退職金はいつもらえる?振込時期や相場、税金について解説

会社を辞める際に受け取る退職金。いつ、どのくらいもらえるのか、気になる方も多いのではないでしょうか。そこでこの記事では、退職金が振り込まれる時期や相場、万一もらえなかったときの対処法をご紹介します。

退職金はいつもらえる?振込時期や相場、税金について解説

そもそも退職金とは

そもそも退職金とは

退職金とは、会社を退職する際にもらえるお金のことをいいます。しかし、退職金の支給は法律で決まっているわけではないので、会社によっては支給されないこともあります。自社が退職金制度を設けているかどうかは、就業規則で確認することができます。記載が見つからない場合は、人事課や総務課などに相談してみてください。

また一口に退職金といっても、その算出方法や支給方法はさまざまです。算出方法は主に2通りで、ひとつは勤続年数ベースで考えるもの、もうひとつは役職ベースで考えるものがあります。支給方法は、一度に全額支払われる一時金型と、一定期間中に年金のように支払われる年金型、このふたつを組み合わせた混合型があります。

退職金はいつもらえるか

退職金はいつもらえるか

では、退職金はいつもらえるのでしょうか?支給のタイミング・時期を確認していきましょう。

もらえるタイミング・時期は企業によって異なる

退職金という制度自体、企業の裁量によるものなので、支給日も明確な定めがあるわけではありません。ただ、目安の1つとしては退職から1~2カ月後というのが一般的なようです。ただし、会社によっては半年後というケースもあります。

就業規則の記載が重要

いつ支払われるかを知りたい場合には、就業規則を確認するのが一番です。就業規則に明記されていれば、それが支払い期限となります。万一期日についての記載がなく、就業規則に記載があるにもかかわらず支払いがされない場合は、会社に対して退職金請求を行いましょう。この場合は、労働基準法23条1項より、請求後7日以内に支払わなければならないと定められています。

退職金の金額の決まり方と相場

退職金の金額の決まり方と相場

退職金で気になるのが、その金額です。ここでは、金額はどのように決まるのか、相場はどのくらいなのかを紹介します。

金額は勤続年数や実績などにより決まる

先ほど少し触れたように、退職金は勤続年数ベースや役職ベースで考えることが多いです。細かい計算方法は企業によって異なりますが、一例として以下のような計算方法があります。

基本給連動型

基本給×勤続年数×給付率で計算

ポイント制

社内評価、役職などをポイント化して計算

定額制

勤続年数×退職事由係数+役職別上乗せ

ここからわかる通り、退職金の計算には、勤続年数や退職事由係数を使用します。会社を早期退職した場合や、自己都合により退職した場合は、退職金が少なくなる可能性もあるのです。自社における計算方法がわかれば、一度計算してみるのもよいでしょう。

もらえる退職金の目安は?

相場は、企業規模・学歴・勤続年数・退職理由などによって異なります。ここでは、東京都産業労働局と政府統計の総合窓口(e-Stat)のデータを参考にし、退職金(一時金)の相場を見てみましょう。

従業員が10人~299人の都内中小企業の場合

まずは、中小企業における相場を学歴別に表にしてご紹介します。

高校卒の退職金の目安

勤続年数自己都合  会社都合  
10年80万3,000円102万2,000円
15年153万8,000円190万6,000円
20年256万7,000円302万7,000円
25年366万3,000円431万円
30年483万5,000円562万2,000円
定年932万9,000円

高専・短大卒の退職金の目安

勤続年数自己都合  会社都合  
10年87万5,000円112万5,000円
15年167万3,000円207万1,000円
20年272万6,000円323万4,000円
25年395万1,000円461万3,000円
30年531万4,000円604万4,000円
定年923万5,000円

大学卒の退職金の目安

勤続年数自己都合  会社都合  
10年98万5,000円129万5,000円
15年187万6,000円234万4,000円
20年309万9,000円369万8,000円
25年453万9,000円528万7,000円
30年602万7,000円686万3,000円
定年987万4,000円

【参考】東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和2年版)」詳しくはこちら

資本金5億円以上、労働者1,000 人以上の会社の場合

続いて、(1) 資本金5億円以上、(2) 労働者1,000 人以上の会社における相場を学歴別に表にしてご紹介します(労働者の種類は事務・技術労働者、総合職相当を採用しています)。

