家や土地など不動産の固定資産税、滞納するとどうなる?

家屋や土地を所有する人に課される、固定資産税。年に4回に分けて支払うことができるので、つい納付を忘れてしまったり、先延ばしにしてしまったりする人も多いのではないでしょうか。しかし、固定資産税を滞納すると、最悪の場合、資産を失うことにも繋がりかねません。今回は、固定資産税を滞納するとどんなリスクがあるのかを確認します。

家や土地など不動産の固定資産税、滞納するとどうなる?

固定資産税の税率は1.4% 評価額によっては大きな負担になることも

固定資産税の税率は1.4% 評価額によっては大きな負担になることも

固定資産税は、毎年1月1日現在、土地・家屋等を所有している人に対して市町村が課税する地方税です。

固定資産税の税率は原則として、固定資産税課税標準額の1.4%。毎年、年度初めに市町村から送付される「固定資産税納付通知書」に従って、年度内に4回に分けて支払うことになっています(一括払いも可)。固定資産税は、固定資産の評価額の多寡に関わらず一律の税率が課されるので、評価額が高ければ高いほど、納付額も高額に。なかなか支払うことができず、滞納してしまう人も少なくありません。しかし、他の税金と同じく、固定資産税も滞納するとペナルティが課されます。実際に滞納した場合、どのようなことが起きるのか、順を追って見ていきましょう。

固定資産税を滞納すると起きること

固定資産税を滞納すると起きること

① 督促状が届く
納付期限が過ぎても固定資産税を支払わないと、期限の日から20日以内に市町村から督促状が発送されます。督促状発送の日から10日過ぎても滞納が解消されない場合、市町村は滞納者の財産を差し押さえることができるようになります。督促状を無視していると、電話や訪問での確認、また再度納税を促す「催告状」が届くこともあります。

② 延滞金が課される
固定資産税を滞納すると、延滞金が徴収されます。延滞金は滞納期間に応じて決まるので、滞納する期間が長ければ長いほど延滞金の額も増えることになります。

■延滞金の計算方法
延滞金=滞納税額 × 延滞日数 × 延滞金率 ÷ 365

③ 財産調査
督促状などを無視していると、滞納者は国税徴収法第141条に定められた「財産調査」を受けることになり、預貯金や解約払戻金のある保険契約の有無を調査されることになります。場合によっては、金融機関や保険会社だけでなく勤務先や取引先にまで照会が及ぶこともあり、社会的信用を失う事態になりかねません。

④ 財産の差し押さえ
財産調査の結果、財産があることが認められると、その財産が差し押さえられることになります。差し押さえられる財産は、国税徴収法第75条で定められた「差押禁止財産」(生活必需品や食料、生活保護費や児童手当など)以外の、すべての財産で、預貯金や保険の解約払戻金はもちろん、給与や退職金も差し押さえられる可能性があります。

なお、不動産が差し押さえられた場合、その不動産の登記簿謄本には「差押」と記載され、所有者が勝手に売却などができなくなってしまいます。

⑤ 公売にかけられる
差し押さえられた財産のうち、不動産や貴金属など換金できる財産は市町村によって公売にかけられます。

納税を猶予してもらうには?

納税を猶予してもらうには?

ここまで見てきたとおり、固定資産税を滞納すると、最悪の場合、財産や社会的信用を失ってしまうことになりかねません。しかし、突発的な経済的なトラブルで期限内にどうしても納税できない事態は、誰にでも起こりうること。万が一、期限内に固定資産税が払えなくなった場合は、どうすればいいのでしょうか?

① 分納を申請する
期限内に固定資産税を支払えない場合の対策として最も一般的なのが「分納」、すなわち、市町村の担当者と協議して無理のない分納計画を定め、その計画に従って納付していく方法です。

面倒な書類の作成や手続きが必要ない一方、延滞金の免除がない・計画通りに支払えなくなった場合に弁明の機会がない・差し押さえのリスクが残る、などのデメリットがあることにも注意が必要です。

② 納税の猶予を受ける
不慮の病気やケガで収入が途絶えてしまった場合や、自然災害で大きな被害を受けた場合など、やむを得ない事情があると認められる場合は、1年間だけ納税が猶予されます。納税自体が免除されるわけではありませんが、猶予を受けた期間に関しては延滞金が50%~100%免除されます(免除の割合は条件によって異なる)。

また、猶予期間中は財産が差し押さえられることがない・すでに差し押さえられている財産に関しては差し押さえが解除される・計画通りに納税できない場合にも弁明の機会が与えられる、といったメリットもあります。一方、「分納」と違って、申請にあたっては所定の書類を提出しなければならないなど手続きに手間がかかるというデメリットもあります。

③ 換価(公売)の猶予
すでに財産を差し押さえられてしまっていた場合も、ただちに財産の換価(公売)を行うと事業の継続や生活の維持が困難になる場合、かつ本人に税金を支払う誠実な意思があると認められる場合は、1年間(やむを得ない事情がある場合2年間)、財産の換価(公売)猶予を受けることができます。換価の猶予についても納税の猶予と同様に、書類による申請が必要です。

上記はいずれも、納税を猶予(先延ばし)する方法であり、原則として固定資産税を免除してもらえる方法はありません。仮に差し押さえられた自宅が公売にかけられ、その売却益が納税にあてられてもなお、全額の納税できない場合は、残りの税額を支払わねばなりません。また、自己破産をしても、原則として納税の義務はなくなりません。

固定資産税の課税に不服・疑問がある場合は?

固定資産税の課税に不服・疑問がある場合は?

なお、固定資産税の納付額の根拠となる固定資産評価額に不服や疑問がある場合は、納税通知書を受け取った日の翌日から3ヶ月以内であれば、市町村に「審査の申し出」または「異議申し立て」をすることができます。審査には一定の時間がかかりますが、申し立て期間の納税が猶予されるわけではなく、審査の結果を待っている間に納付期限を過ぎてしまった場合は、延滞金が課されるので注意が必要です。

不要なリスクを減らすには早めの行動を

固定資産税を滞納すると、最悪の場合、財産を失ってしまうことにもなりかねません。どうしても期限内に納付できない場合は、市町村の窓口で分納や猶予ができないか相談しましょう。ただし、分納や猶予はあくまでも一定期間、納付を先延ばしにするだけで、免除されるわけではありません。また、先延ばしにすればするほど延滞金が増え、結果として支払う金額が増えてしまいます。万が一滞納してしまった場合も、できる限り早く納付できるように心がけましょう。

なお、固定資産税は、不動産などの資産を所有している人には原則として必ず毎年課される税金です。不動産などを購入する際には、必ず固定資産税の支払いもランニングコストとして計算しマネープランを立てるようにしてください。

【参考】国税庁「猶予の申請の手引」詳しくはこちら

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