老後破産を避けるには?資産寿命を延ばす資産運用のポイント

最近「老後破産」という少し怖い言葉をよく耳にします。人生100年時代に入って私たちの平均余命が長くなり、自分自身や配偶者の人生を全うするまでの資金が枯渇してしまうリスクが顕在化してきました。今回はこの「老後破産」を避けるために、「資産寿命を延ばす」という観点から、老後資金プランニングのポイントについて解説します。

老後破産を避けるには?資産寿命を延ばす資産運用のポイント

「資産寿命」という考え方

「資産寿命」という考え方

「資産寿命」の基本的な考え方について確認します。
例えば、老後の生活費のために準備した金融資産が2,000万円あったとします。ここから毎月10万円ずつ取り崩す必要が生じた場合、2,000万円÷10万円=200ヵ月、つまり約16年8ヵ月で金融資産の残高がゼロになります。この金融資産の残高がゼロになるまでの期間を「資産寿命」と呼びます。
資産寿命を全うすると、その先は老後破産です。老後破産をしないためには、資産寿命を延ばさなければなりません。

資産寿命を延ばす3つの方法

資産寿命を延ばす3つの方法

資産寿命を延ばすためには、3つの方法があります。

支出を減らす

前述の例では、保有する金融資産から毎月10万円ずつ取り崩していくものでした。しかし、定年退職後の生活を見直したり、節約・倹約を心がけたりすれば、支出を減らすことができるでしょう。運動や食事に気を付けて健康な状態を保てば、医療費の出費も抑えることができるでしょう。

収入を確保する

勤務先の継続雇用制度を活用する、65歳以降も働ける企業に転職する、60歳以降もアルバイトをして働く、会社を設立したり個人事業主となって元気なうちはずっと働くなどのように、収入の多寡にかかわらずできるだけ長い期間にわたって収入を確保することも、資産寿命を延ばす方法のひとつです。夫婦共働きの状態を長く継続することも、方法のひとつと考えられます。
長く働くためには、日頃の健康管理が重要であることは言うまでもありません。

運用する

運用する

前述の例では、保有する金融資産を全く運用しないで毎月10万円を取り崩すものでした。しかし、この金融資産について、投資信託などを活用して運用しながら取り崩すと、資産寿命を延ばせる可能性があります。仮に2,000万円を年3%で運用しながら毎月10万円ずつ取り崩す場合、資産寿命は23年2ヵ月となり、運用しなかった時と比較して6年6ヵ月延びることになります。

2,000万円を運用せず毎月10万円を取り崩すと、資産寿命は16年8ヵ月でした。資産寿命を延ばす方法ではありませんが、年3%でこの期間(16年8ヵ月)に運用すると、毎月約12.7万円を取り崩せます。月にして約2万7千円多く使えることになります。

金融資産の運用で注意すべきは、その収益が約束されたものではないことです。想定通りの運用ができず、予定していた取り崩し額に満たない可能性もあります。
また、販売されている投資商品の中には、国民生活センターなどに被害が報告されているものもありますので注意が必要です。

資産寿命を延ばす方法については、「支出を減らす」「収入を確保する」「運用する」の3つのうちのいずれかひとつだけで解決するのではなく、次の事例のように、3つをうまく組み合わせていくことも検討してみましょう。

資産寿命はどのくらい延びる?

資産寿命はどのくらい延びる?

AさんとBさんの資産寿命シミュレーション

では、資産寿命を延ばす3つの方法を組み合わせることにより、さらにどのくらいの資産寿命の延長ができるか、Aさん、Bさん(ともに夫婦世帯)の事例でシミュレーションをしてみます。

<共通の前提>
・60歳で定年退職
・60歳時に老後の生活費のために準備した金融資産:2,400万円
・65歳からの公的年金の受給金額(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額):月額約22万円(厚生労働省/令和4年度の年金額の改定について
・在職中の毎月の生活費:月額30万円

出典 

Aさんの場合

定年退職後の生活費を在職時と同様に月額30万円とし、60歳時に準備した2,400万円を全く運用しないケースです。公的年金がない60歳からの5年間は毎月30万円、公的年金の受給開始後は不足する生活費月額8万円を取り崩していくものとします。

資産寿命は、2,400万円-(30万円×60ヵ月)=600万円(65歳時の金融資産の残高)
600万円÷8万円=75ヵ月=6年3ヵ月(65歳以降の資産寿命)

月額約22万円の公的年金を受給できるものの、71歳で金融資産はゼロになってしまいます。

Bさんの場合

2,400万円の金融資産を年2%でコンスタントに運用できるものとし、さらに定年退職後の生活費を毎月3万円削減し27万円としたケースです。その結果、65歳時点の金融資産の残高は約945万円となります。

その後もコンスタントに2%で運用することが可能であれば、65歳以降の毎月の取り崩し額は5万円となるため、65歳以降の資産寿命は約19年となります。つまり平均寿命である84歳まで延長できます。(※1)

さらに60歳から5年間にわたって収入を毎月5万円確保し、そのまま月額5万円を投資信託で5年間積み立て運用し、コンスタントに年2%の運用収益が出たとします。65歳時の元利合計額(税金は考慮しないものとします)は約315万円となり、金融資産の残高が1,260万円となります。

ここから毎月5万円を取り崩すと、65歳以降の資産寿命は約27年となり、92歳までの取り崩しが可能となります。人生100年時代でも老後破産しない資金の確保が見えてきました。(※2)

※1 CASIO「ローン返済(毎月払い) - 高精度計算サイト」による試算 詳しくはこちら
※2 CASIO「積立計算(複利毎課税) - 高精度計算サイト」による試算 詳しくはこちら

差が出る資産寿命

           Aさん      Bさん(パターン1)※1 Bさん(パターン2)※2
金融資産 2,400万円 2,400万円 2,400万円
取崩し額(月額) 64歳まで30万円
65歳以降8万円
64歳まで27万円
65歳以降5万円
64歳まで27万円
65歳以降5万円
運用利率(年率) 0% 2%(※3) 2%(※3)
収入(月額) なし なし 5万円(そのまま積立運用に回す)
資産寿命 約71歳 約84歳 約92歳

※1 パターン1:支出を見直しして運用しながら取り崩し
※2 パターン2:支出を見直しして運用しながら取り崩し、かつ収入を確保して積立運用
※3 税金・費用等は考慮していません

元手の違いによる資産寿命の差

早い時期からの備えが必要とはなりますが、老後資金の原資となる元手を増やすという方法でも資産寿命を延ばせます。例えば、前述のBさんの事例のうち、「支出を見直しして運用しながら取り崩し」のパターン1では、60歳時点での資産を500万円増やして2,900万円とし、前述のように運用しながら取り崩した場合、65歳以降、約100歳まで資産寿命を延ばすことができます。(※3)

※3 CASIO「ローン返済(毎月払い) - 高精度計算サイト」による試算 詳しくはこちら

まとめ

人生100年時代の経済的な基盤を確固たるものにして、安心感のあるライフプランにしたいですよね。資産寿命を延ばすという視点で、支出見直しと収入の見直し、そして運用にチャレンジすること、この3つを組み合わせてプランニングをしてみてはいかがでしょうか。

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