長期投資とは?初心者向けに分散・積立ができる制度や手法も徹底解説

資産運用を上手に進めていくためには、「長期投資」が有効な手段の1つといわれています。長期投資のメリットやデメリットを踏まえたうえで長期投資を有効に活かす方法を解説します。具体的な長期投資の方法も紹介しているので、本記事を参考にしながら自分にあった資産形成を行いましょう。

長期投資とは?初心者向けに分散・積立ができる制度や手法も徹底解説

長期投資とは

長期投資とは

長期投資とは、長い時間をかけてじっくりと資産を増やす投資方法です。投資運用には、短時間で収益を狙う短期投資もありますが、それぞれの特徴を比較しながら、長期投資への理解を深めていきましょう。

長期投資の期間の目安

長期投資にかける時間に、明確な定義はありません。投資した運用商品の利益が大きくなる時期を目安にすることが多く、最低でも10年と一般的にいわれています。場合によっては、利益の増え幅が大きくなる20年~30年を長期投資ということもあります。

長期投資と短期投資の違い

長期投資と短期投資の大きな違いは、投資商品を購入してから売却するまでの期間と、利益を得る方法です。
長期投資は、将来の目的に合わせてお金をじっくり増やしていく考え方です。時間の余裕があるため価格の変動にも余裕をもって構えることができます。一方、短期投資で収益を出そうとする場合は、価格変動を常に注視する必要があり、一時的な値動きにも目配りが必要です。

長期投資 短期投資
投資期間 10年以上~ 数時間~数週間など
利益を得る方法 企業・社会経済の長期的な成長により投資対象の価値が上がることを目指す。価値が上がった運用資産を売却し、購入額と売却額の差で利益を得る。
株式投資では、配当金・株主優待といった形で企業から還元されることがある。
投資商品の購入額より価格が上がったタイミングで売却する。売却額と購入額の差額によって利益を得る。
購入から売却まで数時間から数日間で行うことが多い。
価格変動に対する構え 短期的な変動に一喜一憂せず、余裕をもって構えることができる。
長期的な価格推移をもとに投資計画を見直すことも重要。
刻々と変化する価格に注視し、一時的な変動に機敏な取引をする必要がある。

長期投資は初心者にもおすすめ

長期投資は、投資初心者にもおすすめの方法だといわれています。長期投資は、少額から始められる、短期的な損得にメンタルが左右されないなど、精神的に負担の少ない投資方法です。そのため、まず投資を始めてみて、実際に自分で運用をすることで、経験から投資を学ぶことができます。一方、短期投資は価格変動から取引の判断を行いますので、投資に慣れていない初心者にとって難しい方法だと考えられます。

長期投資のメリット

長期投資のメリット

では、長期投資のメリットをみていきましょう。

「複利効果」で効率的に資産を増やせる

長期投資は「複利」の効果によりお金が増えていきます。複利では、運用で得た利益を運用額に加えます。運用する金額を「元本」と呼び、この元本に利益が次々と足されていきます。利益を加えた新しい元本として運用されることで、元本も利益も増えていきます。複利は「雪だるま式」と表現されることもあり、最初は小さい金額でも運用期間が長くなればなるほど効果が大きくなります。

日常的に投資対象の価格を気にしなくていい

株式投資や外貨投資では、1日の中で急激に価格が上がったり下がったりすることがあります。一方、数十年単位で価格の動きをみると、価格の高低差は穏やかになり、大まかな傾向がみられるようにもなります。
長期投資は10年以上先をゴールとして値上がりを待つため、一時的な価格の変動に一喜一憂する必要はありません。長期投資は心の余裕を持った生活を送ることができます。

「積立投資」で自動的に投資を行える

積立投資は、同じ金融商品を定期的に一定金額で購入する投資方法です。毎日・毎月など決まったタイミングで自動的に金融商品を購入していくため、あまり手間をかけず投資を続けられます。また、1回の購入費は少額で済むので、大きな金額を準備しなくても始められます。

