おひとりさまで老後を過ごす方は備えが重要!資金や住まいの考え方を解説

生涯結婚しない人の数が増え、一人で老後を迎える人は多くなると予想されています。この記事では、おひとりさまの老後に備えが必要な理由と備え方を解説します。おひとりさまで老後を過ごすためには、資金や住まい、介護問題、孤独感など、さまざまや観点で備えが重要です。

おひとりさまで老後を過ごす方は備えが重要!資金や住まいの考え方を解説

おひとりさまの老後に備えが必要な理由

おひとりさまの老後に備えが必要な理由

2023年に厚生労働省から発表された「50歳時点で一度も結婚をしたことのない人の割合」は、男性が28.3%、女性が17.8%と年々増加しており、今後もその数値は上がっていくのではないかと予想されています。

結婚をしない人が増えるということは、一人で老後を迎える人が増えることにも繋がります。ここではいずれくるであろう、おひとりさまの老後に備えが必要な理由について解説します。

【参考】厚生労働省「令和5年版厚生労働白書 図表1-1-2 50歳時の未婚割合の推移」詳しくはこちら

老後に必要な資金を把握するのは難しいから

おひとりさまは老後も含め、すべての生活に必要な資金を自分自身でまかなっていく必要があります。
しかし、自分がいつまで生きるのかは分かりませんし、生きていくうえでは、突然病気になることもあれば、介護が必要な状態になることも考えられるでしょう。

実際に年齢が上がるにつれ、介護が必要となる人の割合は増加傾向にあり、特に女性は年齢が上がると共に、介護予防サービスおよび介護サービスを受給する人の割合が急激に増加していることが分かります。

おひとりさまの老後に備えが必要な理由

※厚生労働省「令和4年度 介護給付費等実態統計の概況 受給者の状況 」より執筆者作成

老後に必要な資金を前もって把握するのは非常に困難であり、若いうちから計画的に資金計画を立てておくことは欠かせません。

老後の住まいの選択肢から最適なものを考える必要があるから

おひとりさまに限った話ではありませんが、老後の住まいの選択肢として以下の4つが挙げられます。

・賃貸
・持ち家
・介護保険施設(介護老人保健施設や介護老人福祉施設など)
・民間法人が運営する施設(ケアハウスや養護老人ホームなど)

老後の住まいには、それぞれにメリットやデメリットがあります。
お金の面でみると賃貸は一生家賃を支払い続ける必要があるほか、持ち家は家の老朽化に伴うメンテナンス費用や固定資産税の支払いが生じます。
一方で、施設に入居するにしても介護保険施設は入居条件が厳しく、身元保証人がいないおひとりさまが入居するにはハードルが高いといえるでしょう。

このように、おひとりさまの場合は早いうちから老後の住まいについて考えておき、それに応じて必要な資金も生活費と別に貯蓄しておく必要があります。

いつ介護や入院が必要になるか分からないから

おひとりさまの場合、介護してくれる配偶者や子供がいないことに加え、自分も歳を取る中で周囲の友人にサポートをお願いすることも次第に難しくなる可能性が考えられます。
例えば、足や腰を悪くして日常の動作に不便が生じれば、買い物や通院も難しくなるでしょうし、排泄や入浴などが困難になるかもしれません。
そのような時、適切なサポートを受けられるように早いうちから調べておくことが大切です。

交流が少なくなり孤独死のリスクが高まるから

特に家族や配偶者がいないおひとりさまは、孤独死のリスクが高い傾向にあります。その理由として、主に以下の4つが挙げられるでしょう。

1.高齢になるにつれ人間関係が希薄化する
2.退職後の収入減少、医療費の増加から経済的に困窮しやすい
3.加齢に伴う病気やケガによって人との交流が制限される
4.地域社会との関わりが希薄化し、周囲が異変に気づきにくい

老後の孤立を防ぐためにも、適切な孤独死対策を講じておくほか、周囲とのコミュニティを意識的に形成しておくことが欠かせません。経済力が不足していると余裕のある生活が送れず、これらの行動を起こしづらくなってしまうため、早期から資産形成に努めることを意識しましょう。

おひとりさまの老後資金の備え方

おひとりさまの老後資金の備え方

おひとりさまに限らずとも、老後生活をするうえで大切になるのが資金です。
特に一人の場合は資金源が自分だけであるため、若いうちから資金繰りを上手に行うことが大切です。

