最新改正でココが変わった!民法の「相続・贈与」制度を解説

2018年の民法改正により新しくなった相続の仕組みが、2019年から2020年にかけ段階的に導入されました。全体的に見ると、相続にかかる手間や不便な点を改善して、相続人の負担を軽減した内容になっています。新しい相続・贈与の制度を理解し、いざという時に活用できるようにしておきましょう。

最新改正でココが変わった!民法の「相続・贈与」制度を解説

相続の常識が変わっている

相続の常識が変わっている

相続や贈与に関する民法が改正されたのは、実に約40年ぶりとなります。この間に、日本の相続のあり方も大きく変わっています。40年前には地方を中心に長男が全財産を相続する「本家相続」の慣習が根強く残っていましたが、今は兄弟姉妹が平等に相続する「均分相続」が一般的です。民法改正はこうした時代の変化を映したもので、これにより、従来の相続の常識が大きく変化した部分もあります。

我が家の相続に備えて覚えておきたい3つのポイント

2018年民法改正による主な相続・贈与制度の変更点をまとめたのが以下の表です。

主な相続・贈与制度の変更点

施行日改正内容
2019年1月13日自筆証書遺言の財産目録部分はパソコン作成などがOKに
2019年7月1日遺産分割前でも故人の口座から一定額を引き出せるように
結婚20年以上の夫婦なら配偶者に贈与した自宅は相続財産の対象外に
法定相続人ではない親族も介護などによる故人への貢献分を相続人に請求できるように
遺留分の侵害額を金銭で請求できるように
相続人以外の親族でも特別寄与料が請求できるように
2020年4月1日家の価値を「配偶者居住権」と「所有権」に分けて相続できるように
2020年7月10日法務局による自筆証書遺言の保管制度がスタート

今回は、中でも私たちに身近なものを主に3つ取り上げ、改正点や注意点を詳しくご紹介します。

遺産分割前でも故人の預貯金から葬儀費用などを引き出せる

遺産分割前でも故人の預貯金から葬儀費用などを引き出せる

民法改正前は故人の預貯金口座は相続人間の遺産分割協議が終わるまで凍結され、相続人が単独で預貯金を引き出すことはできませんでした。葬儀にかかる費用などは当面、相続人が立て替えておく必要があったのです。しかし、2019年7月以降は遺産分割の前でも故人の口座から一定額を払い戻せるようになっています。

具体的には、金融機関ごとに「相続開始時点の残高の3分の1×払い戻しを行う相続人の法定相続分」までの引き出しが可能で、150万円が上限となります。葬儀代や当面の生活費などの補填を前提にした制度のため、数千万円単位の残高があっても、引き出せる額は制限されます。

義父母の介護に貢献した嫁は「特別寄与料」を請求できる

義父母の介護に貢献した嫁は「特別寄与料」を請求できる

介護保険などのサービスは年々充実してきていますが、親の介護の負担が子どもやその配偶者にかかるケースは依然として少なくないようです。実の子どもであれば、介護した親の相続発生時には民法上の「寄与分」が認められた場合、法定相続分より多い遺産をもらうことが可能です。しかし、子どもの配偶者が主たる介護者となっていても、これまでの制度だと、遺贈などの配慮がない限り、遺産を受け取ることはできませんでした。

そこで2019年7月からは、子どもの配偶者など法定相続人以外の親族が無償で療養介護をし、故人の財産の維持・増加に寄与した場合は、相続人に対して「特別寄与料」として金銭を請求できるようになったのです。ただ、これはあくまで「法律上、請求が可能になった」という話であって、現実に請求するとなると超えるべきハードルが幾つもあります。

例えば、具体的にどれくらいの期間に渡ってどのような介護をしたのか、介護日記や立て替えた介護費用の領収書などを示して証明する必要があります。何より、相続人に対して「介護したのだから、お金をください」とは言いづらいのではないでしょうか。スタートして1年あまりの制度だけに、これから使いやすいように改良されていく可能性はありますが、今の時点では、生前贈与や遺言書などを使って介護の労に報いる方が現実的かもしれません。

遺留分の侵害額を金銭で請求できる

民法では兄弟姉妹以外の相続人に、「遺留分」という最低限度の取り分を相続する権利を認めています。従来だと遺留分に足りない額を請求した際、合意に至らないと不動産などが遺族間で共有状態になってしまうという問題がありました。こうした不都合を解消するため、2019年7月以降は遺留分侵害額を金銭で請求できるようになっています。

ただ、この時に遺留分侵害額を請求された相続人が請求した相続人の同意を得て不動産で代物弁済(金銭での支払いが困難な場合に代わりに他の財産を給付すること)を行うと、不動産は相続後に譲渡したものとみなされ、追加的な費用がかかる場合があります。

具体的には、譲渡所得が発生した場合、渡した側は所得税を支払うことになります。また、受け取った側も登録免許税に加え、不動産取得税を負担することになるので注意が必要です。

他にもこんな改正が

他にもこんな改正が

2020年4月には「配偶者居住権」の制度が新設され、例えば夫を亡くした妻はこれを活用することで、法定相続を考慮しても、自宅に住み続けながら今後の生活費となる預貯金も一定額確保できるようになりました。

また、2018年民法改正では自筆証書遺言の利便性が大きく向上しています。自筆証書遺言は「全文手書き」が必須でしたが、2019年1月から財産目録の部分だけはパソコンで入力した文書を印刷したものや、預貯金通帳のコピー、不動産の登記事項証明書などを添付することが可能になっています。今年7月には法務局の保管制度が始まり、これを利用することで紛失や改ざんの恐れがなくなり、家庭裁判所での煩雑な検認手続きも不要になります。

まとめ

まとめ

こうした新制度を正しく理解し、うまく活用することで、これまで難儀していた相続上の問題が一気にクリアされることもあります。とはいえ、制度によっては高度な専門性が必要となり、素人が活用するには難しいものもあります。制度内容や活用方法でよくわからない点がある時は、疑問点を整理した上で、専門家に相談しましょう。

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