親の介護にかかる費用はどのくらい?負担を減らす方法や控除制度を解説
親の介護にかかる費用は、月額平均8.3万円、総費用は500万円ほどです。この記事では、介護のケース別費用、費用負担を抑える方法などを解説していきます。介護費用は要介護度や期間、サービスなどで異なるため、さまざまなパターンを想定しておきましょう。

親の介護にかかる費用はいくら?

親の介護にかかる費用は、在宅介護と施設入居のケースによって異なります。入居する施設の種類によって費用が異なるため、介護費用は月額5~30万円ほどと大きな幅があります。
また、介護期間や要介護度によっても介護費用は変わってくるでしょう。
生命保険文化センターが発表した2021年度の「生命保険に関する全国実態調査」によると、介護期間が4年以上のケースが全体の半分近くもあるため、費用は4年分以上を目安にして計算することをおすすめします。
基本的に、介護費用は要介護度が高いほど高額です。実際に要介護度1と要介護度5のケースで平均額を比較すると、倍以上の差が生じています。
介護費用には多くのパターンがあるため、いろいろなパターンに対して費用はどの程度必要かを把握しておくことが大事です。
介護パターン別費用
一時費用 | 月額費用 | |
---|---|---|
在宅介護 | 住宅改修等 80万円程度 | 5万円程度 |
有料老人ホーム (民間施設) | 500万円程度 | 15~30万円程度 (相場:22万円程度) |
サービス付き 高齢者向け住宅 (民間施設) | 20万円程度 | 10~30万円程度 (相場:16万円程度) |
特別養護老人ホーム (公的施設) | 不要 | 5~16万程度、所得等による (目安:14万円程度) |

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要介護度別介護費用(月額)
要介護度 | 介護費用 |
---|---|
要支援1 | 4.1万円 |
要支援2 | 7.2万円 |
要介護1 | 5.3万円 |
要介護2 | 6.6万円 |
要介護3 | 9.2万円 |
要介護4 | 9.7万円 |
要介護5 | 10.6万円 |
【参考】公益財団法人生命保険文化センター「2021年度生命保険に関する全国実態調査」詳しくはこちら
在宅介護の場合

【参考】公益財団法人生命保険文化センター「2021年度生命保険に関する全国実態調査」詳しくはこちら
在宅介護では、平均して毎月5万円ほどの介護費用がかかります。施設入居のケースよりも負担は少ないですが、紙おむつや掃除用品など日々の介護用品購入代のほか、介護サービスの利用料、医療費、介護ベッドの購入代(レンタル料)などがかかります。
また、ほかにも手すりやスロープ設置などのバリアフリーリフォーム費用も必要です。このような一時的な支出は、平均で80万円ほどとされています。突然介護を始めることになったときのためにも、予想される支出に備えておくことが大切です。

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施設入居の場合

【参考】公益財団法人生命保険文化センター「2021年度生命保険に関する全国実態調査」詳しくはこちら
介護の方法には在宅介護の他に介護施設へ入居するという選択肢もあります。
●有料老人ホーム(民間施設)
●サービス付き高齢者向け住宅(民間施設)
●特別養護老人ホーム(公的施設)
上記の3つの入居条件や特徴、費用相場を解説します。
有料老人ホーム(民間施設)の場合

有料老人ホームへの入居は、在宅介護と比べて費用が高額です。入居にあたって要介護度などの条件がないため介護が不要な人でも入居は可能ですが、入居一時金と月額、食費やそのほか必要なサービス料などがかかります。
施設の特徴によって一時金の金額はゼロから数千万円までかなりの幅があり、月額15~30万円ほどのケースが一般的です。
サービス付き高齢者向け住宅(民間施設)の場合
安否確認や生活支援などが受けられる、高齢者向けの賃貸住宅がサービス付き高齢者住宅です。入居にあたって要介護度などの条件がなく、入居者はさまざまな生活支援サービスが受けられます。
一時金は平均数百万円ほどの敷金、前払い家賃などが必要で、月額10~30万円、相場は16万円ほどです。家賃、管理費、食費、光熱費、そのほかに使用したサービスの料金が含まれます。
特別養護老人ホーム(公的施設)の場合
特別養護老人ホームは、自治体や社会福祉法人が運営しており、要介護3以上の人のみ入居可能な施設です。民間の有料老人ホームに比べて低料金ですが、地域によっては入居待機者が多いため入居までに時間がかかるといった特徴があります。
入居一時金は不要、月額5~16万円ほどで、入居者の所得や資産によって支払額が変わります。主な費用は、施設サービス費や居住費、食費、日常生活費(理美容費、外出時の費用、レクリエーション費など)です。

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親の介護は誰が行う?
兄弟姉妹がいる場合には、親に介護が必要になった際に誰が介護を行うかでトラブルが生じるケースがあります。現代では、長男が親と同居して家を継ぐ、介護をするといった昔ながらの風習がなくなってきていて、兄弟姉妹で平等に介護を担うべきとの考え方が一般的です。
しかし、誰か1人だけに介護負担がかかりすぎると、兄弟姉妹間のトラブルにもつながりかねません。お互いよく話し合い、役割分担をしてそれぞれができることを行う必要があります。
介護費用は誰が負担する?

