ボーナスは給与の何ヶ月分?大手と中小企業の違いや業界のランキングも紹介
ボーナスは給与の何ヶ月分が支給されるものなのでしょうか。全体的な平均としては、給与の約1ヶ月分となります。ただし、企業の規模や受け取る人の年代などで賞与額は異なるため、一概にはいえません。この記事では、賞与の全国平均や、大企業と中小企業の賞与額の違いなどを解説します。
目次
ボーナス(賞与)の全国平均は給与の1ヶ月分!
多くの企業では、ボーナスの金額は総支給額ではなく、基本給の〇ヶ月分という形で表します。基本給とは、それぞれの企業が定めている基本賃金のことです。それではボーナスの全国平均は、基本給の何ヶ月分なのでしょうか。
全国のボーナスの金額を知るうえで参考になるのが、厚生労働省が発表している「毎月勤労統計調査」です。
毎月勤労統計調査の令和5年2月分結果速報によると、全産業において2022年の年末に支給された賞与は、月給の1.04ヶ月分となりました。これは、前年(2021年)の年末と同様の結果です。
【参考】厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和5年2月分結果速報等 ≪特別集計≫令和4年年末賞与(一人平均)」 詳しくはこちら
大手企業と中小企業のボーナス(賞与)の金額の違い
一般的に、大企業はボーナスの金額が大きいといわれています。では、中小企業と比べるとどのくらいの差があるのか、具体的に数字でみてみましょう。
2022年年末賞与の支給状況
従業員数 | 決まって支給する 給与に対する支給割合(ヶ月分) |
---|---|
500人以上 | 1.49 |
100~499人 | 1.24 |
30~99人 | 1.15 |
5~29人 | 1.01 |
30人以上 | 1.18 |
同じく厚生労働省の「令和4年年末賞与の支給状況 」によると、従業員数が500人以上の企業における令和元年末の賞与は、平均で月給の1.49ヶ月分です。
一方、従業員が100~499人の企業では賞与は平均1.24ヶ月分、30~99人の企業では1.15ヶ月分、5~29人の企業では1.01ヶ月分です。会社の規模が小さくなるにつれて、支給される賞与の割合も少なくなることが分かります。
例えば、月給が30万円である場合、5~29人の企業では賞与も約30万円です。
一方で、従業員が500人以上である大企業の場合、月給が30万円であれば、賞与はその1.49ヶ月分である約44.745.0万円です。5~29人の企業との差は、約15万円となります。
毎月の給与額が同じであっても、賞与の額の違いがあると、年収に差がついてしまうでしょう。
また、大企業の方が毎月の給与額が高いのであれば、中小企業とのボーナスや年収の差額はさらに大きくなるでしょう。
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年代別のボーナス(賞与)の金額の違い
厚生労働省の調査をもとに、2022年に1年間で支給された賞与の平均額を年齢別にみると、結果は以下の通りとなります。
年齢 | 平均支給額 |
---|---|
〜19歳 | 15万700円 |
20〜24歳 | 38万2,200円 |
25〜29歳 | 65万5,500円 |
30〜34歳 | 79万9,300円 |
35〜39歳 | 92万6,100円 |
40〜44歳 | 101万2,800円 |
45〜49歳 | 108万1,300円 |
50〜54歳 | 115万9,100円 |
55〜59歳 | 115万5 700円 |
60〜64歳 | 69万2,000円 |
65〜69歳 | 35万800円 |
70歳〜 | 22万8,900円 |
全年齢平均 | 88万4,500円 |
【参考】厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」※企業規模10人以上の民間企業で働く男女平均 詳しくはこちら
60歳までは、年齢が上がるにしたがってボーナスの支給額も増加していることが分かります。特に40〜59歳は、賞与の平均支給額が100万円を超える結果となりました。
一方で、55歳を超えたあたりから賞与の平均支給額は減少に転じており、定年退職を迎えていると考えられる60歳以降は100万円を下回っています。
業界別のボーナス(賞与)の金額ランキング
業界によってもボーナスの平均支給額は異なります。厚生労働省の調査によると、2022年末に支給された冬のボーナスにおいて、労働者一人あたりの支給額を業界ごとに並べると、結果は以下の通りとなりました。
産業 | 労働者一人あたりの平均賞与額 | |
---|---|---|
1位 | 電気・ガス業 | 80万5,880円 |
2位 | 情報通信業 | 66万2,768円 |
3位 | 学術研究等 | 63万4,606円 |
4位 | 金融業,保険業 | 62万1,410円 |
5位 | 不動産・物品賃貸業 | 55万4,675円 |
6位 | 鉱業,採石業等 | 54万4,459円 |
7位 | 教育,学習支援業 | 53万7,569円 |
8位 | 製造業 | 51万4,074円 |
9位 | 建設業 | 49万8,569円 |
10位 | 複合サービス事業 | 45万5,815円 |
【参考】厚生労働省・毎月勤労統計調査「令和5年2月分結果速報等・≪特別集計≫令和4年夏季賞与(一人平均)」 詳しくはこちら
