サラリーマンの生涯年収は約2.7億円!差がつくポイントを解説

サラリーマンの生涯年収について、国や調査機関の資料に基づき、性別・学歴別・業種別などの観点で解説します。生涯年収で差がつくポイントや大きな出費となるライフイベントも参考に、将来を見据えて資産形成を始めるきっかけにしてみてください。

サラリーマンの生涯年収は約2.7億円!差がつくポイントを解説

サラリーマンの生涯年収はいくら?

サラリーマンの生涯年収はいくら?

生涯年収は一般的に、新卒入社してから定年退職までの年収を合計した金額です。ケースによりますが、大卒の男性サラリーマンの生涯年収は平均2億7,000万円と見積もれます。
生涯年収の平均は低下してきており、ここではさまざまな軸から生涯年収を紹介します。

男女別の生涯年収

厚生労働省所管の独立行政法人、労働政策研究・研修機構が発表した「ユースフル労働統計2021―労働統計加工指標集」では、多様なケースでの生涯年収を換算し、一覧化しています。
ここでは正規雇用者の「生涯賃金(退職金を含めない)」(※)を参照してみましょう。
※一般には「生涯年収」と呼ばれるので、本記事でもその呼称を用います。

まずは男女別で中学卒では男性が1億9,870万円、女性が1億4,660万円。高校卒では、男性が2億1,280万円、女性が1億5,230万円。高専・短大卒では、男性が2億1,530万円、女性で1億7,680万円。大学・大学院卒では、男性が2億6,910万円、女性が2億1,730万円です。
女性は、産休・育休などによる休職期間などが原因で、生涯年収が低くなりやすいと考えられます。時短勤務での勤務期間が長いとパフォーマンスも出しづらく、昇格や昇給に影響が出ている可能性もあるかもしれません。

【参考】独立行政法人 労働政策研究・研修機構「ユースフル労働統計2021―労働統計加工指標集(PDF)」詳しくはこちら

学歴別の生涯年収

同資料を参照し、正規雇用における男女平均の生涯年収を学歴別で整理します。最終学歴が中学校卒の場合から高専・短大卒の場合までは、1億7,000万円~1億9,000万円前後です。これに対して大学・大学院卒の場合は、約2億4,000万円以上になります。
つまり、生涯年収額は、大学・大学院卒者のみ明らかに高くなるといえるでしょう。高校や短大卒者に比べて就職時期は遅くはなりますが、「基礎年収額が高い・重要な役職へキャリアアップしやすい」「給与水準の高い大手企業に就職しやすい」などの理由で、結果的に生涯年収が高くなると考えられます。

【参考】独立行政法人 労働政策研究・研修機構「ユースフル労働統計2021―労働統計加工指標集(PDF)」詳しくはこちら

雇用形態別の生涯年収

厚生労働省が2022年に公示した「令和3年賃金構造基本統計調査」のデータを参考にして、正規雇用者の平均年収を算出してみました。全年齢で男女合計の平均で月額32万3,400円という金額から、40年間働いた場合、約1億5,500万円となります。
非正規雇用の年収は、正規雇用の年収よりも平均128万円ほど低くなります。加えて非正規雇用の場合は、年齢が高くなっても年収の変化がほぼありません。そのため年齢が上がるにつれて、非正規雇用の年収と正規雇用の年収の差は数百万円ほどまで開いていくでしょう。
こうした差が40年近く積み重なるため、正規雇用と非正規雇用では、生涯年収で5,000万円の差が生じることになります。

非正規雇用者の生涯労働時間にはばらつきが大きく、一概にはいえません。ただ、非正規雇用者の生涯年収は、正規雇用者の約1億5,500円から5,000万円以上低くなると見積もれるため、1億円前後と考えられます。

【参考】厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査(PDF)」詳しくはこちら

業種別の生涯年収

厚生労働省の同資料によると、もっとも平均月収の高い業種は、「電気・ガス・熱供給・水道業」41万9,700円で、続いて「学術研究,専門・技術サービス業」38万6,900円です。「金融業,保険業」「情報通信業」「教育,学習支援業」も37万円前後の月収が期待できます。また、一般に「総合商社」もトップレベルの月収が得られる業種です。こうした業種に就職すれば、今後の社会でも高水準の生涯年収を得ていける可能性が高いでしょう。

ただし、月収だけでなくインセンティブやボーナス、退職金の有無によって生涯年収は大きく変わります。業界の特色や文化などもあるので、さまざまな業界で実際に働いている人からのリアルな実情も参考にすることをおすすめします。

