退職金の運用は投資信託がおすすめ!リスクを考えて老後の資産形成をしよう

老後の生活資金は年金だけではなく、退職金を運用しながら資産寿命を伸ばすことが重要です。この記事では、退職金の運用におすすめな投資信託についてご紹介します。ほかにも退職金定期預金や個人向け国債、貯蓄型の保険など、リスクを抑えた資産運用方法も参考にしてみてください。

退職金の運用は投資信託がおすすめ!リスクを考えて老後の資産形成をしよう

老後の資金は足りてる?退職金を運用することの重要性

老後の資金は足りてる?退職金を運用することの重要性

老後の生活資金は、主に公的年金となる方が多いでしょう。会社員・公務員は、原則として65歳から公的年金である老齢基礎年金・老齢厚生年金を受給することが出来ます。

厚生労働省の試算では、会社員・公務員の平均的な収入で40年間勤務した場合の年金額は、夫婦世帯で月額約22万円です。公的年金の受給が始まる65歳まで収入がない場合は、貯金や退職金を取り崩すなどの手段が必要でしょう。

平均余命は年々長くなってきており、今後インフレが進んでいくことも考えられることから「資産寿命を延ばす」という視点も重要になってきています。保有する金融資産を取り崩す場合、運用しながら取り崩せば資産寿命を延ばすことが出来るでしょう。

老後の生活設計を「人生100年時代」に対応させるためには、金融資産を運用し、一定の収益を確保する必要があります。金融資産のなかでも、特に退職金の運用に関して注意点も学んでいきましょう。

【参考】厚生労働省「令和5年度の年金額改定について」 詳しくはこちら

老後に必要な資金を正確に把握することは困難

総務省のデータを元に老後の消費支出を見てみると、年齢が上がるにつれ支出は減少していっています。しかしながら、突発的な支出は予想がつきません。
老後は、医療や介護費用のほか、持ち家であれば予期せぬ修繕費がかかる可能性もあるので、予期せぬ支出へ事前に備えておくことが大切です。

【参考】総務省「家計調査報告(家計収支編)2022年(令和4年)平均結果の概要」 詳しくはこちら

退職金や年金収入だけでは老後資金が足りない可能性がある

生命保険文化センターの調査では、夫婦二人で老後生活を送るうえで、最低限必要な日常生活費は月額23万円、経済的にゆとりある老後生活に必要な上乗せ額は月額15万円となっています。

予期せぬ支出への備えや経済的にゆとりある老後生活を送るためには、公的年金や退職金だけで老後の生活費を確保するのは難しいといえるでしょう。

【参考】生命保険文化センター「令和4年度 生活保障に関する調査」 詳しくはこちら

インフレリスクによって現金価値は目減りする

ここ最近は、買い物をした際に値上がりを実感することが多くあると思いますが、今後もこのようなインフレが進む可能性があります。
インフレリスクとは、物価が継続的に上昇し、商品の価格が上がることで、実質的にお金の価値が下がることを意味します。

インフレ状況になると、タンス預金や低金利の中で銀行の預金など保有している資産価値も実質的に下がる可能性があるため、物価上昇率以上の投資をすることでインフレリスクに備えることも重要になってきます。

退職金を運用するうえでのポイント

退職金を運用するうえでのポイント

「資産運用」は、資産を投資して効率よく増やすことです。しかし、投資によって資産の価値が変動するリスクがあります。その投資リスクをとった結果であるリターンには、プラスの場合もあれば、マイナスの場合もあり、投資した元本が割れてしまう可能性もあるでしょう。

このようなリスクをコントロールするキーワードが「長期投資」「分散投資」「積立投資」です。

【長期投資】
長期間に渡って投資を行うことで、価値の変動のブレ幅を平準化し、リスクをコントロールすることが出来るでしょう。元金だけでなく、その利子にも利子がつく「複利効果」によって雪だるま式に資産を増やせる可能性があります。

【分散投資】
投資する資産や銘柄を集中させず、複数に分散することによってリスクをコントロールする方法です。価格の動き方が異なる資産や銘柄を組み合わせることで、ブレを抑える効果が期待出来るでしょう。

【積立投資】
一度に投資せず定期的に投資する方法で「投資時期の分散」と考えることも出来ます。一度にまとめて投資すると、その時の相場でその後の資産の価値が決まってしまいますが、積み立てることで買い付ける単価を平準化でき、リスクをコントロール出来るでしょう。

出典 

退職金の運用には投資信託がおすすめ

退職金の運用には投資信託がおすすめ

退職金の運用には、投資信託がおすすめです。投資経験の少ない初心者の方や、なるべくリスクを抑えた運用を行いたい方に向いています。

投資信託とは?

