契約社員でもボーナスはもらえる?2020年導入の「同一労働同一賃金」の影響は?

これから契約社員として働こうと考えている人にとって、気になることのひとつは「ボーナスがもらえるか」ではないでしょうか。そこで今回は、ボーナスの有無も含め、契約社員として働くメリット・デメリットや就職・転職前にチェックすべきポイント、2020年から導入される「同一労働同一賃金」の影響について紹介します。

契約社員でもボーナスはもらえる?2020年導入の「同一労働同一賃金」の影響は?

そもそも契約社員とは?

そもそも契約社員とは?

まずは、契約社員とはどのような立場の社員なのかを整理しておきましょう。
簡単にいうと、契約社員とは、企業などと有期労働契約(期限の定めのある労働契約)を結んだ上で働いている非正規雇用の社員のことを指します。

一般的に正社員は、いったん入社すると、原則的には企業側が定めた定年退職の年齢までずっと勤務を続けることになりますが、契約社員は契約時に定めた期間が過ぎると、契約が更新されない限り、退職することになります。企業によっては「準社員」「嘱託社員」「非常勤社員」と呼ばれることもあります。

契約社員のボーナス、正社員との差は年間100万円超

一般的に、契約社員にボーナスを支給する企業は多くありません。もちろん、中には契約社員にもボーナスを支給する企業もありますが、支給額が正社員より少なかったり、業績に応じて数万円程度の「一時金」「金一封」などが支給されたりするケースが多いようです。

実際、厚生労働省が2019年3月に発表した「平成30年賃金構造基本統計調査」によると、企業規模10人以上の民間企業で働く大学・大学院卒の正社員・正職員に支払われたボーナスの平均は年間約141万円、一方、同じ大学・大学院卒でも「正社員・正職員以外」の労働者に支払われたボーナスの平均は年間約36万4,500円に留まっていることがわかりました。その差は実に100万円を超えています。

【参考】平成30年賃金構造基本統計調査(厚生労働省) 詳しくはこちら

なお、契約社員のみならず正社員にもボーナスを支給しない会社もありますが、どちらも原則として違法ではありません。なぜなら、ボーナスは労働の対価として労働基準法で支払いが義務づけられている「賃金」ではないため、ボーナスの制度を導入すること自体が企業の任意によるものだからです。ただし、「ボーナスを支払う」旨が契約書や就業規則に明記されているのに、支払われなかった場合は、契約違反として企業側を訴えることもできます。

契約社員にはメリットも。契約社員に向いているのはこんな人

契約社員にはメリットも。契約社員に向いているのはこんな人

ボーナスの支給額は正社員を下回ることが多い契約社員ですが、契約社員として働くメリットもあります。契約社員の主なメリット・デメリットは次のとおりです。

契約社員のメリット

・スキルを生かして働きやすい
特定のスキルや資格を持つ人は確実に自分の能力が生かせる部署に配属される可能性が高く、給与面などでも優遇される可能性があります。


・勤務時間の融通がききやすい
採用時に交渉すれば、自己都合に応じた勤務時間で契約できる可能性があります。夜間は大学に通いたい人や保育園のお迎えにいかねばならない人など、何らかの事情で時短勤務を希望する人は契約社員として働くことを検討してもよいでしょう。

・転勤の可能性が低い
契約社員は契約上、勤務地が限定されているケースがほとんどであり、転勤の可能性はまずありません。

・人間関係に巻き込まれにくい
正社員のように定年まで同じ企業で働くことが前提ではないので、社内の複雑な人間関係や派閥争いなどに巻き込まれにくいのも契約社員のメリットです。

・副業ができる
契約社員に副業を禁じる企業は多くありません。禁止されていない企業を選べば、副業で収入を増やすことができます。

契約社員のデメリット

・契約が更新されないケースがある
契約社員は有期労働契約に基づいて雇用されているため、契約期間が終わって契約が更新されなければ、その企業で働き続けることはできません。

・給与やボーナスが正社員よりも低い
同じ仕事をしても、給与やボーナスが正社員よりも低い傾向にあります。

・退職金がない
契約社員には退職金がないケースがほとんどです。

・出世できない
実力や仕事の成果が認められれば、契約社員でも給与面に反映される可能性はありますが、昇進はないと考えた方がいいでしょう。

・福利厚生が充実していない
正社員に認められている福利厚生が契約社員には認められていないケースがあります。

デメリットもある契約社員ですが、出世や昇進にこだわらず自分のスキルを存分に生かして専門的な仕事を続けたい人、個人的な事情で時短勤務をしたい人、いろいろな仕事や職場を経験してみたい人は、契約社員で働くことが向いていると言えるでしょう。

「こんなはずじゃなかった!」を防ぐために、チェックすべきポイントは?

「こんなはずじゃなかった!」を防ぐために、チェックすべきポイントは?

