空き家相続の基本!知らないと損する「3,000万円特別控除」とは?

住めない・売れない「負の不動産」として放置されることが多い「空き家」。近年、全国で放置された空き家が増え、社会問題となっています。もし、両親が遺した実家が「空き家」になったら、皆さんはどうしますか?今回は、相続後に空き家となった家屋を売却しやすくするために制定された「空き家の譲渡所得特別控除」について解説します。

空き家相続の基本!知らないと損する「3,000万円特別控除」とは?

空き家を相続したら、どんな手続が必要?

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両親をはじめ親族が不動産を所有している場合、誰にでも起こる可能性がある空き家の相続問題。空き家を相続した場合、どのような手続きが必要になるのか、大まかな流れを見ていきましょう。

1.遺言書の確認、遺産分割協議

相続が生じたら、まずは被相続人(故人)の遺言書の有無を確認します。遺言書がある場合は遺言書の内容によって、遺言書がない場合は相続人全員による遺産分割協議によって、各相続人が相続する遺産が決まります。
どうしても空き家を相続したくない場合は、相続があったことを知った日から3か月以内ならば、相続放棄をすることができます。ただし、相続放棄をすると、空き家だけではなく、すべての遺産の相続ができなくなることに注意してください。

2.相続登記(名義書換)

遺産分割協議が終わったら、各相続人は自分の取得した遺産の相続手続きをします。もし、空き家を相続した場合は空き家と空き家が建っている土地の相続登記(名義書換手続き)を行うことになります。相続登記には特に期限は設けられていませんが、被相続人から相続人へ名義が変更されない限り相続不動産を売却することはできないので、できるだけ速やかに手続きを済ませておくようにしましょう。

3.相続税の申告・納付

名義書換手続きが終わり、相続税の申告・納付が終われば、その遺産は名実共に相続人の資産になります。
本来なら嬉しいことのはずですが、その資産が空き家の場合は、そうとも限りません。それどころか、空き家は遺産分割協議で相続人が押し付け合う「負の遺産」と呼ばれることも多いのです。なぜなのでしょうか?

なぜ空き家は問題になりやすいのか?

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相続した空き家が「負の遺産」として放置されるケースが増えている理由、それはずばり「不動産価値が低いケースが多いから」です。そもそも相続される空き家は長年人が住んで老朽化していることが多く、リフォームや改築をしない限り、そのままでは住めない可能性が高いのです。
しかも多額の費用をかけて改築・リフォームをしたとしても、その出費に見合う価格で売れる・貸せるとは限りません。特に人口減少が著しい地方の物件の場合は、価格を下げても買い手や借り手が見つからないケースも珍しくありません。住めない・売れない・貸せない空き家でも、所有している限り、当然メンテナンスや植木の剪定などの管理費や固定資産税はかかってしまいます。利益は生まないのに出費ばかりがかさんでしまう…、これこそ相続空き家が「負の遺産」と言われる理由なのです。

「では、空き家の相続を放棄すればいいではないか」と考える方もいるでしょう。しかし、「相続権を放棄する」=「空き家の所有者でなくなる」ということではありません。つまり、たとえ相続を放棄したとしても、すぐに空き家の管理義務がなくなるわけではないのです。

民法第239条第2項では、「所有者のない不動産は、国庫に帰属する」と定めています。つまり、不動産を相続する権利のある相続人全員が相続を放棄した場合、その不動産は国庫に帰属されることになります。ただし、その手続は非常に煩雑で、弁護士や司法書士などを「相続財産管理人」とする申請を行って受理された後、その不動産に相続人がいないことを法律的に確定させなくてはなりません。

手続きを経て選任された相続財産管理人は,債権者等に対して被相続人の債務を支払うなどして清算を行い、清算後残った財産を国庫に帰属させることになりますが、相続財産管理人が確定して管理を開始するまでの間の不動産の管理義務は、相続を放棄した者に課されることになっています。したがって、万が一、相続財産管理人が管理を開始する前に空き家に関するトラブルや事故が起きてしまった場合は、所有者である相続人がその責任を負わなければならない可能性が極めて高いのです。

しかも、上記のとおり、空き家の相続だけを放棄することはできず、相続放棄をする場合は他の遺産(現金や価値の高い不動産など)の相続も放棄しなくてはなりません。その意味でも、相続を放棄することは必ずしも得策とは言えないのです。長い目で見ると、やはり自分で住む予定のない空き家を相続した場合は、建物がこれ以上老朽化しないうちに、速やかに売却するのがベストな選択と言えるでしょう。

