不動産を共有名義で相続するのは危険?分割相続の方法や注意点を解説

不動産を相続する際に共有名義にするのは危険です。なぜトラブルになりやすいのか、デメリットやその他の分割相続の方法を解説します。相続人間で公平な相続をしつつ、後世に相続することを考えて早めに手続きの内容や税金の知識をつけておくとよいでしょう。

不動産を共有名義で相続するのは危険?分割相続の方法や注意点を解説

不動産相続の共有名義とは?

故人が残した不動産を複数の相続人で所有する状態が「共有名義」です。不動産は預貯金のように相続人間で均等に分けることが難しく、不動産全体に対する持ち分(所有権)を法定相続分で分割するというケースが多いようです。

要注意!共有名義にするデメリット

要注意!共有名義にするデメリット

被相続人の遺産の大部分を不動産が占める場合、複数の相続人で公平に分けるためには不動産を共有名義にして相続することがよい選択のようにも思えるかもしれません。しかし実際のところ、不動産を共有名義で相続し、所有者が複数人いる状態にしておくとデメリットが多いでしょう。以下、共有名義で不都合が生じるケースについて、解説します。

売却時に全員の合意が必要

将来、相続した不動産の売却や活用を考えた時、共有不動産であれば全員の同意が必要となり、誰か一人でも反対すれば売却や活用ができなくなります。
仮に、全員の同意を得て不動産を売却することに決まったとしても、媒介契約書や売買契約書、売買代金の領収書などには共有名義人全員の記名と実印の押印が必要になるため、手続きに手間と時間がかかります。

■共有名義の不動産で名義人の同意が必要な事項

名義人全員の同意が必要 持ち分の過半数の同意が必要
売却 賃貸借契約締結
大規模修繕・増改築 賃貸借契約解除
担保権設定 など 賃料減額 など

維持管理や固定資産税の負担

共有名義の不動産に相続人の一人が住み続ける場合は、その人が不動産の維持管理にかかる費用や固定資産税を負担するでしょう。しかし、当面は空き家のまま置いておくとしたら、固定資産税などは共有名義人が不動産の持ち分割合に応じて負担しなければなりません。払おうとしない共有名義人がいると、その分を代表者が負担することになり、揉めごとに発展する可能性があります。

また、維持管理は誰が行うのか、費用はどのように負担するのかトラブルになるケースも多いでしょう。

次の相続の際の分配が複雑になる

次の相続の際の分配が複雑になる

共有名義人の誰かが亡くなった場合、その持ち分は次世代の相続人に引き継がれることになります。世代交代が進む中でさらに共有名義人の数が増えていき、不動産の権利関係も複雑化するでしょう。世代が下るほど共有名義人同士の関係も希薄化しますから、連絡も取りづらくなり、不動産の管理に支障を来すことになります。

一方で、不動産はそれぞれの共有持ち分のみ売却することも可能なため、知らないうちに全くの他人が共有者になっている可能性もあります。

抵当権の設定や改築で意思統一が図れない

事業資金などを用立てるために共有物件に抵当権を設定したり、物件を改築したりする場合も、共有名義人全員の同意が必要です。物件を賃貸に出す、賃貸借契約を解除するといった際も、共有名義人の過半数の同意が前提となります。
このように物件について何らかの意思決定が求められる度に、共有名義人全員で協議を行う必要が生じるでしょう。それぞれの考えが異なると意思の統一が図れず、事態が膠着してしまいかねません。

共有名義を避けて相続する方法

共有名義を避けて相続する方法

共有名義によるトラブルを回避するためには、安易に共有資産を増やさないことが重要です。ここからは共有名義を避けて不動産を分割する方法をご紹介します。

現物分割

現物分割とは文字通り、遺産を「そのままの形で引き継ぐ」方法です。例えば、自宅不動産は長男、車と金融資産は二男、有価証券類は長女が相続するといった方法です。土地の場合は分筆して複数の相続人が取得する場合も、この現物分割に含まれます。
現物分割は、それぞれの相続人が対象の遺産を引き継ぐだけなので、手続きが簡単で、
対象資産の厳密な評価も不要です。また、相続人同士がお互い納得してそれぞれの引き継ぐ遺産を決めることになるため、トラブルが起こりにくい相続方法でしょう。
一方で、現物分割ではそれぞれの相続人が相続する遺産が異なるため、完全に公平に遺産を分割することは困難となり、相続人の間で不公平が生じやすい側面もあります。

代償分割

1人の相続人が不動産を相続し、他の相続人に代償金を支払うことで清算する分割方法を「代償分割」といいます。故人と同居していた相続人がそのまま自宅不動産を引き継ぐ場合などは、この方法を選択することが多いでしょう。
不動産を承継しなかった相続人も、不動産評価額を相続人の頭数で割った額の代償金を受け取れるため、それぞれの相続人の取り分は公平といえるでしょう。しかし、代償金を支払う不動産を承継した相続人にとっては、一時的に経済的な負担が重くなるというデメリットがあります。

換価分割

相続と同時に不動産を売却し、現金に換えて分割する「換価分割」という方法もあります。思い出のある自宅不動産を手放すことになりますが、売却して現金化すれば法定相続分で相続できるため、より公平に不動産を相続できる方法といえるでしょう。

売却の手続きを効率よく進めるため、一旦相続人代表者の単独名義にして売却を行い現金化した後に分割することも可能です。その場合は後で贈与と誤解されないように、遺産分割協議書に代表者が売却後に換価分割することを明記しておくといいでしょう。

分筆

現物分割の項でも触れましたが、相続する土地を相続人分に切り分けて所有する「分筆」という相続方法があります。相続人は分筆によって分けた土地をそれぞれ登記して、区分けした土地を単独所有します。
分筆によって、相続人は公平に土地を相続することができ、なおかつ、自分の土地を自由に売却することもできます。しかし、相続した土地にある程度の広さがないと相続人一人ひとりが所有する土地の面積が小さくなり、売却が難しくなることもあります。

不動産を共有名義にしないための注意点

不動産を共有名義にしないための注意点

不動産を相続する際は、できるだけ共有名義を避けるのが賢明です。相続発生前であれば、不動産を共有名義にしない方針を明確にしておく必要があります。
不動産を共有名義にして相続する場合、公平に遺産分割を行うことが重要になるため、どのような相続財産があるのかを事前にしっかり確認しておきましょう。その上で、不動産以外の財産もあるのなら、不動産を共有にせずに公平に分割する方法を検討します。相続財産が不動産のみの場合や他の財産がわずかしかないという場合は、前述した換価分割や分筆も選択肢の一つです。

既に相続した不動産に共有名義がある人は、できる限り早く、共有状態を解消しておきたいところです。その場合は土地を分筆して単独所有にする、もしくは持ち分を売却してその不動産を単独所有にする、といったアプローチが考えられます。持ち分を売却する場合は相続人に買い取ってもらう方法と、不動産会社に買い取ってもらう方法があります。前者だと売却でなく「贈与」扱いとなり、贈与税が課税されることもあるため、注意が必要です。

まとめ

不動産を共有名義で相続すると公平に分割相続ができるように思えますが、共有名義にはさまざまなデメリットやトラブルのリスクがあります。

相続人間の公平を保ちつつ、将来的な相続も考えて不動産の相続方法を考えましょう。方法によっては手続きが複雑であったり、申請や納税の期限もあるので注意しましょう。

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