嘱託社員はボーナスをもらえる?正社員や契約社員との違いは?

求人広告などで目にすることも多い「嘱託社員」。実際にはどんな社員のことを指すのでしょうか?嘱託社員と正社員や契約社員との違い、嘱託社員のボーナスや給与の目安、そして嘱託社員がボーナスを支給される際の注意点などを紹介します。

嘱託社員はボーナスをもらえる?正社員や契約社員との違いは?

そもそも嘱託社員とは?

そもそも嘱託社員とは?

まずは、嘱託社員とはどのような社員のことを指すのか、みてみましょう。
実は嘱託社員には法的に明確な定義はなく、一般的には契約社員やパートと同様、「有期労働契約(期間を定めた労働契約)に基づいて働く、非正規雇用の労働者」を指します。ただし、契約社員やパートとは異なり、嘱託社員は定年退職後に雇用条件を変えて再雇用された社員であることが多いのが特徴です。

嘱託社員については独自の就業規則を設けている企業が多く、その待遇や労働条件は企業によって様々です。契約社員については基本的に正社員と同じくフルタイムの勤務とする企業が多いのに対して、嘱託社員は定年後の再就職の社員を対象とするが多いこともあり、体力的に無理のない就業時間が規定されているケースが多いようです。給与についても、企業によってさまざまで、一部には正社員同等、もしくはそれ以上の給与を支給している企業もありますが、多くは正社員よりも少なめであるケースが多いようです。

実際、総務省が行った2018年の労働力調査で「仕事からの収入」を尋ねたところ、正規雇用の職員や従業員では「500~699万円」と答えた人が最も多い約22%だったのに対して、嘱託社員を含む非正規雇用の職員や従業員では「100万円以下」が最多で全体の約29%に上りました。

【参考】総務省統計局 「労働力調査 平成31年(2018年)平均(速報)」 詳しくはこちら

嘱託社員にボーナスが支給されるケースも。支給額はどのくらい?

嘱託社員にボーナスが支給されるケースも。支給額はどのくらい?

ボーナスについても給与と同様で、嘱託社員を含む非正規雇用の従業員は、ボーナスを全く支給されない場合が多く、支給されても正規雇用の従業員に比べて少額であることがほとんどのようです。

実際、厚生労働省の「平成30年賃金構造基本統計調査」では、企業規模10人以上の民間企業で働く大学・大学院卒の「正社員・正職員」のボーナスの平均額が年間約141万円だったのに対し、嘱託社員を含む「正社員・正職員以外の労働者」のボーナスの平均額は約36万4,500円でした。

【参考】厚生労働省「平成30年賃金構造基本統計調査」 詳しくはこちら

支給なしは違法ではないが、就業規則などに記載の場合は請求も可

とはいえ、嘱託社員にボーナスを支給しないことや、正社員より少額しか支給しないことは、労働基準法上は違法ではありません。同法では、企業に労働の対価である賃金の支払いは義務付けていますが、ボーナスの支給は義務付けていないからです。そのため、ボーナスを支給するかどうかは企業の任意であり、支給する場合の時期や金額なども企業の判断に委ねられています。
ただし、就業規則や労働契約、求人広告などで「ボーナスを支給する」と明記されているのに支給されない場合は、契約違反として企業にボーナスの支払いを求めることができます。

ボーナスがある嘱託社員が注意すべきことは?

ボーナスがある嘱託社員が注意すべきことは?

もちろん、中には嘱託社員にも「寸志」や「報奨金」としてボーナスを支給する企業はありますし、特別なスキルや資格を持っている嘱託社員には正社員並みのボーナスを支給する企業もあります。ボーナスがもらえること自体は喜ばしいことではありますが、定年退職後に年金を受給しながら嘱託社員として働き続けている場合は、注意が必要です。なぜなら、60歳以降、厚生年金に加入しながら「在職老齢年金」を受給する場合、収入に応じて年金額が減額され、場合によっては全額支給停止になるおそれがあるからです。在職老齢年金が減額される基準額は下記の通り、60~64歳と、65歳以上の場合で異なります。

1.60~64歳の場合

年金月額(老齢厚生年金の年額を12で割った額)と月収(月給と賞与の総額を12等分した額)の合計が28万円を超えると、在職老齢年金が減額されます。(※加給年金は除く)

2.65歳以上の場合

年金月額(老齢厚生年金の年額を12で割った額)と月収(月給と賞与の総額を12等分した額)の合計が47万円を超えると、在職老齢年金が減額されます。(※加給年金は除く)

せっかくボーナスをもらって年収が上がっても、上記の上限額を超えてしまうと、年金が減額されてしまいます。嘱託社員になって老齢在職年金を受給しながら働く場合は、年金受給額への影響はないかどうか、十分に確かめることが大切です。不安な場合は年金事務所に相談してみるとよいでしょう。

なお、収入が増えると在職老齢年金が減額されることについては、「高齢者の就労意欲を削ぐ可能性がある」と問題視されており、国では減額条件の緩和を検討しています。制度変更の結果次第では、上記の上限額が変更される(引き上げられる)可能性があるので、今後の動向に注意が必要です。

【参考】厚生労働省年金局「在職老齢制度の見直し 2019年11月13日」 詳しくはこちら

2020年4月からは「同一労働同一賃金」に注目

2020年4月からは「同一労働同一賃金」に注目

また、2020年4月1日()に施行される「パートタイム・有期雇用労働者法」(正式名称:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)にも注目しましょう。この法律は、嘱託社員を含む非正規雇用の労働者と正規雇用の労働者との間の不合理な待遇格差の解消を目指すもので、「同一労働同一賃金」の規定が盛り込まれています。(※中小企業は2021年4月1日~

同法では正規雇用労働者と非正規雇用労働者間で、基本給やボーナス(賞与)について不合理な待遇差を設けることを禁じているほか、待遇差がある場合はその理由の説明が企業側に義務付けられています。つまり、同法が施行されれば、今後は嘱託社員でも正社員と同程度のボーナスが支給される可能性があるということです。ただし、それは仕事内容や働きぶりが「正社員と同等」とみなされた場合のみ。「現役時代よりも楽にのんびり働きたい」のではなく、「現役時代と同じように働き続け、給与やボーナスをもらいたい」のであれば、嘱託社員になってからもスキルアップに努め続ける必要があるといえるでしょう。

まとめ

嘱託社員にはボーナスが支給されないケースが多く、支給されても正社員よりも少額であることがほとんどです。ただし、2020年4月から同一労働同一賃金制度が導入されると、嘱託社員を含む非正規雇用の労働者にもボーナスが支給される可能性が高くなりました。定年退職後に嘱託社員としてボーナスのある職場に再就職した場合は、ボーナスを含む収入が限度額を超えると、在職老齢年金が減額されてしまうおそれがあるので注意してください。限度額を超えるかどうか不安のある人は、年金事務所や社会保険労務士などの専門家に相談しましょう。

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