【FP解説】ライフプランで考える年代ごとの貯蓄目標額の決め方

ただ漠然と貯蓄をしようとしてもなかなか実行できないものです。一方で、使う目的や目標額を決めての貯蓄では「意外と貯められる」という声をよく聞きます。そこで、年代ごとに想定されるライフイベントを考慮しながら、貯蓄の目的や目標額を定めた貯蓄を行ってみてはいかがでしょうか?

【FP解説】ライフプランで考える年代ごとの貯蓄目標額の決め方

年代やライフスタイルで異なる貯蓄の目的と目標額

年代やライフスタイルで異なる貯蓄の目的と目標額

貯蓄額はどれくらいが妥当なのかについては、全員に統一的な答えがあるわけではありません。現代ではライフスタイルやライフコースが多様化し、個別性が高くなるためです。

しかし、人生100年時代に自分らしい人生を送るには、お金のかかるライフイベントのためにしっかり貯蓄しておくことも必要です。特に、人生の三大支出(教育資金、住宅資金、老後資金)は、金額も大きいことから、計画性をもって備えていく必要があります。

ほかの人たちは貯蓄についてどのように考えているのでしょうか。金融資産の保有目的と平均貯蓄額のデータを見てみましょう。

金融資産の保有目的と平均貯蓄額(金融資産保有世帯)

二人以上世帯での金融資産の保有目的は、30代・40代では教育資金が1位です。40代以降は老後資金が2位となり、50代以降は老後資金が1位。平均貯蓄額は年代ごとに上昇しますが、増額幅が大きいのは、50代・60代です。

シングル世帯では、20代を除いて1位はすべて老後資金。貯蓄額は二人以上世帯とあまり変わらず、40代ではむしろ上回っています。

二人以上世帯(1位〜3位)

年代 1位 2位 3位 平均貯蓄額
20代 予備費 教育資金 旅行・レジャー 220万円
30代 教育資金 予備費 老後資金 640万円
40代 教育資金 老後資金 予備費 880万円
50代 老後資金 予備費 教育資金 1,574万円
60代 老後資金 予備費 特に目的はない 2,203万円

※予備費=病気や不時の災害への備え

シングル世帯(1位〜3位)

年代 1位 2位 3位 平均貯蓄額
20代 特に目的はない 予備費 旅行・レジャー 198万円
30代 老後資金 予備費 特に目的はない 572万円
40代 老後資金 予備費 特に目的はない 972万円
50代 老後資金 予備費 特に目的はない 1,496万円
60代 老後資金 予備費 旅行・レジャー 1.930万円

※予備費=病気や不時の災害への備え

【参考】 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査(令和元年)」 詳しくはこちら

20代は貯蓄の習慣をつけよう!

20代は貯蓄の習慣をつけよう!

では、年代ごとの貯蓄のポイントを考えてみましょう。

20代は、社会に出て収入を得て、家計を安定させる年代です。収入もあまり高くない一方で、趣味やレジャーなどにお金を使いたい年代でもあります。

まず最初に貯蓄したいのが、生活予備費です。転職やリストラ、倒産、病気・ケガ、自然災害など想定外の出来事に備えて、最低でも生活費3~6ヶ月分は普通預金や定期預金などで確保しておきたいもの。この生活予備費は、すべての年代に共通して必要です。

それに加えて、20代では、結婚資金や、資格取得・留学などの自己投資資金、趣味にかかるお金など、個々の目的に合わせた貯蓄習慣が必要です。貯める目的が定まらない人は、「100万円貯める」など、金額を目標にしてもいいでしょう。
積立定期などで貯蓄するとともに、リスクが取れる年代なので、一部をつみたてNISAに回すなどして投資とのつき合い方も学んでいきたいものです。

30代はライフコースで目標額が変わる

30代はライフコースで目標額が変わる

30代は結婚、子供の誕生・進学、住宅取得など、重要なライフイベントが重なりやすい年代です。

子供が誕生したら、教育資金を貯め始めましょう。大学までの進学を考えて、子供1人につき300万~500万円程度を目標に積み立てをします。中学卒業までは月1万~1万5,000円(高所得世帯は月5,000円)の児童手当が出るので、それに上乗せして貯めると家計への影響も少なくてすみます。例えば、月2万円を15年貯めれば、元金だけで360万円になります。職場の財形貯蓄や学資保険、つみたてNISAなどと組み合わせた積み立てがおすすめです。

