要となるのかを試算してみることが大切です。老後資金を試算する時は、老後生活で想定される支出から収入を差し引きます。

内容
老後の主な支出 ・生活費の総額(食費・水道光熱費・住居費・通信費・医療費など)
・住宅ローンの返済額
・住宅の修繕やメンテナンス、リフォームにかかる費用
・子供や孫などの援助資金
・葬儀費用・お墓の購入費用・遺品の整理費用 など
老後の主な収入 ・老齢年金の受給総額
・退職金・企業年金の支給額 など

年金の支給見込額は、毎年の誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」で確認できます。退職金の支給額や決まり方は、勤務先の就業規定で確認するとよいでしょう。
老後生活における必要な資金をより正確に算出したい時は、銀行や信託銀行などの金融機関に相談するのも1つの方法です。

60歳以降の収入源の変化

60歳以降の主な収入源は、給与などの労働収入から年金となり、世帯収入は低下するのが一般的です。

では、勤労者世帯と高齢の無職世帯の毎月の生活費は、どれぐらい異なるのでしょうか。

総務省統計局の調査によると、二人以上世帯のうち勤労者世帯における毎月の家計収支は以下の通りです。

60歳だからこそ!資産運用を考えよう!

一方で、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の家計収支は以下の通りとなります。

60歳だからこそ!資産運用を考えよう!

【参考】総務省統計局「家計調査報告 2022年(令和4年)平均結果の概要」詳しくはこちら

調査結果をみると、勤労者世帯の実収入は約61.7万円であるのに対し、夫婦高齢無職世帯の実収入は約24.6万円です。また、勤労者世帯では毎月約18万円の黒字ですが、夫婦高齢者無職世帯では約2.2万円の赤字となっています。

年金の支給が始まったあとも、世帯の収入が支出を下回っている場合は、資産の取り崩しが必要となるでしょう。定年退職後も再就職をして、給与収入を得る方法もありますが、いつまでも働けるとは限りません。

また、国から老齢年金の支給が始まるのは、基本的に65歳からです。定年退職が60歳である場合、年金の支給が開始されるまでは、資産の取り崩しと再就職による労働収入で生活をしていくことになるかもしれません。

このため、老後生活を見据えて計画的に資金を準備していなければ、途中で資金が不足して生活が苦しくなってしまう可能性があります。老後生活に金銭的な不安がある人は、資産運用を始めてみてはいかがでしょうか。

これまでの運用方針を見直そう

60歳を迎えるまでに資産運用を始めていた人は、運用方針を見直して必要に応じて投資対象や投資金額、資産配分を変更することをおすすめします。

特に、リスクが大きい方法で資産運用をしている方は、より低リスクな方法に変更した方がよいかもしれません。リスクが高い資産の比率が高いと、大きな損失が発生して生活が苦しくなる恐れがあるためです。

60歳以降ではリスク許容度が低くなるため、資産運用において大切なことは「資産をできるだけ減らさないようにする」ということです。積極的に利益を狙うことよりも、リスクが低い資産の割合を増やして堅実な運用を心がけ、資産の減少を抑えることの方が重要となります。

60歳からのおすすめ資産運用

60歳からのおすすめ資産運用

60歳から資産運用を始める場合、どの方法を選べばよいのでしょうか。ここでは、退職金の運用先として選択肢となりえる運用方法をご紹介します。今回ご紹介する投資先は、次の通りです。

・投資信託
・退職定期預金
・債券(個人向け国債・社債)
・貯蓄型の生命保険
・株式投資
・不動産投資

それぞれの特徴をみていきましょう。

投資信託

投資信託は、投資家から集めたお金をまとめてそれを資金源とし、運用の専門家が株式や債券などで投資運用する仕組みの金融商品です。

投資先から得られた利益は、出資金額に応じて分配金や償還金という形で投資家に還元されます。運用先の選定は、運用のプロであるファンドマネージャーに任せることができるため、投資の専門知識がなくても資産運用をすることが可能です。投資信託は、複数の銘柄が組み込めまれているパッケージ商品になっているので、分散投資によるリスク軽減も見込めます。

