相続で遺留分の時効はいつまで?時効を止める方法・除斥期間

遺留分減殺請求権(2019年の改正後の民法では「遺留分侵害額請求権」と呼ばれます)の時効はいつまでかご存知でしょうか。相続の際は、「遺留分」という形で最低限の金額を受け取ることができますが、これには「時効」があります。この記事では、遺留分侵害額請求権の時効、そもそも遺留分侵害額請求権とは何か、除斥期間などを解説します。

相続で遺留分の時効はいつまで?時効を止める方法・除斥期間

遺留分侵害額請求権の時効はいつまで?

遺留分侵害額請求権の時効はいつまで?

遺留分減殺請求権は、「遺留分」を請求するための権利です。2019年に改正され、「遺留分侵害額請求権」と名称が変わりました。そのため以後、「遺留分侵害額請求権(旧:遺留分減殺請求権)」と表記します。

【参考】民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)詳しくはこちら

遺留分侵害額請求権(旧:遺留分減殺請求権)を行使すれば、遺言書に財産がもらえないと記載されていても、最低限の金額を受け取ることができますが、「時効」があります。時効については「民法第1048条」において、以下のように規定されています。

第1048条 遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。

出典 電子政府の総合窓口 e-gov:「民法」

つまり「相続が開始され、遺留分すら渡してもらえない」ことが分かったら、「その日から1年以内に遺留分侵害額請求権(旧:遺留分減殺請求権)を行使しなければ、以後は遺留分を請求できなくなる」ということです。ただし、これはあくまで「知ったときから1年間」なので、例えば「亡くなって3年たってから、その事実を知った」というような場合は、「その時点から1年間」ということになります。

ただ、これに関しても、いつまでもできるというわけではありません。後半部分にあるように「相続開始から10年」と決まっています。これは「除斥期間」といわれるもので、詳しくは後述します。

遺留分侵害額請求権(旧:遺留分減殺請求権)とは

被相続人(財産を残した人)が亡くなったら、相続人(その財産をもらえる人)には、残された財産を一定の割合でもらう権利があります。この一定の割合分のことを「遺留分」と言います。

例えば、被相続人の全ての財産を法定相続人(法定存続人とはの解説挿入)以外に相続させるという遺言が残されていても、それ自体は問題ではありません。その財産はもともと被相続人のものなのですから、誰にいくら贈ろうと、その人の自由です。ですが、身内である法定相続人からすると推定相続人が身内以外の場合、当然本来もらうはずの人からすると「なぜ、自分たちはもらえないのか」ということになるでしょう。実際、相続という制度には「遺族の生活」や「その財産が作られる過程における貢献分を保障する」という目的もあります。そこで「被相続人の意思を尊重するとともに、本来もらうべき人の権利も保護する」ために、こうした規定がなされているのです。

被相続人が生前行った贈与や遺贈(遺言により行われる贈与)により本来もらえるはずの財産をもらえない場合、遺留分に関しては、相続人がそれを請求することができます。この権利のことを「遺留分侵害額請求権(旧:遺留分減殺請求権)」と言います。これにより、法律的には「1円ももらえない」というような事態は起こりえないことになります。

ただし、第三順位(※)の「被相続人の兄弟姉妹および、その代襲相続人」には、この権利は認められていません。また「相続放棄」はもちろん、「相続欠格」「廃除」によって相続権を失った人にも認められていません。相続欠格や廃除に関しては、相続欠格や排除によって相続権を失った人の子供が代襲相続人としてもらうことになります。

相続欠格は「相続を有利にするために殺人や詐欺・強迫・偽造などの犯罪行為を行った者は、相続人になれない」という制度で、廃除は「被相続人の申し立てにより家庭裁判所が認めた場合、ある特定の人から相続の権利を奪うことができる」という制度です。相続欠格は全ての相続人が対象ですが、廃除は遺留分の権利を持つ相続人のみが対象です。

また、遺留分侵害額を請求できるのは「相続が開始された(被相続人が亡くなった)後」になります。存命中に遺留分を侵害するような贈与などが発覚したとしても、その時点で請求することはできません。

※第一順位は、直系卑属(子、孫等)第二順位は、直系尊属(親、祖父母等)

遺留分侵害額請求権(旧:遺留分減殺請求権)の時効を止める方法

このように、時間は1年しかありませんので、のんびり構えていると、あっという間に時効を迎えてしまいます。また「さまざまな事情により、請求者本人が当面は相続の話ができる状況にはない」というようなケースもありえます。そこで、そうした事実があることが分かったら、とりあえず「遺留分を請求する意思があることを、遺留分を侵害するような内容で遺産を相続した相続人(または遺贈を受けた人)に伝える(意思表示)」とよいでしょう。これにより、その時点で遺留分侵害額請求の効果が発生します。

意思表示の方法は、ただ「遺留分を侵害するような内容で遺産を相続または遺贈を受けた人に伝える」だけです。特別な手続きなどは必要ありません。ただし、あとで「そんな話は聞いてない」とならないよう、意思表示は必ず書面で行い、その際も「内容証明」や「配達証明」などのサービスを使って、きちんと記録に残るようにしておくのがよいでしょう。内容証明や配達証明は、どちらも郵便物のオプションサービスで、内容証明を利用すれば「いつ、どのような内容の文書を、誰が誰に対して郵送したか」ということを郵便局が証明してくれます。同様に配達証明を利用すれば「〇月〇日に郵便物を配達した」という事実も郵便局により証明されます。

意思表示を行ったら、その後は相手側と具体的な話を進めていくことになりますが、もし相手側が応じない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てたり、訴訟を起こしたりすることになります(調停による解決ができないことが明らかな場合や緊急性が高い場合には、最初から訴訟を起こすこともできます)。申立書や訴状が相手に届いた時点で意思表示となりますので、調停を申し立てたり訴訟を提起したりしただけでは意思表示とみなされません。また、調停の場合には、相手が受け取ったかを確認できないこともあり、時効が継続する可能性もあります。そのため、通常は「意思表示 →交渉→ (交渉で解決できないなら)→調停 → (不調なら)→訴訟」という順番で進めていくことになります。また、遺留分は金銭での支払い(金銭債権)になりますが、金銭債権は10年で時効になってしまいますので、この点にも注意が必要です。

遺留分侵害額請求権(旧:遺留分減殺請求権)の除斥期間について

前述のように、遺留分侵害額請求権(旧:遺留分減殺請求権)には時効に加えて、10年という「除斥期間」も定められています。除斥期間というのは「何かの権利を持っていても、その間に行使しなければ、その権利が自動的に消滅してしまう」期間のことです。時効と違って、中断することはできません。


この規定により、例えば「しばらく疎遠になっていた」などさまざまな事情により「亡くなったことを知らなかった」という場合でも、相続開始から10年以内であれば権利を行使できます。ただ実際には、知っていたかについて争いになり解決まで長期間を要することになることが多いですので、現実的には「1年で時効になる」と考えておくのがよいでしょう。

まとめ

1年というのは長いようで短い時間でもありますから、遺留分が侵害されていることに気づいたら、直ちに内容証明で意思を表明するようにしましょう。それにより、とりあえず遺留分侵害額請求の効果は発生するため、そのあとでじっくり話し合うようにすれば納得のいく解決もみえてくるはずです。また、遺留分を受け取ることになった際は、金銭の支払いにも時効があることに留意しましょう。

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