投資の新機軸「不動産クラウドファンディング」って何?

現在注目が高まっている不動産クラウドファンディングは、少ない資金から始められる不動産投資商品の1つです。本記事では、類似する不動産投資商品との比較を踏まえ、不動産クラウドファンディングの基礎知識からメリット・デメリットまで解説します。

投資の新機軸「不動産クラウドファンディング」って何?

不動産クラウドファンディングとは?

不動産クラウドファンディングとは?

そもそもクラウドファンディングとは、インターネット上で投資を募り、不特定多数の人からプロジェクトなどに必要な資金を調達する方法です。不動産クラウドファンディングはこの仕組みを応用したもので、その名の通り不動産購入・運用のための資金調達を目的としています。
なお、不動産クラウドファンディングは、国土交通省管轄の不動産特定共同事業法(不特法)に基づく電子取引業務として行われるため「不特法型クラウドファンディング」とも呼ばれています。

不動産クラウドファンディングは最低1万円から出資できる案件が多く、投資家初心者でも比較的手を出しやすいのが特徴です。運用期間は6ヶ月〜2年程度、取扱物件はマンションやアパートなどが多い傾向にあります。1案件1物件ごとの投資が基本的な形態となっています。
投資家は、事業者が購入した不動産の運用益から配当金を受け取ります。案件にもよりますが、利回りはおよそ4%~10%程度の範囲内で設定されているケースが多いようです。不動産クラウドファンディングは情報の公開性が高いため、実際に物件を確認してから投資の判断を下せる場合が多いのも特徴といえるでしょう。

不動産クラウドファンディングのメリット

不動産クラウドファンディングのメリット

クラウドファンディングを利用した不動産投資は、投資家にとって多くのメリットがあります。

少額からの投資が可能で分散投資もしやすい

まず通常の不動産投資(現物不動産投資)の場合、投資家は物件ごとに数百~数千万円、場合によっては数億円もの資金が必要です。しかし、不動産クラウドファンディングの場合は、不特定多数の投資家との共同出資になるため、個人では手が出せないような高額物件への投資も可能です。少額での投資が可能となることにより、準備資金のハードルを下げ、分散投資がしやすくなればリスクヘッジにもつながります。

「優先劣後出資」で損失を抑えられる

リスクヘッジという観点では、不動産クラウドファンディングにおける「優先劣後出資」の恩恵も無視できません。優先劣後システムは、優先的に投資家へ利益が配当され、損失は事業者の出資金によって補填する仕組みです。不動産クラウドファンディングも投資である以上、元本割れのリスクを完全に排除することはできません。しかし、この優先劣後システムが適用されている案件を選択すれば、損失額を最小限に抑えられるのです。

事業者に一任するため手間が少ない

また、不動産クラウドファンディングは、現物不動産投資と比べて手間がかからないのもメリットです。現物不動産投資の場合、所有した不動産の維持管理については多かれ少なかれ自分で行う必要があります。不動産クラウドファンディングであれば、取得した物件の運用は事業者に一任できるため、投資家は出資以上の手間をかける必要がありません。そのような点からも、不動産クラウドファンディングは初心者投資家にとって、検討しやすい投資方法だといえるでしょう。

不動産クラウドファンディングのデメリット

不動産クラウドファンディングのデメリット

先述したように、不動産クラウドファンディングには多くのメリットがある一方で、利用するにあたっていくつか注意しておきたい点もあります。

投資した物件の運用益から配当を受けるという性質上、投資した物件に入居者がいなかったり、不動産価値の下落が起こったりしてしまうと、元本毀損のリスクも否定できません。実際、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、オフィスやホテルなどの投資運用に悪影響が出ているケースも見られます。それゆえ投資家側は、事業者の過去の実績も含めた運用状況や、発信する情報の透明性なども含めたリスク評価が大切です。

また、不動産クラウドファンディングの欠点としては、プラットフォーム提供者に支払う手数料の存在や、資産として流動性が低いことも挙げられます。不動産クラウドファンディングの場合、基本的に運用期間の途中で資金を引き揚げられないため、現金が必要な状況になったとしてもすぐに換金できません。そのため投資家は、出資段階において運用期間終了時の見込み利益を慎重に分析する必要があります。

不動産クラウドファンディングと他の不動産投資商品との違い

不動産クラウドファンディングと他の不動産投資商品との違い

不動産クラウドファンディングは、複数の不動産に投資して利益の分配を受けるJ-REITや、インターネット上で資金が必要な企業と投資家とを結びつけるソーシャルレンディングと比較されることが多くあります。これらの不動産投資商品には、それぞれどのような違いがあるのでしょうか。
以下は、それらの類似した不動産投資商品に現物不動産投資を加えた比較表です。