売買手数料があまりかからない

投資運用では、株式などの金融商品を売ったり買ったりすると、取引額に応じて手数料を支払う場合があります。短期投資では、頻繁に売買するため、その分売買手数料がかかります。一方、長期投資では、一度購入したものを長い間持ち続けるため、売買取引の回数が少なくて済みます。取引の回数が少ない分、売買手数料もあまりかかりません。

初心者でも始めやすい

投資に関する知識が少ない投資初心者の方でも、時間的余裕があるため落ち着いて長期的視点で実践から投資を学べます。時間をかけてお金を育てると共に投資経験を積むことで、生きた知恵となり投資判断力が養われます。また、少ない金額から始めることもできますので、慣れるまでは少額で試すことも可能です。

長期投資のデメリット

長期投資のデメリット

長期投資をしておけば、万全かというとそうではありません。デメリットも確認しておきましょう。

すぐに最終的な利益を確定できない

長期投資で成果を確定するのは、10年以上先にその投資対象の商品を売却した時です。時間をかけ気長に収益の結果を待つ必要があります。運用期間に配当などを受け取れる場合もありますが、最終的な売却で大きな損失が出ると、総合的にマイナスになることもあります。短期売買で結果を出したいという方には向いていないでしょう。

将来予測が難しい

投資期間が長ければ、投資環境に大きな影響を与える世界経済危機、金融危機、自然災害などさまざまな出来事に遭遇します。過去30年で高い値上がりを示している企業がある一方で1989年のバブル崩壊から株価が戻っていない企業も存在しています。

運用に手数料がかかる

投資運用では、運用している期間、つまり投資商品を保有している期間に手数料がかかるものがあります。支払う手数料は、投資商品や金融機関によって異なりますが、保有資産額に応じて支払額が決まります。投資商品を保有している期間が長くなるほど手数料を支払う期間が伸びますので、コストの総額が大きくなる傾向があります。

長期投資の重要な特徴

長期投資は、リスクを抑えて利益を得る方法だといわれます。その理由は長期投資の重要な特徴でもあります。ここでは、3つの特徴をみていきましょう。

複利効果

長期投資では複利効果で資産が雪だるま式に増えていきます。利息の付き方には、元本の金額が変わらない「単利」もあり、短期間では複利と単利の資産額に大きな差はありません。しかし、投資額や利率が同じであれば、保有する期間が長ければ長いほど、複利と単利の総資産額の差が大きくなります。

積立投資

「積立投資」では、定期的にコツコツ一定額投資することで、金融商品の価格が下がった時に多く購入し、上がった時は少しだけ購入します。この購入のしかたを長期で繰り返すと、購入価格は平均化されていきます。そのため、高額なタイミングで大量に購入してしまうことを避けられ、総合的にみると手間をかけずに平均的な価格で購入できるようになります。

資産配分

資産配分は「アセット・アロケーション」とも呼ばれ、複数の投資先にどのように資産を配分するかポートフォリオ上で決めることです。投資では、投資先を1つの対象に絞ると、投資先の価値が上がれば資産が大きく増える分、投資先の価値が下がってしまうと資産が大きく減ってしまいます。そこで、目指す利益を確保しつつ資産を守るために、債券・株式・不動産・金・外貨など投資先の組み合わせを検討する必要があるのです。

長期投資の始め方

長期投資の始め方

長期投資は比較的手軽に始められる投資方法ですが、事前準備をすると効果的に運用することができます。投資を始める前にするべきことを整理してみましょう。

投資の目的や目標を明確にする

投資を始める前に、まず投資の目的を明確にします。「お金を増やすこと」が主な目的だと思いますが、なかには「社会貢献をしたい」「経営者の立場に立って世の中を見たい」などさまざまな目的があるかもしれません。
また、「お金を増やすこと」の場合、「何のために・いくらを・いつまでに」を具体的に決めることが重要です。例えば、リタイア後の資金準備に3,000万円を65歳までに、教育資金として500万円を10年間で、というように決めていきます。

リスク許容度に合わせて投資方法を選ぶ

投資では金融商品の価格変動により、保有している資産価値が投資額より多くなることも、少なくなることもあります。この振れ幅のことをリスクと呼び、受け入れられる損失の程度を「リスク許容度」といいます。投資方法を選ぶ時には、運用できる期間や、投資用の資金額、リスク許容度を基準に考えます。