【参考】厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査(PDF)」詳しくはこちら

職種別の生涯年収

職種別の生涯年収

求人情報・転職サイトdoda(デューダ)が約56万人を対象に行った生涯年収調査によると、最も生涯年収が高い職種は専門職(コンサルティングファーム/専門事務所/監査法人)となっています。次いで多いのが企画/管理系となっており、3位が技術系(IT/通信)、4位が営業系の順番となっています。同調査では、5年間この順位は変わっていません。
「令和3年賃金構造基本統計調査」でも、各種コンサルタントや医師、パイロット、大学教授、公認会計士、弁護士などの生涯年収が高くなっており、専門職の生涯年収が高いことがうかがえます。

近年生涯年収が高まっているのがIT、通信などにおける技術系の職種です。DXの高まりもあり、デジタル系人材といわれる人たちの就く、技術系専門職は、今後の社会で大きなニーズが期待されている職種です。エンジニアやセキュリティ担当者、デジタルマーケティング担当者などの生涯年収は、今後も伸びていくと予想されています。

【参考】doda「平均年収ランキング(生涯年収・生涯賃金)【最新版】」詳細はこちら

エリア別の生涯年収

同じく「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、平均月収がもっとも高い都道府県は東京都で、36万4,200円です。神奈川・京都・大阪・愛知といった、人口の多い大都市を抱えるエリアは、平均月収額が全国平均より高い水準にあります。これらエリア内の企業に就職することで、平均以上の生涯年収が期待できます。
より広い規模で見ると、関東圏の生涯年収がもっとも高く、順に東海、関西、北信越エリアと続きます。これらのエリアの生涯年収は、男性なら2億円以上、女性なら1億5,000万円以上を期待できます。中国・四国、九州・沖縄、北海道・東北エリアの生涯年収は、男女合わせた平均で1億9,000万円程度に留まる傾向です。

【参考】厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査(PDF)」詳しくはこちら

生涯年収の手取りはいくら?

生涯年収の手取りはいくら?

生涯年収から所得税・住民税・社会保険料などを引いた金額が、生涯の手取りです。税金や社会保険料は一般的に給与の20%から30%として計算されます。
令和3年賃金構造基本統計調査から男性の生涯年収の手取りを換算すると、平均で約1億1,000万円~1億3,000万円程度となります。女性の生涯年収の手取りは平均約8,000万円~1億円だといえるでしょう。

一生にかかるお金は?

一生にかかるお金は?

老後まで余裕をもって生きるには、約3億円が必要といわれます。ここでは特に出費が大きくなるライフイベントを整理します。

結婚にかかるお金

リクルートブライダル総研の「結婚トレンド調査2022」によれば、挙式、披露宴・ウエディングパーティの総額を平均すると、約304万円です。ただ、周囲からもらえるご祝儀総額は平均約180万円です。これらを考慮して同資料では、カップルの自己負担額を平均約147万円と換算しています。

また、結婚式以外にも結婚指輪や新婚旅行など出費が嵩む可能性があります。かかる費用も人によって数百万円単位で異なることもあるので、結婚にどこまでお金をかけるか、慎重に考える必要があるでしょう。

【参考】リクルートブライダル総研「結婚トレンド調査2022(PDF)」詳しくはこちら

住宅購入にかかるお金

住宅金融機構が公開した、2021年度「フラット35利用者調査」によれば、土地付きの注文住宅では平均4,455万円かかり、建売住宅でも3,605万円です。マンションでは新築4,528万円、中古は3,026万円です。住宅購入にかかるお金の全体的な目安としては、最低3,000万円以上と考えられます。

【参考】住宅金融機構「2021年度 フラット35利用者調査(PDF)」詳しくはこちら

子育てにかかるお金

子育てにかかるお金では、特に教育費が大部分を占めます。どんな学校のどんな課程に入学するか、学習塾や習い事に通わせるか、などによって教育費は大きく変化します。国公立の教育機関に通わせた場合、大学卒業までに一人1,000万円といわれます。
幼稚園から大学まで私立に通わせた場合は、一人につき約2,000万円が目安です。一例として大学の授業料を比較してみましょう。
文部科学省が公開する「私立大学等の令和3年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」を参照すると、2021年時点での国立・公立大学の平均授業料は約54万円ですが、私立大学では約93万円です。私立大学に通わせると、授業料だけでも国立の1.7倍ほどの金額が必要です。

