遺産相続のトラブルの主な5つの原因とは?事前対策や解決方法を紹介

日ごろ仲良くしていても、いざ遺産相続となると、相続人同士で想定していなかったトラブルに見舞われることも少なくありません。この記事では、遺産相続のトラブルに発展しやすい5つのトラブルを紹介します。その上で、トラブルを避けるための事前対策・解決方法も紹介するので参考にしてください。

遺産相続のトラブルの主な5つの原因とは?事前対策や解決方法を紹介

遺産相続のトラブルのよくある原因

遺産相続のトラブルのよくある原因

遺産相続のトラブルは、どのようなことが原因で起きるのでしょうか。大きなお金や法律に関わってくる遺産相続のトラブルは避けたいもの。トラブルが起きてからでは遅いので、よくある原因を確認しておきましょう。

遺産に借金がある

遺産は、銀行預金や不動産のようなプラスの財産だけとは限りません。被相続人が借金をしていた場合は、そのマイナスの財産も遺産に含まれます。

そのため、借金をしていた被相続人の遺産を相続する場合には、プラスの財産だけでなく借金も相続する必要があるのです。
もしこのような場合、借金の相続を避けるためには、銀行預金や不動産などプラスの財産を含めてすべての遺産を放棄しなければなりません。

また、借金がないと思っていても、被相続人が亡くなったあとに、膨大な金額の借金が発覚することもあります。相続をする際には被相続人に借金があるかをしっかりと調査する必要があるでしょう。

遺産相続の3つの選択肢については後述する内容を参考にしてください。

遺産を独占したい人がいる

複数の相続人がいる場合、遺産を相続人で分け合う必要があります。しかし、「親と同居してずっと面倒をみてきた」「経済的に困っている」などさまざまな理由で、遺産を独占したいと考える相続人がいる場合にトラブルが起こりがちです。

相続人同士の話し合いにより解決できれば問題ありませんが、お金や生活に関わる重要ことなので、話がこじれたり、大きなトラブルに発展したりすることもあるでしょう。

相続人同士の話し合いにより解説できない場合、弁護士に依頼したり、「遺産分割調停」を利用したりすることになります。弁護士や遺産分割調停などの第3者に頼る場合についても後述する内容を参考にしてみてください。

不動産の相続

不動産の相続

不動産を誰がどう相続するかも、遺産相続では問題になりやすいポイントです。不動産は各相続分に応じて共有することは可能ですが、現金のようには分割できず、不動産の価値の評価も簡単ではありません。

例えば、遺産に評価額が1億円の不動産と1,000万円の貯金がある場合、遺産の合計額は1億1,000万円となります。その上で相続人が2人いた場合、その一方が1億円の不動産を相続するとなれば、これは平等な相続とはいえません。
このような場合、不動産を相続する方が、もう一方に対し「代償金(差額を補てんするお金)」を支払うことで解決に導く方法があるでしょう。

しかし、不動産の評価額についても相続人同士で揉めることは少なくありません。不動産の評価額を査定する方法は複数あり、方法によって評価額が異なるからです。

例えば、不動産を相続する人にとっては、その不動産の評価額が高くなれば、他の相続人に支払う代償金が増えてしまう可能性があります。他方で、不動産を取得しない相続人にとっては、不動産の評価額が低ければ、自分が取得できる代償金が減ってしまうことになります。
このような相続人間の利害関係から、以下のように不動産の評価額に相違が生まれることがあるのです。

<不動産を相続する相続人>
不動産の評価額をできるだけ低額にしたい

<不動産を相続しない相続人>
不動産の評価額をできるだけ高額にしたい

出典 

このように不動産を取得する相続人とそうでない相続人との間で評価額に対する希望が異なることから、どの方法での不動産評価額を採用するかがトラブルの原因となりやすいです。

その場合の解決方法として、不動産を平等に相続する方法については後述する内容を参考にしてください。

遺言書が不公平

遺言書が不公平

遺言書が残されていれば、基本的に記載の内容に従って相続することになります。しかし、特定の相続人に多くの財産を譲るといった不公平な内容が記載されていた場合、他の相続人が不満を持つ可能性は高いでしょう。

もし、遺言書の相続内容に偏りがある場合、被相続人の配偶者・子ども・父母などであれば「遺留分」の請求が可能です。
遺留分とは、法律に基づき、特定の相続人に最低限保障される遺産取得分を指します。ただし遺留分を請求することで、故人の意思を尊重していないと主張する相続人と揉め事になるケースも少なくありません。

生前に財産の使い込みがあった

財産の使い込みによる相続人同士のトラブルも少なくありません。
例えば、直近で財産が大幅に減っていたり、想定より遺産の額が少なかったりすると、無駄な使い込みをしていたのでは、と疑われることが多いでしょう。被相続人が認知症などで財産の管理ができない状態の場合、生前に被相続人のお世話をしていた家族などの使い込みが疑われることがあります。

そのような事態を避けるためにも、介護などで被相続人の財産を使う必要があるときは、レシート・領収書などをとっておくとよいでしょう。

遺産相続のトラブルの解決方法

このような遺産相続のトラブルはどのように解決したらよいのでしょうか。これまでみてきたトラブルを解決する方法をご紹介します。

借金がある場合は相続を放棄することができる

被相続人が死亡した場合、相続人には以下の3つの選択肢があります。借金のようなマイナスの遺産がある場合は、限定承認や相続放棄という選択肢もあるので自分にとってよい選択をしましょう。

【単純承認】

プラスの財産・マイナスの財産問わず、全ての遺産を相続する選択肢です。これから紹介する限定承認又は相続放棄の手続きを期間内におこなわないときは、単純承認を選択したものとみなされます。

