家の名義変更は自分でできる?依頼した場合の費用や手続きの流れなどを解説

家を相続する場合や離婚に伴い不動産を財産分与する場合などには、名義変更が必要です。名義変更の手続きをするにはどのような費用がかかるのでしょうか。手続きを専門家に依頼した場合の流れや注意点も含めて解説します。

家の名義変更は自分でできる?依頼した場合の費用や手続きの流れなどを解説

家の名義変更とは

家の名義変更とは

法務局に備え付けてある登記簿という公の帳簿には、不動産(家、土地など)を所有する人の氏名や住所、不動産の所在地や面積などが記載されています。権利関係を明らかにすることで取引の安全性を担保しているため、何らかの原因で所有者に変更がある場合には所有権移転登記の申請をしなければなりません。これが一般に名義変更と呼ばれる手続きです。
名義変更は「単に名義変更をしたい」という理由ではできません。後述しますが、相続や売買などの登記原因が必要です。それを説明したうえで「〇〇という理由で所有者が変わったので新たな所有者を登録してください」と申請できるのです。

家の名義変更には期限はありませんが、早めに手続きをしておかないと後々トラブルになる可能性があります。

■トラブルの例
・不動産の権利を主張できなくなる
・調査や手続きに思いもよらない費用がかかる
・遺産相続争いが起きる

家の名義変更は、必要性が生じたタイミングでやっておくべきでしょう。

家の名義変更が必要となるケース

家の名義変更が必要となるケース

所有者の死亡による相続や遺贈、または生前贈与などが考えられます。家を他人から購入した場合や、離婚にともなう財産分与が発生した場合などでも必要となります。

例えば、両親が亡くなり親名義の家をどうするのかについて、相続人である子供たちで決めるケースが多いでしょう。このとき、名義人が故人のままになっていると売却や処分もできません。
最低限の管理をせず、手続きを放棄すると特定空き家(※)に指定され、固定資産税などの優遇措置から除外となり高額の税金を支払う場合もあります。さらに時間経過により相続関係が複雑になり手続きの負担が増えることも考えられます。

※特定空き家 倒壊など著しく保安上危険となるおそれのある状態、衛生上有害となるおそれのある状態、管理が行き届いておらず、周囲の景観を著しく損なっている状態、その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にある空家等のこと。

【参考】国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の概要」 詳しくはこちら

【参考】空家等対策の推進に関する特別措置法(平成26年法律第127号)の概要 詳しくはこちら

離婚に伴う財産分与をするケースでは、家に住み続ける人と名義人が別々になっていると、名義人が勝手に家を売却できてしまいます。離婚すれば自動的に名義が変わるわけではないため、財産分与で相手名義の家を取得した場合などには速やかに名義を変える必要があります。

家の名義変更にかかる費用

家の名義変更にかかる費用

名義変更は法務局で手続きをしますが、これには費用がかかります。ここではご自身で行う場合の基本的な費用と、専門家に依頼した場合の追加費用にわけてご説明します。

基本的な費用

まずは登録免許税がかかります。登録免許税は家の価格(固定資産税評価額)に税率をかけて算出します。

税率は所有権移転の原因によって異なります。主な税率は次のとおりです。

・相続...1000分の4(=0.4%)
・売買...1000分の20(=2%)
・その他(贈与、離婚による財産分与など)...1000分の20(=2%)

【参考】国税庁「登録免許税の税額表」 詳しくはこちら

例えば、評価額が2000万円の家を相続する場合の登録免許税は、2,000万×4/1000=8万円ですが、離婚して財産分与する場合には、2,000万×20/1000=40万円です。同じ家を名義変更するにも、その理由によって税金の額に幅があることがわかります。

登録免許税は、名義変更登記を法務局に申請する際に、法務局に1度だけ納めるものです。財産分与の場合はこれに加えて不動産取得税も納めます。

また、必要な書類をそろえるにあたり市区町村の窓口に支払う取得費用も必要です。書類は名義変更の原因によって異なりますが、相続を原因とする場合は亡くなった方に関わるものだけでも次のような書類が必要です。

・戸籍謄本...450円
・除籍謄本...750円
・改製原戸籍...750円
・住民票の除票...300円

※費用は市区町村によって異なる場合があります。

【参考】東京都港区「手数料一覧」 詳しくはこちら

このほか、相続人の戸籍謄本や住民票、固定資産評価証明書なども必要です。書類の取得費用は1通当たり300円~750円程度です。
以上から、仮に評価額が2000万円の家を相続する場合の合計費用の目安は、登録免許税(8万円)とその他実費(5,000~1万5,000円)の合計、8万5000円〜9万5000円となります。ただし、これは一般的なケースで、相続人の数やその他の財産の有無など個別の条件によっても異なります。複雑なケースほど書類の数が増えるためその分費用もかかることになります。