【参考】文部科学省「私立大学等の令和3年度入学者に係る学生納付金等調査結果について(PDF)」詳しくはこちら

老後に必要なお金

一般に老後の夫婦については、月あたり20万~26万円の生活費がかかると考えられ、基礎年金・厚生年金だけではまかないきれません。2019年には、老後夫婦二人で2,000万円が不足するということが話題になりました。

老後にどのくらいの水準の生活がしたいかや健康寿命によって必要なお金や内訳が変わります。ある程度は自身の理想を踏まえてシミュレーションするとよいでしょう。

【参考】総務省「家計調査報告 家計収支編 2020年平均結果の概要(PDF)」詳しくはこちら

生涯年収では足りない!?資金を賄う方法

生涯年収では足りない!?資金を賄う方法

老後などを見据えて生涯年収を増やすために、代表的な方法を7つ紹介します。

転職をして年収をアップしていく

生涯年収を増やすためには、本業の年収額を向上させることが、もっとも基本的な方法です。現在の企業の給与が低いと感じる場合は、自分のスキル・経験に見合った報酬を得られる企業へ転職を目指します。

さらなる年収アップを求めるのであれば、スキルや経験を身につけてから転職する方法もあります。目先の給与アップだけでなく、将来的に良い年収が得られる人材となって転職することをおすすめします。

投資などの資産形成

給与所得以外にも収入を増やす方法として、投資などの資産形成は選択肢の一つでしょう。投資には会社の株式を購入する株式投資、土地や集合住宅などを購入する不動産投資、資産運用の専門家に投資した資金を運用してもらう投資信託などがあります。種類によっては少額から手軽に始められる投資もあり、効率よく資産を形成できる可能性があります。一方で、運用方法を誤ると損失となってしまいます。投資を始める際には、各投資の特色をよく理解した上で、自分がきちんと運用できる投資を選ぶことが重要です。

さらに近年ではスマートフォンアプリが登場し、アプリによっては1,000円といった少額から投資ができたり、サポート機能が備わっていたりして、初心者でも比較的気軽に投資が行えるようになりました。ただし、当面の生活費や用途が定まっている預金などを、投資に使用しないよう気をつけてください。「今すぐ使う必要のないお金や、生活に影響のないお金」を投資に回すことが推奨されます。

NISA(ニーサ)などの積立投資

NISA(ニーサ)は、毎年一定の範囲額内で、金融商品で得た利益を非課税にする制度です。いくつか種類があり、例えば「つみたてNISA」は長期的な投資を支援するもので、年間40万円まで金融商品を購入でき、非課税期間は20年間になります。現行のNISA制度は2023年で終了し、2024年からNISAの制度が改正されることが決定しています。

現行NISAの概要(2023年末まで)

       つみたてNISA   一般NISA      
年間限度額 40万円/年 120万円/年
非課税運用
可能期間
20年 5年
(ロールオーバー可)
優遇措置 運用益等が非課税 運用益等が非課税
投資可能期間 2037年まで 2023年まで

2024年以降、制度は恒久化され、つみたてNISAとNISAが併用できるようになり、また、非課税保有期間は無期限となります。年間投資枠もつみたてNISAで120万円、成長投資枠で240万円、非課税保有限度額が1,800万円(成長投資枠で1,200万円)と、劇的な変化です(この新制度は既存のNISAとは別枠となります)。この制度変更により、これから資産運用を開始する人には、環境面でも整ったといえるでしょう。

■新NISA(2024年以降)

■新NISA(2024年以降)

※1:非課税保有期間の無期限化に伴い、現行のつみたてNISAと同様、定期的に利用者の住所等を確認し、制度の適正な運用を担保
※2:利用者それぞれの非課税保有限度額については、金融機関から一定のクラウドを利用して提供された情報を国税庁において管理
※3:金融機関による「成長投資枠」を使った回転売買への勧誘行為に対し、金融庁が監督指針を改正し、法令に基づき監督及びモニタリングを実施
※4:2023年末までにジュニアNISAにおいて投資した商品は、5年間の非課税期間が終了しても、所定の手続きを経ることで、18歳になるまでは非課税措置が受けられることとなっているが、今回、その手続を省略することとし、利用者の利便性向上を手当て
【出典】金融庁サイト「NISAとは?」詳しくはこちら

老後に備えて私的年金

私的年金に加入しておくことで、基礎年金や厚生年金にプラスして年金を受け取れます。より充実した老後生活を送るためにも、受け取れる年金は増やしておくに越したことはありません。また、少子高齢化が進み将来受け取れる公的年金の金額が減る可能性も否めないため、私的年金で備えておくことも大切です。

