投資信託の「トータルリターン」って何?分配金利回りとの違いは?
投資信託の運用実績を確認する際、「トータルリターン」は非常に重要なものです。しっかり理解して、実際に活用できるようにしましょう。「トータルリターン」を理解するために、分配金や投資信託にかかる3つのコストについても解説します。
投資信託における「分配金」の仕組み
投資商品のトータルリターンとは、一定の期間内の総合的な損益のことです。投資信託の場合、得られる収益の1つが分配金です。
投資信託における分配金とは、決算時ごとに投資家に支払うお金のことです。預金の利息であれば、約束された利率で定期的に利息が支払われますが、投資信託の分配金は、運用状況等に応じて変動する可能性があります。
普通分配金と特別分配金
投資信託の分配金には普通分配金と特別分配金があります。同額の分配金が出たとしても、普通分配金か特別分配金かで大きな違いがある点は知っておきましょう。
運用によって得られた、個別元本(※)を上回る利益を投資家に支払うものが普通分配金です。普通分配金の場合は、利益として課税対象になります。
一方、特別分配金は、「元本払戻金」とも呼ばれ、収益分配後の基準価額が個別元本を下回る部分からの分配金を指します。分配金が特別分配金に該当する場合は、元本の一部を払戻したものとみなされ、非課税扱いになります。
※個別元本=投資信託を購入した投資家ごとの計算上の買い値。当初は買付した金額だが、特別分配金が支払われた場合などは個別元本が減ったことになり、金額が修正される。
以下は、個別元本10,000円、分配金1,000円だった場合の分配金のイメージです。
■普通分配金
■特別分配金
普通分配金にかかる税金と税引後の受け取り額は下記の通りです。
なお、分配金は投資信託の信託財産から支払われるため、分配金が支払われると投資信託の値段である基準価額は下がります。また、運用実績がよくても分配金が出ない商品もあるので、分配金の有無や多寡だけでなく、値上がり幅など他の成績も見て、総合的に判断しましょう。
投資信託で押さえておくべき3つのコスト
投資信託には購入時や保有時、解約時にかかるコストがあり、収益にも大きな影響があります。投資信託の商品選びを行う際に、最低限、押さえておくべきコストは3つあります。
購入時手数料
投資信託を購入する際に、販売会社(証券会社や銀行など)に支払う手数料。購入金額の0〜3%程度で、販売会社や購入する投資信託によって異なります。購入時手数料がかからない商品を「ノーロード投資信託」といいます。ごくまれに、売却時に購入時手数料を支払う仕組みの商品もあります。
信託報酬
投資信託を保有している間、かかり続ける間接的な手数料です。運用されている信託財産から日々差し引かれ、運用を担う運用会社などに支払われています。信託報酬自体は年率で表示されており、0.1~3.0%程度と商品ごとに異なります。実際に商品を選ぶ際には、信託報酬の低さだけでなく運用方針や運用実績との兼ね合いで選ぶことが大切です。
信託財産留保額
投資信託を解約する時に発生する手数料が信託財産留保額です。解約で資産を一部売却する際の手数料で、他の投資家に負担をかけないようにするための仕組みと言えます。ただし、信託財産留保額がないものも多く、かかる場合は基準価額の0.2〜0.5%程度です。
「分配金利回り」と「トータルリターン」は違う!
投資信託の運用成績を見るには、分配金利回りとトータルリターンがあります。
分配金利回りとは
「分配金利回り」は、1年間に受け取る分配金を、ある時点などの基準価額(※)で割って算出します。投資信託を選ぶ際に参考となる指標の1つです。
※算出している証券会社などによっていつの基準価額を使っているかは異なります。
分配金利回りが高いほど運用実績がよいと勘違いしそうですが、そうとは限らない点に注意が必要です。投資信託を選ぶ際は、分配金利回りだけで選ぶのは避けるべきです。
トータルリターンとは
「トータルリターン」には2つの意味があります。まず1つは、自分が投資した投資信託の運用成績を表すもので、投資信託に投資をしてから現在までにどれだけ実質的なリターンがあったかを示すものです。個々の投資信託ごとや、保有している投資信託全体で表示されます。
■トータルリターンのイメージ
もう1つは、その投資信託の成績の指標として利用される「トータルリターン」です。こちらも、値上がり益と分配金は再投資したものとして計算されます。1年、3年、5年などのある一定期間の運用成績が年率(複利)で示されることが通例です。
指標としてのトータルリターンを見ると、1年の運用成績は良くても、5年など長期での運用成績はあまり良くない、というようなこともあります。短期間の成績は、株式相場などの一般的な環境の要因が大きく影響していることもあるので、5年、10年などの数字も確認して総合的に判断しましょう。
まとめ
投資信託で投資を始める際には、2つの「トータルリターン」を知っておく必要があります。一方は、個人の保有する運用成績を確認することができ、他方は、指標として投資信託選びなどで利用することができます。
「トータルリターン」のほか、分配金の仕組みや投資信託のコストも含め、運用前にはしっかり理解しておきたいもの。分配金が多く出ると言っても、必ずしも運用成績が良い投資信託とは限りません。投資信託を選ぶ際には、「分配金利回り」より「トータルリターン」に重きを置いて選択するといいでしょう。
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