デメリットを理解せずに契約社員として働き始めてしまうと、予想外の待遇の悪さに「こんなはずじゃなかった」と後悔することになりかねません。特にボーナスが支給されると思って「ボーナス払い」で買い物をしてしまったり、ボーナス加算のローンを契約したりすると大変なことになってしまいます。
契約時には労働条件を必ず確認し、納得できない点があれば自分の要望や意見を必ず先方に伝えましょう。それでも条件が変わらないようであれば、契約を見送るほうが賢明です。契約締結前に必ずチェックしておきたいのは、以下の点です。

給与形態

当たり前のことですが、賃金がどのように計算され、支払われるのかは必ず確認しましょう。求人票などに「月給●●円」ではなく、「月収●●円も可能」などと書かれている場合は、インセンティブを含んだ額である場合が多いので注意しましょう。

ボーナスの有無

ボーナスがある場合は、支給額の目安を確認しておきましょう。また、就業規則等に「業績不振など事情によっては支払わないことがある」旨が書いてあるケースもあるので、必ず確認してください。

労働時間や休日

時短勤務を希望する場合など、都合に合わせて働きたい場合は事前に交渉を。残業手当の支給条件や金額も確認しておきましょう。

社会保険

「社会保険完備」と書かれている場合は、雇用保険・労災保険・健康保険・厚生年金保険のすべてに加入していることを指します。単に「社会保険あり」の場合は、上記4つすべてに加入していない可能性があるので確認しましょう。

役職/部署名

最近は横文字の役職や部署が増え、具体的に何をしている部署なのか外部の人にはわかりにくいケースもあります。自分のスキルとのミスマッチを防ぐためにも、必ず具体的な業務内容を確認しておきましょう。

ボーナスがない契約社員が収入を増やす方法

ボーナスがない契約社員が収入を増やす方法

ここまでみてきたとおり、契約社員にはボーナスがない場合が多く、ボーナスがあっても正社員に比べて少額であることがほとんどです。また、契約内容が更新されない限り、昇給も望めません。では、契約社員として働いている限り、収入を増やすことはできないのでしょうか。

いいえ、そんなことはありません。契約社員でもその気になれば、例えば次のような方法で収入を増やすことができます。

スキルアップする

仕事に生かせる資格や免許を取る、語学力を磨くなどしてスキルアップを図りましょう。そして人事担当者に目に見える形で成果をアピールし、給与の増額など待遇の向上を交渉しましょう。

副業をする

契約社員のメリットのひとつは副業ができること(勤務先で禁止されている場合を除く)。特技や趣味を生かして週末起業をする、アルバイトをするなど、様々な選択肢があります。

より条件の良い職場に転職する

契約期間が終われば後腐れなく次の職場に移れるのも契約社員のメリットのひとつです。在職中から常にアンテナを張って、よりよい条件で働ける職場を探しておきましょう。正社員を視野に転職活動をするのも一案です。

2020年導入の「同一労働同一賃金制度」についても知っておこう

2020年導入の「同一労働同一賃金制度」についても知っておこう

そして、現在契約社員として働いている人、これから契約社員として働こうとしている人に、ぜひ知っておいてほしいのが、2020年4月1日から施行される「同一労働同一賃金制度」です。

この制度は、同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指して制定されたもので、どのような雇用形態を選択しても納得できる処遇を受けられ、多様な働き方を自由に選択できるようにすることが狙いです。
これまで、「正社員と同じくらいがんばってきたのに、給与はずっと低いまま」「正社員よりも頑張ったのに、ボーナス(賞与)がない」のが当たり前だった契約社員はじめ非正規雇用の労働者にとって、この制度の導入は待ちに待った明るいニュースだといえるでしょう。

この制度が浸透すれば、正規雇用以外の就労を選ぶ人が増え、より多くの人が自由に働き方を選べるようになると思われます。もちろん、制度が浸透するには時間がかかると思われますが、もし今、あなたが契約社員として働いていて正社員との待遇格差に疑問を感じているようであれば、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)に相談をすることができます。

【参考】厚生労働省「都道府県労働局雇用環境・均等部(室)」 詳しくはこちら

まとめ

契約社員はボーナスを支給されないことが多く、支給されたとしても正社員よりも低額であることがほとんどです。2020年4月1日からは同一労働同一賃金制度が導入され、契約社員はじめ非正規労働者の待遇向上も望める可能性が高くなっています。誰もが自分にとって最適な働き方を選ぶことができる社会の実現に向けて、企業側・労働者側ともに従来の雇用関係を見直すべき時が来ています。

三菱UFJ信託銀行「50歳からのライフパートナー宣言」
ご留意事項
  • 本稿に掲載の情報は、ライフプランや資産形成等に関する情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の取得・勧誘を目的としたものではありません。
  • 本稿に掲載の情報は、執筆者の個人的見解であり、三菱UFJ信託銀行の見解を示すものではありません。
  • 本稿に掲載の情報は執筆時点のものです。また、本稿は執筆者が各種の信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性について執筆者及び三菱UFJ信託銀行が保証するものではありません。
  • 本稿に掲載の情報を利用したことにより発生するいかなる費用または損害等について、三菱UFJ信託銀行は一切責任を負いません。
  • 本稿に掲載の情報に関するご質問には執筆者及び三菱UFJ信託銀行はお答えできませんので、あらかじめご了承ください。

RANKING

この記事もおすすめ