【限定承認】

プラスの財産額を限度としてマイナスの財産も相続する選択肢です。
例えば、プラスの財産が1,000万円で、あとから1,500万円の借金があることが発覚した場合には相続する借金は1,000万円で済むことになります。
一方、借金が200万円の場合は、その金額を差し引いたプラスの財産の800万円を相続できるわけです。

限定承認をおこなうためには、相続人全員の合意が必要です。そのうえで、被相続人が亡くなったことを知った時から3ヵ月以内に、家庭裁判所に対して相続人全員で共同して所定の手続きをおこなうことが必要です。

【相続放棄】

プラスの財産やマイナスの財産の有無に関わらず、全ての遺産の相続を放棄する選択肢です。相続放棄をすれば被相続人のプラスの財産を受け取れないものの、借金についても相続人が責任を負う必要がありません。

相続放棄をする場合も、被相続人が亡くなったことを知った時から3ヵ月以内に、家庭裁判所に対して所定の手続きをおこなう必要があります。なお、相続放棄は限定承認と異なり、個々の相続人が個別に手続きすることが可能です。他の相続人全員と合意する必要もありません。

専門家に相談する

弁護士などの専門家に依頼すれば、法律的な視点でアドバイスしてくれます。その結果、相続人だけで話し合うよりスムーズに話し合いが進みやすくなるでしょう。
また、話し合いで解決しない(遺産分割調停・審判)場合に、最終的にどのように相続することになりそうか見込みを把握することができます。

遺産分割調停・審判(裁判)を利用する

どうしても相続人の話し合いで解決しないときは、遺産分割調停・審判(裁判)を利用して解決する方法もあります。
遺産分割調停とは、家庭裁判所において中立的な立場の調停委員会(※)が相続人の間に立ち、合意による円満な解決を目指す手続きをいいます。

遺産分割調停でも解決しない場合は、「遺産分割審判」に移行し、裁判官に遺産分割方法を決めてもらいます。
遺産分割審判は、最終的に裁判官が判断をしてくれるので、遺産相続を法的に完了することができるでしょう。

※調停委員会とは
裁判官1人と、民間から選出された調停委員2人以上から構成されます。調停委員には、弁護士・大学職員などの法律的・社会的な知識・経験が豊富な人な人が選ばれることが多いです。

不動産も平等に相続する

誰かが不動産を相続して代償金の根拠となる不動産の評価額でトラブルになった場合は、不動産そのものを平等に分けるという方法があります。

1つは、不動産を売って現金にしたうえで、現金を分ける方法です。しかし、不動産を売るか否かで議論になる場合もあります。相続人によっては不動産の状態のまま相続をしたいと考える人もいるため、慎重に話し合いましょう。

もう1つは、不動産を複数の相続人で共有して相続する方法です。ただし、不動産の名義をどうするかもトラブルの原因になりやすいため、注意しなくてはなりません。
仮に、不動産を相続した相続人の法定相続分に応じた共有名義にすると、第3者に売却又は処分をしたい場合には不動産のすべての権利を第3者に移転させなければならないことが多く、このとき名義人全員の承諾を得る必要があります。
一方で、共有名義にすることで生じる面倒を避けるために特定の相続人が単独名義にすることを考えた場合は、その者が勝手に不動産を売却するなどの恐れがあるため他の相続人が快く賛成してくれるとも限りません。

遺産相続のトラブルを未然に防ぐ方法

遺産相続のトラブルを未然に防ぐ方法

遺産相続でトラブルを未然に防ぐにはどうすればよいのでしょうか。ここでは、今からできる対策方法をご紹介します。

遺言書を作成しておく

遺言書を残しておけば、基本的には遺言書に記載の通りに遺産分割が進められるため、トラブルが起きにくくなります。遺言書にも記載のルールがあり、無効とみなされることもあるので、正しい方法で作成しましょう。

エンディングノートを作成しておく

遺言書の書き方がわからない場合に、弁護士や司法書士などの専門家に相談することも一つですが、エンディングノート(自分の人生の終末について記したもの)を作成することもおすすめです。

遺言書とは異なり、形式を気にせず被相続人の希望を伝えることができるでしょう。遺言書のような法的な拘束力がないというデメリットもありますが、相続人に対して被相続人の率直な気持ちを伝えることで、相続人が被相続人の気持ちを尊重することを期待できるため、トラブルを避けるのにも有効です。

財産目録を作成しておく

財産目録とは被相続人の財産をまとめた一覧表です。財産目録があれば、相続時に相続財産の内容を簡単に把握できるため、トラブルが起きにくくなります。
また、財産目録の作成まではできない場合でも、通帳や不動産の権利証などの貴重品を整理しておくのもスムーズに相続を進めるうえで有効でしょう。

親族・関係者で話し合っておく

被相続人が生きている間に話し合っておけば、いざというときにトラブルが起こる可能性を軽減できるでしょう。被相続人も含めて話し合えば、被相続人の意向も尊重してもらえるでしょう。

まだ生存しているのに死後の話をするなんて縁起でもない、という考えもあるかもしれませんが、相続のトラブルはこじれると解決が難しいです。自分の死後も家族や親族が円満でいられるように話し合っておくことをおすすめします。

まとめ

遺産相続でトラブルに発展し得る原因は複数あり、それらを全て回避するのは簡単ではありません。遺産相続でトラブルが起きそうなときや起こってしまったときは、なるべく早く専門家に相談することをおすすめします。

まずは、遺言書やエンディングノートを作成したり、親族で話し合ったり、できることから始めましょう。その上でも困った場合は、専門家に相談することをおすすめします。

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