契約社員にもボーナスはある?支給額の平均や正社員との差額も解説

契約社員は、必ずしもボーナスがもらえるとは限りません。もらえたとしても支給額は、正社員より少ない傾向にあります。今回は、ボーナスがない契約社員が収入を増やす方法や入社前にチェックすべきポイント、2020年から導入された「同一労働同一賃金」の影響について紹介します。

契約社員にもボーナスはある?支給額の平均や正社員との差額も解説

契約社員にボーナスがなくても違法ではない!

契約社員にボーナスがなくても違法ではない!

労働基準法では、給与について「毎月1回以上支払う」「一定の期日を定めて支払う」などと定められています。一方で、ボーナスの支払いに関する規定はなく、支給するかどうかは企業の判断に委ねられています。

そのため、契約社員にボーナスが支払われなくても、企業は法律上の責任を問われることはないのです。

そもそも契約社員とは?

そもそも契約社員とは?

まずは、契約社員とはどのような立場の社員なのかを整理しておきましょう。

簡単にいうと契約社員とは、企業などと有期労働契約(期限の定めのある労働契約)を結んだうえで働いている非正規雇用の社員のことです。企業によっては「準社員」「嘱託社員」「非常勤社員」と呼ばれることもあります。

契約社員は、契約時に定めた期間が過ぎると、契約が更新されない限り、退職することになります。

対して正社員は「無期雇用」が原則です。いったん入社すると、原則的には企業側が定めた定年退職の年齢まで勤務を続けることが可能です。

また、給与や賞与、福利厚生などは契約社員よりも正社員の方が優遇されている傾向にあります。

ボーナスは企業との契約内容で決まる

契約社員のボーナスの有無や支給額は、雇用契約の内容次第です。ボーナスが支給される基準や支給額の計算方法などは、勤務先の就業規則で定められているのが一般的です。
これは、契約社員だけでなく正社員の場合も同様です。

企業は、従業員にボーナスを支払う義務があると、法律で定められているわけではありません。しかし、労働契約や就業規則でボーナスを支給すると定めているにもかかわらず、支給しなかった場合、従業員は企業を訴えることができます。

契約社員として入社をする時は、労働契約の内容や企業の就業規則で、ボーナスに関する規定を確認することが大切です。

契約社員のボーナス、正社員との差は年間100万円以上

一般的に、契約社員にボーナスを支給する企業は多くありません。なかには契約社員にもボーナスを支給する企業もありますが、支給額が正社員より少なかったり、業績に応じて数万円程度の「一時金」「金一封」などが支給されたりするケースが多いようです。

厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、企業規模10人以上の民間企業で働く人のボーナスの平均平均額は、以下の通りです。

●正社員・正職員計:約100.3万円
●正社員・正職員以外計:約21.9万円

【参考】厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況」詳しくはこちら

調査結果をみると、正社員・正職員の賞与は平均支給額が100万円を超えているのに対し、正社員や正職員以外は20万円強にとどまっています。差額は約78万円です。

調査結果が示す通り、正社員と契約社員のボーナス支給額には大きな差があるといえます。

【参考】厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」詳しくはこちら

契約社員が働くうえで確認するポイント

契約社員が働くうえで確認するポイント

契約社員として働くポイントを理解せずに働き始めてしまうと、予想外の待遇の悪さに「こんなはずじゃなかった」と後悔することになりかねません。特に、ボーナスが支給されると思って家計をやりくりしていると、収支が大赤字になってしまう可能性もあります。

契約時には労働条件を必ず確認し、納得できない点があれば自分の要望を必ず先方に伝えましょう。それでも条件が変わらないようであれば、契約を見送るほうが賢明です。契約締結前に必ずチェックしておきたいのは、以下の点です。

支給される賃金の内訳

賃金がどのように計算され、支払われるのかを必ず確認しましょう。求人票などに「月給●●円」ではなく「月収●●円も可能」などと書かれている場合は、インセンティブを含んだ額である場合があります。

歩合給やインセンティブがある場合は、支給される条件や金額なども確認することが大切です。

また、自宅から勤務先まで電車やバスなどを利用して通勤するのであれば、通勤手当の有無や支給額も確認しておきましょう。

ボーナスの有無や支給規定

労働契約書にはボーナスの有無を記載することが義務付けられていますが、詳細な項目は記載されていない場合があります。

ボーナスありの企業で働きたいのであれば、労働契約書や就業規則を事前に閲覧し、支給要件や支給額の決まり方などをよく確認しておきましょう。

勤務時間や休日の規定

労働契約書に記載されている始業時間や就業時間、休憩時間、残業時間の目安などが自分自身の希望に合っているか、も入念にチェックしておきましょう。

また、年間の休日数や休日となる曜日、休暇制度(有給休暇・産休・育休など)も重要な項目です。
特に、毎週必ず2日休みたいのであれば、契約書に「完全週休2日制」と書かれているかを確認することが大切です。「週休2日制」と記載されている場合、1年間を通じて1ヶ月に1回以上、週2日の休みがあればよいとされているため、週に2日以上の休みを確保できないかもしれません。