おひとりさまの老後に必要な資金を把握する

おひとりさまの老後に備える際、必要な資金の目安を把握することが重要です。男女ともに平均寿命が80歳を超えている昨今、90歳まで余裕をもって生活費を考慮する必要もあるでしょう。

総務省統計局が2023年に公表した「家計調査報告[家計収支編]」によれば、一人暮らし世帯(65歳以上の単身無職世帯)の1ヶ月の消費支出は平均14万3139円(年間171万1,668円)となっています。
とはいえ、介護が必要になれば施設入所にお金がかかるほか、医療費も高齢期には増加する傾向にあります。また、単身高齢者の場合、家族の支えが期待できないため、自身の貯金でカバーしなければなりません。ゆとりをもって少し多めに必要な資金を見積もることをおすすめします。

【参考】総務省統計局「家計調査報告[家計収支編](2023年)」詳しくはこちら

年金や退職金など老後の収入を把握する

老後の収入は、年金や退職金が考えられますが、老後にどのくらいの収入が得られるのかを把握することが重要です。
厚生年金が受給できる人であればともかく、国民年金のみしか受給できない場合は注意が必要です。

国民年金は毎月約6.6万円支払われますが、先ほどの1ヶ月間の消費支出とあわせて考えると、毎月10万円が不足する計算になってしまいます。
後述するiDeCo(イデコ)などの私的年金を利用するほか、厚生年金を払っている人も必要に応じて確定拠出年金や付加年金を検討するとよいでしょう。

不足分は資産運用を検討する

老後に必要な資金に対して、想定できる収入ではまかなえない場合、不足分を補う必要があります。
しかし低金利時代のいま、普通預金に預けておくだけでは資金を効率的に増やすことはできないでしょう。
そこで、資産運用を検討し、老後資金を準備するのも1つの手です。初心者でも取り組みやすい方法として、投資信託や債券のほか、iDeCo (イデコ)やNISA(ニーサ)などの制度を活用する方法が挙げられます。

おひとりさまの老後の住まいの備え方

おひとりさまの老後の住まいの備え方

おひとりさまの老後の住まいには、持ち家か賃貸かによってメリットデメリットがあります。また、ライフスタイルの変化や介護が必要になった場合も想定して、自分に合った住まいを選択しましょう。

持ち家がいいのか?賃貸がいいのか?

持ち家の場合、老後で収入がなくなった時でも、それまでにローンの支払いが完了していれば家賃を支払う必要がありません。歳を重ね身体機能が低下することによって、間取りや段差、設備に不自由が出てきたら、バリアフリーにするなどリフォームが自由にできる、というメリットもあります。

ただ、持ち家には固定資産税がかかり、定期的にメンテナンスをする必要があります。家の近隣に商業施設や病院がなければ、住環境に不便を感じる恐れがあるでしょう。


一方で賃貸の場合、ライフスタイルに応じて住み替えがしやすい点や、住宅ローンの返済や修繕費などの捻出を考える必要がない点がメリットです。
ただし、賃貸に住み続ける限り家賃の負担が生じることに加え、大家がおひとりさまの高齢者への物件契約を渋るリスクがあります。おひとりさまが老後の住まいとして賃貸物件を借りる場合、保証人探しに苦労する点が最大のデメリットといえます。

マンションがいいのか?戸建てがいいのか?

マンションの場合、室内がフラットで高齢になっても暮らしやすい点や、居住者同士でコミュニケーションを取りやすいことから、老後に孤立するリスクを抑えられる点がメリットとして挙げられます。
しかし、騒音トラブルが生じやすいことや、自由にリフォームができないといったデメリットが考えられるでしょう。

一方で戸建てのメリットは、間取りの自由度が高いことや管理費や修繕積立て金の出費がないことが挙げられます。ただし、建物の維持管理にまとまった費用が必要となるほか、平屋ではなく2階建ての場合には階段の上り下りが年を取るにつれて負担となる恐れがあるでしょう。

マンションも戸建ても、価格や税金、立地や好みなどさまざまな点でメリットとデメリットが異なるため、一概にどちらがいいといった結論を出すことは困難です。両者の特徴をきちんと比較検討したうえで、自身が将来的に住みたいと思うのはどちらなのかといった観点で検討することをおすすめします。