また、金融機関によっては、数千円〜1万円ほどで投資信託に投資をすることが可能です。投資金額が少ないのであれば、損失が発生したとしても小規模で済みます。投資の経験があまりない人は、投資信託で資産の運用を始めるのも1つの方法です。

退職金定期預金

退職金定期預金とは、退職金の運用を主な目的とした定期預金のことです。事前に預入の期間を決める点は通常の通常の定期預金と同じですが、金利は通常の定期預金よりも高い傾向にあります。

また、定期預金の一種であるため「預金保険制度」の対象となります。たとえ預け入れ先の金融機関が経営破綻したとしても、預金者一人につき1,000万円までの元本と破綻日までの利息が保証されるため、安全性は比較的高いといえるでしょう。

ただし、通常の定期預金よりも金利が高いとはいえ、低金利の現代ではあまり利息収入は期待できません。資産の減少を抑えるという点ではあまり効果が期待できないため、投資信託や株式などのリスクがある運用方法も組み合わせることが大切です。

債券(個人向け国債・社債)

債券とは、国や企業が投資家からお金を借りる際に発行する有価証券のことです。発行体が国である債券は「国債」企業である債券は「社債」といいます。

債券を保有していると、定期的に利子を受け取ることができるだけでなく、満期を迎えた時は額面金額(発行された時の金額)が払い戻されます。満期を迎える前に売却をして、売却益を得ることも可能です。

利子という定期的な収入を得られることに加え、満期時に発行体が破綻していなければ元本が返還される仕組みもあるため、債券はローリスク・ローリターンといわれています。
運用資産に債券を組み入れることで、守りを重視した堅実な運用が可能となるでしょう。

貯蓄型の生命保険

生命保険は、保障の対象になる人が亡くなったり、所定のタイミングとなった時に生存したりしていると保険金や給付金が支払われる商品です。生命保険のうち貯蓄機能を備えた商品であれば、万が一に備えながら資産運用をすることもできます。

代表的な貯蓄型の生命保険は、以下の通りです。

主な特徴
終身保険 ・一生涯にわたって死亡と所定の高度障害状態に備えられる
・途中で解約すると経過期間に応じた解約返戻金を受け取れる
個人年金保険 ・保険料を支払うと、契約時に定めた年齢に達した時に年金を受け取れる
・年金を受け取れる期間は、5年や15年などの一定期間または一生涯

また、生命保険に加入すると生命保険料控除という税の優遇制度を受けることが可能です。
生命保険料控除を受けられると、1年間で支払った保険料に応じた一定金額がその年の所得から差し引かれます。

所得税や住民税は1年間の所得をもとに計算されます。生命保険料控除によって、所得税や住民税の課税対象となる所得が減ると、税負担を軽減することが可能です。

株式投資

株式投資は、企業が発行する株式に投資をすることです。株式に投資をした人は企業のオーナーとなり、株主総会で決議をしたり、配当金を受け取ったりする権利を得られます。

配当金とは、企業が得られた利益の一部を出資金額に応じて投資家に還元する制度のことです。安定的に利益を上げている企業の株式に投資ができれば、配当金という定期収入を得ることで、老後の家計を楽にできる可能性があります。

また、日本国内の企業では、株主に対して自社製品や優待券などの株主優待を実施していることもあります。日用品や食料品などを優待する企業の株式に投資をし、毎月の支出を抑えることも可能でしょう。
加えて、取得した時よりも株価が上昇しているタイミングで売却をすると、多額の売却益を得ることも可能です。

一方で、企業の業績が振るわなかった時や不祥事を起こした時は、株価が大幅に下がってしまうこともあります。企業が倒産してしまうと、株価の価値が0円になって投資資金を失ってしまいかねません。
そのため株式投資では、企業の財務諸表や経済の動向などをもとに、投資する銘柄を慎重に選ぶことが大切です。

不動産投資

マンションやアパートなどの不動産に投資をすると、年金や給与に加えて賃料収入という収入源を増やすことができます。安定した家賃収入が得られる物件に投資ができれば、金銭的にゆとりのある老後生活を送りやすくなるでしょう。

一方で、空室が発生する確率が高い物件に投資をしてしまうと、入居者がなかなか決まらずに家賃収入を得られない可能性があります。思うように家賃収入を得ることができず、赤字が発生してしまうと貴重な財産を食いつぶしてしまいかねません。

