パートでもボーナスはもらえる?もらった場合の注意点は?

パートで働いている人の中には、正社員と同じくらいの業務をこなしているのに「パートだから」という理由でボーナスがもらえないことに疑問をもっている方も多いかもしれません。パートでいる限り、ボーナスはもらえないものなのでしょうか?パートがボーナスをもらった場合の注意点も併せて解説します。

パートでもボーナスはもらえる?もらった場合の注意点は?

パートでもボーナスがもらえるケースも!ただし金額は正社員より少なめ

パートでもボーナスがもらえるケースも!ただし金額は正社員より少なめ

パートは正式には「短時間労働者(パートタイム労働者)」と呼ばれ、2019年現在、全国で約2,165万人(雇用者全体の約4割)がパートとして働いています。パートの雇用条件などを定めた「パートタイム労働法」(正式名称:短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)では、パートについて「一週間の所定労働時間が、同一の事業所に雇用される通常の労働者の一週間の所定労働時間に比べて短い労働者」と定義しており、「パート」「アルバイト」「嘱託」「契約社員」「臨時社員」「準社員」など、呼び方は異なっても、この条件に当てはまる労働者であれば、「パートタイム労働者」としてパートタイム労働法の対象となります。

※2020年4月1日からは、法改正に伴い、法律の名称が「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(いわゆる「パートタイム・有期雇用労働法」)に変更されます。

ボーナスが出る場合はどれぐらいもらえる?

正社員にボーナスが支給される職場でもパートにはボーナスが支給されないケースがほとんどです。支給される場合も、パートのボーナスは正社員に比べて少額であることが多く、「報奨金」や「寸志」といった名目で数万円が給付されるケースもよく見られます。
実際、厚生労働省の「平成30年賃金構造基本統計調査」では、企業規模10人以上の民間企業で働く大学・大学院卒の正社員・正職員のボーナスの平均額が年間約141万円だったのに対し、正社員・正職員以外の労働者のボーナスの平均額は100万円以上少ない約36万4,500円でした。

【参考】厚生労働省「平成30年賃金構造基本統計調査」 詳しくはこちら

パートにボーナスを支給しないのは違法?

パートにボーナスを支給しないのは違法?

では、パートがボーナスをもらえないのは、仕方がないことなのでしょうか?
労働基準法上は、企業がパートにボーナスを支払わないことは違法ではありません。というのも、ボーナスは労働の対価として支払われる「賃金」ではないため、そもそも企業にはボーナスを支払う法的義務はないからです。中にはパートのみならず、正社員にもボーナスを支払わないこととしている企業もあります。

ただし、就業規則や労働契約、求人広告等で「ボーナス(賞与)あり」と謳っているにも関わらず、ボーナスが支払われない場合は会社側に支払いを請求することができます。労働基準法では、常時10人以上の従業員を雇用している事業主に就業規則の作成と届け出を義務付けておあり、正社員、パートなど雇用形態の異なる従業員を雇用している場合は、雇用形態ごとの就業規則を作成している企業も少なくありません。パート先の企業の就業規則ではボーナスについてどのように規定されているか、確認してみるとよいでしょう。

「同一労働同一賃金制度」スタート。パートにもボーナスが支給されるようになるかも!

「同一労働同一賃金制度」スタート。パートにもボーナスが支給されるようになるかも!

パートを含む非正規雇用の労働者はボーナスだけでなく、給与や福利厚生面でも、正社員ほど優遇されないケースがほとんどです。こういった不合理な待遇格差のために就労を躊躇したり、就労意欲を削がれたりした人も多いのではないでしょうか。近年は、労働力不足が懸念され、より多様な働き方が求められるようになったこともあり、こういった不合理な格差の解消を求める声が高まっています。

そこで政府は、同一企業・団体内での正規雇用労働者(正社員)と非正規雇用労働者(パートや契約社員など)の間の不合理な待遇差の解消を目指して同一労働同一賃金のガイドラインを制定、このガイドラインの内容を盛り込んだ「パートタイム・有期雇用労働法」(正式名称:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)が2020年4月1日から施行されることになりました(中小企業は2021年4月1日~)。

同法が施行されると、正規雇用労働者と非正規雇用労働者間で、基本給やボーナス(賞与)について不合理な待遇差を設けることが禁止されるほか、待遇差がある場合はその理由を説明することが企業側に義務付けられることになっています。つまり、これからは正社員と同等の働きが認められれば、パートにも正社員並のボーナスが支給される可能性が大きくなったということです。

ボーナスをもらった場合はここに注意!

ボーナスをもらった場合はここに注意!

不合理な格差が解消され、パートにもボーナスが支給されるようになること自体は喜ばしいことですが、ボーナスの支給によるデメリットも考えられます。
特に注意しなければならないのは、ボーナスをもらって年収が増えた場合、扶養内で働くことができなくなる可能性、もしくは配偶者控除や配偶者特別控除を受けられなくなる可能性があるということです。

注意点1.年収が一定額を超えると配偶者控除などが受けられなくなる
年収が103万円を超えると配偶者控除が、201万円を超えると配偶者特別控除が受けられなくなります。

注意点2.年収が130万円を超えると、配偶者の社会保障の扶養から外れる
年収が130万円を超えると、納税者の社会保障の扶養から外れてしまい、自身で保険料や年金を負担しなくてはならなくなるため、結果として年収が130万円以下の時よりも手取り収入が減ってしまう可能性があります。

ボーナスをもらうことによって、上記の上限額を超える可能性がある人は、ボーナスをもらうメリットと扶養や控除のメリットとをよく比較検討しておく必要があります。どちらが得なのか判断が難しい場合は、ファイナンシャル・プランナーや社会保険労務士などに相談し、ベストな選択ができるようにしましょう。

まとめ

パートを始めとした非正規労働者にはボーナスが支給されないことが多く、支給されたとしても正社員よりも少額であることがほとんどです。しかし、2020年4月1日からは正規労働者と非正規労働者との間の不合理な待遇格差解消を目指した「同一労働同一賃金」が導入されるので、パートでも正社員と同様の働きが認められれば、ボーナスが支給される可能性が出てきました。ただし、ボーナスをもらうことによって収入が増えると、配偶者控除や配偶者特別控除が受けられなくなったり、配偶者の社会保障の扶養から外れてしまったりするおそれもあるので、注意が必要です。

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