一人あたりの平均賞与額がもっとも高いのは電気・ガス業であり、金額は80万円を超える結果となりました。
なお、全体平均金額は39万2,975円となっています。
ボーナスありの会社のメリット・デメリット
会社によっては、ボーナスの支給がないケースもあります。では、ボーナスありの会社とボーナスなしの会社のそれぞれについて、メリットとデメリットをみてみましょう。
ボーナスありの会社のメリット
ボーナスのある会社のメリットは、夏と冬に臨時収入を得られることです。ボーナスが支給される時季は、大々的なセールをする店舗も多く、家電やブランド品などをお得に購入しやすくなるといえます。
また、普段の収入とは別にまとまったお金をもらえることで、将来に向けた貯蓄をより効率的にできる可能性があります。住宅や車の購入など大きな買い物を検討しているのであれば、ボーナスを貯蓄に回すと必要な資金をより早く準備できるかもしれません。
個人の評価がボーナスに影響する場合、頑張りが評価されて金額に表れるため、モチベーションを維持しながら働く助けにもなります。向上心が刺激され、仕事に打ち込もうという意欲が湧きやすくなる可能性があります。
ボーナスありの会社のデメリット
会社にとっては、離職する人が同時期に固まってしまうリスクがあります。仕事を辞めたくても「次のボーナスまでは頑張ろう」と思う人が多く、ボーナスの支給時期が過ぎると離職希望者が増えるのです。
ボーナスが支給されたあとに多くの離職者が出ると、組織運営に大きな影響を及ぼすこともあります。
従業員にとっては、業績が悪化して支給額が下がった時に、モチベーションを維持しにくいかもしれません。
またボーナスの金額が多い会社は退職金が少なかったり、退職金の制度がない場合もあります。その会社に勤めた時の生涯賃金がいくらになるのか、という観点も重要でしょう。
ボーナスなしの会社のメリット・デメリット
続いて、ボーナスなしの会社のメリットとデメリットをみていきましょう。
ボーナスなしの会社のメリット
ボーナスがない会社は一見魅力的ではないように思えるかもしれませんが、メリットはあります。
ボーナスがない分、基本給が高めに設定されていることが多いため、従業員にとっては毎月の収入が高くなります。一般的に基本給が下がるケースはあまりないため、比較的安定した収入が見込めるでしょう。
会社側にとって都合がよいのは、人件費を固定化できるため、年間の経営計画を立てやすいことです。
ボーナスなしの会社のデメリット
ボーナスなしの会社は、ボーナスの決め手となる評価制度がなく、働く意欲が刺激されにくいことです。
毎月の給与に加えてまとまった臨時収入がないことで、大きな買い物や貯蓄がしにくい点もデメリットでしょう。
住宅や車など大きな買い物を考えているなら、毎月一定額を貯蓄に回すなどして計画的に行動する必要があります。
「手元にあるだけお金を使ってしまう」という人は、ボーナスがないと思うようにお金を貯められないかもしれません。
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ボーナス(賞与)の種類
ボーナスには大きく分けて「基本給連動型」「業績連動型」「決算賞与」の3種類があります。それぞれの特徴をみていきましょう。
基本給連動型のボーナス
基本給連動型とは、基本給に連動して支給額が決まるボーナスのことです。
ボーナスの支給額を計算する際に用いられる基本給は、残業手当や役職手当などは含まれません。
例えば、毎月の給料が30万円、ボーナスの支給額は「基本給の2ヶ月分」であるとしましょう。基本給が30万円であれば、ボーナスは「30万円×2ヶ月分=60万円」です。
しかし、基本給が20万円、諸手当が10万円の場合、ボーナスの支給額は「20万円×2ヶ月分=40万円」となります。
基本給連動型の企業に就職や転職をする場合は、ボーナスの支給額だけでなく基本給の金額も確認しておくことが大切です。
業績連動型のボーナス
業績連動型とは、企業の業績に応じて支給額が決まるボーナスのことです。
業績連動型であれば、従業員の業績に対する貢献度が高い場合や、費用の業績がよい場合は、ボーナスの支給額が増えます。そのため、業績連動型であれば、従業員のモチベーションアップに繋がりやすいといえるでしょう。
日本経済団体連合会の発表によると、2021年の夏と冬に支給するボーナスにおいて、業績連動方式を導入している企業の割合は55.2%となっています。
【参考】日本経済団体連合会「2021 年夏季・冬季 賞与・一時金調査結果の概要」 詳しくはこちら
一方で、業績が芳しくない時にはボーナスの支給額も減るため、企業側からすると人件費をコントロールしやすいといえます。
決算賞与
決算賞与とは、企業の決算時の業績に応じて支給されるボーナスのことです。
決算は、企業の利益や損失を計算して1年間の業績を明らかにする手続きを指します。決算賞与を導入している企業では、決算の結果がよいと従業員に対して支給されるボーナスも増えます。
また、従業員に支払われた賞与は企業にとっての必要経費となります。そのため決算賞与は、企業側にとっても法人税の節税ができるというメリットがあります。
ボーナスにまつわるFAQ
最後に、ボーナスについてよくある質問とその回答をみていきましょう。
ボーナスがない会社もある?
