早めの加入で節税効果大!個人年金保険料控除とは

個人年金保険料控除について、なんとなく年末に職場で年末調整を行っているものの、具体的にどのような仕組みかと聞かれると曖昧な方もいらっしゃるのではないでしょうか。この記事では個人年金保険料控除で実際にどのくらい税金額が軽減されるのか、計算の仕方や申告方法まで詳しく解説します。

早めの加入で節税効果大!個人年金保険料控除とは

個人年金保険料控除とは?

個人年金保険料控除とは?

個人年金保険料控除は、生命保険料控除のひとつです。対象となる個人年金保険に加入している場合、年末調整や確定申告で1月初めから12月末までにかかった保険料を申告すると、所得税などから一定額が控除されます。

控除額は、所得税などの納付税額計算の元になる「課税所得額」の算出時に使います。サラリーマンなど給与所得者の場合、何も引かれていない年収から給与所得控除を差し引いたものが「所得額」となり、「所得額」からさまざまな控除額を差し引いていくと「課税所得額」が算出できます。最終的な課税所得額に税率をかけると納税額が出せます。

控除額が多いほど課税所得額が減らせるため、所得にかかる所得税や住民税を節税できるというメリットがあります。控除額は、その年度内の個人年金保険料の額に応じて変わります。

生命保険料控除は3区分で構成されている

生命保険料控除は、個人年金保険料控除、一般生命保険料控除、介護医療保険料控除の3区分で構成されています。終身保険や養老、学資、収入保障など数の多い一般生命保険料控除の枠や、医療、介護保険が当てはまる介護医療保険料控除の枠以外に、個人年金保険料控除の枠があります。それぞれの枠に上限設定があるため、バランスよく控除を使うのがおすすめです。ほかの保険に入っているのでこれ以上控除が増やせないという状態でも、個人年金保険を増やすことができれば、将来の年金も増額できて控除額も増やせます。それぞれの控除枠を考慮して、入る保険を決める参考にすると、さらに還付による節税効果が得られるでしょう。

2010年度の改正で区分と控除額が変化

これまでの旧制度では、個人年金保険料と一般生命保険料の2区分に分かれていました。上限額は区分ごとにそれぞれ「所得税5万円・住民税3万5,000円」でしたが、2010年の税制改正によって、2012年以降の所得税、2013年以降の住民税の生命保険料控除額が変わりました。

新制度では介護医療保険料が追加されて3区分になり、各区分の上限が「所得税4万円・住民税2万8,000円」に変わっています。
合計額も変わり、「所得税10万円・住民税7万円」から「個人年金保険料」「一般生命保険料」「介護医療保険料」を合わせて「所得税12万円・住民税7万円」です。個々の区分では上限が下がっていますが、区分数が増えたこともあり、所得税の控除合計額は引き上げられています。控除可能な保険を把握して、上限額まで有効に使えると、今後の節税につなげられるでしょう。

控除額の計算方法

控除額の計算方法

控除額は、旧制度と新制度のそれぞれの式で計算できます。保険の契約日によって新・旧に振り分けられるので、過去に加入した保険がある場合には契約日に注意して正しく計算しなければなりません。
「2011年12月31日以前」に加入した保険は旧制度の計算方法、「2012年1月1日以降」に加入した保険には新制度の計算式を使用します。そのため、基本的には「個人年金保険料の支払い額」と「契約日」がわかれば、保険料控除額の表に当てはめて計算が可能です。

新・旧両方の契約がある場合には、どちらか控除額の大きくなる方を選択することが可能です。しかし、旧制度の場合、年間10万円の保険料を支払っている場合は控除額が5万円となりますが、年間の保険料が6万円の場合、4万円になります。新制度では年間10万円の保険料を支払っても控除額が4万円になるので、この違いにも注意して計算しましょう。

所得税の個人年金保険料控除額計算方法は以下の表の通りです。

旧制度の個人年金保険料控除額(所得税)

年間の支払保険料 控除額
2万5,000円以下 支払保険料等の全額
2万5,000円超
~5万円以下
支払保険料等×1/2
+1万2,500円
5万円超
~10万円以下
支払保険料等×1/4
+2万5,000円
10万円超 一律5万円

新制度の個人年金保険料控除額(所得税)

年間の支払保険料 控除額
2万円以下 支払保険料等の全額
2万円超
~4万円以下
支払保険料等×1/2
+1万円
4万円超
~8万円以下
支払保険料等×1/4
+2万円
8万円超 一律4万円

※所得税の個人年金保険料控除額計算方法 詳しくはこちら

住民税の個人年金保険料控除額計算方法は以下の表の通りです。保険料控除額合計の限度額は7万円で新旧制度による変更はありません。

旧制度の個人年金保険料控除額(住民税)

年間の支払保険料 控除額
1万5,000円以下 支払保険料等の全額
1万5,000円超
~4万円以下
支払保険料等×1/2
+7,500円
4万円超
~7万円以下
支払保険料等×1/4
+1万7,500円
7万円超 一律3万5,000円

新制度の個人年金保険料控除額(住民税)