投資信託とは、投資家から集めたお金を運用のプロが国内、海外株式や国債、社債などさまざまな投資先に投資・運用する商品です。その運用の成果で得た利益が、それぞれの投資額に応じて分配される仕組みになっています。
投資経験のない方で、自分でさまざまな投資先を考えることは難しいという場合に始めやすい投資の1つです。

投資信託のメリット・デメリット

投資信託のメリットは、株式投資などと比較して少額から始められることです。
投資信託は、商品を購入することで複数の投資先に分散投資が出来る仕組みのため、リスクを軽減することができます。

デメリットとしては、銀行の預金などと違い元本割れのリスクがあるということです。また、運用を投資のプロに任せるため、購入時・保有時・解約時に手数料を支払わなければなりません。
そのため、一年にどれくらいの利益が出ているかの運用実績だけではなく、支払う手数料がどのくらいかかるのかという点をみることも大切になります。

退職金の運用に向いている理由

退職金を受け取った際、その全部、または一部を将来の何かあった際の資金として準備しておくという方が多いのではないでしょうか。何かあった時のための資金は、できるだけ減らしたくはないものです。一方で、何もしなければインフレリスクにさらされる場合もあるので、安定的な投資をすることが大切です。

投資で安定して運用するには、リスクとコストを抑えることが重要です。投資信託は、リスクをコントロールする手段である「長期(長くもつこと)」「分散(さまざま商品を買うこと)」「積立(少額から定期的に購入していくこと)」を実践出来る金融商品の1つであり、退職金を運用する手段の1つとして効果的です。

投資信託はNISA制度を活用しよう

NISA制度とは、個人が投資をする際の税制優遇制度です。通常、金融商品の売却益(譲渡益)には約20%の税金がかかりますが、NISA制度を活用して投資信託を運用することで、非課税で運用することが可能になります。

現行のNISA制度では、一般NISAとつみたてNISAに分かれています。それぞれの利用目的を大別すると、一般NISAは株式など短期の売買をしたい場合に、つみたてNISAは長期でリスクを低く、運用をしていく場合に利用するものとなります。

つみたてNISAの対象商品は、手数料が低水準など「長期」「分散」「積立」に適している国が定めた投資信託などの商品に限定されていますので、投資初心者の方にも利用しやすい仕組みとなっており、退職金の運用に適しているといえるでしょう。

また、2024年よりNISA制度の変更があり、より投資枠が増えるなど利用がしやすい制度になっていますので、以下の記事も参考にしてみてください。

退職金におすすめの資産運用方法

退職金におすすめの資産運用方法

退職金を受け取った場合に活用する運用商品には、以下のものもおすすめです。それぞれのメリット・デメリットを把握して活用しましょう。

退職金定期預金

退職金定期預金とは、預け入れる資金を退職金に限定し、通常の定期預金よりも高い金利が適用される定期預金です。一部の銀行や信用金庫で取り扱っています。
基本的に通常の定期預金より利率が高く設定されていますが、優遇金利を受けるための利用条件を設けている金融機関が多く、一定期間解約出来ないなどのリスクもあります。

また、適用期間が終了した後は通常の預金に切り替わる場合があるため、適用期間が終了したあとの運用方法について考える必要があるでしょう。

個人向け国債

個人向け国債は、国が発行する債券で、元本割れがなく1万円の少額から投資出来るメリットがあります。
その反面、銀行預金と同様に低金利であるため、資産を大きく増やすことが難しく、原則発行から1年は中途換金できないなどのデメリットがあります。

貯蓄型の保険

貯蓄型保険は、万が一に備えながら貯蓄が出来る保険です。終身保険のほか、学資保険や個人年金保険、などさまざまな種類のものがあります。
解約した時に保険料が返ってくるため、保険料が掛け捨てにならないことや、支払保険料が生命保険料控除の対象となるなどのメリットがあります。
掛け捨ての保険と比べて保険料が高く、契約後すぐに解約をした場合には、解約返戻金が支払保険料を下回る場合があります。

株式投資

株式投資とは、投資家が会社の株式を証券市場を通じて購入し、会社の成長によって運用成果を得る投資方法です。
購入した株式の価格の値上がりによる譲渡益のほか、配当金や優待などが得られるメリットがあります。
一方で、株価の値下がりや会社が破綻した場合に、手元に何も残らない可能性があります。

短期的に利益を上げられる可能性もありますが、株価の動きは日々変わるため、頻繁にチェックしなくてはいけません。投資経験の少ない方はリスクが高いので、自分のリスク許容度に合わせて検討してみてください。

不動産投資

不動産投資とは、投資用不動産を購入し、貸し出すことで家賃収入を得る投資方法です。定期的な収入が得られるほか、不動産価格が上昇すれば大きな売却益を得ることも出来ます。

一方、空室のリスクや修繕費がかかる可能性があり、不動産価格の下落時には大きな損失を被る場合があります。投資物件によっては初期費用もかかるため、慎重に検討しましょう。

運用商品 メリット デメリット
退職金
定期預金
・元本保証
・預金保険制度の保護の対象
・金利の上乗せ
・金利上乗せは一定期間に限定
・金利を上乗せするために投資信託をまとめて購入する場合はリスクが大きい
・一定期間解約出来ない場合は現金化出来ないリスクあり
個人向け国債 ・金利年0.05%が最低保証 ・現金化するためには1年以上保有する必要あり
貯蓄型の保険 ・保険料が掛け捨てにならない
・保険料が生命保険料控除の対象
・途中で解約すると払い込んだ保険料を下回る場合がある
株式投資 ・値上がり益
・配当
・株主優待
・値下がり
・会社の倒産による損失
不動産投資 ・家賃収入
・不動産が値上がりすれば売却益が得られる
・流動性が低い
・不動産が値下がりすれば損失が出る