ボーナスを支給するかどうかは、労働者を使用する者(企業)に任されています。法律で強制されているわけではないため、企業の業績や個人の評価によってはボーナスが支給されないこともあります。
ボーナスを上手く活用する方法は?
受け取ったボーナスのうち、少なくとも半分は貯蓄に回すとよいでしょう。ボーナスを計画的に貯めていれば、マイホームの購入や子供の進学など、まとまった支出が発生するライフイベントにも対処しやすくなります。
ただし、歴史的な低金利である現代では、ボーナスの貯蓄分をすべて預貯金口座に預けていても、あまり利息収入は期待できません。そこで、投資信託をはじめとした金融商品で資産運用をするのも方法です。
金融商品で資産運用をする時に活用したいのが「NISA」です。投資信託や株式などに投資をした場合、売却益や受け取った配当などには約20%の税金がかかりますが、NISA口座で取引していたのであれば課税されません。
2024年1月からは新しいNISA制度が開始され、従来の制度よりも1年間で新規投資できる金額が増えるだけなく、非課税で運用できる期間は無期限に延長されます。
また、新しいNISAの「つみたて投資枠」の対象商品は、金融庁が定める一定の基準を満たしたものに厳選されているため、投資の初心者でも商品を選びやすいでしょう。
公務員のボーナスはいくらぐらい?
内閣官房内閣人事局の発表によると、令和4年に支給された国家公務員のボーナスは夏が平均58.5万円、冬が65.2万円でした。合計金額は123.7万円です。※管理職を除く行政職職員の平均支給額
【参考】内閣官房内閣人事局「令和4年6月期の期末・勤勉手当を国家公務員に支給」 詳しくはこちら
【参考】「令和4年12月期の期末・勤勉手当を国家公務員に支給」 詳しくはこちら
地方公務員のボーナスは、自治体によって異なります。令和4年度における職員一人あたりの支給額がもっとも高いのは東京都でした。年間の平均支給額は約179.5万円です。一方、もっとも低いのは鳥取県の約139.8万円となっています。
【参考】総務省「給与・定員等の調査結果等」 詳しくはこちら
新入社員のボーナスはいくらぐらい?
企業の多くは、新入社員に夏のボーナスとして数万円ほどを支給しているようです。産労総合研究所の調査によると、新入社員に対する夏季賞与・一時金の平均支給額は、大学卒が約8.9万円、高校卒業は約7.4万円となっています。
また、同調査によると、新入社員に対して何らかの夏期賞与を支給すると回答した企業は83.0%でした。
【参考】産労総合研究所「2022年度 決定初任給調査」 詳しくはこちら
ボーナスの支給額は、所定の算定期間における個人の業績や会社への貢献度などをもとに決まります。入社して間もない新入社員は、査定期間が足りず、社会人として一人前に仕事ができる状態ではないことが多いため、夏のボーナスは寸志程度の支給となっています。
一方で冬のボーナスについては、ほかの社員と同様の基準で支給額が決まるのが一般的です。ただし、勤続年数が短い分、支給額は上司や先輩社員よりも少なくなるでしょう。
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ボーナスの金額は手取り?額面?
ボーナスの金額が「給与の〇ヶ月分」と表記されていた場合、これは額面金額を指してます。
実際のボーナス支給額は、額面金額から社会保険料や所得税などを差し引いた金額となります。
ボーナスから控除されるものは?
ボーナスから控除されるのは、所得税と社会保険料です。社会保険料は、健康保険料や厚生年金保険料、雇用保険料のことです。また、40歳以上の人は介護保険料も控除されます。
2003年から「総報酬制」が開始されたことで、ボーナスからも健康保険料や厚生年金保険料が天引きされるようになりました。
なお、住民税については、ボーナスからの天引きはありません。
まとめ
ボーナスの平均支給額は、全体としては給与の約1ヶ月分です。企業の規模別にみると、500人以上の企業は1.49ヶ月分であり、従業員の数が少ないほど支給割合は減少していきます。
また、ボーナスを受け取る人の年齢が高くなるにしたがって支給額も高くなっていき、55歳ごろにピークを迎え、その後は減少していきます。
業種別にボーナスの支給額をみると、最も高いのは電気・ガス業の80万5,880円です。次いで高額なのが情報通信業であり、平均支給額は66万2,768円となっています。
このように、企業の規模や働く人の年齢、業界などさまざまな要素でボーナスの支給額は変わります。就職や転職をする時は、ボーナスの有無や支給額の計算方法などを確認することが大切です。
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