社会保険

社会保険とは、健康保険・介護保険・厚生年金・労災保険・雇用保険のことです。それぞれの保険の概要については、以下をご参照ください。

●健康保険:病気やケガ、それによる休業などの事態に備えるための公的な医療保険制度
●介護保険:介護が必要になった時に所定の介護サービスが受けられる公的な保険制度
●厚生年金:民間企業で働く人を対象とした公的な年金制度
●労働災害保険(労災保険):業務中や通勤中による労働者の負傷や死亡などに備えるための制度
●雇用保険:労働者が失業した場合に必要な給付をする制度

労働契約を結ぶ時は、契約書を参照し加入する社会保険の種類を確認しておきましょう。契約書に「社会保険完備」と書かれている場合は、勤務先がこれらすべての社会保険に加入していることを指します。

契約更新のタイミングや基準

契約社員のような有期雇用の場合、契約書には「〇年〇月〇日~〇年〇月〇日」のように契約期間が記載されているのが一般的です。また、契約更新の有無や更新の判断基準、更新の回数なども記載されています。

「契約期間が満了したあとに労働契約を更新できなかった」といったトラブルを回避するためにも、契約期間に関する項目を細かく確認しておきましょう。

契約社員のメリット

契約社員のメリット

ボーナスの支給額は正社員を下回ることが多い契約社員ですが、契約社員として働くメリットもあります。契約社員の主なメリットは、以下の通りです。

●就職しやすい
●勤務時間の融通がききやすい
●転勤の可能性が低い
●大きな責任を負いにくい

就職しやすい

企業側にとっては、契約社員の方が正社員よりも採用しやすいといえます。契約社員であれば、正社員を雇うよりも人件費が安く済むためです。

正社員としての就職が難しい場合でも、契約社員であれば採用されるかもしれません。特定のスキルや資格を活かして働きたいのであれば、契約社員で入社するのも1つの方法です。

勤務時間の融通がききやすい

契約社員の場合、採用時に交渉すれば、自己都合に応じた勤務時間で契約できる可能性があります。

夜間は大学に通いたい人や保育園のお迎えに行かなければならない人など、何らかの事情で時短勤務を希望する人は、契約社員として働くことを検討してもよいでしょう。

転勤の可能性が低い

正社員の場合、勤務地が限定されないケースも多く、異動や転勤の可能性があります。

その点、契約社員は契約上、勤務地が限定されているケースがほとんどであり、転勤の可能性はまずありません。転居したくない人は、契約社員で働くのも1つの方法です。

大きな責任を負うことがない

契約社員は、正社員と比較して大きな責任を伴う業務を任されにくいという特徴があります。これは、契約社員が有期雇用であることに加え、仕事内容や勤務時間も契約で決められているためです。

また契約社員の方は、正社員よりも残業時間が短い傾向にあります。責任が重たい仕事をできるだけしたくない人や、残業をしたくない人は、契約社員で働くのも選択肢の1つといえます。

契約社員のデメリット

契約社員のデメリット

一方で契約社員には、以下のようなデメリットがあります。

●契約が更新されないケースがある
●正社員よりも給与やボーナスが低い傾向にある
●昇給や昇格があまり期待できない
●福利厚生が充実していない・退職金がない

契約が更新されないケースがある

契約社員は有期労働契約に基づいて雇用されているため、契約期間が終わって契約が更新されなければ、その企業で働き続けることはできません。

契約が更新されない時は、新たな勤め先を探す必要があるでしょう。また、新しい勤務先が見つかるまでは無収入となる可能性があります。

正社員よりも給与やボーナスが低い傾向にある

契約社員の給与は、正社員よりも低い傾向にあります。前述の通り、ボーナスの平均支給額も正社員より低いです。

そもそも、契約社員はボーナスが支給されないケースも多いため、正社員とは年収に大きな差が生まれやすいといえます。

昇給や昇格があまり期待できない

契約社員は、原則として雇用契約を結ぶ時に決めた契約内容が、契約満了まで守られます。高い成果を挙げたとしても、契約期間が満了するまでは給与は増えないかもしれません。

また、契約社員の場合、契約期間中の昇格も期待できないでしょう。昇給や昇格が見込まれるのは、契約期間の満了による更新をした時となります。

福利厚生が充実していない・退職金がない

正社員に認められている福利厚生が、契約社員には認められていないケースがあります。

また、正社員は退職時に退職金を受け取れることも多いですが、契約社員の場合は受け取れないケースがほとんどです。
待遇が正社員と比較して劣る点は、契約社員のデメリットです。

2020年導入の「同一労働同一賃金制度」についても知っておこう

2020年導入の「同一労働同一賃金制度」についても知っておこう

すでに契約社員として働いている人、これから契約社員として働こうとしている人に、ぜひ知っておいてほしいのが「同一労働同一賃金」です。

同一労働同一賃金とは、仕事内容が同じであるのなら、雇用形態にかかわらず同じ金額の賃金を支給するという考え方のことです。
2020年4月1日より、労働者派遣法で導入されました。