年間の支払保険料 控除額
1万2,000円以下 支払保険料等の全額
1万2,000円超
~3万2,000円以下
支払保険料等×1/2
+6,000円
3万2,000円超
~5万6,000円以下
支払保険料等×1/4
+1万4,000円
5万6,000円超 一律2万8,000円

※東京都主税局「住民税の個人年金保険料控除額計算方法」 詳しくはこちら

個人年金保険料控除を受けるための条件

個人年金保険料控除を受けるための条件

対象となる保険契約がある場合、個人年金保険料の控除が受けられます。以下の(イ)~(ハ)に当てはまるものが、対象となる個人年金保険です。契約日が2012年1月1日以降のものは新制度、その前に契約したものは旧制度に当たります。

生命保険料控除の対象になるかどうかは、保険会社から郵送される生命保険料控除額証明書に書かれているので、そこで確認できます。

(イ) 年金の受取人は保険料の払込み者、またはその配偶者
(ロ) 年金の支払いを受けるまで10年以上定期的に保険料を支払う保険契約
(ハ) 原則として満60歳になってから10年以上支払われる年金または終身の年金
※ 被保険者等の重度の障害でも支払われる10年以上または終身の年金も含まれます。

出典 

実際にいくら戻ってくる?

実際にいくら戻ってくる?

控除で戻ってくる所得税額は、「控除額×税率」で算出できます。所得税は累進課税であり課税所得額に応じて税率が異なります。住民税は所得額に関係なく一律10%の税率で税金が課されます。

では実際に、個人年金保険料控除を利用すると実際に税金がいくら戻ってくるのか、計算式と所得税の速算表を用いて算出してみましょう。

所得税の速算表

課税される所得金額  税率  控除額
1,000円~
194万9,000円
5% 0円
195万円~
329万9,000円
10% 9万7,500円
330万円~
694万9,000円
20% 42万7,500円
695万円~
899万9,000円
23% 63万6,000円
900万円~
1799万9,000円
33% 153万6,000円
1800万円~
3999万9,000円
40% 279万6,000円
4000万円~ 45% 479万6,000円

※所得税の速算表 詳しくはこちら

サンプル①新制度のみの場合

例)年収550万円(配偶者あり子供なしの場合所得金額280万円、基礎控除48万円、配偶者控除38万円、社会保険料控除30万円)(所得税率10%、住民税率10%)
保険月額1万円(年12万円・2015年4月1日加入)

【所得税】
控除額=4万円
・還付額=4万円×税率10%=4,000円

【住民税】
控除額=2万8,000円
・還付額=2万8,000円×税率10%=2,800円

【還付額合計】
4,000円+2,800円=6,800円

出典 

サンプル②新旧どちらも適用の場合

例)年収(所得額)550万円(上記と同条件)(所得税率10%、住民税率10%)
保険①月額6,000円(年7万2,000円・2008年4月1日加入)
保険②月額5,000円(年6万円・2015年4月1日加入)

【所得税】
①控除額=7万2,000円×1/4+2万5,000円=4万3,000円
②控除額=6万円×1/4+2万円=3万5,000円
※旧契約の控除額上限が5万円ですが、年間保険料が10万円に達していないので控除額は5万円以下となります。控除額合計=4万3,000円
・還付金額=4万3,000円×税率10%=4,300円

【住民税】
①控除額=3万5,000円
②控除額=2万8,000円
※旧制度では住民税は3万5,000円ですが、一般保険料控除や介護医療保険がある場合は、上限7万円は変わりません。
控除額合計=3万5,000円
・還付額=3万5,000円×税率10%=3,500円

【還付額合計】
4,300円+3,500円=7,800円

※上記の例では、旧制度を適用した方が、控除額が大きくなるので旧制度を適用

出典 

控除に必要な書類など

控除に必要な書類など

控除を受けるためには、10月頃に保険会社から郵送で届く「生命保険料控除証明書」が必要です。証明書には、保険会社の名称、保険期間、保険の契約者、保険料など、必要な内容が書かれています。もしなかなか届かないときやなくしてしまったときには、速やかに保険会社に連絡して再発行してもらいましょう。

この証明書を元に、会社員の方は年末調整時に会社から渡される「給与所得者の保険料控除申告書」へ必要事項を記入して提出します。年末調整ではなく確定申告を行う方は、確定申告書第一表・第二表の「生命保険料控除」の欄にそれぞれ必要事項を記入して、確定申告の期間内に税務署に提出します。

まとめ

個人年金保険は退職後に備えて長い期間保険料を払い続けるものですが、保険料控除を受けられるので所得税と住民税の負担が少なくなります。所得額が上がるほど所得税率は高くなるため、戻る額も増えるでしょう。毎年1年の間に払った保険料に応じて控除が可能なので、税金まで考えて保険を決めていれば、長い期間所得税などの節税に役立ちます。控除対象の保険に加入し、計算方法や書類の書き方に注意して毎年きちんと申告することで、還付分の差額が年々積み重なり、プラス分が増えていくでしょう。

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