不動産の分筆とは?メリットやデメリット、手続きなどに必要な費用など

土地を複数人で相続するには、売却して現金化させるか、共有するしかないように思えますが、土地を分ける=「分筆する」ことも検討できます。本記事では、分筆を行うメリットや注意点、手続きや費用についてお伝えします。土地の相続でお悩みの方は参考にしてください。

不動産の分筆とは?メリットやデメリット、手続きなどに必要な費用など

分筆とは?

分筆とは、1つの土地をいくつかに分割し、それぞれ登記することです。あまり聞き慣れない言葉ですが、「筆」とは登記簿上の土地の個数を表す単位です。
遺産相続をするときに複数の相続人に土地を相続したい場合は、分筆をするのも方法の1つです。また、土地の一部を売却したい、違う用途に使用したい、といった場合も分筆することがあります。

分筆を行うメリット

分筆を行うメリット

分筆を行うメリットは以下の3つです。

・相続人同士のトラブルを防げる
・税負担が小さくなる場合がある
・住宅ローンが組める

相続人同士のトラブルを防げる

遺産相続をするときに複数の相続人がいる場合、1つの土地を相続人全員で共有することも可能です。しかし、そうなると建物を建てるにしても相続人全員の同意が必要となり、トラブルのもととなる恐れがあります。土地を分けて相続すると、相続人がそれぞれの意思で土地を活用できるようになります。

税負担が小さくなる場合がある

面積の大きな土地や、大きな道路に接する土地は、評価額が高くなるのが一般的です。分筆をしたことで、土地が狭くなり、土地の一部が大きな道路に接しなくなると、評価額が下がり、税金が低くなることがあります。土地の評価額が下がると相続税や贈与税だけでなく、毎年納付する固定資産税も安くなることが期待できます。

住宅ローンが組める

住宅ローンを組む際は、土地に抵当権が設定されます。複数人で共有している土地に抵当権を設定する際には、金融機関の目が厳しくなり審査に時間がかかったり、審査が通らないことがあります。
土地を分け、個々に土地を所有することにより、その恐れがなくなります。

分筆を行うデメリット

分筆を行うデメリット

土地という大きな資産を分けるには、デメリットもしっかりと考慮する必要があります。ここでは、4つのデメリットを紹介します。

・評価額が下がる
・増改築や新築ができなくなるリスクがある
・固定資産税が上がる場合もある
・専門家を探す手間と依頼する費用がかかる

評価額が下がる

メリットにも繋がる「評価額の低下」ですが、デメリットともなり得ます。
評価額が下がったということは使いづらい土地になったともいえるため、売却が難しくなる、という側面があります。

増改築や新築ができなくなるリスクがある

土地が小さくなるため、建ぺい率・容積率によっては増改築が難しくなるでしょう。また、分筆後の土地の接道が2m未満になり、建築基準法の接道義務が満たされない場合は、建築してはならない土地となってしまいます。

固定資産税が上がる場合もある

メリットとして、評価額が下がり固定資産税が安くなる場合があると説明しましたが、反対に固定資産税額が上がる場合もあるので注意が必要です。
建物が建っている土地は固定資産税の減税措置が適用されますが、建物のない土地はそのような減税の制度はありません。

建物を含む土地と、建物がない土地に分割した場合、建物がない土地を相続する人は、建物のある土地を相続した人よりも納付する税金額が大きくなってしまいます。

専門家を探す手間と依頼する費用がかかる

土地を分割するときには、測定機材や専門知識が必要となる調査をしなければなりません。登記の申請にはいくつも書類を準備しなければならず、一般人には負担が大きく困難な作業です。そのため、土地家屋調査士に依頼するのが一般的ですが、適切な人を探す手間や、報酬の支払いが必要になります。

分筆の手続きの流れ

分筆の手続きの流れ

土地家屋調査士を探して委任したあとは、土地所有者がしなければならないことは特にありません。調査から分筆登記申請までの流れを大まかに知っておくと、今どの段階まで進んでいるかを把握することができるでしょう。

