資産運用の理想の利回りは?リスクとリターンを考えて投資先を選ぼう
資産運用で重要な指標となる「利回り」は、投資元本に対して得られた利益の割合のことです。本記事では、利回りの計算方法や目安、資産運用で安定した利益を得るためのポイントなどを解説します。分散投資や長期投資を意識しながら、NISAやiDeCoを活用して、将来に向けた資産形成を始めていきましょう。
目次
資産運用の利回りの目安
利回りの基本的な計算方法は、次の通りです。
※実際は税金や手数料などを収益から差し引く必要があります
※詳細な計算方法は投資対象によって異なります
例えば、配当金と売却益の合計が80万円、運用期間が2年、投資金額が1,000万円である場合、利回りは「80万円÷2年間÷1,000万円×100=4%」となります。
資産運用の利回りは、年3〜5%が目安といわれています。この目安を基準として、資産状況や運用の目的、自分自身が受け入れられる損失の規模などをもとに、いくらの利回りを狙うのかを決めるとよいでしょう。
なお「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」は、2001〜2022年度までの年金積立金の名目の運用利回りが、年平均で3.60%であると発表しています。
【参考】年金積立金管理運用独立行政法人「年金積立金の運用目標」詳しくはこちら
GPIFは、日本の厚生年金と国民年金の積立金を管理・運用する独立行政法人です。年金事業を行っていくうえで必要な利回りを、最低限のリスクで確保することを目標として、年金の積立金を運用しています。
このことからも、リスクを抑えた堅実な運用をする場合は、年3%程度の利回りが目安と考えられます。
リスクとリターンの関係性
リスクとは、運用の成果が不確実なことや値動きの振れ幅のことを差します。一方のリターンとは、運用によって得られる収益のことです。
リスクとリターンは、表裏一体の関係にあります。リスクが大きい投資は、大きなリターンが期待できる一方で、大きな損失が発生することもあります。(ハイリスク・ハイリターン)
反対にリスクが小さい投資であれば、大きなリターンは期待できませんが、損失が発生したとしても小規模で済むでしょう。(ローリスク・ローリターン)
投資は、基本的にリスクをともないます。そして、ローリスク・ハイリターンの投資というのは、基本的に存在しません。高い利回りが期待できる投資は、同時に多額の損失が発生する可能性があるということを押さえておきましょう。
自分の運用利回りを決める基準
自分自身の運用利回りを決める時は、以下を基準にするとよいでしょう。
・何のために使うお金なのか(目的)
・いつまでにいくらまで増やしたいのか(目標)
・損失はいくらまで耐えられるか(リスク許容度)
1つずつ解説していきます。
何のために使うお金なのか(目的)
結婚や出産、子供の進学、マイホームの購入、老後生活など、人生におけるライフイベントを迎える時は、まとまったお金が必要になることがあります。
「老後の生活資金を準備したい」「子供が大学へ進学する時の資金を準備したい」など、資産運用をする目的は人それぞれです。
まずは、何のために資産運用をするのかを考えてみましょう。運用目的を考えることで、目標金額や運用に充てられる期間がより明確になり、利回りを決める基準とすることができます。
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いつまでにいくらまで増やしたいのか(目標)
続いて、資産運用をする目的をもとに、いくらの金額をいつまでに準備したいのかを決めましょう。
例えば、運用目的が「老後生活を送るための資金を準備すること」であるとしましょう。
この場合、老後生活における支出(生活費・医療費など)から、想定される収入(年金・退職金など)を引いた残りが目標金額であると考えられます。運用に充てられる期間は、老後生活を迎えるまでの残り年数を目安に決めます。
子供の進学資金を準備するために資産運用をする場合、目標金額は進学時に支払う入学金や授業料などをもとに決めるとよいでしょう。運用期間は、子供が進学するまでの残りの期間と考えられます。
目標金額が明確であれば、それまでの期間と元手の資金を基準に利回りを決めることができるでしょう。
損失はいくらまで耐えられるか(リスク許容度)
リスク許容度は、どの程度の損失まで受け入れられるのかを表します。