不動産投資商品の比較表

       不動産クラウドファンディング 実物不動産投資  J-REIT ソーシャルレンディング
最低投資金額 1万円~ 数百万~数千万円 数万円~数十万円 1万円~
運用の手間 なし 必要 ある程度必要 なし
運用期間 半年~2年程度 無期限 無期限 3ヶ月~1年程度
試算の流動性 運用終了まで現金化できない 自由に売買できる 自由に売買できる 運用終了まで現金化できない

実物不動産投資との違い

まず、不動産クラウドファンディングと対照的なのが、通常の不動産投資である実物不動産投資です。実物不動産投資には、たとえローンを組んだとしても数百万円程度の自己資金を見込む必要があります。それに引き換え、不動産クラウドファンディングの場合は遥かに少額な資金で投資でき、実物不動産投資と比べるとローリスク・ローリターンであることが特徴として挙げられます。

J-REITとの違い

では、J-REITと不動産クラウドファンディングの違いはどうでしょうか。第一に挙げられるのは、J-REITが証券市場で売買でき、必要に応じて自由に投資額を引き揚げて現金化できるという点です。また、J-REITの場合は投資先の不動産運用会社が自動的に投資額を分散投資するのに対して、不動産クラウドファンディングの場合は1案件につき1物件を扱うという明確な違いがあるため、自身でリスクヘッジして分散投資する必要もあります。

つまり、現金化のしやすさや不動産運用会社にリスクヘッジを一任したいのならJ-REIT、自分の判断でリスクヘッジや投資物件を選びたい場合には不動産クラウドファンディングが適しているといえるでしょう。

ソーシャルレンティングとの違い

ソーシャルレンディングは、さまざまな面で不動産クラウドファンディングとの類似点があります。これは、ソーシャルレンディングもクラウドファンディングの一種であり「融資型クラウドファンディング」といわれる場合もあるからです。不動産クラウドファンディングと異なる点は、物件そのものではなく、事業者に対して資金を融資または貸付するという点です。そのため、ソーシャルレンディングの場合、運用益としてではなく貸付金の金利として配当金を受け取ります。

投資物件の売却益や家賃収入が利益の源泉となる不動産クラウドファンディングに比べ、不動産運用会社が破綻しなければ金利収入が得られるソーシャルレンディングの方が、利益は安定しているといえます。ただし、ソーシャルレンディングの場合、融資金の運用方法などについての詳細は非公開なケースも多いのが現状です。そのため、投資先の妥当性などを自分でよく吟味したいのであれば、不動産クラウドファンディングがおすすめです。

このように、不動産投資商品にはそれぞれに異なる性質があり、安心して投資を始めるには特徴を正しく把握しておく必要があります。もちろん、複数の方法を組み合わせて資産運用するのも有効な手段です。

これから注目の「セキュリティトークン(デジタル証券)型不動産投資」

これから注目の「セキュリティトークン(デジタル証券)型不動産投資」

クラウドファンディングと同様に、新しい投資の形も登場しています。それが「セキュリティトークン(デジタル証券)型不動産投資」です。

セキュリティトークン(デジタル証券)型不動産投資は、ブロックチェーン技術を用いた有価証券としてのセキュリティトークン(デジタル証券)を発行して、それを投資の対象とするものです。
これまでの有価証券で必要だった業務をデジタル上で完結しコストを削減することで、不動産クラウドファンディングと同様に小口での不動産投資を可能にしています。

これまでの不動産投資とは異なるメリットが多数

セキュリティトークン(デジタル証券)型不動産投資には、多くのメリットがあります。
例えば、複数物件を取り扱うJ-REITとは異なり投資対象の物件が1つでも可能なことから、自身が投資している対象が何なのか分かりやすく、そのうえでJ-REITと同様に運用の手間がない点もメリットです。

また、運用終了まで現金化できない不動産クラウドファンディングとは異なり、セキュリティトークン(デジタル証券)型不動産投資は、金融商品として柔軟な取引も可能です。

さまざまなメリットを持ち合わせたセキュリティトークン(デジタル証券)型不動産投資は、新しい投資の形のため商品自体は多くはありませんが、すでに三菱UFJ信託銀行のセキュリティトークンの発行・管理プラットフォーム「Progmat」を用いた商品も登場しており、不動産クラウドファンディングとともにこれから注目の投資といえるでしょう。

まとめ

まとめ

不動産クラウドファンディングは、小額からの投資で不動産を取得・運用することで利益を得る不動産投資方法です。通常の不動産投資と比べて資金面・運用面のハードルが低く、投資初心者に向いている投資商品といえるでしょう。

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