住宅は頭金がなくても購入することはできますが、ローンで支払うなら、頭金は物件の10%以上あれば、より条件のよいローンが利用できます。諸費用分が5~6%とすると、最低でも15%貯めることを目標にするといいでしょう。ちなみに、3,500万円の物件であれば15%は525万円となります。

30代で老後資金を貯め始める人もいますが、結婚、子供の誕生・進学、住宅取得など、ライフイベントの重なる可能性が高い30代は、ライフイベントの有無や発生タイミングに応じてライフコースが変化する可能性も大いにあり得ます。備えあれば憂いなし、ということわざのように前倒しの準備が得策といえます。老後まで引き出せないiDeCo(個人型確定拠出年金)に限定せず、積立定期やつみたてNISAなど、さまざまな金融商品を組み合わせた資産運用も検討しましょう。

40代以降は教育費が負担になる世帯も

40代以降は教育費が負担になる世帯も

40代は、子供がいる世帯では中学・高校進学など、次第に教育費の負担が増えていきます。専業主婦(夫)だったパートナーが働き始めて世帯収入が増える家庭もありますが、子供の数が多いと、教育費に吸収されがちです。それでも、旅行・レジャー貯蓄、住宅リフォーム・建て替え貯蓄、繰上返済貯蓄、車買換え貯蓄など、必要な貯蓄は計画的に行うよう、家計を調整しましょう。

老後資金を意識し始める年代でもあります。子育て世帯では、末子の中学卒業時点で、教育資金準備にはメドをつけ、老後資金づくりにシフトしていきましょう。まだ始めていなかった人はもちろん、シングルの人も、遅くとも40代の間にiDeCoなどの老後資金の積立にも着手してください。

また、親が70代になると、入院・介護費用などが発生する可能性が高まります。生活予備費を生活費6ヶ月~1年分程度に増やし、急な出費に備えましょう。

50代は60代以降を見据えた準備を

50代の子育て世帯は、子供が大学生になり教育費がピークを迎えます。300万~500万円の教育資金で不足する分は家計から捻出して補うことが多く、家計は余裕がない状態が続きます。子供が大学を卒業すれば家計への負担は大きく減るでしょう。

50代では特に、定年後の具体的な生活をイメージして準備を始める必要があります。例えば、定年後に郊外の戸建てから中古マンションに住み替える、いずれは有料老人ホームに入る、地方移住を考える、親の介護の関係で実家近くに引っ越すなど、住まいの変更が見込まれる場合には、かかるお金を検討してください。

また、50代になると、年金額や退職金など、老後に入ってくる資金が見えてきます。あとどれくらい貯めるべきか、何歳ぐらいまでどのような働き方をするかなども考え、具体的に準備を進めましょう。

60代以降、退職金などはどうするべき?

60代以降は退職金などをどうする

60代は定年を迎える年代です。退職金やiDeCoなどの受取り時期を迎え、大きなお金が入ってきます。住宅ローンの繰上返済に回す人もいますが、手元資金が少なくなってしまう場合には、低金利期は返さずに貯蓄をしておくのも一法です。

60代はリスクの高い投資に手を出すのは避けましょう。また、投資詐欺などにはくれぐれも注意を。NISAやつみたてNISAなど、これまで行ってきた投資の延長にとどめましょう。年金生活に入るからこそ、今あるお金を減らさない工夫が大事です。

60代以降は、生活予備費のほか、医療・介護の予備費として200万~300万円程度をキープしておきます。

まとめ

人生山あり谷ありで、年代やライフプランによっては貯蓄しにくい時期もあります。しかし、「手取り収入から最低10%を貯め続ける」などとマイルールを決めて実行できる人であれば、将来的にお金について困ることは少ないでしょう。早いうちから細く長く積み立てる習慣が成功の鍵を握っています。

ご留意事項
  • 本稿に掲載の情報は、ライフプランや資産形成等に関する情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の取得・勧誘を目的としたものではありません。
  • 本稿に掲載の情報は、執筆者の個人的見解であり、三菱UFJ信託銀行の見解を示すものではありません。
  • 本稿に掲載の情報は執筆時点のものです。また、本稿は執筆者が各種の信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性について執筆者及び三菱UFJ信託銀行が保証するものではありません。
  • 本稿に掲載の情報を利用したことにより発生するいかなる費用または損害等について、三菱UFJ信託銀行は一切責任を負いません。
  • 本稿に掲載の情報に関するご質問には執筆者及び三菱UFJ信託銀行はお答えできませんので、あらかじめご了承ください。

RANKING

この記事もおすすめ