正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すことが、同一労働同一賃金の主な狙いです。賃金だけでなく福利厚生や有給休暇などの不合理な待遇差も改善の対象となっています。

同一労働同一賃金が企業に浸透していけば「正社員と同じくらいがんばってきたのに、給与はずっと低いまま」「正社員よりも頑張ったのに、ボーナス(賞与)がない」と悩む契約社員は減っていくでしょう。

また、契約社員をはじめとした非正規雇用の待遇が改善されれば、正規雇用以外の働き方を選ぶ人が増えていくかもしれません。

もし今、契約社員として働いていて正社員との待遇格差に疑問を感じているようであれば、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)に相談をすることができます。

【参考】厚生労働省「都道府県労働局雇用環境・均等部(室)」 詳しくはこちら

ボーナスがない契約社員が収入を増やす方法

ボーナスがない契約社員が収入を増やす方法

契約社員にはボーナスがない場合が多く、ボーナスがあっても正社員に比べて少額であることがほとんどです。また、契約内容が更新されない限り、昇給も望めません。しかし、契約社員でも次のような方法でボーナスを増やしたり、ほかの収入源を確保したりすることができます。

●正社員を目指してボーナスをもらう
●ボーナスがもらえる企業に転職する
●副業によって収入を増やす
●資産運用する

正社員を目指してボーナスをもらう

正社員登用制度を採用している企業では、契約社員として働き、実績を積むことで正社員に登用してもらえることがあります。紹介予定派遣というポジションであることが多いです。

転職をして正社員になる場合、職場との人間関係を1から構築することになるでしょう。また、業務内容や社内のルールなども覚え直さなければなりません。
その点、勤め先の企業で正社員登用制度があれば、転職をすることなく正社員になれるため、人間関係を再構築したり、仕事を覚え直したりする負担を軽減できるでしょう。

契約社員が正社員に登用される条件は、企業によって異なります。正社員になってボーナスをもらいたいのであれば、勤務先の正社員登用制度の有無や要件を確認してみるとよいでしょう。

ボーナスがもらえる企業に転職する

勤務先に正社員登用制度がない場合や、ほかの職場で働いてみたい場合は、ボーナスがもらえる企業に転職するのも1つの方法です。

専門的なスキルや実務経験などがあれば、転職をして正社員になることで、より多くのボーナスをもらえるようになるかもしれません。また、契約社員にもボーナスが支給される企業に転職するのもよいでしょう。

正社員を募集中の企業や、契約社員にボーナスを支給する企業を探す方法としては「転職サイトで検索する」「転職エージェントに相談をする」などがあります。

特に、転職エージェントであれば、履歴書の添削や面接対策などさまざまなサポートを受けられるほか、実際に働いてみなければわからない勤務先の実情なども事前に知れる可能性があります。

副業によって収入を増やす

勤務先の就業規則で副業が禁止されてないのであれば、副業を始めるのも選択肢の1つです。副業であれば、自分自身の資格や特技、趣味などを活かして収入を増やせる可能性があります。

副業を始める時は、クラウドソーシングを活用するとよいでしょう。クラウドソーシングでは、ライターやデータ入力など、在宅でできる仕事を探せます。また、システム開発や翻訳、デザインなど専門的なスキルを活かした仕事に応募することも可能です。

契約で決められている就業時間以外での残業が少ない契約社員であれば、時間を有効活用して副業収入を上げやすいでしょう。

資産運用をする

ボーナスがあまりなく、マイホーム購入や子供の進学、老後生活などで資金不足が生じないか不安な契約社員の方は、資産運用を始めることをおすすめします。

例えば、金融商品の一種である「投資信託」であれば、1,000円や1万円といった少ない金額から投資できるため、最初からまとまった金額を投じることに抵抗がある方でも始めやすいでしょう。

投資した資金は、ほかの投資家のものとまとめられて株式や債券などで運用されますが、具体的な銘柄の選定は運用のプロが担当するため、投資の経験が浅い人でも安心です。

投資信託での運用で得られた売却益や分配金には、通常20.315%の税金がかかります。そこで活用したいのが、毎年一定金額の新規投資が非課税となる「NISA」です。

2024年1月から始まる新しいNISAでは、非課税投資枠の拡大や制度の恒久化など、従来のNISAと比較して資産運用がしやすくなります。将来的に起こるライフイベントで資金不足が生じないか不安な人は、新しいNISAでコツコツと資産運用を始めてみるとよいでしょう。

契約社員にはメリットも。契約社員に向いているのはこんな人

まとめ

契約社員でも、企業との契約内容次第ではボーナスが支給されるケースはあります。契約社員として働く時は、ボーナスの有無や支給要件などをよく確認しておきましょう。

より多くのボーナスを受け取りたいのであれば、勤務先の正社員登用制度の利用や転職によって正社員になるのも方法です。また、副業で収入を増やしたり、資産運用をして運用益を得たりしてボーナスの代わりとなる収入源を得るという選択肢もあります。

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