自分で手続する場合の手続き方法

必要書類を収集し、ご自身で申請書類を作成する必要があります。相続と財産分与それぞれの手続きの主な流れは以下のようになります。

<相続>
①連続戸籍等必要書類を収集
➁相続人が2名以上の場合で遺言がない場合は、遺産分割協議を成立させて遺産分割協議書を作成
③遺産分割協議書に相続人全員で実印を押印
④相続関係説明図や、相続登記に必要な申請書類の作成
⑤相続登記を法務局に提出

<財産分与>
①離婚協議を成立させ、離婚協議書を作成
②離婚に伴う財産分与に関する登記の申請書の作成や、必要な書類(離婚の戸籍、権利証、不動産を失う方の印鑑証明書等)を収集
③法務局に登記申請

※離婚協議書は、自分で作成する方法、公証役場に依頼する方法、弁護士に依頼する方法等があります。

専門家に依頼した場合の追加費用

専門家に依頼した場合の追加費用

名義変更はご自身で手続きすることも可能ですが、申請の内容によっては証明書をいくつも取得する必要があり、複雑でわかりにくいことも多くあります。特に時間的な余裕がない方、面倒な手続きを避けたい方などは、専門家に依頼されるほうがよいでしょう。

家の名義変更手続きは司法書士や士業事務所(司法書士や弁護士などが在籍)へ依頼するのが一般的です。
場合によっては弁護士も考えられます。離婚による財産分与で名義変更をしたいが、離婚の話し合いがうまくいっておらず、離婚調停や裁判に発展しそうといったケースです。司法書士は裁判などの代理人にはなれないため、この場合はそれぞれ別々に依頼するか、一括して弁護士へ依頼するという選択になります。

いずれにしても、専門家に依頼するには費用がかかります。依頼先や内容によって費用は異なりますが、司法書士に依頼する場合は5万円~15万円がひとつの目安といえるでしょう。遺産分割があるかないか、相続人が多いか、自宅以外に不動産があるかによっても異なりますが、内訳はおおむね次のとおりです。

・司法書士への代行費用
・司法書士の交通費
・郵送費(切手代、封筒代など)

これに加え、前述した登録免許税や書類取得費用などの基本費用がかかります。依頼内容が複雑な場合や、ほかの申請も併せて依頼する場合は、その分費用も高くなるでしょう。

家の名義変更を専門家に依頼した場合の手続きの流れ

専門家に依頼した場合のおおまかな流れをご説明します。

1.専門家への相談と依頼

まずは司法書士などへの問い合わせを行います。電話やメールで問い合わせるケースが一般的ですが、ホームページで概要を紹介している事務所も多いです。
問い合わせ後に面談をし、手続きの説明や見積書の提示を受けます。この時点ではまだ委任契約を結んでいません。説明や料金に納得ができたら依頼しましょう。

2.物件に関する情報収集・関係者間の協議など

名義変更をする家の情報収集を行います。名義人に変更はないか、土地の所有状況はどうか、抵当権抹消の必要はあるかなどの情報です。
名義変更の原因によっては関係者間の協議も必要です。例えば、相続による名義変更であれば、登記をする前に相続人の確定、財産調査、遺産分割協議書の作成などをしておく必要があります。

3.必要な書類の取得

名義変更の内容に応じて、戸籍謄本や固定資産評価証明書などの必要な書類を取得します。書類の取得後に費用の詳細が確定するため、この時点で費用の振り込み依頼をされることが一般的です。

4.申請書類の作成と法務局への申請

申請書類を作成します。司法書士などが作成した書類に署名・押印し、郵送で返送するケースが一般的です。その後、管轄の法務局で名義変更の申請を行います。司法書士に依頼するとオンラインでの申請が可能です。
最後に登記事項証明書、戸籍謄本、登記識別情報(権利証)などの書類を受け取り、手続きは完了です。

まとめ

家の名義変更は相続や離婚、売買などのケースで必要となります。登録免許税や書類の取得費用、専門家への依頼費用などがかかりますが、後にトラブルが発生した場合にはさらなる費用が必要になる可能性があります。トラブルを避けるためにも早めに手続きを済ませておきましょう。

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