親の介護費用は、親の年金や貯蓄など親のお金で支払うのが基本です。もし親のお金で賄えるなら、子供に金銭的な負担は生じません。
ただし介護費用は、施設によって毎月15万円ほどの料金がかかり、在宅でも毎月5万円ほどと高額です。介護期間が長引くと介護費用はかかり続けます。親の貯蓄がなくなったときには、子供が負担しなければなりません。
介護費用の負担を抑える方法

高額になりがちな介護費用は、制度を使って負担を抑えることが可能です。介護費用の負担を抑える制度には「高額介護サービス費」「特定入所者介護サービス費」「社会福祉法人等による利用者負担の軽減制度」「高額医療・高額介護合算制度」などがあります。
ケアマネージャーなどに相談して、制度の上手な利用方法を教えてもらうことが大切です。
また、親の住民票が子供と同じ世帯の場合、親子で世帯を分離すると介護負担が減額される場合があります。世帯収入が別々に計算されるため、国民健康保険料は発生しますが、親世帯の所得が下がります。それに応じて「高額介護サービス費制度」で定められた自己負担の上限額が下がるので、より多くの払い戻しを受けることができるようになり、結果として介護費用を抑えることができるでしょう。
医療費の負担を抑える方法
介護費用に加え医療費の支払いもあると、経済的な負担がより大きくなります。病気や骨折などのケガによる医療費負担を減らすためには、かかりつけ医で診てもらう、ジェネリック薬品を選ぶなどの節約方法を活用するのがおすすめです。
高額の医療費を支払った際には、「高額療養費制度」を利用すると上限額を超えた金額が払い戻されます。

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税金の控除が受けられる制度
同一生計の親の介護施設利用料や介護サービス利用料は、対象となるサービスを利用した際に所得税の医療費控除が可能です。1月から12月まで1年間の医療費との合計が10万円を超えた場合、確定申告により所得税の控除額が還付されます。

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親の介護に向けて今から準備すべきこと

突然の介護負担に大変な思いをしないためにも、将来の親の介護に向けて、早めに準備をして備えておく必要があります。親の意見も尊重しながら、親の資産をある程度把握して、介護負担、利用できる制度などの知識をつけておくことが大切です。
親の資産を把握しておく
親の年金などの収入や預貯金を聞いて介護費用に回せる金額を確認しておくと、ある程度の備えが把握できます。すぐにお金を下ろせる口座やそこにどのくらいの金額が入っているかを聞いておくとよいでしょう。
そのほか、株や不動産などの資産や生命保険の種類も知っておくと安心です。

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介護費用の負担を想定しておく
実際の介護では費用がどれぐらい必要か、想定しておくことも大切です。介護費用に回せる金額を参考に、介護する場所や利用するサービス、誰が介護するのかを家族で話し合ってみんなが納得できるように役割分担を行います。
要介護度やその時の家族の状況によっても介護費用は異なります。親の希望もあるため、いくつかのパターンを想定することも必要でしょう。
利用できる制度を把握しておく
介護費用には、負担を軽減する制度がたくさんあります。介護状況や収入などから利用できる制度、軽減される金額などが異なるため、制度をよく理解することが重要です。
記事で紹介した制度について、利用条件や必要書類などを調べて把握しておくと利用しやすくなります。
介護費用が足りない場合に備える
親の年金額が少ないケースや、介護期間が長くなって親の貯蓄がなくなったケースでは介護用のお金が不足してしまうかもしれません。子供には平等に親を扶養する義務があるため、協力して費用を準備する必要があります。
万が一、介護費用が不足した場合に備えて、費用をどのように捻出するか、負担するかなどを兄弟姉妹でよく話し合っておくことが大切です。
親の介護にかかる費用を把握しておこう

親の介護には、総額500万円ほどかかる可能性があります。基本的に在宅介護よりも施設入居の方が介護費用は高く、要介護度によっても大きく異なります。
介護は負担が大きいため家族で協力することが大切です。あらかじめ費用や制度を把握しておき、家族でよく話し合い、無理なく介護できるように備えておきましょう。
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