また、購入金額より将来的に売却をして高値で売却できると、高く売却益を得られる可能性があります。売却益であるキャピタルゲインを狙うことを出口戦略といい、「いつ・いくらで売るか」が重要な判断ポイントになります。

投資用のマンションやアパートなどを取得する時は、不動産会社にも相談のうえ、安定した賃貸需要が見込める物件を選ぶことが大切です。

60歳から資産運用を始めるポイント

60歳から資産運用を始めるポイント

60歳から資産運用を始める時のポイントは、以下の通りです。

・資産運用の知識を身につける
・専門家に相談する
・老後の収支計画を立てる
・NISAを活用する

1つずつ解説します。

資産運用の知識を身につける

さまざまな種類がある資産運用の方法の中から、自分自身にあった方法を選ぶためには、それぞれの特徴やメリット、デメリットを理解していなければなりません。

また、運用方法によってリスクの種類や大きさが異なります。資産運用の知識がないと、自分自身が受け入れられないほどのリスクがある投資先を選んでしまう可能性があります。

そのため、資産運用を始める時は、書籍やインターネットなどで知識を身につけることが大切です。銀行や証券会社などが開催する資産運用のセミナーに参加するのもよいでしょう。
資産運用を始めた後も投資についての学習を継続し、知識や情報をアップデートしていくことで、より安定的に利益を得ることができるでしょう。

専門家に相談する

資産運用をするためには知識が必要ですが、これまで投資経験がなかった人が、金融商品の特徴を理解して運用先を選ぶことは難しいかもしれません。

また、運用プランを立てる時は、単に知識だけでなく、社会保険料の増加や物価の上昇なども織り込むのが望ましいといえます。そこで、資金の運用先を選ぶ時は、資産運用の専門家に相談することをおすすめします。主な相談先は、以下の通りです。

・銀行・信託銀行
・証券会社
・ファイナンシャル・プランナー
・IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)

銀行や信託銀行は、資産運用をしていない人にとっても身近な金融機関であるため、比較的相談しやすいといえます。
証券会社では、資産運用の相談ができるだけでなく、担当者から提案された投資信託や株式、債券などの商品に投資することも可能です。
また、企業に所属していない独立系のファイナンシャル・プランナーやIFAに相談することで、より中立的なアドバイスが期待できるでしょう。

相談先によってメリットやデメリットは異なります。複数の専門家に相談をし、セカンドオピニオンやサードオピニオンも聞くことで、より自分自身にあった運用方法を選べるようになるでしょう。

老後の収支計画を立てる

60歳からの資産運用では、老後生活における収入や支出を予測して計画を立てることが重要です。

例えば、老後生活における想定の支出が毎月30万円、想定収入が20万円であったとしましょう。毎月の不足額は10万円です。老後生活が始まった時の資産が合計で2000万円である場合、不足額の10万円を毎月取り崩していくと16年8ヶ月でなくなってしまいます。

一方、2,000万円を年5%で運用できると、資産の寿命を34年7ヶ月に伸ばすことが可能です。65歳から老後生活が始まるとするなら、99〜100歳まで資産の取り崩しが可能となります。
このように老後の収支計画を立てることで「運用しないと資産が何年で枯渇するのか」「資産の枯渇を防ぐためには何%の利回りで運用すべきなのか」が分かりやすくなります。

また、日頃の生活を見直すよいきっかけになるかもしれません。家賃が安いアパートに引っ越して住居費を抑えたり、食生活を見直して食費を抑えたりすることで、毎月の支出を下げることができれば、資金の枯渇がさらに発生しにくくなるでしょう。

NISAを活用する

株式や投資信託に投資をして得られた利益(配当金・分配金)などには、20.315%の税金がかかります。NISAは、毎年一定金額の範囲内で購入した金融商品から得られる利益が一定期間にわたって非課税になる制度です。

NISAの一種である「一般NISA」であれば、年間で120万円までの金融商品を購入でき、得られた利益は最長5年間にわたって非課税となります。

例えば、新規投資をした時の価格が100万円であった金融商品を、3年後に120万円で売却したとしましょう。通常であれば「(120万円-100万円)×20.315%=40,630円」の税金がかかりますが、一般NISA口座で取引していたのであれば非課税となります。