老人ホームにもさまざまなタイプがある

ひと言で老人ホームといっても「公的施設」と「民間施設」の2種類に大別されるほか、介護度や費用、認知症の有無によってさまざまなタイプに分けられます。
一般的に公的施設は、入居金がかからず月額相場も安いものが多いです。
民間施設の老人ホームは、施設によって数百万円の入居金に加え、月額相場も高く設定されている傾向にあります。また、おひとりさまの高齢者が身元保証人がいないことを理由に、介護施設や病院への入所・入院を断れるケースは後を絶ちません。おひとりさまの場合、検討している施設の入所条件を確認しておくほか、身元保証サービスを利用することもあわせて検討する必要があるでしょう。

おひとりさまの老後の介護問題への備え方

おひとりさまの老後の介護問題への備え方

老後におひとりさまが介護が必要になった場合に受けられるサービスは、主に以下の通りです。

・訪問介護
・デイサービス
・短期入所生活介護(ショートステイ)
・介護施設への入所

介護サービスは、特徴や利用条件、料金が異なり、利用者の所得や介護度合いによっても金額が変動します。ここでは介護施設への入所以外の3項目について、それぞれ解説します。

訪問介護

訪問介護は、介護が必要な高齢者や障がい者の自宅を訪問し、入浴、排せつ、食事などの日常生活の世話を行うサービスです。
自立支援を目指しながら、自宅で安心して過ごせるのが訪問介護の大きなメリットといえるでしょう。
また、事業所によっては通院などを目的として乗車や移送、降車などの介助サービスを提供しているところもあります。

デイサービス

デイサービスは、自宅で生活している高齢者や障がい者が、通所して各種のサービスを利用できる施設のことです。
デイサービス施設では、入浴、食事、レクリエーションなどのサービスを日中利用できます。
通所によって、家に閉じこもりがちな高齢者が外出する機会ができるほか、生活のリズムづくりにも役立つでしょう。

短期入所生活介護(ショートステイ)

短期入所介護(ショートステイ)は、在宅介護を受けている要介護者が短期間だけ介護施設に入所する介護サービスのことです。
短期入所介護は、1日単位で利用できるものが多いです。
また、介護保険が適用されると「介護保険適用のショートステイ」が利用できるほか、要支援・要介護認定を受けている人以外でも「介護保険適用外のショートステイ」が利用できます。

おひとりさまの老後の孤独感への備え方

おひとりさまの老後の孤独感への備え方

老後に家の中にずっと一人でいると、精神的に落ち込んでしまうこともあるでしょう。
人と交流することや趣味やボランティアに打ち込むことは、おひとりさまの老後の生活によい刺激となるでしょう。

趣味のコミュニティに入る

スポーツや絵画教室、音楽サークルなどの趣味のコミュニティに入れば、自分と共通の趣味をもっている仲間に出会うことができます。
コミュニティでの活動を通して、趣味を楽しみながら気の合う友達ができるでしょう。
地域の公共施設や体育館などでは、定期的な教室やサークルの会合が行われています。自分の生活スタイルの中に組み入れることで、長く続けることにも繋がります。

地域の集まりやボランティア活動に参加する

全国各地にある福祉協議会などのボランティアセンターでは、ボランティアの参加受付や相談を随時受け付けています。
地域のイベントや環境・福祉・教育などのさまざまなボランティア活動に参加することで、幅広い年代の人たちと触れ合うことができるでしょう。

また、ボランティアセンターでは地域に密接した情報交換も行われていたり、場所によってはボランティア体験プログラムを用意していたりするところもあります。まずはどんなボランティア活動があるのか、相談に行ってみてはいかがでしょうか。

まとめ

おひとりさまが老後に不安なく生活するためには、資金と健康管理、そして社会から孤立しないように周囲とコミュニティを築くことが大切です。
病気になる可能性や介護が必要となる場合についても考えたうえで「おひとりさまの老後」にどの程度の資金がいるのかを把握し、不足分は資産運用でまかなうのも選択肢の1つです。

老後の資金のための資産運用は、比較的リスクが低いとされる投資信託をはじめ、投資初心者でも始めやすいiDeCoやNISAなどの制度がおすすめです。
少しでも早いうちから老後の対策を始めると共に、日々前向きな生活を送りましょう。

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