自分自身が受け入れられないほどのリスクがある方法で運用をしてしまうと、損失が発生した時に精神的に追い詰められてしまうかもしれません。
反対に、リスクが低すぎる方法で運用をすると、資産が増えていかず目標とする金額を準備できない可能性があります。
そのため、運用方法を選ぶ時は、自分自身のリスク許容度を考えることが重要です。
リスクの許容度は「収入や資産額」「投資経験」「今後のライフイベント」「自分自身の性格」など、さまざまな要素で異なります。
例えば投資経験が豊富な人やリスクを取ってでも積極的に資産を増やしたい人は、リスク許容度が高いといえるでしょう。
反対に、投資経験が浅い人やできるだけ損失を抱えたくない人は、リスク許容度が低いといえます。
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【投資先別】利回りの計算方法と影響する要素
期待できる利回りは、投資対象によって異なります。ここでは、投資対象ごとに目安となる利回りをご紹介します。
投資信託の利回り
投資信託は、投資家から集めた資金を1つにまとめて、国内外の株式や債券などで運用する仕組みの金融商品です。運用先は、資産運用のプロであるファンドマネージャーが選ぶため、投資の初心者でも始めやすいでしょう。
資金の運用先から利益を得られた時は、出資金額に応じた分配金を受け取れることがあります。投資信託の価格が、購入した時よりも上昇した時に売却をして、売却益を得ることも可能です。
利回りの計算方法は、以下の通りです。
投資信託の利回りは、販売手数料や商品を保有している期間に支払う信託報酬、解約(換金)時の信託財産留保額を含めて計算します。また、分配金や売却益に課税される約20%の税金も、得られた利益から差し引きます。
投資信託の場合、利回りは投資対象の資産(株式・債券・不動産など)や投資する国・地域などさまざまな要素で異なるため、一概にいくらというのは困難です。
一方で、投資対象が債券である投資信託よりも、株式が投資対象である投資信託の方が利回りは高い傾向にあります。
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株式投資の利回り
株式は、企業が資金を調達する際に発行する有価証券です。株式を保有していると、投資先の企業の利益の一部を配当金として受け取れることがあります。
また、投資した企業が成長し、株価が取得時よりも高くなっているタイミングで売却をすると売却益を得ることも可能です。
株式はハイリスク・ハイリターンの金融商品といわれており、将来的に値上がりが期待できる銘柄に投資ができれば、高い利回りが期待できます。
株式投資の利回りの計算方法は、以下の通りです。
利回りを計算する時は、証券会社ごとに定められた売買手数料や、受け取った配当金や売却益にかかる税金を考慮します。
株式投資の利回りは、株式を発行する企業の国・地域や規模、業績などで異なります。将来的に大きな成長が期待できる新興企業や、業績が安定しており配当金が多い企業に投資ができれば、10%を超える利回りを得ることも可能です。
また、1株あたりの年間配当金を現在の株価で割って求める「配当利回り」を、投資判断の材料とすることもあります。
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不動産投資の利回り
不動産投資は、マンションやアパートなどに投資をする方法です。不動産投資の主な収入源は、入居者から得られる家賃や共益費などです。また、取得した不動産を購入価格よりも高値で売却すると、大きな売却益を得られることがあります。
不動産投資の利回りには「表面利回り」と「実質利回り」があります。それぞれの計算方法は次の通りです。
表面利回りは、年間の家賃収入を物件価格で割って求める単純な利回りです。不動産ポータルサイトやチラシなどには、表面利回りが記載されています。
一方の実質利回りは、手数料や税金、保険料などの諸経費も考慮して算出します。物件に投資すべきか判断する時は、実質利回りを計算することが大切です。
不動産投資の利回りは、投資する物件の種類やエリアなどで大きく異なります。地方にある中古物件では、10%を超える利回りを得ることも可能です。
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債券(個人向け国債・社債)の利回り