本来であれば税金として納める分が非課税になることで、手元に残る金額を多くすることができます。

また、2024年1月からは「新しいNISA」が開始される予定です。新しいNISAでは、現行のNISAと比較して年間で投資できる金額が増加するため、非課税メリットが得られやすくなります。非課税期間も恒久化され、長期的な積立投資もしやすくなります。

iDeCoは最長65歳まで加入できる

iDeCoは、自分自身で老後の年金を準備できる私的年金制度です。毎月掛金を支払っていき投資信託や保険商品などで運用して、老後の年金資産を積み立てていきます。

2022年5月からは、会社や公務員など厚生年金に加入している人(国民年金第2号被保険者)は、最長65歳まで加入できるようになりました。
また、自営業や専業主婦(夫)などで60歳以降に国民年金に任意加入している方も、最長65歳までiDeCoに加入できます。

iDeCoには「運用で得られた利益が非課税になる」「掛金の全額が所得控除の対象となり所得税や住民税の負担を軽減する効果が期待できる」など、税制上のメリットがあります。
加入資格を満たしているのであれば、60以降の資産運用においてもiDeCoを活用してはいかがでしょうか。

60代におすすめのポートフォリオ

60代におすすめのポートフォリオ

資産運用を始める時は、投資する商品の組み合わせや配分を考えてポートフォリオを組みます。ポートフォリオを組む際に考える必要があるのが「アセットアロケーション」です。

アセットアロケーションとは、運用する時の資産配分のことです。アセットアロケーションでは「国内株式50%・国内債券50%」のように、投資対象ごとに資産配分を考えます。

60代から資産運用を始める際のアセットアロケーションの例は、以下の通りです。

・定期預金:20%
・国内株式:5%
・外国株式:5%
・国内債券:40%
・外国債券:30%

先述の通り、60代で資産運用をする時は、定期預金や債券など比較的リスクが低い運用方法を中心に選び堅実な運用を心がけるとよいと考えられます。

退職金は慎重に運用しよう

退職金は慎重に運用しよう

退職金は、老後生活を送るうえで大切な資金源となるため、慎重に運用することをおすすめします。
退職金を高いリターンが期待できる方法で運用すると、資産が大きく増えてよりゆとりのある老後生活を送れるかもしれません。しかし、大きな損失が発生する可能性も高まります。

株式のようなハイリスク・ハイリターンな方法を中心に運用すると、老後生活の途中で大きな損失が発生してしまい、資産が大きく減って生活が苦しくなるかもしれません。

主な収入源が年金となるだけでなく、労働収入も現役時代より低下する老後生活で、退職金の運用に失敗して多額の損失が発生すると、挽回するのは難しいと考えられます。
勤務先から退職金を受け取った時は、老後のライフプランを考えて専門家にも相談し、慎重に運用方法を決めることが大切です。

まとめ

60歳からの資産運用では、保有資産を極力減らさないように守りを重視するとよいでしょう。積極的にリターンを得ようとして株式の投資をするのではなく、定期預金や債券などローリスク・ローリターンの方法も組み合わせて堅実に運用することをおすすめします。

銀行や信託銀行、証券会社、ファイナンシャル・プランナーなどの専門家に相談し、老後の収支計画を立てたうえで、自分自身に合った運用プランを練ったうえで資産運用を始めることが大切です。

ご留意事項
  • 本稿に掲載の情報は、ライフプランや資産形成等に関する情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の取得・勧誘を目的としたものではありません。
  • 本稿に掲載の情報は、執筆者の個人的見解であり、三菱UFJ信託銀行の見解を示すものではありません。
  • 本稿に掲載の情報は執筆時点のものです。また、本稿は執筆者が各種の信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性について執筆者及び三菱UFJ信託銀行が保証するものではありません。
  • 本稿に掲載の情報を利用したことにより発生するいかなる費用または損害等について、三菱UFJ信託銀行は一切責任を負いません。
  • 本稿に掲載の情報に関するご質問には執筆者及び三菱UFJ信託銀行はお答えできませんので、あらかじめご了承ください。

RANKING

この記事もおすすめ