1.信頼できる土地家屋調査士を探して依頼する

費用や期間などの見積もりを出してもらい、納得してから依頼をしましょう。

2.資料収集・調査

ここからは土地家屋調査士が対応します。
まず、法務局や役所で、公図や測量図、登記事項証明書などの資料を集めて調査します。

3.現地調査、現地立ち合い

現地調査を行い、役所や隣地所有者の立ち合いのもと、「筆界」(登記時に定められた境目)と「境界」(民間人同士での境目)をそれぞれ確認します。

このとき、隣の土地との境界が定まっていないと分筆できないため、「境界確定測量」を行い、隣地所有者と「境界確認書」を作成して土地の境界について合意を残します。

4.分筆案の作成

これまでの調査を踏まえて、分筆案を作ります。

5.境界標の打ち込み

分筆案について相続人同士の合意が取れたら、土地の境界を示すための境界標を打ち込みます。

6.分筆登記の申請

登記申請のための書類や図面を揃え、法務局へ提出して、承認されれば完了です。

分筆の費用や期間

分筆の費用や期間

土地の大きさ、隣の土地との境界がすでに決まっているかどうかにより、費用や期間は大きく異なります。

費用

「土地家屋調査士への報酬」と「登録免許税」の2つがかかります。

土地家屋調査士の報酬は、10万円前後から数百万円程度です。隣地との境界がわからず、境界確定測量が必要な場合などは、その分費用がかかります。

また、登記をする際には登録免許税を法務局に納付する必要があり、分筆後の土地1筆につき1,000円です。

期間

隣地との境界があらかじめ分かっていれば、10日程度で完了することも可能です。しかし、境界確定測量が必要な場合は3ヵ月以上かかることが多くあり、隣地所有者と境界の認識が一致せず訴訟に発展した場合には、数年かかることもあります。訴訟をせずに、筆界特定登記官が筆界を特定する「筆界確定制度」を用いる場合でも、大抵1年以上かかります。

相続時の分筆の注意点

相続時の分筆の注意点

ここでは、相続に伴って分筆する際に注意すべきポイントを3つ紹介します。

相続税の申告期限

相続税には申告期限があり、「相続開始後10ヵ月以内」です。一方、分筆は、境界確定測量が必要な場合は数ヵ月かかり、筆界確定が必要になる場合は1年以上かかります。相続発生後に分筆を行おうとしても、申告期限を過ぎることも十分に考えられます。
相続のために分筆を考えている場合は、生前を含め早めに準備しておくのが無難でしょう。

費用に見合う利益があるかどうか

境界確定測量が必要な場合などには、土地家屋調査士報酬が高くなることが多く、数百万円に膨らむこともあります。分筆することが、費用に見合う価値があるかどうか、事前にしっかりと検討しましょう。

不合理分割と判断される場合もある

相続税の節税だけを考え安直に土地を分割すると「今後有効に土地を活用できると見込めない」と判断され、分割前の評価単位で相続税が計算されてしまいます。相続税を節税するためだけの土地の分割を「不合理分割」といいます。
分割後に以下のような土地が生まれると不合理分割と判断され、結果的に節税に繋がらないため注意が必要です。

・道路に接していない土地
・三角形など不整形な土地
・道路に接していても、2m以下など間口が狭すぎる土地

これらを回避するためにも、土地家屋調査士のなかでも相続案件などの経験豊富な人を選んで依頼することが大切です。

まとめ

土地は、そのまま売却したり、ローンを組むときに抵当権を設定したり、アパートを建てて資産運用したり、活用の仕方は相続人それぞれで異なるでしょう。大きな土地が相続財産となるときには、分筆によって相続問題が解決することもあります。相続の際には、相続人のためにも「分筆」を検討してみてはいかがでしょうか。

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