債券は、国や企業が資金調達をするために発行する有価証券です。国が発行する「国債」と、企業が発行する「社債」の大きく2種類があります。
債券に投資をした人は、発行先の国や企業などにお金を貸していることになり、定期的に利子を受け取ることができます。また、債券の満期(償還日)を迎えると、額面金額(債券の券面に記載されている金額)が払い戻される仕組みです。
債券の場合、利回りの計算方法は複数あります。すでに発行されている債券に投資をし、満期日まで保有した時の利回り(最終利回り)は、以下の計算式を用いて算出します。
※償還価格:債券の満期時に支払われる金額。額面金額と同じ
※購入価格:債券を買い付けた時の価格。「額面金額100円あたり100円」のように決まる
※買付価格:額面金額100円あたりの金額
※残存年数:取引日から債券の償還期日までの残りの期間
債券の発行元が破綻しない限り、利子の支払いと額面金額の払い戻しが約束されます。国や大企業などが発行する債券に投資をすると、安定的なリターンを得られるでしょう。
一方で、債券は一般的にローリスク・ローリターンといわれているため、ほかの投資方法と比較して利回りは低い傾向にあります。
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定期預金の利回り
定期預金とは、半年や1年間などの期間を決めてお金を預けることです。お金を預けている間は、定期的に利息を受けることができます。定期預金の利率は、大手都市銀行で年0.001〜0.002%ほどです。
定期預金で預け入れた金額を投資金額、預入期間を運用期間とするのであれば、利回りは次の計算式で算出できると考えられます。
昨今の日本は歴史的な低金利であり、定期預金に預けていても利息収入はあまり期待できないため、利回りは低い傾向にあります。資産を運用して増やしていくためには、株式や債券、投資信託などにも投資をした方がよいでしょう。
その一方で、定期預金には「預金保険制度」による元本保証があります。定期預金を利用している金融機関が経営破綻した時、預金者一人につき元本1,000万円までと破綻日までの利息が保証されます。
そのため「入院や転職などの緊急事態に備えた予備資金」や「マイホームの購入資金や子供の進学資金など近い将来に使う予定のあるお金」は定期預金に預けておくのも方法です。
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利回り以外に資産運用で重要なポイント
資産運用で重視すべきポイントは利回りだけではありません。以下の点も意識することで、より安定した利益を得やすくなります。
・分散投資でリスクを抑える
・長期・積立で複利効果を活用する
・手数料で損をしないか確認する
・NISAやiDeCoの非課税制度を活用する
1つずつ解説します。
分散投資でリスクを抑える
投資には「卵は1つのカゴに盛るな」という格言があります。これは、分散投資の重要性を説いている格言です。
卵を1つのカゴに盛ると、そのカゴを落とした時に卵の全てが割れてしまう可能性があります。一方、卵を複数のカゴに分けていれていれば、1つのカゴを落としたとしても、すべての卵が割れてしまう心配はありません。
投資においても同様に、1つの投資対象に集中投資をすると、その投資先の価格が下落した時に保有資産の全体が大幅に減ってしまいかねません。
その点、複数の投資対象に分散投資をしていれば、1つの投資対象が値下がりしても、ほかの投資先の価格が維持されていれば保有資産の大幅な減少を防ぐことが可能です。
資産運用をする時は、株式や債券、不動産といった値動きが異なる資産に分散投資をするとよいでしょう。少ない金額で分散投資をしたい時は、投資信託を活用するのも方法です。
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長期・積立で複利効果を活用する
長期・積立投資を心がけることで複利効果が働きやすくなります。複利効果とは、投資で得られた利益を再投資することで、利益がさらに利益を生み資産が雪だるま式に膨れ上がっていく効果のことです。
例えば、毎月5万円を積み立てるとしましょう。想定利回りが年3%である場合、積立期間が5年と20年とでは最終的な積立金額は以下の通りとなります。
・積立期間5年:約323.2万円(元本:300万円・運用収益:約23.2万円)
・積立期間20年:約1,641.5万円(元本:1,200万円・運用収益:約441.5万円)