最大3,000万円控除も。「空き家にかかる譲渡所得税の特別控除」とは

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しかし、売却益にかかる所得税への不安から、空き家の売却を躊躇する人も少なくありません。そこで、国は平成28年の税制改正で「相続等により取得した空き家を譲渡した場合の3,000万円特別控除」制度を創設しました。この制度は、相続によって取得した空き家を「被相続人が死亡した日以後3年を経過した日の属する年の12月31日まで」に譲渡したときは、譲渡して得た利益から3,000万円を控除できるというもの。税負担を軽くすることによって、相続空き家の売却を促進するのが狙いです。

平成31年税制改正で、特別控除要件が緩和

ところが、この特別控除を受けるためには「その空き家に被相続人が直前まで居住していたこと」が条件となっており、被相続人が死亡する直前に老人ホーム等に入居していた場合は控除が受けられないことが問題視されていました。そこで平成31年の税制改正で適用条件が緩和され、老人ホーム等に入所した場合でも、一定の要件に該当すれば、特別控除が受けられるように。また、特例の適用期間も当初の令和元年12月31日から令和5年12月31日まで延長されました。

<3,000万円特別控除の主な適用条件>
1.家屋・土地に関する条件
・相続開始直前まで被相続人の居住用家屋であったこと
・相続開始直前に被相続人以外の居住者がいなかったこと(被相続人が一人暮らしであったこと)
・昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること(マンションのような区分所有建築物は対象外)
・相続開始直前に「被相続人居住用家屋」の敷地の用に供されていた土地であること

2.対象者に関する条件
・相続により「被相続人居住用家屋」及びその敷地の用に供された土地等を取得した個人

3.譲渡期間
・相続の時から相続開始日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの譲渡

4.特例の適用期間
・平成28年4月1日から令和5年12月31日までの譲渡

5.譲渡限度額
・譲渡対価の額が1億円を超えるものは対象外

【参考】国土交通省{空き家の発生を抑制するための特例措置「空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除」について}詳しくはこちら

特別控除を受ける際の手続きと注意点

定められた要件を満たして、「空き家の譲渡所得税3,000万円控除の特例」の適用を受けることができる場合は、次の2つの区分に応じて、それぞれ必要な書類を添えて確定申告をしなくてはなりません。
2つの区分の中でも更に2つパターンで必要書類が異なるため注意が必要です。

(1)相続で取得した空き家または、空き家とともにその敷地を売った場合
 a)被相続人居住用家屋に住んでいた場合
 b)老人ホーム等に入所していた場合

(2)相続で取得した空き家を取り壊して、その土地を売った場合
 a)被相続人居住用家屋に住んでいた場合
 b)老人ホーム等に入所していた場合

【参考】国土交通省{空き家の発生を抑制するための特例措置「空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除」について}詳しくはこちら

ただし、この特別控除を受けた場合、同時に「譲渡所得の相続税の取得費加算の特例」{引用:相続により取得した土地、建物などを、一定期間内に譲渡した場合に、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算することができる特例(租特法 第39条)}を受けられなくなることに注意が必要です。多くの場合、「空き家にかかる譲渡所得の3,000万円特別控除」の特例の適用を受けたほうが有利になると考えられますが、相続税額が3,000万円を超える場合は「譲渡所得の相続税の取得費加算の特例」を選択したほうが有利であると言われています。そのため、どちらを選択した方が有利であるかはしっかりと見極める必要があります。

【参考・引用】国土交通省「他の税制との関係について」詳しくはこちら

専門家と相談して、賢い売却を

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ここまで、相続した空き家を取り巻く課題や、売却時に受けられる特別控除の概要を説明してきましたが、実際に相続した空き家をスムーズに売却するためには、ここには書ききれないほど煩雑な手続きや専門的な知識が必要となってきます。
特に特別控除制度は要件が非常に細かくてわかりづらいので、個人が独力で適用までこぎつけるのは至難の業であり、司法書士や税理士、土地家屋調査士などの専門家のサポートを受けることが不可欠といっても過言ではありません。相続が実際に起きてから慌てるのではなく、相続の可能性がある場合は、なるべく早く信頼できる専門家を選び、しっかりした連携体制を築いておくことをおすすめします。

【参考】裁判所「相続の放棄の申述」詳しくはこちら
【参考】裁判所「相続財産管理人の選任」 詳しくはこちら

まとめ

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空き家問題は先延ばしにするほど、思いがけぬトラブルを招く可能性が大きくなります。実際、放置した空き家が周囲の景観を壊したり、ゴミ捨て場と化してしまったり、倒壊して通行人を怪我させてしまったりするトラブルは珍しくありません。利用する予定のない不動産を相続した場合は、次の世代(子や孫)に負の遺産を引き継いでしまわないためにも、専門家や行政のサポートを利用して1日も早く売却へのアクションを起こしましょう。

ご留意事項
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