退職金を運用するうえでの注意点

退職金を運用するうえでの注意点

退職金を運用するうえで注意したいのが、資産価値を減らさないことです。退職金の運用は、ハイリスク・ハイリターンの投資は避け、今ある資産を守ることが重要になってきます。

運用の目的と目標を明確にする

退職金を運用する場合には、目的と目標を明確にする必要があります。
老後、年金だけで生活する場合を想定し、生活費としていくら必要なのか、毎月いくら不足するのかを考えるとよいでしょう。また、生活資金だけでなくセカンドライフでやりたいことや、もしもの時の備えなど、目的はさまざまです。

いつまで運用するのか、いくらくらいまで資産を増やしたいのか、もしも損失が出た場合はいくらで損切りをつけるかなど、運用方針を決めておきましょう。

自分のリスク許容度を把握する

一般的にリスクとは「危険なこと」を意味しますが、投資におけるリスクとは「リターンが不確実である(予測できない)こと」を意味します。

リスク許容度とは、運用成果がマイナスになった時に受け入れられる損失の程度です。一人一人の事情でリスク許容度は異なります。
年齢や資産額、老後のライフイベントなどから客観的に判断し、自分のリスク許容度を把握することが重要です。

分散・長期・積立投資を意識する

先述した通り、投資にリスクはつきものですが「分散投資」「長期投資」「積立投資」を意識することで、リスクをできるだけ軽減し、安定的に運用をすることが可能です。
リスクを分散させ、複利効果を活用し、少額からコツコツ積み立てることで、上手くお金を運用していきましょう。

ハイリスク・ハイリターンの投資は避ける

リスクを抑えようとすると高いリターンは見込めず、高いリターンを得ようとするとリスクも高まります。ローリスク・ハイリターンの金融商品は存在しません。
退職金の運用目的を考え、一年後に多くの資金が必要などよほどの理由がない限り、ハイリスク・ハイリターンの投資は避けましょう。

ポートフォリオを組んでみる

ポートフォリオとは、金融商品の組み合わせのことです。異なる金融商品の配分や組み合わせによって、リスクを軽減することができます。

ご自身のリスク許容度に合わせて、ポートフォリオを組んでみるとよいでしょう。ポートフォリオが何か分からないという方は、まずは世の中にどのような投資商品があるのかを調べてみるとよいでしょう。

税金がかかる場合がある?退職金の運用の注意点

税金がかかる場合がある?退職金の運用の注意点

ここで退職金にかかる税金について確認します。退職金を受け取った時に税金がかかると、手取り額が減ります。支給された退職金全額が運用に回らない場合があるので、注意が必要でしょう。

退職を一時金として受け取る場合は、以下のような算式で退職所得を求め、ほかの所得と合算しないで所得税・住民税を計算します。

退職所得=(退職一時金の額-退職所得控除額*)×1/2

出典 

*退職所得控除額の計算方法

・勤続年数が20年以下の場合:40万円×勤続年数(2年以下の場合は2年)
・勤続年数が20年を超える場合:70万円×(勤続年数-20年)+800万円

※勤続年数に1年未満の端数がある場合は切り上げ

出典 

退職金を企業年金として受け取れる場合もあります。

その場合、公的年金等にかかる雑所得を求め、ほかの所得と合算して所得税・住民税を計算します。
ただし、計算方法がやや複雑なので、国税庁のページを参照してください。

上記のページに記載されている「公的年金等の収入金額」とは、公的年金の老齢給付の金額、企業年金の金額の合計となります。

退職金の運用に迷った時は専門家に相談を

退職金の運用に迷った時は専門家に相談を

退職金を運用するための金融商品にはさまざまなものがあり、どれを選択すればよいか迷う方もいるでしょう。また、金融商品のもつリスクに対する考え方は、人それぞれ異なります。さらに、今後の生活設計によって、活用する金融商品に違いが出てくるかもしれません。

これらの点を勘案して最適な商品を選ぶ際には、金融商品を取り扱う金融機関のアドバイザーや、ファイナンシャル・プランナーなどの専門家に相談するとよいでしょう。自分自身では気づかない、広い視野で金融商品を選択することが出来るでしょう。

まとめ

人生100年時代で老後の資金をつくるには、資産寿命を延ばすことが必要でしょう。退職金の運用もその手段の1つ。運用方法を選ぶうえで、リスクをコントロールするために「長期」「分散」「積立」はポイントとなります。

投資信託はリスクをコントロールしやすい運用方法としておすすめです。もちろん、そのほかの運用方法のメリット・デメリットとも比較し、専門家のアドバイスを受けながら、退職金を上手く運用していきましょう。

ご留意事項
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