私的年金には主体となるのが企業か個人か、給付額が確定しているか変動するかといった違いがあり、投資と同じく、加入する年金と運用方法次第で積立金に対する給付額がプラスにもマイナスにもなります。個人で加入する年金保険には、投資性商品で運用を行う変額個人年金、日本より予定利率の高い外貨建ての個人年金保険など、さまざまなプラン・保険会社があるので、固定金利のものも含めて、リスクをよく認識した上で、自分に最適なものを見つけましょう。

iDeCoなどの私的年金

私的年金で代表的なものに、iDeCo(イデコ)と呼ばれる確定拠出年金があげられます。月額5,000円から積立可能で、1,000円単位で積立額を増やせます。原則として公的年金に加入している満20~60歳が加入でき、掛け金には職種による上限額が設定されています。また、受給開始年齢は加入期間(通算)によって異なります。

iDeCoのメリットは、掛け金が全額所得控除、運用期間中の運用益は非課税で運用されること、受け取り時には、退職所得控除の対象や公的年金控除の対象となるなど、が挙げられます。
iDeCoの中で投資する商品にも種類がありますが、投資型を選んだ場合は、貯蓄型の個人年金保険とは異なり、運用にあたっては投資に関する知識が必要となってきます。また個人年金保険が途中で解約して積立金を戻せるのに対し、iDeCoは満60歳になるまで原則掛け金の引き出しができません。
どちらもメリットとデメリットがあり、職種やライフスタイルなどによって、どちらが合うかは変わります。どちらか片方に加入するのではなく、無理なく運用できる範囲で併用することもひとつの手段です。

副業で収入を増やす

働き方が多様化してきた昨今、転職以外にも副業で年収を上げるという動きがよく見られます。中には、本業よりも副業の方で稼いでいるという人もいます。副業にはさまざまな種類がありますが、IT化が進んでいる背景などから、ネットを使った副業に携わる人が多い傾向にあります。

本記事のようなWebサイトに掲載される記事を執筆するWebライティング、自身が運用するブログなどに広告を掲載するアフィリエイトなどです。体の健康を考えて、デリバリーサービスの配達員を副業にする人もいます。また自身のサラリーマン経験を活かしてオンライン講師をしたり、得意な資料作成を代行するといった動きもあります。

ただし、副業をしたからといって必ずしも稼げるとは限りません。最初は稼げても1~2万円くらいと考えて、短期的な収益を得られる副業と、長期的な収益を見込める副業、もしくは投資を組み合わせるのが現実的といえるでしょう。
また、副業を本業の会社に知られたくないという場合もありますが、総収入が上がったことで住民税が上がり、それがきっかけで会社に副業がばれてしまうことが多々あります。オンラインセミナーで顔を出せば、インターネット経由で情報が漏れてしまう可能性もありますし、実名や流用しているニックネームを検索することで、副業をしているサイトがばれてしまうこともあります。副業を隠すのは、なかなかに難しいと思った方がいいでしょう。副業を検討する際は、必ず会社の就業規則などをチェックするようにしてください。
さらに副業を行う場合は、年間利益が20万円を超えたら確定申告しなくてはなりません。また、20万円を超えなくても、所得に応じた住民税を支払う必要があります。これを怠った場合、行政による税務調査が入り、財産の差し押さえを受ける可能性もあるので注意してください。

増やすのではなく、無駄遣いしないこと!

生涯年収で上手く生計を立てるには、日々の収入と支出を適切に管理し、無駄な出費を減らす努力も重要です。家計簿をつけたり、レシート管理アプリなどを導入するのもよいでしょう。
また、ライフステージごとに保険プランを変更・解約すること、必要のなくなったサブスクリプションサービスを解約することなどでも、毎年の支出を減らせます。

まとめ

サラリーマンの生涯年収は学歴や職種にもよりますが、大学・大学院卒の場合は、約2億4,000万円以上と見積もられます。また、老後までには結婚・住宅購入・子育てといった大きなライフイベントがあり、余裕を持って生きるには3億ほどが必要ともいわれています。この現状から、多くの人が本業以外で稼ぐ方法を模索している状況です。

資産を増やす方法には転職・副業・投資といった現在の資金を増やすものと、個人年金保険やiDeCo(イデコ)といった老後の年金を増やすものがあります。いずれの手段も闇雲に手を出すだけでは思わぬ不利益を被ることがあるので、本記事を参考にきちんとした調査を行い、自分に合った無理のない方法を選択しましょう。資産を増やすことだけではなく、日頃から無駄遣いをしないという意識も大切です。

ご留意事項
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