高校卒の退職金の目安

勤続年数自己都合   会社都合   
10年137万8,000円214万2,000円
15年289万円403万5,000円
20年557万3,000円664万7,000円
25年862万8,000円1,005万5,000円
30年1,197万円1,367万9,000円
定年1,971万2,000円

高専・短大卒の退職金の目安

勤続年数自己都合   会社都合   
10年155万5,000円251万4,000円
15年306万4,000円420万8,000円
20年617万3,000円726万7,000円
25年875万2,000円949万2,000円
30年1,243万6,000円1,384万3,000円
定年1,355万3,000円

大学卒の退職金の目安

勤続年数自己都合   会社都合   
10年179万9,000円310万2,000円
15年387万3,000円577万9,000円
20年726万5,000円1953万1,000円
25年1,143万1,000円1,393万8,000円
30年1,706万7,000円1,915万4,000円
定年2,563万9,000円

【参考】政府統計の総合窓口(e-Stat)「令和3年退職金、年金及び定年制事情調査」詳しくはこちら

上記から、一般的には企業規模が大きく、学歴が高いほど多く支給されるといえるかもしれません。また、自己都合より会社都合の方が20〜250万円ほど高くなっています。あくまでも目安ですが、自分がどれだけ退職金をもらえるのか知りたいときには、参考にしてみてください。

もらえるべき退職金がもらえなかったときの対処法

もらえるべき退職金がもらえなかったときの対処法

退職金制度があるのに、退職金がもらえなかった場合は、請求を行う必要があります。ここでは、退職金がもらえなかったときの対処法を紹介します。

企業へ請求する

まず考えられるのが、退職金請求です。会社に直接問い合わせても支給されない場合には、請求書を送付して求めましょう。企業側が故意に支払わないような場合には、のちのち裁判になる可能性もあるため、内容証明郵便を使って請求書を送るのがよいでしょう。
内容証明郵便とは郵便局が郵便物の内容、日時、差出人、受取人などを証明してくれるものです。ただし、民間企業・公務員ともに退職金請求は5年以内に行うことになっているので、注意してください(労働基準法第115条・会計法30条に準ずる)。

専門家や専門機関に相談する

請求を行っても支払いをしてくれない場合、弁護士事務所や労働基準監督署などに相談しましょう。どちらの組織も、会社に交渉を行い、退職金を払うように促してくれます。まずは行政機関である労働基準監督署などに相談し、それでも解決しない場合に弁護士に相談するとよいでしょう。

退職金にかかる税金にも要注意

普段、給料から税金が引かれるように、退職金も受け取り時には所得税・住民税・復興特別所得税が引かれます。しかし、確定した金額すべてに課税されるわけではなく、「退職所得控除」という特別に控除される分を引いたものに課税されるので、税金の負担は軽くなるように配慮されています。

詳しい計算式は割愛しますが、30年働いた会社から2,500万円を受け取った場合、所得税及び復興特別所得税は58万4,522円、住民税は50万円かかります。およそ100万円が税金として引かれるわけです。このように退職金は提示額がそのままもらえるわけではないので、注意してください。

【参考】国税庁「退職金と税」詳しくはこちら

退職金を資産運用する場合の方法

退職金を資産運用する場合の方法

いざ退職金をもらったときに、何に使おうか迷っているという方も多いのではないでしょうか。ここでは、退職金の用途の1つとして、資産運用を紹介します。ここでいう資産運用とは、退職金をすべて預貯金にしてしまうのではなく、使い道に分けて賢く貯蓄することをいいます。

まず、お金を使う時期によって分けてみましょう。1年以内・5年以内・5年以上先の3つに分けます。1年以内に使う予定のお金は、すぐに取り出せるよう預貯金に入れておきます。5年以内に使う予定のお金は、通常の預貯金よりも金利が少し高い定期預金に入れておくか、債券などで保有することがおすすめです。長く使う予定のないお金は、投資信託や株式などの投資で老後に向けてお金を増やしましょう。投資で不安な場合は、プロに相談してみるのも一つの方法です。

まとめ

退職金は会社による裁量が大きい制度です。この記事では、いつ、どれくらいもらえるかの目安をご紹介しましたが、詳しい内容は会社の就業規則を確かめてみてください。就業規則に記載があっても支給されない場合は、退職金請求を行ってみましょう。

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