シミュレーションしてみる

投資方法を検討したら、購入する前にシミュレーションをしてみましょう。金融機関によりますが、投資額や投資期間、想定される利率などを入力すると運用結果予測をみることができます。
ここで大切なことは、想定通りの利益が出た場合だけではなく、リスクを反映したシミュレーションも行うことです。実際の投資運用はシミュレーション通りにはなるとは限りませんが、自身の運用計画と照らし合わせて無理のない方法か確認してみましょう。

コツコツ投資し続ける

シミュレーションでも問題が無さそうであれば、実際に長期投資を始めてみましょう。前章の「長期投資をするうえで重要な考え方」に沿ってコツコツと投資を続けていきます。一時的な価格の動きはそれほど重要ではありません。しかし、運用計画に影響がある場合は投資先や資産配分を見直しながら続けていきます。

長期投資に向いている制度や投資方法

長期投資に向いている制度や投資方法

積立投資と分散投資により長期投資のデメリットを補いながら、メリットを活かせる投資方法を利用していきましょう。

NISA

NISAは、NISA口座内の取引で得られた利益に税金がかからない(非課税になる)税制優遇制度です。2023年5月現在成人向けのNISAは「つみたてNISA」と「一般NISA」の2種類あり、「つみたてNISA」が長期投資に向いている制度です。つみたてNISAは、1年間40万円を上限として一定の投資信託を定期購入できます。2024年からはNISAが1つに統合され、毎年360万円を上限、総額1,800万円まで非課税で運用することができます。

個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)

個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)は、リタイア後のための資産形成の制度です。加入者が毎月一定の金額を積み立て、あらかじめ用意された預金・保険・投資信託で運用し、60歳以降に一時金または年金で受け取る仕組みです。日本在住の20歳以上60歳未満の国民年金被保険者の方や、65歳未満の国民年金に任意加入された方であれば、原則誰でも始めることができます。
ただし、農業者年金加入者や、企業型確定拠出型年金に加入されている場合は、iDeCoに加入できない場合があります。加入手数料がかかるほか、口座管理手数料や信託報酬といった運用コストがかかります。

【iDeCoの税制優遇メリット】
・積立金額はすべて所得控除の対象となり、所得税・住民税が節税できる。
・運用で得た定期預金利息や投資信託運用益が非課税になる。
・受け取る時年金受取の場合は「公的年金など控除」、一時金受取の場合は「退職所得控除」の対象となる。

出典 

投信積立

投信積立は投資信託に積立投資をする方法です。投資信託は、投資家から集めた資金をプロが運用し、利益を投資家に還元する金融商品です。投資先銘柄は公表されませんが、国内株式・外国株式・債券などを組み合わせて運用を行います。
投信積立は「少額投資」「分散投資」「専門家による運用」が特徴で、金融機関によっては100円から投資信託に積立投資ができます。

株式投資

株式投資は投資家自身が証券会社を通じて特定の企業の株式を購入し、運用する方法です。株式を購入した企業が成長すると、株式の価値もあがる事が見込まれます。株式の価値が上がったところで売却することで利益を得られます。株式市場の相場をチェックしたり、株価の上昇や下落に注目して分析することで、経験を養うことができます。
また、株式投資の長期投資では、配当や株主優待からの利益も得られます。

ETF

ETFは上場している投資信託のことです。投資信託と同じように、直接的な運用は専門家が行います。上場しているので、売買する時は証券会社を経由して証券取引場で取引を行います。

まとめ

まとめ

長期投資とは、長い時間をかけてじっくりと資産を増やす投資方法です。長期投資は複利の効果により大きく資産を増やすことが期待できますが、短期間で大きなリターンを見込むことは難しいでしょう。長期・積立・分散投資により、将来の不確実性のリスクを低減することが大切です。老後資金に不安がある方や投資初心者で大きな失敗を避けたい方は、時間をかけてお金と投資経験を積み上げ、コツコツと確実に資産運用を行いましょう。

ご留意事項
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