積立期間が5年である場合、運用収益は23.2万円、最終積立金額は323.2万円となりました。一方、積立期間が20年になると運用収益は約441.5万円となり、積立期間が5年の時と比較して約19倍に増えます。最終的な積立金額は1641.5万円に達します。
短期間で資金を一括で投資をすると、高い収益を狙える反面、投資対象の価格が下がった時に大きな損失が発生するかもしれません。長期・積立投資であれば、損失が発生するリスクを抑えながらも、複利効果による安定的な運用が可能となります。
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手数料や税金などで損をしないか確認する
資産運用では、基本的に手数料がかかります。例えば投資信託は、商品を保有している間、信託報酬を支払い続けなければなりません。商品によっては、買い付ける時に販売手数料がかかることもあります。
また不動産投資では、管理費や修繕費、損害保険料、固定資産税などさまざまな諸経費がかかります。諸経費がいくらかかるのかをよく確認せずに物件を購入してしまうと、想定外に支出がかかって赤字が発生してしまうかもしれません。
そのため、資産運用をする時は、手数料や税金などのコストを考慮して、いくらの利回りが期待できるのかを確認したうえで投資判断をすることが重要となります。銀行や信託銀行、証券会社、不動産会社などの専門家とも相談し、コストに見合うだけのリターンが得られるのかをよく確認しましょう。
NISAやiDeCoの非課税制度を活用する
株式投資や投資信託などの金融商品を運用して得られた利益には、20.315%の税金が課せられます。例えば、投資信託を売却して20万円の利益を得ると、課せられる税金の額は「20万円×20.315%=40,630円」です。
課せられた税金の分だけ、手元に残る金額は少なくなってしまうでしょう。そこで活用したいのが「NISA」や「iDeCo」といった運用益が非課税になる制度です。
NISA(少額投資非課税制度)は、毎年一定金額の新規投資で得られた利益に税金がかからなくなります。例えば、NISAの一種である「つみたてNISA」は、年間40万円の投資枠で購入した金融商品の利益に、最長20年間にわたって非課税となります。
iDeCoは、掛金を支払って老後の年金を自分自身で準備する制度です。拠出した掛金は投資信託や保険商品、定期預金で運用していきます。運用中に得られた分配金や利息などには税金がかかりません。
また、iDeCoでは、1年間で支払った掛金と同じ金額をその年の所得から控除することができます。
所得税や住民税は、基本的に1年間の合計所得金額に税率をかけて計算します。iDeCoの掛金が所得から控除されて、課税の対象となる所得が少なくなると、所得税や住民税の負担を軽減する効果が期待できます。
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高すぎる利回りは要注意!
高い利回りが期待できる投資は、短期間で資産を大きく増やせる可能性があります。しかし、その一方で大きな損失が発生する可能性があるため、利回りの高さだけで投資対象を選ぶのはおすすめできません。
例えば、将来的に成長が期待できるベンチャー企業の株式に投資をすると、高い利回りを得られる可能性があります。一方で、大企業と比較して経営基盤が軟弱であるため、リスクが高く元本割れが発生しやすいと考えられます。
不動産投資においては、地方にある中古アパートに投資をすると10%や20%の利回りを得ることも可能でしょう。しかし「想定よりも修繕費用が低下した」「入居者がなかなか決まらない」などの理由で、実質利回りが大幅に低下してしまうかもしれません。
高い利回りが期待できる投資は、基本的にリスクも高まります。利回りの高さだけではなく、受け入れられる損失の程度も考えて、自分自身に合った運用方法を慎重に検討することが大切です。
まとめ
利回りが高い投資は、大きなリターンが期待できる一方で、大きな損失も生じやすくなります。そのため、資産運用をする時は3〜5%程度の利回りを目安にするとよいでしょう。
また、分散投資によるリスクの軽減効果や長期・積立投資による複利効果も活用し、着実に資産を増やしていくことも、資産運用においては重要となります。
ご留意事項
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